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「文化芸術立国」の実現を目指して

文化庁

文化芸術は、豊かな人間性を育み、創造力と感性を育むなど、人間が人間らしく生きるための糧です。また、文化芸術は、それを通じてあらゆる人々が社会に参画することで、多様性を受け入れることができる心豊かな社会の形成に寄与するものであるほか、観光やまちづくり、産業等の関連分野において、新たな需要や高い付加価値を生み出し、質の高い経済活動等を実現するものであるなど、多様な価値を有しており、重要な役割を担っています。文化庁は、こうした文化の振興を図り、「文化芸術立国」の実現に向けて取り組みます。

新型コロナウイルス感染症の流行を踏まえた対応

新型コロナウイルス感染症の流行を踏まえ、文化芸術関係イベントの中止や開催方式の変更をはじめ、文化芸術活動は多大なる影響を受けてまいりました。

そのため、政府全体としての雇用維持等に向けた取組に加えて、持続化給付金、雇用調整助成金や中止等となった文化イベントのチケット代金の寄附に係る税制特例、税や社会保険料の猶予など、あらゆる手段で、文化事業の継続と雇用の維持を図ってまいりました。

加えて、文化庁においては、令和2年度第1次・第2次・第3次補正予算を活用し、文化施設の感染症対策、文化芸術団体の活動継続や収益力強化の取組、感染対策を十分に実施した上で行う積極的な公演への支援等を行ってまいりました。

引き続き、文化芸術活動の再開・継続・発展に向けて、あらゆる手段を通じて取り組んでまいります。

文化芸術推進基本計画(第一期)と文化庁予算と組織

1 文化芸術推進基本計画(第一期)について

政府は、文化芸術に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るため、改正文化芸術基本法に基づき、文化審議会や文化芸術推進会議等を経て「文化芸術推進基本計画」(以下「基本計画」)を定めています。

基本計画では、文化芸術が本質的価値に加え、社会的・経済的価値を有するものであることを明確化したほか、少子高齢化やグローバル化、高度情報化など変化する社会の要請に応じつつ、関連分野との連携を視野に入れた総合的な文化芸術政策の展開が求められていること、また、今後の文化芸術政策の目指すべき姿として次の四つの目標と、今後の5年間(平成30度から令和4年度)の文化芸術政策の基本的な方向性として六つの戦略を定めています。

関係府省庁をはじめ各関係機関との連携及び協働を図りながら、基本計画に基づき必要な取組を進めます。

2 文化庁予算及び組織について

令和3年度文化庁予算においては、舞台芸術などの文化芸術の創造活動や、文化芸術人材の育成及び子供たちの文化芸術体験の推進、災害等から文化財をまもるための防災対策や文化財の確実な継承に向けた保存・活用の促進、文化振興の拠点としての博物館活動や地域の文化観光の推進への支援など文化発信を支える基盤の整備・充実など、対前年度8億円増の1075億円を計上しています。

このほか、国際観光旅客税財源を活用し、「日本博」を契機とした観光コンテンツの拡充、文化財の多言語化や文化資源の高付加価値化など、文化資源の磨き上げによるインバウンドのための環境整備を行います。

加えて、令和3年1月には、令和2年度第3次補正予算が成立しており、コロナ禍における文化芸術活動支援や子供たちの実演芸術の鑑賞・体験等への支援をはじめ、ポストコロナに向けた経済構造の転換・好循環の実現に向けた取組や、文化財の防火・防災、修理・整備対策をはじめとする国土強靭きょうじん化や災害復旧に向けた取組を行ってまいります。

また、文化庁として新たな政策課題にスピード感をもって適切に対応していくため、博物館・美術館の活動支援体制の強化や食文化の推進に向けた体制整備を図ることとし、令和2年度から参事官(文化観光担当)及び参事官(食文化担当)を新設しました。

京都への本格移転に向けた取組

平成30年6月に「文部科学省設置法」等を改正し、その附帯決議において、「文化庁が京都への本格移転に向け、予定しているその効果及び影響の検証結果については、文化庁の京都移転が、政府関係機関の地方への移転の先行事例であることを踏まえ、適宜国会へ報告すること」とされたことを受け、令和元年度及び令和2年度には、臨時国会期間中に移転予定部署の職員が京都で執務を行うとともに、テレビ会議やウェブ会議等を活用し会議等への出席を行うなど、本格的な移転を見据えた業務のシミュレーションを行いました。

今までのシミュレーション等を通じて洗い出された課題については、文化庁を中心に関係府省庁が連携し、必要な対策を講じることにより、文化庁の京都移転が円滑に進められるように努めてまいります。

2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会に向けた文化プログラム

1 文化プログラムの展開について

2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会は、文化の祭典でもあり、魅力ある日本文化を世界に発信するとともに、地域の文化資源を掘り起こし、地方創生や観光振興の実現にもつなげる絶好の機会です。

このため、文化庁では、大会組織委員会や関係省庁、地方公共団体、民間団体等と連携しつつ、「日本博」をはじめとする文化プログラムを積極的に推進しています。また、全国各地の文化プログラム等の情報を広く収集し、インターネット上で管理・集約する「文化情報プラットフォーム」やその情報を基にした文化プログラム総合ポータルサイト「Culture NIPPON」の試験的な運用にも継続的に取り組んでいます。令和2年11月15日には、人気動画クリエイターが実際に文化プログラムを体験した動画を題材に、子供たちに文化プログラムの楽しみ方を伝えるシンポジウムを開催し、文化プログラムへの積極的な参加を呼びかけました。

2 「日本博」について

文化庁では、2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会を契機とする文化プログラムの中核的事業として、「日本博」を全国各地で展開しています。

「日本博」は、縄文時代から現代まで続く日本の美を各分野にわたって体系的に展開していく大型プロジェクトであり、「日本人と自然」という総合テーマの下に、各地域が誇る様々な文化資源を年間通じて体系的に創成・展開するとともに、国内外への戦略的プロモーションを推進し、文化による国家ブランディングの強化、インバウンド需要の回復や国内観光需要の一層の喚起を図ります。

舞台芸術活動等の推進

我が国の舞台芸術の水準を向上させるとともに、より多くの国民に対して優れた舞台芸術の鑑賞機会を提供するため、音楽、舞踊、演劇、伝統芸能、大衆芸能といった公演活動について支援を行っています。日本芸術文化振興会においては、新型コロナウイルス感染症の影響により活動自粛を余儀なくされた文化芸術関係団体等を支援するため、文化芸術復興創造基金を創設しています。また、我が国の優れた舞台芸術を世界に発信するための取組に対して支援を行うことで、国際発信力を強化し、国際文化交流を推進しています。このほか、芸術の創造と発展を図ることを目的として、「文化庁芸術祭」を毎年秋に開催しています。

