読み上げる

高等教育の充実

文部科学省高等教育局

コロナ禍における高等教育

令和2年度は、世界全体が新型コロナウイルス感染症という未曽有の危機に直面することとなり、我が国の高等教育も大きな影響を受けましたが、このような危機の中で、高等教育が果たすべき使命が改めて明らかになり、今後の高等教育の在り方について検討する契機が生まれました。

大学や高等専門学校においては、感染対策を講じつつ学生の学修機会を確保するため、遠隔授業の実施にいち早く取り組むなど、先進的な工夫がなされてきました。その一方で、大学等の教育においては、学生同士や学生と教職員の人的な交流も重要な要素であり、未だキャンパスに通えないという新入生の声や、対面での授業を受けたいという学生たちの希望をしっかりと受け止める必要があります。学生が不安なく学べる環境の実現に向けて、大学等の関係者の皆様と伴走しながら、引き続き、必要な対応に努めてまいります。

また、新型コロナウイルス感染症による影響により、学生たちが経済的な理由で修学を断念するようなことがあってはなりません。文部科学省としては、昨年4月から始まった高等教育の修学支援新制度の着実な実施に加えて、学びの継続のための学生支援緊急給付金の支給や、各大学等における授業料の減免措置の支援等に取り組んでまいりました。今後とも、経済的な事情に左右されることなく、誰もが希望する質の高い教育を受けられる環境の整備を進めてまいります。

さらに、令和3年度大学入学者選抜については、初めての大学入学共通テストを含め、このコロナ禍であっても受験生第一の立場に立って受験機会をしっかりと確保するとともに、感染症対策を徹底し、万全の体制で受験生を迎えることが重要であるとの考えの下、関係者が一丸となって対応しました。結果、感染症対策も含め、おおむね無事に終了しました。これら令和3年度入試の実施状況や、英語4技能、思考力・判断力・表現力を適切に評価することの重要性を踏まえた上で、今後の大学入試の在り方について、受験生をはじめとする国民の皆様に納得いただける制度を目指して、引き続き検討を進め、本年夏前には成案を得てまいります。

さらに、新型コロナウイルス感染症の拡大という状況において、大学病院は我が国の地域医療の最後の砦として大変重要な役割を果たしてきました。引き続き、医療による貢献を果たすとともに、今回の経験を踏まえ、感染症分野の高度な知識を身に付けた人材養成の強化も図っております。

この誰も経験したことのない危機を克服するためにも、優れた人材を育成し、社会にとっての知の拠点となる高等教育機関の役割は一層重要なものとなっています。眼下のコロナ禍への対応と同時に、「ソサエティ5・0」時代に向けた大学教育の質の向上と教育研究基盤の強化を図るためにも、ポスト・コロナを見据えた、より望ましい大学教育の在り方について、検討を深めてまいります。

高等教育の在り方

これからは、Society 5.0、すなわち超スマート社会の実現が予想されるとともに、本格的な人口減少、グローバル化、一極集中型から遠隔分散型への転換といった変化の激しい予測困難な時代を迎えます。

その中で、高等教育は、幅広い教養と高い専門性を備えた人材の育成、各分野を牽引し世界で活躍できる人材の育成、新たな価値を生み出しイノベーション創出を担う人材の育成、様々な研究を通じた諸問題の解決など、国民生活や社会経済の発展に寄与することに加え、地域活性化の拠点としての役割も担っており、新たな知と価値を創造・発信し、能動的に社会をリードしていくことに多大な期待が寄せられています。

また、新型コロナウイルス感染症の世界的な感染拡大が、世界中の大学のありようにも大きな影響を与えており、デジタルトランスフォーメーション(DX)の大きな進展も伴って、グローバル化やデジタル化に対応したニューノーマルにおける高等教育の在り方を考えていく必要があり、教育再生実行会議や中央教育審議会において議論が行われています。

今後の方向性として、人工知能(AI)などの技術革新が進む中、文理横断・分野横断的な教育研究を展開して学生が学修成果を実感できる学修者本位の教育への転換、社会人のリカレント教育の拡充や留学生交流の推進など多様な学生の受入れ、ダイバーシティを実現した多様な教員の登用や柔軟な教育プログラムの構築、複数の大学の人的・物的リソースを効果的に共有して各大学の強みや特色を生かした連携協力の推進などに取り組むこととしています。

学修者本位の教育への転換に向けては、各大学の教育改善等に資するため、令和元年度、文部科学省により初めて、全国的な学生の学びの実態を把握する「全国学生調査」を試行的に実施し、10万人を超える学部生の参加をいただきました。引き続き、本調査を通じて、各大学の教育改善等に加え、学生の皆さんにとって学びの振り返りにつながることを目指していきます。

