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有形文化財(建造物)の登録について

文部科学省文化庁文化財第二課

文化庁では、国宝・重要文化財以外の有形文化財のうち、保存及び活用についての措置が特に必要とされるものについて、文部科学大臣が文化財登録原簿に登録する「文化財登録制度」による緩やかな保護措置を講じています。文化庁では、国宝・重要文化財の指定のほか、文化財登録制度による登録を毎年行っています。令和2年度に開かれた文化審議会文化財分科会の審議・議決を経て、新たに462件の有形文化財(建造物)を登録することとなりました。この結果、官報告示を経て、全国の登録有形文化財建造物、13,097件となります。以下、新たに登録されることとなった建造物の中から、特徴的な8件を御紹介します。

1 旧藤澤カントリー倶楽部 クラブハウス(グリーンハウス)
所在地:神奈川県藤沢市

藤沢市の中央部に位置し、A・レーモンドの設計になります。切妻造り三階建ての正面に大きな車寄を張り出し、背面に二階建てをのばし、一階はホールの廻りに各室をならべ、二階は吹き抜けのラウンジとなります。車寄など開口部の半円アーチによる構成、青緑色のスパニッシュ瓦葺き屋根、アイアンワークの手摺など、全体をスパニッシュの手法でまとめ、現存する戦前のゴルフクラブハウスとして希少です。

2 脇田和アトリエ山荘
所在地:長野県軽井沢町

昭和から平成にかけて活躍した洋画家・脇田和のアトリエ兼山荘で、設計者の吉村順三は東京藝術大学の同僚です。一階を鉄筋コンクリート造のピロティとし、主要な室は木造の二階に配します。くの字形の長大な平面を東西に分け、東棟はリビングや寝室等とし南に大きな開口を開けて庭を望みます。西棟は矩形平面のアトリエと書斎。設計者・吉村順三の作風が表れるモダニズム住宅の佳品です。

3 太田喜二郎家住宅主屋兼アトリエ
所在地:京都府京都市

関西の洋画界で活躍した太田喜二郎のアトリエ付住宅です。太田は東京美術学校で黒田清輝に師事したのち、ベルギーに留学。京都帝国大学の建築学科で絵画講師を務め、同僚の建築家・藤井厚二に設計を依頼しました。食堂を中心に、東に舟底天井の応接室とアトリエ、南にサンルーム、西に家政部を配し、とりわけ食堂の三畳大の上段や長椅子などの造り付け家具、内壁の幾何学的意匠に、藤井の作風がよく示されます。

4 旧摩耶観光ホテル
所在地:兵庫県神戸市

摩耶山南麓中腹に建つもとホテルです。L字形平面を持つ地下2階、地上2階建ての鉄筋コンクリート造で、四層の外観各階に水平連続庇をまわして曲面を強調し、大きな開口を開けます。内部の大ホールや大食堂は、コンクリートの大梁を表して大空間を分節し、舞台等の内装にアールデコ調意匠をみせます。かつての山上リゾート施設の有様を示します。

5 島根県立図書館
所在地:島根県松江市

旧松江藩の薬草園跡地に位置する鉄筋コンクリート造一部鉄骨造2階建ての図書館です。隣接する武道館ともに、島根県に多数の公共建築を残した菊竹清訓の設計になります。L字形の閲覧室を敷地形状にあわせて配置し、中央ロビーに鉄骨屋根を架けて展示や休憩スペース等を配した合理的な平面構成を持ちます。外部の壁柱を松江城山公園に向けて揃え、眺望を確保しています。

6 愛媛県庁本館
所在地:愛媛県松山市

木子七郎設計、内藤多仲構造設計、安藤組施工の県庁舎で、H形平面を持ち、鉄筋コンクリート造地下一階、地上四階建てになります。中央の車寄上部に三連の半円アーチを並べ、頂部にドームを冠した塔屋を載せて両翼を張り出します。外観は装飾を車寄開口と窓廻りの縁取りに留め、石積に平滑なモルタル仕上とするなど記念性と近代性を兼ね備えた意匠を持ち、内部は中央階段室や正庁等を華麗に飾ります。

7 久留米大学本館
所在地:福岡県久留米市

旧制九州医学専門学校の本館として建築され、九州に多数の作品を残した建築家・松田昌平の設計になります。平面はコの字型で、正面二階の中央に車寄玄関を設け、ロンバルティア帯で飾ります。車寄上部を三連アーチ窓とし、両翼は三層を貫く二連のアーチ枠を並べ、矩形の窓を穿ちます。内部は三階中央を大会議室とし、ほかは廊下の両側に事務室等を並べ、ロマネスク様式を基調とした格調高い大学本館です。

8 屋久島灯台ほか1件
所在地:鹿児島県熊毛郡屋久島町

台湾の開発のため陸軍省が設置した台湾航路8灯台のうちの一基で、設計は臨時台湾燈標建設部になります。屋久島北西の永田岬に位置し、煉瓦造の灯塔上部にバルコニーを廻らし、下部に扇形平面の附属舎をもつ。入口にペディメントと柱形を表し、附属舎とも軒に歯飾を飾ります。現存する明治期灯台で最南部に位置し、峻険な要衝の景観に寄与しています。

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