さらに、次代の文化芸術を担う新進芸術家等に対し高度な技術・知識を習得させるための事業や文化の作り手と受け手をつなぐ役割を担うアートマネジメント人材を育成する事業のほか、若手芸術家が海外での実践的な研修に従事する機会を提供する等の人材育成に取り組んでいます。

メディア芸術の振興

1 アニメーション・漫画などのメディア芸術の振興

我が国のアニメーション、マンガ、ゲーム、メディアアート等のメディア芸術は、その作品を通じて広く国民に親しまれるとともに、海外で高く評価され、我が国への理解や関心を高めています。

これらのメディア芸術を一層振興するため、創作活動への支援、普及、人材育成などに重点を置いて、施策の充実を図ります。

具体的には、文化庁メディア芸術祭の開催を一つの柱として我が国の優れたメディア芸術作品を国内外に発信しています。また、優秀な若手クリエイターやアニメーターの育成支援等を通じ次世代を担う人材の育成に努めているほか、メディア芸術作品の収集・保存・活用の取組を推進しています。

2 日本映画の振興

映画は、演劇や音楽、美術等の諸芸術を含んだ総合芸術であり、国民の最も身近な娯楽の一つとして生活の中に定着している、国民的な芸術文化です。

文化庁では日本映画の振興のため、優れた日本映画の製作支援や撮影環境の充実等を通じて創造活動を促進するほか、国内外の映画祭等における積極的な発信・海外展開・人材交流を行うとともに、日本映画の魅力や多様性を強化し、その基盤を維持するため、映画に関わる人材育成を行っています。

子供たちの芸術教育の充実・文化芸術活動の推進

1 学校における芸術教育・文化部活動の充実

①学習指導要領の趣旨を踏まえた学校芸術教育の充実

これまで実施していた伝統音楽研修会に加え、令和元年度から新たに小・中・高等学校等で芸術系教科等を担当する教員等の研修会を実施し、学校における芸術教育の充実を図っています。

②子供たちの体験活動機会拡大のための取組

子供たちの豊かな創造力・想像力や思考力、コミュニケーション能力などを養うとともに、将来の芸術家や観客層を育成し、優れた文化芸術の創造につなげることを目的として、小学校・中学校等において、一流の文化芸術団体による実演芸術の巡回公演や、個人又は少人数の芸術家を派遣し、芸術家による計画的・継続的なワークショップ等を含めた質の高い文化芸術を鑑賞・体験する機会の確保を図っています。

③文化部活動の環境整備のための取組 

生徒のバランスの取れた生活や学校の働き方改革の観点から平成30年12月に策定した「文化部活動の在り方に関する総合的なガイドライン」に基づき持続可能な文化部活動にかかる取組を徹底するよう、地方公共団体、教育委員会及び学校法人等の学校設置者、学校並びに関係団体に求めています。

さらに、子供たちが身近な地域で学校の文化部活動に代わりうる継続的で質の高い多様な文化芸術活動の機会を確保できるよう、学校や地域が地域の文化施設や文化芸術団体、芸術系教育機関等との連携により、文化部活動の地域移行に向けた体制構築や持続可能な文化芸術活動の環境整備を行うためのモデル事業を実施します。

また、高校生の芸術文化活動の向上・充実と、相互交流を深めることを狙いとして、昭和52年から続く我が国最大規模の高校生の文化の祭典として、「全国高等学校総合文化祭」を開催しています。第45回となる令和3年度は、「届けよう和の心 若葉が奏でるハーモニー」を大会テーマとして、和歌山県において開催されます。

この大会において、演劇、日本音楽、郷土芸能の各部門で優秀な成績を収めた高校等が、東京の国立劇場に一堂に会し、演技・演奏を披露する「全国高等学校総合文化祭優秀校東京公演」を毎年夏に開催するほか、我が国の伝統文化の継承・発展に取り組む高校生が日頃の成果を披露し、交流する場となる全国高校生伝統文化フェスティバルを京都で開催しています。

2 子供たちの文化芸術活動の推進

子供たちが親とともに、民俗芸能、工芸技術、邦楽、日本舞踊、茶道、華道などの伝統文化・生活文化等を体験・修得できる機会を提供します。さらに、これまで体験機会のなかった地域の子供たちにも、地方公共団体が中心となり、地域の指導者等の協力により、体験活動機会の充実を図ります。

文化芸術による共生社会の実現

1 障害者等による文化芸術活動の推進

平成30年6月に「障害者による文化芸術活動の推進に関する法律」が施行されたことを受け、同法に基づく国の基本計画が平成31年3月に策定されました。この計画に基づき、障害者による文化芸術活動の推進に関する施策を総合的かつ計画的に実施しているところです。また、障害のある方々の優れた文化芸術活動の国内外での公演・展示の実施や助成採択した映画作品や劇場・音楽堂等において公演される実演芸術のバリアフリー字幕・音声ガイド制作への支援、特別支援学校の生徒による作品の展示や実演芸術の発表の場の提供等、障害者の文化芸術活動の充実に向けた支援に取り組んでいます。

さらに、国立美術館、国立博物館で、障害者手帳を持つ人について展覧会の入場料を無料としているほか、全国各地の劇場、コンサートホール、美術館、博物館等において、車いす使用者も利用ができるトイレやエレベーターの設置を行う等、障害のある方々に対する環境改善も進めています。

2 アイヌ文化の振興

令和2年7月12日、アイヌ文化の復興等に関するナショナルセンターとして、「アヌココㇿ アイヌ イコㇿマケンル(国立アイヌ民族博物館)」を中核施設とする「ウアイヌコㇿ コタン(民族共生象徴空間)」(愛称:ウポポイ)が北海道白老町に開業しました。

国立アイヌ民族博物館は、先住民族アイヌを主題とした我が国初の国立博物館であり、「私たちのことば」など「私たちの」で始まる六つのテーマで、アイヌの人々の視点から紹介する基本展示をはじめ、体験キットを手に取って理解を深める探究展示“テンパテンパ※”、高精細の映像が楽しめるシアター、テーマ展示や特別展示等を通して、アイヌの歴史や文化を総合的・一体的に紹介しています。

また、アイヌ語の振興の観点から、館内ではアイヌ語を第一言語とし、サインや展示解説等にアイヌ語を積極的に使用するとともに、最大8言語にも対応しています。(詳細はこちらを御覧ください。https://ainu-upopoy.jp/
※テンパテンパとは、「触ってね」という意味のアイヌ語)

地域における文化の振興

1 多様な文化を生かした地域づくり

文化芸術の持つ創造性を生かした地域振興、観光・産業振興等に取り組む地方公共団体を支援し、国全体が活性化するための基盤づくりや、地方公共団体が、地域住民や地域の芸・産学官と共に地域の文化芸術資源を活用した取組を支援しています。