さて、我が国の大学の量的規模を概観すると(図1参照)、大学進学者の多くを占める18歳人口は、平成4年度の205万人をピークに減少しており、国立社会保障・人口問題研究所の推計によれば、現在約120万人の18歳人口が、2030年には103万人、2040年には88万人に減少すると試算されています。大学進学率の状況も地域によって様々であり、人口減少が急速に進む中にあっては、大学等は、地域経済・社会を支える基盤であり、地域における質の高い教育機会の確保と人材育成の機能をより一層果たしていくため、大学等の連携・統合を推進することが必要となります。

「2040年に向けた高等教育のグランドデザイン」(平成30年11月中央教育審議会答申)を踏まえ、令和2年10月に、地域の複数の高等教育機関と、地方公共団体、産業界等が一体となった恒常的な議論の場である「地域連携プラットフォーム」の構築を推進するためのガイドラインを策定・公表しました。また、令和3年2月に、地域の大学等が各々の強みや特色を生かしながら、大学間の連携を推進し、質の高い高等教育を実現するため、「大学等連携推進法人」の認定制度を創設しました。

引き続き、このような施策を活用しながら、地域社会の維持・発展につながるよう、高等教育の充実を図っていきます。

学生支援について

1 高等教育の修学支援新制度

経済状況が困難な家庭の子供ほど大学等への進学率が低い状況にあることを踏まえ、真に支援が必要な低所得世帯の子供たちに対し、授業料等減免制度の創設と給付型奨学金の支給の拡充を実施する高等教育の修学支援新制度を令和2年4月より開始しました。

対象者は住民税非課税世帯とそれに準ずる世帯の学生等で、具体的な支援額等は次の図表のとおりです。

支援対象となる学生等については、高校在学時の成績だけで否定的な判断をせず、高校等が、レポートの提出や面談等により本人の学修意欲や進学目的等を確認します。他方、大学等への進学後は、学修状況について厳しい要件を課し、これに満たない場合には支援を打ち切ることとしています。

また、社会で自立し活躍できる、豊かな人間性を備えた創造的な人材を育成できる大学等を支援措置の対象とするため、大学等にも一定の要件を求めることとしています。

〈参考〉高等教育の修学支援新制度の対象機関(確認大学等)
https://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/hutankeigen/1420041.htm

2 無利子奨学金事業

令和3年度予算案においても、平成29年度に貸与基準を満たす希望者全員に対する貸与を実現した無利子奨学金について、引き続き制度を確実に実施していきます。また、平成29年度に導入した所得連動返還型奨学金制度も確実に実施することとしています。

3 新型コロナウイルス感染症の影響を受けている学生等への支援

文部科学省では、新型コロナウイルス感染症により経済的な影響を受けている学生等への緊急対応措置として、昨年5月に「学生の"学びの支援"緊急パッケージ」を取りまとめました。具体的には、家計が急変した世帯の学生等に対しては、高等教育の修学支援新制度や貸与型奨学金において随時支援を行うとともに、各大学等が独自に行う授業料等減免についても、令和2年度補正予算において支援しており、来年度も継続して行ってまいります。

また、アルバイト収入が大幅に減少した学生等に対しては、「学びの継続」のための『学生支援緊急給付金』や「緊急特別無利子貸与型奨学金」において、支援を行ってまいりました。

さらに、新型コロナウイルス感染症の影響により、学生等が様々な不安を抱えやすい状況にあることから、各大学等に対し、相談体制の整備や専門家との連携等により、学生等の悩みや不安に寄り添ったきめ細かな対応をいただくようお願いしております。就職活動についても、経済団体等に対して新卒者等の積極的な採用活動を進めていただくよう要請するとともに、各大学等に対して就職活動に資する求人情報の提供や就職相談など、きめ細かな就職支援に万全を尽くしていただくようお願いしているところです。

引き続き、今般の新型コロナウイルス感染症の影響で経済的に困難な学生等が、修学・進学をあきらめることのないよう、しっかり支援してまいります。

〈参考〉学生の〝学びの支援”緊急パッケージ(令和2年12月~)
https://www.mext.go.jp/content/20201218-mxt_gakushi01-000006193_01.pdf

〈参考〉新型コロナウイルス感染症の影響を受けた学生等への経済的支援一覧
https://www.mext.go.jp/a_menu/coronavirus/benefit/index.html

