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国際協力・交流の推進

文部科学省大臣官房国際課・国際統括官付

はじめに

国際社会及び我が国を取り巻く環境が大きく変化している中、今後諸外国との協力や交流を強化していくことは不可欠です。

新型コロナウイルス感染症の全世界的な拡大を受け、世界各国において、コロナ禍における教育の在り方が議論されています。昨年9月には、萩生田文部科学大臣がG20教育大臣会合に出席し、子供たちの学びの保障のために各国が協力していくことを確認するとともに、「G20教育大臣宣言」が採択されました。また、我が国の教育現場の取組について、英語パンフレットの配布やホームページによる対外発信等も行っているところです。

さらに、本年は日本のユネスコ加盟70周年であり、我が国のユネスコ活動にとって大きな節目の年です。文部科学省は、これを契機として、「持続可能な開発のための教育(ESD)」を始めとする様々な国際的な活動を一層推進してまいります。

持続可能な開発目標(SDGs)の実現に向けた取組の推進

平成27年に国連サミットで採択された「持続可能な開発目標(SDGs:Sustainable Development Goals)」の実現に向け、我が国は、諸外国政府や国際連合教育科学文化機関(ユネスコ)等の国際機関と連携し様々な取組を実施しています。

特に、持続可能な開発のための教育(ESD:Education for Sustainable Development)は、「現代社会における地球規模の課題を自らに関わる問題として主体的にとらえ、その解決に向けて自分で考え、行動を起こす力を身に付けるとともに、新たな価値観や行動等の変容をもたらすための教育」と定義されており、持続可能な社会の創り手の育成を通じて、SDGsの実現に大きく貢献するものです。我が国における学校教育の分野では、令和2年度から順次実施される小学校、中学校、及び高等学校の新学習指導要領において、これからの学校に求められることとして、前文及び総則に「持続可能な社会の創り手」の育成が掲げられています。

外国人の受入れ・共生の推進

近年、新たな在留資格「特定技能」が創設されたこと、日本語指導が必要な児童生徒や国内の日本語学習者が大幅に増加していること等を背景として、政府は平成30年12月以来、「外国人材の受入れ・共生のための総合的対応策」を策定・更新し、日本人と外国人の共生社会の実現に向けて必要な取組を推進しています。

文部科学省では、「生活者としての外国人」に対する日本語教育の充実のため、地域における日本語教育環境を強化するための総合的な体制整備やICT教材の対応言語の拡大等を行っています。 

また、外国人の子供の就学機会の確保や日本語指導が必要な児童生徒に対する指導体制の構築を図るため、就学状況把握・就学促進のための取組、日本語指導等きめ細かな指導を行う自治体の支援を引き続き行います。

さらに、留学生の就職支援の促進のほか、留学生の適切な受入れ及び在籍管理の徹底を求めていきます。

加えて、新型コロナウイルス感染症について、外国人の児童生徒に対する対策を強化するため、昨年11月より、外国人学校向けにホームページやメールマガジンを開設し、新型コロナウイルス感染症対策を含め、多言語での情報提供を開始しました。文部科学省としては、外国人の受入れ・共生のための環境整備を、引き続き強力に推進していきます。

国際教育協力の推進

1 日本型教育の海外展開

知・徳・体のバランスのとれた力を育むことを目指す初等中等教育や、実践的かつ高度な技術者教育を行う高等専門学校制度など、我が国の教育制度を取り入れたいとのニーズが各国から寄せられています。

こうした状況を踏まえ、文部科学省は平成28年度から「日本型教育の海外展開推進事業」(EDU-Portニッポン)を実施し、日本型教育の海外展開に向けて外務省や経済産業省、JICA、JETRO、民間教育産業等と協力する場(プラットフォーム)を構築するとともに、企業や大学等が行う海外展開事業を支援しています。事業開始から令和元年度までの4年間で、36か国・地域から約6万9000人の参加がありました。

本事業では、日本型教育の海外展開のモデルとして掲げるのに適した事業を、パイロット事業として採択し、その取組を支援しています。令和2年度の取組では、マラウイの学校との間でICTを活用した双方向グローカルプログラムなどが実施されました。

今後も、官民協働のプラットフォームを通じて,引き続き企業や大学等による日本型教育の海外展開等を推進するとともに,コロナ禍を踏まえた公衆衛生教育やICTを活用した教育等に関する調査研究を実施します。教育委員会や学校においても、日本型教育を通じた国際交流を実施する際は、本事業のプラットフォームへの参画等を積極的に御検討ください。