国民文化祭は、地域の文化資源等の特色を生かし、一層の地域の文化の振興に寄与するため、観光をはじめとした様々な施策と有機的に連携した文化の祭典であり、文化庁と都道府県等との共催により昭和61年度から開催しています。令和3年度は、新型コロナウイルス感染症の影響により延期となった「第35回国民文化祭・みやざき2020」が夏から宮崎県において開催されるとともに、「山青し 海青し 文化は輝く」をキャッチフレーズに、「第36回国民文化祭・わかやま2021」が秋から和歌山県において開催されます。

さらに、訪日外国人の増加や活力ある豊かな地域社会を実現するため、芸術祭等を中核として観光、まちづくり、国際交流、福祉、教育、産業その他の関連分野と有機的に連携した国際発信力のある拠点形成の取組を支援し、全国各地の多様で豊かな文化を国内外へ発信しています。

2 生活文化等の振興・普及

生活文化・国民娯楽は、我が国の文化芸術に広がりを与え、また、それを支えるものとして機能しています。和装や茶道、食文化など外国人がイメージする日本文化として我が国の魅力を高めるとともに、観光振興や国際交流の推進等にも極めて重要な役割を果たしています。文化庁では、これら生活文化の振興を図るため、生活文化の各分野についての調査を進めています。また、従来とは異なるアプローチによる事業を行うなど、分野の活性化や魅力の向上を図っています。

また、令和3年度から、各地の食文化振興の取組(郷土食等の調査、継承、発信等)を支援するモデル事業を開始するとともに、文化財保護法に基づく保存・活用を推進します。

文化財の保存と継承

1 文化財保護制度の改革

過疎化や少子高齢化等による担い手不足や新型コロナウイルス感染症の感染拡大による無形の文化財への影響を背景として、令和2年10月より文化審議会文化財分科会企画調査会を開催し、令和3年1月に報告書「企画調査会報告書~無形文化財及び無形の民俗文化財の創設に向けて~」が取りまとめられました。

同報告書では、

①我が国から22件がユネスコ無形文化遺産の代表一覧表に登録されていることや、各地域で、地域の祭りなどが地域文化の特色として捉え直されるなど、無形の文化財の継承に対する認識が高まっていることに加えて、コロナ禍により、公演、行事や日常的な教授活動を通じた継承が十分に行われないおそれのある危機的状況であることから、登録無形文化財制度及び登録無形民俗文化財制度を新たに創設すること

②文化財保存活用地域計画の策定等の過程で新たに把握される未指定の文化財について、地方公共団体が積極的に保存・活用を進められるようにするため、文化財保護法上の制度として地方登録制度を位置づけ、地方の創意により活用することができるようにすること

などが提言されています。(詳細はこちらを御覧ください:https://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkashingikai/bunkazai/kikaku/r02/index.html

本報告書を踏まえ、登録無形文化財制度及び登録無形民俗文化財制度の創設と地方登録制度の法制化を柱とする「文化財保護法の一部を改正する法律案」が令和3年2月5日に閣議決定・国会提出され、国会における審議を経て、同年4月16日に成立しました。(詳細はこちらを御覧ください:https://www.mext.go.jp/b_menu/houan/an/dedeta/mext_00010.html

2 地域における文化財の保存・活用

平成30年の文化財保護法の改正により、文化財をまちづくりに生かしつつ、地域社会総がかりでその継承に取り組んでいくため、都道府県における文化財保存活用大綱(以下「大綱」という。)と、市町村における文化財保存活用地域計画(以下「地域計画」という。)の制度が規定されました。大綱は、域内の文化財の保存・活用に係る基本的な方針、広域区域ごとの取組、災害発生時の対応等を記載した文化財の保存・活用に関する総合的な施策を盛り込むものであり、令和3年2月末現在、20道府県で策定されています。市町村の地域計画は、できる限り域内の文化財を網羅的に把握した上で、域内の文化財の保存及び活用に関する基本的な方針、保存・活用のために市町村が講ずる措置の内容等を記載するものであり、作成した地域計画が国の認定を受けた場合、国に対して登録文化財とすべき物件を提案できる特例があります。また、国指定等文化財の現状変更の許可等、文化庁長官の権限である一部の事務について、現在移譲されている都道府県・市のみならず認定町村でも特例的に自ら事務を実施できることとしています。令和3年2月末現在、23市町で策定され、国の認定を受けています。今後、この大綱及び地域計画の策定は多くの地方公共団体で進んでいくことが見込まれており、これらのプロセスを通じて、各地域において、貴重な地域の文化財を確実に把握し、地域において守り育てる取組が進むことが期待されます。

このような地域社会総がかりでの文化財の保存・活用の取組を促進するため、令和3年度より新たな事業として「地域文化財総合活用推進事業(地域のシンボル整備等)」を設け、地域計画等に基づき地域の核(シンボル)となっている国登録文化財を戦略的に活用するための機能を維持したり、保存・活用を行う団体の取組等を支援する地方公共団体を後押しすることとしています。

3 文化財の指定をはじめとする保存・継承のための取組

文化財保護法に基づき、重要文化財、重要無形文化財、重要有形・無形民俗文化財、史跡・名勝・天然記念物、重要文化的景観、重要伝統的建造物群等を指定・選定し、重点的に保護するとともに、登録制度による緩やかな保護制度により、多種多様な文化財の保存・活用を図っています。さらに、文化財の保存のために欠くことのできない伝統的な技術・技能のうち、保存の措置を講ずる必要のあるものを選定保存技術として選定するとともに、その保持者・保存団体を認定しています。

また、これらの文化財について、保存と活用を図るために所有者、管理団体等が実施する事業に対して補助を行い、保存整備や活用等を引き続き推進します。

あわせて、国民の財産である文化財の散逸・滅失を未然に防ぐとともに、国民の鑑賞機会の充実を図るため、国による適切な保存・活用が必要な国宝・重要文化財等の買上げを実施するとともに、貴重な史跡等を国民共有の財産として大切に保存し、その後の整備・活用に対応することを目的として、地方公共団体が緊急に史跡等を公有化する事業に対し補助を行います。

東日本大震災や平成28年熊本地震等の大規模災害への対応として、被害を受けた国指定等文化財について、早期の保存・修復を図るため、文化財の所有者等が実施する被災文化財の復旧事業に対する指導、経費の補助など、必要な措置を講じます。

