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国内スポーツ施設の約6割! 学校体育施設の有効活用の方法とは

スポーツ庁

スポーツ庁ではWeb広報マガジンを展開し、月1~2本、政策解説記事などを掲載しています。
今回は、「学校体育施設の有効活用に関する手引き」の内容と、学校体育施設の活用事例を紹介します。

皆さんは、一般開放されている学校の体育施設があることを知っていますか? その学校に通う子供たちだけでなく、地域に住む人々のために、学校の校庭や体育館を利用できるようにしているのです。身近なスポーツ活動の拠点として、今後より多くの人に学校施設を利用してもらえるように、昨年公表した「学校体育施設の有効活用に関する手引き」の内容と、実際の多様な活用事例を紹介します。

学校体育施設の開放状況と課題

自治体の体育・スポーツ施設は、場所や時間帯によってはなかなか予約ができない、統廃合によって数そのものが減っている、老朽化や財政状況の悪化などにより今後安全な施設の提供が困難になることが想定されるなど、様々な課題を抱えています。そんな中、誰もが日常的にスポーツに参画することのできる機会を確保するために、学校体育施設をうまく活用してもらおうと、昨年3月に「学校体育施設の有効活用に関する手引き」が作成されました。学校体育施設は、日本全国の体育・スポーツ施設の約6割を占めており、プールや体育館、運動場と施設の種類ごとに見ても、学校のものが約4分の3にまで上ります。これを有効活用しない手はありません。

学校体育施設の開放率は年々上がっており、特に公立小中学校の体育館については、いまではほぼ100%に達しつつあります。ただし、施設別に見ると、プールの開放状況はいまだ2割にとどまっていることがわかります。

開放頻度に関しても、体育館や土日の屋外運動場(校庭)は、全体的に8割ほどが年間を通じて開放されているのに対し、プールについては夏場の短期間しか開放されていないため、ここもまだ課題であるといえます。

一方、既に開放している施設が抱えている課題は、開放対象者です。対象となっているのは、事前に登録された団体限定であるところも多く、個人でも利用可能な体育館は3割以下となっています。

地域の人々に気軽に使ってもらうためには、個人での利用を増やす必要があります。また、施設予約・調整の手続や鍵の管理、休日における施設管理などにおいて、どうしても学校の先生に負担がかかってしまっています。さらに、費用面についても、施設利用料が破格の安さであることが多いため、運営する学校側も十分な予算を確保できていない現状があります。

手引きに明記された5つのポイント

こうした多くの課題を踏まえ、主に開放に取り組む自治体の担当者向けに、今回の手引きでは、以下の五つのポイントを明記しました。

1.学校体育施設をより広く利用してもらうための目的の明確化

2.安全・安心の確保

3.持続可能な仕組みづくり

4.利用しやすい環境づくり

5.新改築・改修時の留意点

1は、学校体育施設開放の目的です。学校だけでなく地域の幅広い関係者で目標を共有するため、まず目的を明確にした上で取り組んでいくことが大切です。学校体育施設は住民にとって最も身近なスポーツ施設であり、積極的に開放することで誰もが気軽にスポーツを楽しめる社会を作ることが期待されています。また、日頃から地域住民に広く利用してもらうことで、「地域の学校施設」としての意識が醸成され、児童生徒への好影響、地域社会との連携推進などにもつながります。開放によって何を目指しているかを関係者で共有して、具体的な取り組みを実行していくことが重要です。

2~4は、施設運営のソフト面にかかる課題解決に向けたポイントです。「2.安心・安全の確保」については、一般利用者と子供たちとの動線の分離などにより、児童・生徒の安全を確保するとともに、リスク分担など、体制を整備することを提案しています。

本手引きの肝ともいえる「3.持続可能な仕組みづくり」では、業務・事業としての明確化や、学校教育に支障ない範囲の指定管理などの工夫を明記しています。学校側の負担をできるだけ減らしていくため、例えば、学校や行政からの外部化、民間事業者が参画しやすい環境づくり、適切な料金体系の仕組みづくりなどです。

「4.利用しやすい環境づくり」については、利用日時や利用可能な対象者、実施可能な競技種目を広げるなど、多様なスポーツ活動のニーズに対応すること、予約管理システムなどICTを活用して利便性を向上させることを提案しています。

また、施設のハード面については、「5.新改築・改修時の留意点」として、主にバリアフリー化やユニバーサルデザイン化、PPP(※官民一体で連携して事業に取り組むこと)/PFI(※公共施設の整備・運営に民間の資金・ノウハウを活用すること)事業の導入といった内容をまとめました。

さらに、実際に開放に取り組む際に参考となる全国各地の好事例を巻末に掲載しています。

このように、学校開放に携わる方々に知っておいてほしい、ソフト・ハード両面の具体的な工夫が、本手引きには収められているのです。

学校体育施設の有効活用の好事例

ここで、学校体育施設開放の好事例を三つ紹介します。今年度から「学校体育施設の有効活用推進事業」で、持続可能な仕組みのモデル事例を実証実験を通じて構築しています。まず、この事業に採択されたものの中から二つの事例を紹介します。

一つ目は、長野県阿智村の総合型地域スポーツクラブ「チャレンジゆうAchi」の取り組み。このクラブでは、平日夕方1721時の時間帯で中学校の体育館の管理を受託しています。実は、もともと村内に公共スポーツ施設としての体育館がなかったため、中学校の体育館を建て替える際、一般開放しやすいように配慮して設計されているのです。現在は、クラブが開放の受付業務や村民向けのプログラムの提供を行っていて、村民の健康づくりの拠点として有効活用しています。さらに、今年度事業では、部活動終了後の中学生の活動を保障するために「阿智中クラブ」を開始し、野球、サッカー、バレー、卓球など様々なプログラムを提供しています。

二つ目は、沖縄県の民間企業「スポーツデータバンク沖縄」の取り組みです。こちらは、うるま市の学校を対象にして、ICTを利用した仕組みの実証実験をしました。具体的には、自動で施錠できる「スマートロック」を導入し、ウェブ上の予約管理システムをつくることで、学校開放において大きな課題であった鍵と予約の管理という業務を減らすことに成功したのです。これによって、運営側の負担が大きく削減されることになりました。

最後は、民間事業者の資金・ノウハウを活用して公共施設の整備・運営を行うPFI事業を導入した、調布市立調和小学校の事例です。こちらの小学校では、学校の屋内温水プールと体育館などの市民開放施設を併設した複合施設として整備。特に屋内温水プールについては、学校の授業で使用する以外の時間帯は、有料で市民に開放していて、団体利用と個人利用の双方が可能となっています。さらに、整備後の施設の維持管理業務も、引き続き民間事業者に委託して、学校の先生方の負担をなくしています。特に温水プールは、民間事業者の専門知識やノウハウを活用したことで、公共サービスの向上が図られているため、利用者の満足度が高く、年間37000~40000人の利用があるということです。さらに、PFI事業導入により、何と総事業費は削減されたとの報告もありました。

スポーツ庁では、来年度も引き続き「学校体育施設の有効活用推進事業」を実施し、モデル事例の構築を支援していきます。

まとめ

新型コロナウイルスの影響もあいまって、運動やスポーツをする大切さが見直されてきている昨今。こんないまだからこそ、全国各地にある学校体育施設をうまく活用することで、身近なスポーツの場を提供することがますます重要になります。学校側だけでなく、行政や民間事業者、地域住民が連携して、よりよい地域のスポーツ環境づくりができるよう、この手引きやモデル事例を参考に、取り組んでみてはいかがでしょうか。

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https://sports.go.jp/

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