4 大学院学生の経済的支援の拡充

「研究力強化・若手研究者支援総合パッケージ」(令和2年1月 総合科学技術・イノベーション会議)や「第6期科学技術・イノベーション基本計画」(令和3年3月 閣議決定)における目標達成に向けて、特に博士後期課程学生の支援の充実を政府全体で進めることとしております。文部科学省では、特別研究員事業(DC)や日本学生支援機構の奨学金事業における業績優秀者返還免除等に取り組むとともに、各大学における授業料減免や学内奨学金、RA制度等、多様な財源を活用した経済的支援策の促進を行っているところです。また、将来的には、大学ファンドから博士後期課程学生への生活費相当額の支援等を行うことを見据え、大学ファンドによる支援開始に先駆けて、令和2年度第3次補正予算及び令和3年度当初予算案に、合計で7,800人規模の博士後期課程学生への経済的支援に関する経費を計上し、支援の抜本的な充実を図っているところです。

高大接続改革について

我が国は今、グローバル化の進展や技術革新、生産年齢人口の急減等、大きな社会変動の中にあり、この状況下で問題を発見し、答えを生み出し、新たな価値を創造する力が重要になっています。このため、文部科学省では、高等学校教育、大学教育、大学入学者選抜の三者の一体的な改革を通じて、①知識・技能、②思考力、判断力、表現力、③主体性を持って多様な人々と協働して学ぶ態度、これらの「学力の3要素」を確実に育成・評価するため、高大接続改革の取組を進めています。

1 高等学校教育改革

① 「幼稚園、小学校、中学校、高等学校及び特別支援学校の学習指導要領等の改善及び必要な方策等について(答申)」(平成28年12月21日中央教育審議会)を踏まえ、平成30年3月に高等学校学習指導要領を改訂しました。今回の改訂では、「生きる力」の育成を目指し、子供たちに身に付けさせるべき資質・能力を「知識及び技能」、「思考力、判断力、表現力等」、「学びに向かう力、人間性等」の三つの柱で整理しています。また、学校教育における質の高い学びを実現し、生徒が学習内容を深く理解し、資質・能力を身につけ、生涯にわたって能動的に学び続けることができるよう、各学校において、「主体的・対話的で深い学び」の実現に向けた授業改善を通して、教育活動の質の向上に取り組むことを求めています。

② 学習・指導方法の改善、教員の指導力の向上については、生徒の資質・能力を育成する「主体的・対話的で深い学び」の実現に向けた授業改善を目指すとともに、教員の資質・能力向上については、独立行政法人教職員支援機構に設置された次世代教育推進センターにおいて、授業改善に資する情報提供を行うなど、学校現場に対する支援策を講じています。また、多忙な教職員に対する支援策として、オンラインによる「校内研修シリーズ」の発信など、研修機会の提供にも努めています。

③ 学校内外での学習活動全般を通して、生徒の資質・能力の多面的な評価を推進しています。具体的取組の一つとして、「高校生に求められる基礎学力の確実な習得」と「学習意欲の喚起」を図るため、平成29年7月の「高校生のための学びの基礎診断」実施方針を踏まえ、平成30年3月に文部科学省が一定の要件を示し、民間の試験等を認定する制度を創設しました。本制度において、多様な民間の試験等の開発・提供、その利活用を促進することにより、高校生の基礎学力の定着に向けたPDCAサイクルの取組を促進します。平成30年12月には認定基準に基づき、9事業者25ツールを「高校生のための学びの基礎診断」として認定し、平成31年度から、各学校において本格的な利活用が開始されております。

 また、平成31年3月に示された高等学校生徒指導要録の参考様式においては、観点別学習状況の評価を更に充実し、その質を高める観点から、観点別学習状況の評価の記載欄を設けることとしています。

2 大学教育改革

① 三つの方針に基づく大学教育の質的転換については、①卒業認定・学位授与、②教育課程の編成・実施、③入学者受入れの「三つの方針」の策定・公表を各大学に義務付け(平成29年4月施行。)、「三つの方針」の策定・運用に関して参考となるガイドラインを中央教育審議会が作成しました。さらに、「2040年に向けた高等教育のグランドデザイン(答申)」(平成30年1月中央教育審議会)を踏まえ、各大学における教学マネジメントの確立の支援を進めるため、「教学マネジメント指針」(令和2年1月中央教育審議会大学分科会)が取りまとめられました。

② 認証評価については、「三つの方針」等を共通評価項目とすることや、内部質保証を重視するなど、平成30年度より新たな基準に基づく評価が行われています。

3 大学入学者選抜改革

高等学校段階までに身に付けた力を、大学において発展・向上させ、社会に送り出すというプロセスを前提として、大学入学者選抜は、大学入学段階で入学者に求める力を多面的・総合的に評価・判定する方法への転換に取り組んでいます。令和3年度大学入学者選抜からは、大学入試センター試験に代わり、高校までに育成した思考力・判断力・表現力等を発揮して解くことが求められる問題を重視した「大学入学共通テスト」(以下、「共通テスト」という。)を導入し、各大学の入学者選抜においても入学志願者の能力・意欲・適性等をより多面的・総合的に評価するものへと転換を図っているところです。