4 埋蔵文化財の保護

土地に埋蔵された文化財を保護するため、文化財保護法に基づき、開発等により破壊されるおそれのある遺構等の発掘調査、記録作成等の事業に対し、補助を行っています。また、水中に存在する埋蔵文化財(水中遺跡)の保護体制の整備充実を図るため、地方公共団体が水中遺跡の保存活用を円滑に推進するための『発掘調査のてびき−水中遺跡調査編−』(仮称)の作成を進めます。

加えて、地域の特色ある埋蔵文化財活用事業により、埋蔵文化財を活用した体験学習会等の実施による理解促進・普及啓発や、埋蔵文化財の保管・展示や活動拠点のための施設として、廃校等を転用した埋運用を図ることによって、地域活性化を促進します。

5 古墳壁画の保存と活用

我が国では2例しか確認されていない極彩色古墳壁画である高松塚古墳及びキトラ古墳の両古墳壁画は、「国宝高松塚古墳壁画仮設修理施設」及び「キトラ古墳壁画保存管理施設」で保存管理・活用等が行われています。

国宝高松塚古墳壁画は、石室を解体して壁画を修理する保存方針に基づき、仮設修理施設において令和元年度まで保存修理作業等を実施してきました。引き続き壁画の保存管理を行いながら、施設内に保管している壁画の公開を実施するとともに、恒久的な保存管理施設の設置に向け検討を進めます。

また、特別史跡キトラ古墳の恒久的な保存と確実な継承のため、平成28年秋にオープンした「キトラ古墳壁画体験館 四神の館」において、石室から取り外した国宝キトラ古墳壁画の保存と活用を推進し、整備された古墳の公開を進めます。

6 世界文化遺産と無形文化遺産

我が国を代表する文化遺産を、ユネスコの世界遺産一覧表に記載し、保護することにより、我が国の文化の世界への発信や、国民の歴史と文化を尊ぶ心のかん養を図ります。令和元年7月には、「百舌鳥・古市古墳群−古代日本の墳墓群−」が世界遺産一覧表に記載され、現在は「北海道・北東北の縄文遺跡群」を推薦しています。引き続き、一覧表に記載された世界遺産を適切に保護するとともに、我が国の誇る貴重な文化遺産の世界遺産一覧表への記載を推進します。

また、ユネスコの無形文化遺産代表一覧表への記載を通じ、我が国の無形文化遺産の多様性や豊かさ、保護の取組について世界に発信していくことも、国際的な無形文化遺産の一層の認知やその重要性に関する意識の向上等への貢献となり、同時に、国内外の無形文化遺産の担い手間の対話や交流を深めるきっかけとしても重要です。令和2年12月には、「伝統建築工匠の技:木造建造物を受け継ぐための技」が無形文化遺産の代表一覧表に記載されました。また、次の記載候補として、令和3年3月に「風流ふりゅう おどり」を提案しています。引き続き、我が国の無形文化遺産を適切に保護・振興するとともにユネスコ無形文化遺産への記載を推進します。

7 文化財の防火対策

ノートルダム大聖堂や首里城跡における火災を受け、令和元年に国宝・重要文化財の管理状況等の現状を把握するため調査を実施しました。調査の結果、消火設備の老朽化による機能低下の恐れ等が明らかになりました。調査結果を踏まえ、文化財の総合的な防火対策の検討・実施に資するよう国宝・重要文化財(建造物)及び国宝・重要文化財(美術工芸品)を保管する博物館等の防火対策ガイドラインを作成し、加えて、世界遺産や国宝を対象とし総合的・計画的に防火対策を重点的に進めるため、「世界遺産・国宝等における防火対策5か年計画」(令和元年12月23日大臣決定)を策定しました。また、消防庁においても「国宝・重要文化財(建造物)等に対応した防火訓練マニュアル」が作成されました。当マニュアルを活用した訓練や5か年計画に基づく防災施設の整備を行い、文化財の防火対策を進めています。

文化財をはじめとする文化資源を活用した付加価値の創出

1 文化資源を活用したインバウンドのための環境整備

平成28年に策定された「明日の日本を支える観光ビジョン」において掲げられた「文化財の観光資源としての開花」を推進するため、文化庁では文化財を中核とする観光拠点の整備、並びに当該拠点等において実施される文化財等の観光資源としての魅力を向上させる取組への支援を行っています。

平成31年1月より、国際観光旅客税が創設され、観光先進国実現に向けた観光基盤の拡充・強化が推進されています。

文化財についても地域固有の文化資源として、国内外問わず多くの人々にその歴史的価値・魅力を発信すべく、国際観光旅客税を充当し、文化財に新たな付加価値を付与してより魅力的なものとなるよう「磨き上げ」る取組を支援します。

文化観光の推進

1 文化観光推進法について

文化の振興を起点として、観光の振興及び地域の活性化の好循環を創出するためには、地域において文化の理解を深めることができる機会を拡大し、これにより国内外からの観光旅客の来訪を促進していくことが重要となっています。こうした観点から、博物館等の文化施設を拠点として、地域の文化観光を推進するため、「文化観光拠点施設を中核とした地域における文化観光の推進に関する法律」が令和2年4月17日に公布され、同年5月1日に施行しました。令和3年4月現在、本法に基づき、25件の拠点計画・地域計画を認定しており、本法を活用し、文化資源の魅力向上とともに、文化施設の機能強化や地域が一体となった文化観光の推進を図ることとしています。

2 日本遺産の磨き上げ・魅力発信

我が国の文化財や伝統文化を通じた地域の活性化を図るためには、その歴史的経緯や、地域の風土に根差した世代を超えて受け継がれている伝承、風習などを踏まえたストーリーの下に有形・無形の文化財をパッケージ化し、これらの活用を図る中で、情報発信や人材育成、環境整備等の取組を進めていくことが必要です。

地域の歴史的魅力や特色を通じて我が国の文化・伝統を語るストーリーを「日本遺産(JapanHeritage)」に、日本遺産として認定する候補となり得る地域を「候補地域」に、それぞれ認定し、歴史的魅力にあふれた文化財群を地域主体で総合的に整備・活用し、国内外に戦略的に発信する取組を促進することにより、地域の活性化・観光振興を図ります。

令和3年4月現在、全国で104のストーリーを日本遺産に認定しており、日本遺産を通じた地域活性化・観光振興に資する情報発信や人材育成、普及啓発、活用整備に係る事業等に対して支援を行っています。

文化芸術によるイノベーションの創出、国家ブランドの構築

1 文化経済戦略の推進

国・地方公共団体・企業・個人が文化への戦略的投資を拡大し、文化を起点に産業等他分野と連携し、創出された新たな価値が文化に再投資され、持続的に発展する「文化と経済の好循環」を目指し、平成29年12月に「文化経済戦略」を策定しました。この戦略推進のための主要施策の内容や目標等を明らかにした「文化経済戦略アクションプラン」を平成30年8月に策定し、関係府省庁と緊密に連携しながら文化経済戦略を推進します。

