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トップアスリートとの特別対談 スポーツ庁長官 室伏広治のアスリート近影
川井梨紗子選手(レスリング)編

スポーツ庁競技スポーツ課

室伏スポーツ庁長官が、トップアスリートの生の声に迫ります。

東京2020大会での活躍が期待されるトップアスリートの生の声を通して、競技やアスリートの魅力、スポーツが社会にもたらす前向きな力に迫ります。
新型コロナウイルス感染症により、2020年、世界は一変しました。東京オリンピック・パラリンピックも1年延期となり、大きく変わってしまった日々の中で、トップアスリートはどのような想いで戦い、何を感じているのでしょうか。
日本を代表するアスリートの「今」に迫り、彼らの言葉や姿勢を通じてそれぞれの競技やアスリート自身の魅力、さらには社会におけるスポーツの力を発信していくため、トップアスリートと室伏スポーツ庁長官との対談を実施しました。
3月号、5月号に引き続き、今回は、レスリングの川井梨紗子選手との対談内容を抜粋の上で一部編集して紹介します。
(ファシリテーター 櫻木 瑶子 大臣報道官)

川井 梨紗子選手との対談

川井 梨紗子選手

初めて出場したリオデジャネイロ(2016)大会において、63㎏級で金メダルを獲得。その後、2017年から2019年にかけて、世界選手権でも3連覇中であり、今年の東京大会にも57㎏級での出場が内定。

※この対談は、2021年3月に実施したものです。

川井選手といえば、妹の友香子選手も62㎏級で東京大会代表に内定されているということで、室伏長官も、2004年にアテネ大会で、妹の由佳さんとともに出場されています。

室伏長官 私も、父親がハンマー投げ選手で、憧れてハンマー投げを始めました。同じようにご両親ともレスリングをされていて、妹さんもされているということで。

川井選手 はい、そうです。

練習の面でも、お互い励まし合いながら、練習されていますか?

川井選手 そうですね。どちらかが調子が悪くて落ち込んでいたら、「大丈夫だよ」、「明日もあるから頑張ろう」っていうふうに、励まし合ってやっています。

川井選手がレスリングを始められたきっかけというのは、ご両親の影響でしょうか?

川井選手 両親共にレスリングをやっていましたが、父が遊び感覚で連れて行ってくれたのが始まりです。当時の記憶が全然ないのですが、あとから訊くと、練習場に連れて行かれて、始めてすぐに大会に出させられたようで、もちろん練習してないから負けるのですが、練習してないのに負けて泣いていたらしくて。それで、もうこれからはちゃんとやるって言って始めたらしいです。

室伏長官 いきなり試合に出させられたのですか。

川井選手 はい。県内の小さい大会ですけど、そこで男の子に負けたらしく。

室伏長官 レスリングの魅力はどんなところにあるのですか。

川井選手 相手との駆け引きというか、試合が6分間あるのですが、最後の1秒に逆転があって勝敗が入れ替わるとか、ぎりぎりまで何があるかわからないっていうのが楽しいです。最後まで絶対勝ちたいっていう気持ちがあるほうが勝てるので、そういう駆け引きが楽しいと思ってやっています。

2016年の、21歳のときに初出場されたリオデジャネイロオリンピックで金メダルを獲得されたということで、今振り返られてどうお感じですか?

川井選手 初めてのオリンピックで、選手村に入るのも初めてで、何もかもが初めてすぎて、はっきりと覚えてることは多くはないですけど、何もかもが「すごい、すごい」というか。オリンピックってこんなに盛大なんだなと衝撃的だったことを一番覚えています。

オリンピックに出場されると、他の競技の選手との交流もあるかと思いますが、他の競技の選手から、何か刺激をもらったり学んだりすることはあるのでしょうか?