① 新型コロナウイルス感染症に対応した令和3年度大学入学者選抜について

新型コロナウイルス感染症の発生は、感染症に罹患しても受験機会を確保することや入学志願者が安心して受験できる環境の確保など、大学入学者選抜(令和2年度実施)の実施にも大きな影響を及ぼしました。

受験機会の確保に関しては、受験生の置かれている状況や意向を十分に把握するため、全国高等学校長協会が実施した高校長へのアンケート調査を参考に、高校・大学関係者等が協議し、初めて実施される大学入学共通テストでは、本試験(令和3年1月16日、17日)の1週間後に実施予定だった追試験を2週間後(1月30日、31日)とし、試験会場も本試験と同様に全国47都道府県に設置するとともに、臨時休業による学業の遅れにも対応できるように出願時から選択できる第2日程としました。あわせて、第2日程を選択した受験生が病気などで受験できなくなった場合でも、受験機会を失わないように特例追試験(2月13日、14日)を設けました。

各大学の個別学力検査についても、受験機会の確保について様々な機会を通じて各大学に要請し、ほぼすべての国立大学が3月22日に追試験の実施を決定するなど、約98%の大学が追試験の設定や別日程での振替受験の措置を講ずることなどの配慮を行いました。

入学志願者が安心して受験できる環境の確保に関しては、感染症の専門家の協力を得ながら、試験場の衛生管理体制等の構築に当たって望ましい方法や内容を整理した「新型コロナウイルス感染症に対応した試験実施のガイドライン」(以下、「ガイドライン」という。)を策定(令和2年6月)しました。その後、新型コロナウイルス感染症対策分科会(令和2年10月)における審議を経て、発熱・咳等を申し出た受験者用チェックリストに該当した受験生に対しては追試験を案内し、該当しない場合は別室受験を可能とすることや、一定の要件を満たした無症状の濃厚接触者の受験を可能とすることなど、約50万人が同一期日に一斉に受験する大学入学共通テストにおける感染症予防対策も整理し、感染症対策を進めました。また、関係省庁とも連携し、受験に伴う宿泊や移動時の感染症対策、試験場やその周辺に密集状態を形成しないための参集の自粛等についても関係各所に要請を行い、受験生が安心して受験できる環境の確保に努めました。

さらに、感染症の専門家や厚生労働省の協力を得て、共通テスト1か月前には試験直前の受験生に特に注意をしてほしい感染症対策について取りまとめ、文部科学省HP等を通じて周知を図るとともに、令和3年1月には厚生労働省から保健所等に対し、濃厚接触者に特定された場合には速やかにPCR等検査が受診できるように配慮することを要請し、受験機会の確保に努めたところです。

令和3年度入学者選抜に関しては、大学入試センターや関係省庁等と緊密な連携を図りながら準備を進め、初めて実施された大学入学共通テストは、感染症対策も含め、概ね無事に終了しました。また、各大学が実施する入学者選抜についても、共通テスト終了後、各大学の感染症対策の事例を収集・共有するとともに、緊急事態宣言下においても入学者選抜は予定どおり実施することを新型コロナウイルス感染症対策本部によって決定し、予定どおりに入試ができるように取り組んだところです。一部の大学で個別学力検査を突然中止し、大学入学共通テストの成績のみで判定するといった判断をした事例はあったものの、最終的には各大学の尽力により、大きな混乱もなく令和3年度大学入学者選抜の全日程を終了することができました。

② 大学入試のあり方に関する検討会議について

令和元年末に大学入試英語成績提供システムの導入や、大学入学共通テストへ記述式問題の導入が見送られましたが、文部科学省では、英語4技能評価や記述式問題の出題を含めた今後の大学入学者選抜の在り方について検討するため、令和元年12月27日、文部科学大臣のもとに「大学入試のあり方に関する検討会議」を設置しました。

検討会議は令和3年3月末現在で23回開催しており、大学関係者や高校関係者等をはじめとした各委員、外部有識者からのヒアリング、webによる意見募集や大学への入試の実態調査等を行いつつ、精力的に議論いただいております。

文部科学省としては、高大接続改革そのものや、思考力・判断力・表現力や、英語によるコミュニケーション能力を育成・評価することの必要性は変わるものではないと考えています。検討会議においても、これらの重要性は踏まえた上で、入学者選抜と高校教育や大学教育との役割分担をどう考えるか、どこまでを入学者選抜で問うか、大学入学共通テストと各大学の個別の入学者選抜との役割分担をどのように考えるか等について、率直な議論を行い、第1回の大学入学共通テストを含む令和3年度入試の実施の状況も踏まえ、令和3年夏前に結論をまとめていけるよう、検討が進められています。