また、近年、興行入場券の高額転売が社会問題となっていることを踏まえ、興行入場券の適正な流通を確保し、もって興行の振興を通じた文化及びスポーツの振興並びに国民の消費生活の安定等を目的とした「特定興行入場券の不正転売の禁止等による興行入場券の適正な流通の確保に関する法律」が平成30年12月に成立し、令和元年6月14日から施行されました。引き続き、本法律の適切な運用を図るため、国民への周知等を行い、興行を通じた文化及びスポーツの振興を推進します。

2 企業等による芸術文化活動への支援

我が国における文化芸術活動を振興するために、日本作家及び現代日本アートの国際的な評価を高め、世界のアート市場規模に比して小規模にとどまっている我が国アート市場の活性化と我が国アートの持続的発展を可能とするシステムを形成します。

あわせて、公益社団法人企業メセナ協議会との連携の下、同協議会が主催する「メセナアワード」の一環として、「文化庁長官賞」を設け、企業や企業財団による優れたメセナ(芸術・文化振興による社会創造)活動の顕彰を行っています。

3 国際文化交流・協力の推進と日本文化の発信

国際文化交流・協力を推進するとともに、日本文化を戦略的に発信し、文化芸術を通じた諸外国との相互理解の促進及び国家ブランド構築への貢献を図ります。具体的には、我が国の芸術団体と外国の芸術団体との国際共同制作公演、我が国で開催される国際発信力のあるフェスティバル、海外で開催されるフェスティバルへの参加公演や国際展への出展、映画、メディア芸術の海外展開などを支援します。また、「国際文化交流に祭典の実施の推進に関する法律」に基づき、平成31年3月に閣議決定された「国際文化交流の祭典の推進に関する基本計画」を踏まえ、日本で行われる世界の関心を集める国際文化交流の祭典の実施を推進します。

さらに、日本の第一線で活躍する文化人、芸術家等を「文化交流使」として派遣し、日本の優れた芸術文化を広く世界に発信します。また、日中韓やASEAN+3といった枠組みでの文化に関する国際的な閣僚級会合への積極的な参加を通じて、文化面での日本のプレゼンス向上を目指します。特に日中韓文化大臣会合の下では、3か国から毎年都市を選定し、様々な文化芸術イベントを通じて都市間で交流を行う「東アジア文化都市」事業等の実施を通じて、東アジア諸国との交流の拡大に努めます。

その他、国内のアーティスト・イン・レジデンス実施団体が行う国内外芸術家の滞在型創作活動等を支援することにより、海外のアーティスト・イン・レジデンス実施団体との国際的な協力関係を活発にし、ICT等も活用して双方向の国際文化交流を促進します。

また、我が国の技術や知見を生かした文化遺産国際協力を推進し、人類共通の財産である世界各地の文化遺産の保護に貢献します。

博物館・劇場等の振興

1 博物館の振興

博物館は、歴史・芸術・民俗・産業・自然科学等に関する資料の収集、保管、展示、調査研究、教育普及等の本来の役割や機能に加え、観光・まちづくり・教育等の関連分野との有機的な連携を図りつつ、地域の文化振興の拠点となることが期待されています。

令和元年9月にはICOM(国際博物館会議)京都大会2019が開催され、大会史上最高となる4、590名の参加者により多角的な議論がなされました。文化庁は博物館全体を所管する立場から、こうした国際的な議論も反映しながら博物館のさらなる振興を図るべく、同年11月、文化審議会博物館部会を新設しました。今後も博物館に関する継続的かつ総合的な議論を進めていきます。

① 博物館への支援

博物館職員の資質向上を図り、博物館活動を充実させるため、学芸員の資格認定試験や、博物館長及び学芸員等を対象とした専門的な研修等や博物館等を中核とした文化拠点創出に向けた地域文化資源の面的・一体的整備、国際交流、地域へのアウトリーチ活動、人材育成等、博物館を活用・強化する取組を行います。

② 国立館における取組

国立美術館・博物館は、今般の新型コロナウイルスの影響を踏まえ、各館の取組をオンラインで配信する等、来館できない方にも展示やイベント等を楽しんでもらえるよう取組を進めています。また、文化資源の積極的な活用を図り、国内外の幅広い来訪者にその魅力を分かりやすく紹介するため、ICTの活用等による新たな観覧・鑑賞環境の充実に取り組みます。

③ (独)国立美術館について

独立行政法人国立美術館は、6館(東京国立近代美術館、京都国立近代美術館、国立映画アーカイブ、国立西洋美術館、国立国際美術館、国立新美術館)が、それぞれの特色を生かしつつ、連携・協力し、国民のニーズや研究成果を踏まえ、魅力ある質の高い所蔵作品展、企画展及び企画上映を実施しています。

また、美術作品の収集・保管、教育普及活動やこれらに関する調査研究等を通じ、我が国の美術振興の拠点として、国内外の研究者との交流、学芸員等の資質向上のための研修、公私立美術館への助言、地方への巡回展などを行います。

④ (独)国立文化財機構について

独立行政法人国立文化財機構は、国立博物館4館(東京・京都・奈良・九州)を設置し、貴重な国民的財産である文化財の保存と活用を図ることを目的とし、有形文化財を収集・保管して広く観覧に供するとともに、東京文化財研究所、奈良文化財研究所、アジア太平洋無形文化遺産研究センターを加えた7施設において調査・研究などを行っています。同機構では、国宝・重要文化財を含めて約13万件の文化財を所蔵しています。これらの文化財を活用した平常展、企画展などとともに、平成30年7月に開設した文化財活用センターでの新たなコンテンツや教育プログラム開発・提供等の取組を通じて日本の歴史・伝統文化や東洋文化の魅力を国内外に発信する拠点としての役割も担っています。なお、同機構は、令和2年10月に文化財防災センターを設置し、各種災害に対する多様な文化財の防災・救援のため、連携・協力体制を構築するとともに、救援及び収蔵・展示における技術開発や普及啓発事業等を行っています。

⑤ (独)国立科学博物館について

独立行政法人国立科学博物館は、科学系博物館のナショナルセンターとして、自然史・科学技術史に関する調査研究、ナショナルコレクションとしての標本資料の構築・継承を行うとともに、それらの成果を活かした展示や学習支援活動を行っています。上野地区(上野本館)、筑波地区(筑波実験植物園、筑波研究施設)、白金台地区(附属自然教育園)の3地区で活動を展開し、国民の自然科学や科学技術に関する理解の増進に努めています。また、平成31年4月に科学系博物館イノベーションセンターを設置し、同法人の有するコレクション等を有効活用するとともに、地域振興にも貢献するなど、新たな事業を実施しています。