川井選手 自分がオリンピックに出てから少しずつ興味を持って、合宿所で他の競技の同級生の子とかと会うことも増え、その子の大会の結果とかも見るようになりました。直接会うと「最近、調子どう?」という話をしたりします。今まではレスリングっていう競技の枠の中でやってきたものが、違う競技だけど同級生っていうつながりがある子たちと、一緒に「頑張ろうね」、「一緒にオリンピック行けたらいいね」という話をするようになったので、刺激がすごく増えました。

室伏長官 そういう違う競技の方からも学ぶこともあるでしょうしね。レスリングの枠を超えて、是非頑張ってもらいたいですね。

今回の東京大会、川井選手にとっては連覇を目指すことになりますが、長官ご自身も、金メダルを獲得されたアテネ大会の後の北京大会では連覇を目指されました。

室伏長官 4年ごとに世界の選手の状況も変わったりするので、前回の大会とは随分状況は違いますが、ベストを尽くしてやりました。

川井選手 初めてのときは、世界チャンピオンになったことがない状況で、ただチャレンジャーとして挑むオリンピックでしたが、リオ以降の世界選手権は3連覇していて、世界からの私を見る目も変わっているので、気持ちの面でも違う部分はあります。

室伏長官 やっぱり平常で普段通りにやることが大事なんですけど、普段通りになかなかいかないですよね。注目されることは素晴らしいことではある一方で、なかなか自分の思うようにすべてがいくわけじゃないこともあるでしょうし、狙いすぎると、細かいところを忘れちゃったりします。金メダルしか目がないと、技術がおろそかになってしまったりもします。やはり、その瞬間瞬間を大切にして、私も、最後の投てきまで一生懸命やろうと思ってやりました。当たり前かもしれませんけど、なかなか難しいですよね、普通にやるのは。

川井選手 室伏長官は、オリンピックに4大会出場されていますよね。どうしてそんなに長く続けられたのでしょうか。私はいま2回目を目指していて、リオから、4年、5年、すごくあっという間でもありましたが、苦しいなとも思って。4回となると、そのさらに倍ですよね。

室伏長官 最後のほうは、体力も落ちてくるし、コンディションを保つのもすごく難しいです。調子が良い日が毎日あるわけじゃないので、それを上手に合わすっていうのは一番大変なところだったと思います。若い頃は、自分のメンタルなどをコントロールするのが、多少難しかったと思いますけど、どの大会も同じではなくて、それぞれテーマが全然違ったので、それなりに全部思い出深いなとは思います。でも今回の5年は長いですよね。楽しむって言い方が良いか分かりませんが、レスリングを追求して、誰もやってないことを是非やって頑張ってもらいたいですね。

川井選手 はい、ありがとうございます。

室伏長官 日本の女子レスリングは強いですよね。吉田選手(吉田沙保里:2004年アテネ大会・2008年北京大会・2012年ロンドン大会 3大会連続金メダリスト)や伊調選手(伊調馨:2004年アテネ大会・2008年北京大会・2012年ロンドン大会・2016年リオデジャネイロ大会 4大会連続金メダリスト)のように、ずっと伝統的に強いですけど、その強みっていうのは何か秘密がありますか。

川井選手 沙保里さんや馨さんが、ずっと世界のトップで戦ってきて、レスリングは個人競技なんですけど、練習では、みんなで練習の空気を良くするとか、みんなで盛り上げるっていうようなチーム競技のような練習をしていて、その空気を作ってくださったのが沙保里さんや馨さんでした。個人競技だけど、みんなで頑張れるっていうところが、強みになっているのかと思います。

室伏長官 これから有望な若手とかも出てきているんですか。

川井選手 もう、たくさんいます。私も、今までは、ただ追いかける立場で上を見て走っていたものが、気づいたら私が上のほうになっていて、下から追いかけてくる子がたくさん出てきて、勢いがすごいなって感じることはすごく増えました。

室伏長官 安心していられないですか。

川井選手 本当にそう思いますね。オリンピックで結果を出すためにも、まだ、下の子には負けられないですし、下からの突き上げがすごく刺激になっています。

室伏長官 それは素晴らしいですね。

東京大会の1年延期が決まったときは、心境的にはいかがでしたか?