大学院教育の充実

文部科学省は、高度な専門的知識と倫理観を基礎に自ら考え行動し、新たな知及びそれに基づく価値を創造し、グローバルに活躍し未来をけんいんする「知のプロフェッショナル」を育成するための大学院教育改革を推進しています。令和2年度は、中央教育審議会大学分科会において「2040年を見据えた大学院教育の体質改善~社会や学修者の需要に応える大学院教育の実現~(審議まとめ)」(https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo4/houkoku/1412988.htm)等を踏まえて、リカレント教育の推進を目的とした省令改正等を行いました。

また、博士課程教育については、卓越した博士人材を育成するとともに、人材育成・交流及び新たな共同研究が持続的に展開される卓越した拠点を形成するため、各大学が自身の強みを核に、これまでの大学院改革の成果をいかし国内外の大学・研究機関・民間企業等と組織的な連携を行いつつ世界最高水準の教育力・研究力を結集した5年一貫の博士課程教育プログラムを構築することを支援する「卓越大学院プログラム」(https://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/kaikaku/takuetudaigakuin/index.htm)を実施し、令和2年度までに17大学30プログラムを採択しました。

このような取組を通じて大学院と大学院学生に対する社会の評価を高め、優れた人材を大学院に引き付け、博士号取得者が高度な知識と高い倫理観を備えたリーダー候補として各界各層で活躍する好循環の実現に向け、大学院教育の充実のための施策を推進しています。

国立大学改革

国立大学は、高度な学術研究の推進、計画的な人材育成、地域活性化への貢献や高等教育の機会均等の確保といった重要な役割を担っています。

平成16年の国立大学の法人化以降、国立大学においては、それぞれの強みや特色を生かした自主的・自律的な機能強化に向けた取組が進められてきました。昨今の急激な社会経済状況の変化の中で、国立大学に対しては、産業競争力強化・イノベーション創出の拠点としての役割や、地方創生の中核的拠点としての機能の発揮など、我が国の成長と発展への積極的な貢献をしてほしいという社会の大きな期待が寄せられています。

文部科学省では、平成27年6月に、第3期中期目標期間において、国立大学が期待される役割を果たし、その「知の創出機能」を最大化させていくための改革の方向性を取りまとめた「国立大学経営力戦略」を策定し、大学に対し、経営力と財務基盤の強化を通じた自己改革を促しています。

また、第3期中期目標期間における予算配分の仕組みとして、各大学の強み・特色を踏まえた機能強化の方向性に応じた「3つの重点支援の枠組み」により、評価に基づく重点支援を通じて各国立大学の機能強化を推進するとともに、令和元年度から「成果を中心とする実績状況に基づく配分」の仕組みを新たに導入し、評価のわかりやすさや透明性の向上、各大学の主体的な取組の推進、教育研究の安定性・継続性への配慮のもとで改革インセンティブの向上を図ることとしています。

令和3年度予算案において、国立大学法人運営費交付金は1兆790億円を計上しており、教育研究基盤設備の整備や大学院生に対する支援等、教育研究活動に必要な経費を充実しています。

昨年2月から「国立大学法人の戦略的経営実現に向けた検討会議」において、国立大学法人のガバナンスの在り方や経営の自由度を高めるための規制緩和等について議論を行い、昨年12月に最終取りまとめを公表いたしました。最終取りまとめも踏まえ、学長選考会議の権限の追加や監事の体制の強化、国立大学法人による出資の範囲の拡大等を内容とする改正法案を令和3年の通常国会に提出しました。

また、令和4年度より始まる第4期中期目標期間に向け、国立大学法人運営費交付金や中期目標・中期計画の在り方等について検討を進めているところです。

さらに、人事給与マネジメント改革として、若手教員の活躍機会を創出し、教員の挑戦意欲を向上できるよう、年俸制の導入をはじめ、厳格な業績評価やクロスアポイントメント制度等、様々な取組を総合的に促進してまいります。

さらに、ガバナンス改革として、一法人複数大学制や経営と教学の分離等の選択の可能化、学外理事の複数登用の義務化の措置を行う旨を内容とする国立大学法人法の一部改正を行ったところです。また、経営改革の指針となるガバナンスコードの策定等に協力して取り組んでまいります。

文部科学省としては、国立大学が我が国の人材育成・学術研究の中核として、継続的・安定的に教育研究活動を実施できるよう運営費交付金等の確保に取り組むとともに、各大学の自主的な発想に基づく改革を、より一層支援してまいります。