⑥ 国立近現代建築資料館について

国立近現代建築資料館では、我が国の近現代建築資料における劣化、散逸、海外流出防止を目的として、情報収集、資料の収集・保管及び調査研究を行っています。あわせて、展覧会の開催を通じて、我が国の建築文化に対する国民への理解増進を図っています。
(詳細は、こちらを御覧ください。https://nama.bunka.go.jp/

2 劇場・音楽堂等の振興

① 劇場・音楽堂等の活性化

「劇場、音楽堂等の活性化に関する法律(平成24年6月公布・施行)」を踏まえ、我が国の文化拠点である劇場・音楽堂等が行う、音楽、舞踊、演劇等の実演芸術の創造発信や専門的人材の養成、普及啓発のための事業、劇場・音楽堂等間のネットワーク形成に資する事業やバリアフリー・多言語対応の整備を支援することで、劇場・音楽堂等が地域の核として文化の発信を牽引けんいんすることを目指しています。

② 国立の劇場における取組

国立劇場(国立劇場、国立演芸場、国立能楽堂、国立文楽劇場及び国立劇場おきなわ)は、伝統芸能の保存と振興を図るため、歌舞伎、文楽、能楽、大衆芸能、組踊などの伝統芸能を、各種の演出や技法を尊重しながら、できる限り古典伝承のままの姿で公開し、国民が伝統芸能を鑑賞する機会を提供しています。また、伝統芸能の伝承者養成や調査研究等の事業を実施しています。

新国立劇場は、現代舞台芸術の振興と普及を図るため、国際的に比肩しうる高い水準のオペラ、バレエ、ダンス、演劇などの自主制作の公演を行い、国民が現代舞台芸術を鑑賞する機会を提供しています。また、現代舞台芸術の実演家等の研修や調査研究等の事業を実施しています。

これらの劇場の運営は、独立行政法人日本芸術文化振興会が行っており、舞台芸術を振興する多様な活動を展開しています。

社会の変化に対応した国語・日本語教育に関する施策の推進

1 国語施策の推進

国語に関する問題は、文化審議会国語分科会(前身は国語審議会)が中心となって検討を行い、様々な改善を図っています。具体的には、国語の表記に関して、一般の社会生活における「目安」又は「よりどころ」として、「常用漢字表」「現代仮名遣い」「外来語の表記」などを制定してきました。最近では、平成26年2月に「「異字同訓」の漢字の使い分け例(報告)」、28年2月に「常用漢字表の字体・字形に関する指針(報告)」、30年3月に「分かり合うための言語コミュニケーション(報告)」をまとめています。また、30年11月には、「「障害」の表記に関するこれまでの考え方(国語分科会確認事項)」を確認し、令和3年3月に「新しい「公用文作成の要領」に向けて(報告)」と「「障害」の表記に関する国語分科会の考え方」をまとめています。今期は、今後検討すべき国語施策上の問題を整理していきます。

また、国民全体の国語に対する関心と理解を深めるため、「国語問題研究協議会」の開催や「国語に関する世論調査」の実施、加えて、文化庁ウェブサイト上で「国語施策情報」、文化審議会答申「敬語の指針」に基づく動画「敬語おもしろ相談室」、「国語に関する世論調査」に基づく動画「ことば食堂へようこそ!」の公開など、必要な施策に取り組んでいます。

さらに、平成21年2月にユネスコが消滅の危機にあると発表した、国内のアイヌ語など八つの言語・方言及び東日本大震災の影響が懸念される被災地の方言の実態把握と保存・継承のための調査研究や、その支援を行っています。令和3年度も引き続き、調査データが不十分な地域の方言調査をはじめ、危機言語・方言を抱える地域相互と研究者の連携を図るための協議会や危機言語・方言の状況とそれらの価値を認識する場としてのサミットの開催、被災地方言の保存・継承のための取組支援、加えてアイヌ語のアナログ音声資料のデジタル化やアーカイブ作成支援、アーカイブ作成推進のための人材育成、民族共生象徴空間でのアイヌ語体験プログラムの更新を進めていきます。

2 外国人に対する日本語教育施策の推進

日本語教育の推進は、我が国に居住する外国人が日常生活及び社会生活を国民と共に円滑に営むことができる環境整備に資するとともに、我が国に対する各国・地域の理解と関心を深める上で重要です。日本語教育の推進に関する法律に基づき、令和2年6月に閣議決定された「日本語教育の推進に関する施策を総合的かつ効果的に推進するための基本的な方針」も踏まえ、様々な取組を行っています。

具体的には、文化審議会国語分科会に日本語教育小委員会を設置し、日本語教育に関する様々な課題について検討を行っています。近年では、日本語教育が必要な外国人等の日本語教育に関わる日本語教育人材を日本語教師・日本語教育コーディネーター・日本語学習支援者に整理し、その役割・段階・活動分野に応じて求められる資質・能力及び養成・研修における教育内容やモデルカリキュラムを示した「日本語教育人材の養成・研修の在り方について」(報告)改定版を平成31年3月に示すとともに、この報告を踏まえ、日本語教育能力の判定について審議を行い、令和2年3月に「日本語教育の資格の在り方について」(報告)を取りまとめました。

現在、日本語の習得段階に応じて求められる日本語教育の内容・方法を明らかにし、外国人等が適切な日本語教育を継続的に受けられるようにするため、日本語教育に関わる全ての者が参照できる日本語学習、教授、評価のための枠組みである「日本語教育の参照枠」の作成に向けた検討を行っています。

日本で生活する外国人の日本語教育環境を整備するため、地域の実情に応じた日本語教育の実施等を支援する「生活者としての外国人」のための日本語教育事業を実施するとともに、地域日本語教育の総合的な体制づくり推進事業を実施し、都道府県や政令指定都市が関係機関等と有機的に連携し、日本語教育環境を強化するための総合的な体制づくりを支援しています。

また、日本語教室が設置されていない地方公共団体にアドバイザーを派遣し、日本語教室の開設を支援するほか、日本語教室の設置が難しい地域に住む外国人等に対して日本語学習サイト「つながるひろがる にほんごでのくらし」(令和2年6月公開)の提供などを行う「「生活者としての外国人」のための日本語教室空白地域解消推進事業」を実施し地域の日本語教育を推進しています。

このほか「日本語教育人材養成・研修カリキュラム等開発・活用事業」を実施し、日本語教育に携わる人材の資質・能力の向上を図るとともに、多様な活動分野における日本語教育人材の育成と研修の担い手の育成を推進しています。