川井選手 ここからプラス365日、また練習ってなると「苦しいな」って思う反面、こんな状況なら、延期でも仕方ないだろうなと、冷静に見ている部分もあって、ちょっと複雑でしたね。

室伏長官 少しは休養とか、ゆっくりしたりもしたんですか。

川井選手 トレーニングは毎日していました。最初の緊急事態宣言が出たときは、本当に、道場も開けないという感じで、マットで人と組み合うのもまずできないので。でも、それこそ妹がいてよかったなって思ったのは、妹と2人で、外に走りにいったりとか、何かお互いにメニューを出し合って「これやろう、あれやろう」って言ってやったりしたのは、姉妹でよかった部分でもあり、1人じゃないからこそ、コロナの自粛期間を乗り越えられたと思っています。

室伏長官 実際にレスリングをする以外のトレーニングも、工夫されたのでしょうか。

川井選手 いつもは大学でトレーニングという感じでしたが、大学が閉まっていたので、家の周りで、どこかトレーニングで使える良い場所はないかと2人で探して、毎日そこに通ってやってという感じでした。

ナショナルトレーニングセンターでの、コロナ禍での練習環境はいかがでしょうか?

川井選手 部屋と練習場と食堂の行き来だけなのですが、どこに行っても、人とソーシャルディスタンスとったり、消毒液が置かれていたり、検温したりと、細かいところまで対策されているので、安心して使うことができています。

室伏長官 よかったですね。頑張っているアスリートが安心してトレーニングができるように、我々も精一杯、今後もサポートしたいと思います。

室伏長官 コロナ禍で、工夫しながらやらなきゃいけないことを前向きに取り組まれている中で、学んだことはありますか。もしくは、スポーツやレスリングの素晴らしさを、改めて気づいたことなどはありますか。

川井選手 今まで当たり前にしてきたことが、全部当たり前じゃなくなって、練習もできない状況になってからは、みんなで集まって練習できることも当たり前じゃないですし、練習が終わって帰ってご飯が出ることも当たり前じゃなくて、みんなと全く会えなくなって、何もかもが普通じゃなかったんだなと思いました。練習は毎日やっていましたが、その毎日やっていたことが、いろんな条件があって成り立っていたことを、コロナで実感しました。練習がきついから苦しいなとは思うんですけど、その練習へのありがたさというか、久しぶりに練習したときは、だからこそうれしかったですね。

室伏長官 1回の練習にかける気持ちが変わってきたということですね。

川井選手 そうですね。「明日あるからいいや」とか、そうじゃなくて、「明日またどう状況が変わるかもわかんないから」っていうふうに考えるようになって、一つ一つを大事にできるようになったと思います。

室伏長官 次世代のレスリングを目指す子どもたちはまさに今、川井選手を目指していると思うんですけども、こういう大変なときに乗り越えるような力だったり、スポーツがいろいろ教えてくれたこともありますよね、何かメッセージがあればお願いします。

川井選手 今コロナが拡大していて大変な状況ではあるんですけども、私が東京オリンピックの代表になるまでの道のりっていうのが、もう本当に、苦しかった時期だったのですが、それを乗り越えて代表になったときの嬉しさは、本当に、今までにないくらいの喜びでした。今はコロナで大変な状況で、みんなが逆境で苦しい状況ではありますが、この苦しい状況で我慢していることが、いつかきっと「あのときこういうことがあったけど、今はこうなったからよかったね」という風になると思うので、それを信じて、苦しい中でも前向きに頑張れたら良いなと思います。

この動画を御覧になっている国民の皆様へメッセージ

川井選手 このような状況の中で開催されるオリンピックに、色んな声があることもわかっているんですが、やるからには私も一生懸命やりますし、金メダルを獲るために頑張りますし、こういう状況だからこそ、一人一人が頑張って、目標に向かって努力することの素晴らしさっていうのがスポーツにはあると思うので、そういった姿を、テレビ等を通して観てもらって、明るいニュースを届けられたら良いなと思います。

全体の対談の様子はスポーツ庁HPから御覧ください。

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