大学の国際化と学生の双方向交流

社会の多様な場面でグローバル化が加速する中、国際的に活躍できる人材育成の重要性が増しています。そうした高度人材育成を担う中核として、我が国の大学には、教育・研究環境の国際化や学生の双方向交流の拡大など、国際化の推進が強く求められています。

その一方で、今般の新型コロナウイルス感染症により、学生や教員の交流の停滞など、大学の国際関連活動は深刻な影響を受けており、未だ予断を許さない状況が続いています。政府としては、大学の国際化や留学生交流の取組再開・継続を支援するとともに、教育再生実行会議において、ニューノーマルに対応する国際学生交流の展開手法など、グローバルな目線での新たな高等教育の戦略はどうあるべきか検討を進めているところです。その結論を踏まえて、高等教育のグローバル化が停滞することのないよう、必要な取組等を進めてまいります。

また、コロナ禍における大学間交流として、国際協働学習方式(Collaborative Online International Learning)の活用が注目を集めています。これは、オンラインを活用した単位互換などの教育の質保証を伴う学習方式で、実交流のできない状況下で国際的な学修の機会を提供する仕組みとして、より一層の活躍が期待されています。

このように、新型コロナウイルス感染症の影響下にあっても、双方向の交流及び留学を通じた国際交流は、優れた国際感覚を有する人材の育成に資するだけでなく、我が国の教育・研究の国際化と活性化を促し、国際理解の推進や国際貢献、経済発展をもたらすなど、重要な意義があります。

この留学生交流について、政府は、2020年までに外国人留学生の受入れを30万人に、2022年までに日本人の海外留学を12万人に増加させることを掲げています。日本人学生の海外留学促進のための施策としては、意欲と能力のある若者全員に留学機会を付与し、グローバルに活躍できる人材を育成するため、国費により海外留学を支援する奨学金により留学経費の負担軽減を図るとともに、民間企業等の協力を得た官民協働海外留学支援制度「トビタテ!留学JAPAN日本代表プログラム」を推進しています。これまでに約8000人の学生・生徒を採用し、順次海外留学を開始しています。一方、外国人留学生の受入れのための支援策としては、グローバル社会で活躍できる人材育成の促進や我が国の高等教育機関の国際競争力強化、海外での日本留学の魅力発信を強化するための日本留学サポート体制の構築、国費外国人留学生制度等の経済的支援の充実、留学生の日本国内での就職促進等を行っています。これらの施策により、優秀な外国人留学生の戦略的な受入れを推進し、グローバルに活躍する人材の育成に必要な環境の整備・充実を図ることとしています。こうした取組により、海外の大学などに在籍する日本人は、OECD等の統計によれば平成16年以降の減少後、微増し、平成29年は約5万8000人でした。一方、我が国の高等教育機関又は日本語教育機関に在籍している外国人留学生は約31万2000人(令和元年5月1日現在)となっています。

国外にも目を向けると、世界的に学生の流動性が高まり、人材獲得競争が激しさを増す中、我が国の高等教育の国際通用性と国際競争力の向上を目的に、海外の卓越した大学との連携や大学改革により徹底した国際化を進める大学を支援する「スーパーグローバル大学創成支援事業」を平成26年度から開始し、37大学を採択・支援しています。採択大学では特色ある取組が実施され、大学改革及び国際化の着実な進展などの成果が報告されています。また、本事業における優れた取組や成果を国内外の大学へ発信するための基幹サイト(https://tgu.mext.go.jp)がリニューアルされ、日英両言語コンテンツの充実及びSNSとの連動といった発信力の充実が図られました。

また、質の保証に関する国際的な高等教育の連携の枠組み形成も活発化しています。平成23年度に開始した「大学の世界展開力強化事業」においては、我が国にとって重要な国・地域を対象とし、単位の相互認定や学位授与等、質保証を伴う国際教育連携を戦略的に進める取組を支援しています。令和2年度には、アフリカ諸国との新たな交流や更なる交流を実施するプログラム及び交流を推進するプラットフォームを構築するプログラムに対して、計8件を採択しました。令和3年度は、今後のアジアにおける高等教育共同体の形成を見据え、日中韓三国間で質の高い大学間交流を行う「キャンパス・アジア」を推進する取組とこれをASEANなどへ広げていく取組を支援する予定です。