これら事業における取組の優れた実践事例等については、文化庁日本語教育大会などを通じ、周知・広報に努めています。加えて、日本語教育関係機関が作成・開発し、公表している日本語教育に関する各種コンテンツ(教材、カリキュラム、報告書等)に関する情報を横断的に検索できるシステム「日本語教育コンテンツ共有システム(NEWS)」を運用しています。このほか、難民に対する日本語教育、日本語教育に関する調査・調査研究等の取組を行います。

新しい時代に対応した著作権施策の展開

今日、デジタル・ネットワークの発達に伴い、著作物等の創作、流通及び利用をめぐる状況は急速に変化しており、時代のニーズに対応した制度や環境整備が求められています。

1 令和3年著作権法改正案(令和3年3月5日閣議決定)

令和3年3月5日に「著作権法の一部を改正する法律案」が閣議決定され、第204回通常国会に提出されました。本法律案に関する検討経緯や主な内容は以下の通りです。

① 図書館関係の権利制限規定の見直し(デジタル・ネットワーク対応)

図書館関係の権利制限規定については、従来から、デジタル化・ネットワーク化に対応できていない部分があるとの指摘がなされてきたところ、新型コロナウイルス感染症の流行に伴う図書館の休館等により、インターネットを通じた図書館資料へのアクセスに係るニーズが顕在化しました。これを受け、令和2年8月以降、文化審議会著作権分科会において、議論が行われ、最終的には、令和3年2月3日付での報告書が取りまとめられました。

これを受け、本法律案では、(1)絶版等資料(絶版等により一般に入手困難な資料)について、国立国会図書館が事前登録した利用者に対して、直接インターネット送信できるようにし、また、利用者側では、自分で利用するために必要な複製(プリントアウト)や、非営利・無料等の要件の下での公の伝達(ディスプレイなどを用いて公衆に見せること)をできることとしています。また、(2)一般の図書館資料について、権利者保護のための厳格な要件設定や補償金の支払いを前提に、国立国会図書館や公共図書館、大学図書館等が著作物の一部分のメール送信等を実施できることとしています。

② 放送番組のインターネット同時配信等に係る権利処理の円滑化

放送番組のインターネットでの同時配信等は、高品質なコンテンツの視聴機会を拡大させるものであり、視聴者の利便性向上やコンテンツ産業の振興・国際競争力の確保等の観点から非常に重要な取組です。そこで、令和2年8月末に総務省において取りまとめられた放送業界の要望をもとに、同年9月以降、文化審議会著作権分科会において議論が行われ、最終的には、令和3年2月3日付で報告書が取りまとめられました。

これを受け、本法律案では、①権利制限規定の同時配信等への拡充、②許諾推定規定の創設、③同時配信等に係るレコード・レコード実演の利用円滑化、④リピート放送の同時配信等に係る映像実演の利用円滑化、⑤裁定制度の改善という5点の措置を講ずることとしています。これにより、放送事業者の有する権利処理に係る様々な課題が総合的に解決され、視聴者・放送事業者・クリエイターの全てにとって利益となることが期待されます。

本法律案が国会で成立した場合、上記①(1)の改正事項は公布後1年以内で政令で定める日から、上記①(2)の改正事項は公布後2年以内で政令で定める日から、上記②の改正事項は令和4年1月1日から、それぞれ施行されることとなります。

2 海賊版対策を中心とした令和2年著作権法改正

令和2年通常国会において「著作権法及びプログラムの著作物に係る登録の特例に関する法律の一部を改正する法律」が成立し、令和2年6月12日に公布されました。

本法律は、昨今、深刻化している海賊版被害に対応するため、ユーザーを海賊版に誘導するリーチサイト等や海賊版のダウンロードに対する規制をはじめとした著作権等の適切な保護を図るための措置や、著作物等の利用の円滑化を図るための措置を講ずるものです。

まず、リーチサイト対策については、令和2年10月1日から施行され、侵害コンテンツへのリンク情報等を集約してユーザーを侵害コンテンツに誘導するリーチサイト等における侵害コンテンツへのリンク提供を著作権侵害とみなし、民事措置及び刑事罰の対象とするとともに、サイト運営者等に刑事罰を科すことになっています。

次に、侵害コンテンツのダウンロード違法化については、令和3年1月1日から施行され、ダウンロード規制の対象を音楽・映像から著作物全般に拡大し、侵害コンテンツと知りながらダウンロードする行為について、一定の要件の下で、私的使用目的であっても違法とするものです。その際、「海賊版対策としての実効性確保」と「国民の正当な情報収集等の萎縮防止」のバランスを図る観点から、一定の要件を付加する改正をしています。具体的には、①スクリーンショットの際の写り込み、②漫画の1コマ~数コマなどの軽微なもの、③二次創作・パロディや④「著作権者の利益を不当に害しないと認められる特別な事情がある場合」のダウンロードを規制の対象外とします。刑事罰については、さらに、正規版が有償で提供されている場合、反復・継続して行う場合に限定し、親告罪としています。また、附則に運用上の配慮規定などを設けています。

そして、国及び地方公共団体は、改正法附則第2条に基づき、未成年者を含む国民が侵害コンテンツのダウンロードの防止の重要性に対する理解を深めることができるよう、普及啓発・教育の充実を図る必要があるとされたところ、文化庁では、法改正のポイントを分かりやすく解説したリーフレットや、詳細なQ&A、著作権広報大使である「ハローキティ」を活用した啓発動画等を作成・公表しています(https://www.bunka.go.jp/seisaku/chosakuken/hokaisei/92735201.html)。これらも活用しつつ、引き続き、様々な機会を通じて重点的に周知等を行ってまいります。

このほかに、写り込みに係る権利制限規定の対象範囲の拡大、行政手続に係る権利制限規定の整備、著作物を利用する権利に関する対抗制度の導入、著作権侵害訴訟における証拠収集手続の強化、アクセスコントロールに関する保護の強化及びプログラムの著作物に係る登録制度の整備等を行っています。

3 「授業目的公衆送信補償金制度」の本格実施

文部科学省のGIGAスクール構想の推進や、世界中を混乱に陥れた新型コロナウイルス感染症の影響により、オンラインにおける教育活動が進んできています。こうした中、教育のデジタル・トランスフォーメーションを加速する著作権制度として、平成30年の著作権法改正で創設された「授業目的公衆送信補償金制度」が、令和2年4月28日から施行されました。本制度の施行前においては、学校等の授業の過程における資料等のインターネット送信については、個別に著作権者から許諾を得る必要がありました。本制度の施行により、地方公共団体や学校法人等の教育機関の設置者が文化庁長官の指定管理団体である「一般社団法人授業目的公衆送信補償金等管理協会(サートラス)」に対し一括して補償金を支払うことにより、教育現場において個別の許諾を要することなく、授業の過程において必要な限度で、様々な著作物をより円滑に利用できることとなりました。令和3年度からの補償金額(年間包括契約)は、児童生徒等一人あたり小学校120円、中学校180円、高等学校420円などとなっています。また本制度の創設を契機に設立された、教育関係団体と権利者団体等で構成される「著作物の教育利用に関する関係者フォーラム」が新制度に関する運用指針を策定し、公表しています。詳しい制度の内容や補償金の額、運用指針については以下の参考を御参照ください。