ASEAN+3の政府間の枠組みにおいても、質保証を伴う学生交流の促進に取り組んでいます。我が国は「ASEAN+3 高等教育の流動性・質保証に関するワーキング・グループ」を設置することを提案し、以降毎年、各国政府の高等教育行政官によるワーキング・グループ会合を開催してきました。その成果として、平成28年5月には「学生交流と流動性に関するガイドライン」が、平成30年11月には「留学生の学修履歴のための成績証明書及び補足資料に関するガイドライン」がASEAN+3教育大臣会合で承認されています。現在は、高等教育の流動性向上のための各大学による情報発信の在り方について、成果文書の策定に向けた議論を行うとともに、質保証に重点を置いた新たな取組を開始したところです。

また、アジア太平洋地域において、締約国間が相互に高等教育資格を承認・評定する枠組みを整えることにより、国際的な学生及び研究者の流動性を促進することを目的として、ユネスコの下で「高等教育の資格の承認に関するアジア太平洋地域規約」(通称:東京規約)が発効されており、日本も締結しています。締約国が設置することとなっている国内情報センター(National Information Center;NIC)として、我が国では、独立行政法人大学改革支援・学位授与機構(NIAD−QE)内の「高等教育資格承認情報センター」が、我が国を含む東京規約締約国を主とした各国の教育制度等に関する情報提供、海外のNIC等との連携、各種調査研究を行っています。さらに、令和元年11月には、グローバル化の更なる進展等を受け、地域規約と協調して相乗効果を発する目的で、第40回ユネスコ総会にて「高等教育の資格の承認に関する世界規約」が採択されています。

専門人材育成

1 専門職大学院における高度専門人材養成について

専門職大学院は、科学技術の進展や社会経済の多様化とグローバル化等を受け、社会的・国際的に通用する人材養成を行うため、高度専門職業人養成に特化した課程としての役割を担っています。

特徴としては、「理論と実務の架橋」を図ることにより、産業界・実業界等で求められる高度専門職(プロフェッショナル)を養成するものです。

令和2年5月現在、法曹養成(法科大学院)、教員養成(教職大学院)、MBA、MOT(技術経営)、会計、公共政策、公衆衛生、臨床心理等の分野で、118大学・166専攻が開設されており、質の高い高度専門職業人養成が行われています。

近年では、平成28年8月に中央教育審議会大学分科会大学院部会専門職大学院ワーキンググループにおいて取りまとめた「専門職大学院を中核とした高度専門職業人養成機能の充実・強化方策について」を踏まえ、産業界等の意見の教育課程への反映等、社会(「出口」)との連携強化を目的とする教育課程連携協議会の設置に関する事項や、専門職大学院と学部等との連携強化推進のため、専門職学位課程の一定数の専任教員が学部の専任教員を兼務可能とする等の制度改正を行っています。

また、経営系専門職大学院を始めとする経営系大学院と産業界等の相互の協力を促進し、我が国の経営系大学院の高度専門職業人養成の機能強化の在り方を議論するため、「経営系大学院機能強化検討協力者会議」を設置し、検討結果を令和元年7月に「我が国の経済社会を牽引する高度経営人材養成の在り方について(報告)」として取りまとめました。

法曹養成に特化した専門職大学院である法科大学院については、令和元年6月に「法科大学院の教育と司法試験等との連携等に関する法律」等の改正を行い、①法科大学院教育の充実、②「3+2」(図参照)の制度化と法科大学院在学中の司法試験受験資格導入による法曹志望者の時間的・経済的負担の軽減、③定員管理による予測可能性の高い法曹養成制度の実現等を図ることとしました。この改正により、令和2年度から、法学部等において、早期卒業を前提として法科大学院教育と一貫した教育を行う「法曹コース」が開設され(令和3年4月現在37大学)、法科大学院がない地域においても法曹を志望できる裾野が拡大しています。

なお、文部科学省ホームページにおいて特設サイト(https://www.mext.go.jp/3plus2/)を開設し、新制度の紹介や先輩法曹等のインタビュー動画を公開しています。

2 第四次産業革命がもたらす技術革新に対応する人材育成について

イノベーションが急速に進展し、科学技術が目まぐるしく進化する中、Society 5.0の実現に向け、AIなどの技術革新を社会実装につなげ、我が国の産業のさらなる発展に資する理工系人材の育成は不可欠です。そのため、高等教育段階における理工系分野の教育については、深い専門的知識と俯瞰的視野を持ち、科学技術の新たな発展に資する人材を育成する必要があります。

そこで、大学において、こうした産業社会のニーズを的確に受け止めた教育を進められるように、制度改正を行いました。具体的には、大学の組織編成等を規定する大学(院)設置基準について、工学系の学部において学科ごとの縦割り構造を抜本的に見直した柔軟な教育体制の編成が可能となる改正(平成30年)、学部の枠を越え、社会のニーズを踏まえた機動的で柔軟な教育プログラムの編成が可能となる改正(令和元年)を行ってきました。