【参考】文化庁 授業目的公衆送信補償金の額の認可について
https://www.bunka.go.jp/seisaku/chosakuken/92728101.html

【参考】著作物の教育利用に関する関係者フォーラム 「改正著作権法第35条運用指針(令和3(2021)年度版)」を公表
https://forum.sartras.or.jp/info/005/

4 著作権の円滑な流通の促進

インターネットの普及は、著作物のデジタル化とあいまって、著作物の流通形態を劇的に変化させています。このような状況の中で、著作物の流通促進の観点から、次の施策を行っています。

① 「著作権等管理事業法」の的確な運用

著作権等の管理については、著作物等の利用者の便宜を図るとともに、権利行使の実効性を高めるため、著作物等を集中的に管理する方式が普及しています。

文化庁では、これらの事業を行う「著作権等管理事業者」に対して、「著作権等管理事業法」に基づき、年度ごとの事業報告の徴収や立入検査などを行い、適切に事業が行われるよう指導監督を行っています(登録事業者数:29事業者〈令和3年3月1日現在〉)。

② 「裁定制度」の運用と利用円滑化に向けた取組

著作権者等の所在が不明の場合に著作物等を適法に利用するための「裁定制度」の運用を行います。令和2年度は書籍における著作物など約1700点の著作物等の利用について裁定を行い、また、裁定制度の利用円滑化の観点から、利用者が著作物を利用開始できるまでに要する期間を1週間程度短縮するなど、制度の見直しを行いました(令和3年度から運用開始)。(詳細はこちらを御覧ください。http://www.bunka.go.jp/seisaku/chosakuken/seidokaisetsu/chosakukensha_fumei/index.html)なお、後述の「オーファンワークス」対策事業においても、制度の利用円滑化に向けた取組を行っています。

③ 「オーファンワークス」対策事業

近年のデジタル・ネットワーク化の進展により、著作物等の創作・流通・利用に係るコストが大きく低下し、著作物の創作主体等が多様化したことから、権利者の所在不明の著作物等(オーファンワークス)が増加し、著作物を適法に利用できない場面が生じています。この課題解決に向けて、以下の取組を実施しています。

(ア)オーファン化防止対策:音楽分野の権利情報を基本データベースに一元的に集約する取組を進めることにより、オーファンワークスが生じない環境を整備します。

(イ)オーファンワークスに関わる許諾環境の整備:著作物の創作又は利用を職業としない人でも簡単に契約書を作成できるよう、契約書のひな形を半自動作成するシステムの構築を行います。

(ウ)「裁定制度」の利用円滑化:利用者が具体的な利用方法(利用態様、数量、期間等)を入力することで事前に補償金額の範囲を算出できるシステムを構築します。

5 著作権教育の充実

著作権に関する意識や知識を身に付けることはますます重要となっており、現行の中学校や高等学校の学習指導要領においても著作権について取り扱っています。

また、全国各地での講習会の開催や教材の作成・提供を行っています。講習会は、国民一般、都道府県等著作権事務担当者、図書館等職員及び教職員を対象として毎年10数箇所で開催しています。また、文化庁ホームページ(http://www.bunka.go.jp/seisaku/chosakuken/seidokaisetsu/)を通じ、児童生徒や学生、一般等を対象とした著作権学習教材を提供するとともに、小学校、中学校、高等学校等にハローキティを使用した著作権の普及啓発ポスターの送付を行いました。このほか、教材や講習会等の情報を集約したポータルサイトを作成して、他の関係団体が作成する著作権学習教材等についても周知を行う予定です。

6 国際的課題への対応

デジタル化・ネットワーク化の進展に伴い、著作物の国境を越えた新たな流通形態が生まれ、我が国コンテンツの海外での侵害形態として、CD、DVD等いわゆる「パッケージ」の海賊版に加え、インターネット上の著作権侵害が深刻な問題となっています。

このような現状に対応した適切な海賊版(違法複製物)対策と国際ルールの構築を積極的に推進しています。

① 海外における著作権侵害対策

アジア地域を中心に、我が国のゲームソフト、アニメ、音楽などに対する関心が高まる一方で、これらを違法に複製した海賊版の製造・流通及びインターネット上の著作権侵害が、放置することのできない深刻な問題となっています。海外における著作権保護の推進のため、政府間協議の場を通じた侵害発生国・地域への働きかけ、アジア・太平洋諸国の政府職員等を対象とした研修、侵害発生国・地域における一般消費者を対象とした普及啓発活動等の、著作権制度の整備、権利執行の強化、普及啓発に係る取組を実施しています。

② 国際的ルールづくりへの参画

国際的ルールづくりへの参画としては、現在WIPO(世界知的所有権機関)において放送機関に関する新条約の策定に向けた議論などが行われており、我が国は積極的に参画しています。また、令和2年11月に地域的な包括的経済連携(RCEP)協定に署名し、令和3年1月1日に日英包括的経済連携協定(EPA)が発効するとともに、EPA交渉等においてアジア諸国を中心に著作権等関係条約の締結を働き掛けています。

宗教法人制度と宗務行政

我が国には、多種多様な宗教団体が存在しており、それらの多くは宗教法人法に基づく宗教法人です。文化庁では、宗教法人制度を円滑に進めるため、次のとおり様々な取組を行っています。

1 宗教法人の管理運営の推進

文化庁は、都道府県の宗務行政に対する助言や、都道府県事務担当者研修会、宗教法人のための実務研修会の実施、手引書の作成などを行っています。また、我が国における宗教の動向を把握するため、毎年度、宗教界の協力を得て宗教法人に関する「宗教統計調査」を実施し、『宗教年鑑』として発行するほか、宗教に関する資料の収集を行っています。

2 不活動宗教法人対策の推進

宗教法人の中には、設立後、何らかの事情によって活動を停止してしまった、いわゆる「不活動宗教法人」が存在します。不活動宗教法人は、その法人格が売買の対象となり、第三者が法人格を悪用して事業を行うなど社会的な問題を引き起こすおそれがあり、ひいては宗教法人制度全体に対する社会的信頼を損なうことにもなりかねません。このため、文化庁と都道府県は、不活動状態に陥った法人について、活動再開ができない場合には、吸収合併や任意解散の認証によって、またこれらの方法で対応できない場合には、裁判所に解散命令の申立てを行うことによって、不活動宗教法人の整理を進めています。

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