また、サイバー空間とフィジカル空間が高度に融合するSociety 5.0においては、大量のデータを積極的に扱い、社会課題の解決に生かすことができる人材が不可欠で、そのための教育システムの構築が急がれます。文部科学省としては、平成28年度より、数理・データサイエンス・AI教育を推進するためのコンソーシアム(数理・データサイエンス教育強化拠点コンソーシアム)を構築し、この新たな教育分野のためのモデルカリキュラムの策定、教材開発等の取組を支援しています。

令和元年6月には、「AI戦略2019」が策定され、本戦略では、大学・高専における数理・データサイエンス・AI教育のうち、優れた教育プログラムを政府が認定することとされており、リテラシーレベルについては、令和3年に順次認定、応用基礎レベルについては、令和3年度中の制度構築を予定しています。本認定制度は、各大学等の取組について、政府だけでなく産業界をはじめとした社会全体として積極的に評価する環境を醸成し、より質の高い教育を牽引していくことを目指しています。

3 高等専門学校教育の充実

高等専門学校は、中学校卒業後の早い年齢から、5年一貫の専門的・実践的な技術者教育を特徴とする高等教育機関として、全国に57校が設置されています。産業界から高い評価を受けており、就職希望者の就職率は毎年ほぼ100パーセント近く、極めて高い水準を維持しています。一方、卒業生の約4割が大学等に進学しており、卒業後の進路選択の幅は広がっています。

また、社会ニーズに対応した専門人材の育成や、地域の課題解決に貢献できる人材の育成のための事業を展開しており、各高等専門学校の連携のもと高等専門学校教育の高度化を積極的に推進しています。

近年は、工業化による経済発展を進める国を中心に、15歳という早期からの専門人材育成を行う高等専門学校の教育が高く評価されています。そのため、国立高等専門学校機構において、各国のニーズを踏まえた技術者教育が展開できるよう、教育カリキュラムの開発や教員研修などの支援を進め、KOSENの海外展開に取り組んでいます。

4 専門職大学等における専門職業人の養成

専門職大学、専門職短期大学及び専門職学科は、平成31年4月に創設された新しいタイプの大学です。一般の大学と同様に幅広い教養教育や学術に基づく専門教育を実施することに加え、学内外の豊富な実習や関連する他分野の教育を取り入れ、産業界等と連携しながら、実践的かつ創造的な専門職業人材を育成します。令和3年度までに、専門職大学14校、専門職短期大学3校、専門職学科1校1学科が設置されています。

高校生等にとっても進路選択の幅が広がりますので、進路選択の一つとして御検討ください。

また、専門職大学等の設置を検討される方への支援として、「設置構想のポイント」の公開(文部科学省ウェブサイト)や、事務相談を随時行っています。

〈参考〉スマートフォン向けウェブサイト(新たに「在学生の声」を掲載しました。)
https://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/senmon/index.htm

医療系人材の養成

今後ますます進行する高齢化に伴う医療ニーズ等の変化に対応するため、医師や歯科医師、薬剤師、看護師をはじめとする質の高い医療系人材の養成や、臨床研究によって医薬品や医療機器等の開発を進め、我が国の経済成長を牽引できる人材の養成が求められています。

例えば医師や歯科医師の養成については、医学生・歯学生が卒業時までに身に付けておくべき必須の実践的診療能力を学修目標として提示した「モデル・コア・カリキュラム」を策定しており、各大学においてモデル・コア・カリキュラムを踏まえた特色ある教育が実施されています。また、看護師の養成についても、大学の学士課程における看護学教育の水準の維持向上に資するため、平成29年10月に、モデル・コア・カリキュラムを策定し、令和元年度から、各大学においてこれを参考とした教育が開始されています。

加えて、質の高い医療人材の養成のためには、卒前・卒後の一貫した教育が重要であるところ、引き続き、厚生労働省と検討を進めてまいります。

さらに、一部の地域における深刻な医師不足を解消するため、卒後、地域医療の現場で活躍することを条件とする都道府県の修学資金の貸与枠と連動した「地域枠」など医学部定員の臨時増員を行っており、令和3年度の医学部入学定員は、計9357人となっています。今後も、厚生労働省と連携し、医師の需給並びに大学や地域の実情を踏まえ定員管理に努めてまいります。

また、質の高い医療系人材の養成のためには、卒前・卒後を通じた医療系人材の教育の場であるとともに、臨床研究による医薬品や医療機器等の開発の場であり、各地域の中核的な医療機関という重要な役割を果たす大学病院の機能を強化することも重要です。急速な医療ニーズの変化に対応できる次世代の医療系人材の確保に向けて、大学、大学院及び大学病院における優れた取組の支援を行っています。

<音声トップページへ戻る>