2 高等教育分野における国際教育協力

実験・研究を重視した少人数制を取る日本式工学教育は、開発途上国で高く評価されており、文部科学省は、JICAが日本の大学等の協力を得て実施する開発途上国における高等教育機関の機能強化に関する様々な事業に協力してきました。

平成22年2月には、「エジプト日本科学技術大学」(E-JUST)が開学、平成23年9月には「マレーシア日本国際工科院」(MJIIT)が開校、平成28年9月にはベトナムに「日越大学」が開学しました。日本の協力を得て自国に大学を設置したいとの要望は様々な国から寄せられており、今後もトルコ等での大学設立構想に協力していきます。

さらに、ASEAN地域の大学と日本の大学のネットワークを強化する「ASEAN工学系高等教育ネットワーク」(AUN/SEED-Net)にも日本の多くの大学が参画しています。

3 初等中等教育分野における国際教育協力

教員の国際協力への参加促進のため、平成13年度にJICA海外協力隊「現職教員特別参加制度」が創設され、令和3年に20周年を迎えます。

本制度では、対象教員が現職の身分を保持したまま活動に参加でき、学年暦に合わせた派遣期間の設定、一次選考(技術選考)の免除など教員の参加を促す様々な措置を講じています。その結果、これまでに1400名を超える教員が開発途上国に派遣されています。

教育委員会や学校においても、本制度の趣旨と成果を理解の上、国際的な視点や経験を持った人材の育成に、本制度を積極的に御活用ください。

4 新時代の教育のための国際協働

G7教育大臣会合やG20教育大臣会合等の枠組みにおいて、SDGsの達成やSociety5.0時代の到来に対応するための国際社会に共通の教育課題への対応が求められています。このため、「新時代の教育のための国際協働」事業の実施を通じ、新時代に求められる人材育成を進めています。具体的には、「Society5.0時代に向けた教育」や「インクルーシブ(包括的)で公平な教育」等の教育課題について、大学等が中心となり、事前に調査を行い、我が国の教員が諸外国の教員と、経験や課題を相互に学び合うための教育実践活動や交流を通じて、現場体験に基づく比較研究を実施しています。このような取組を通じ、小中高校における教授法や授業設計等の改善点を見いだすとともに、国内外への成果の普及等を推進しています。

国際機関を通じた協力

文部科学省では、ユネスコ(国際連合教育科学文化機関)をはじめとして、OECD(経済協力開発機構)やAPEC(アジア・太平洋経済協力)、国連大学といった国際機関と協力し、様々な取組を行っています。

1 ユネスコ

ユネスコは、教育・科学・文化等の分野における国際的な取組を通じて、世界の平和に貢献することを目的とする国連の専門機関です。2030年を達成目標とするSDGsの17の目標のうち,教育・科学技術・文化等に関する計九つの目標において重要な役割を果たすことを表明し、主に教育に関する国際的議論を主導しています。

ユネスコは日本が戦後最初に加盟した国連機関であり、本年は日本のユネスコ加盟70周年に当たります。「戦争は人の心の中で生まれるものであるから、人の心の中に平和のとりでを築かなければならない」というユネスコ憲章の精神は、平和を求める日本にとっての希望であり、我が国は国内外において着実にユネスコ活動を広げてきました。また、日本ユネスコ国内委員会では、コロナ禍を踏まえた新たな時代におけるユネスコの役割等を議論し、「コロナ禍の時代におけるユネスコの役割と期待」として会長メッセージを取りまとめました。我が国としては、この節目の年を契機として,教育、科学、文化等の分野の関係者と連携しながら、持続可能な開発のための教育(ESD)の推進といった教育事業、またユネスコエコパーク、ユネスコ世界ジオパークといった科学事業などのユネスコ事業を通じ、平和で持続可能な社会の構築を目指すユネスコ活動をより一層推進していきます。その一環として、令和2年度より「ユネスコ未来共創プラットフォーム事業」を開始し、ユネスコの理念・活動の広報普及及び多様な関係者が連携する取組を進めています。

(1)持続可能な開発のための教育の概要

前述したように、ESDは持続可能な社会の創り手の育成を通じて、SDGsの実現に大きく貢献するものであり、新学習指導要領にも「持続可能な社会の創り手」の育成が掲げられています。また、ESDは教育に関するゴール(SDG4)の中で、持続可能な開発を促進するために必要な知識及び技能の習得に寄与するものとして記載されており、SDGsの17のゴールすべての実現への鍵であることが、令和元年12月の国連決議でも確認されています。

(2)ESDの国際的な動向

「ESDに関するグローバル・アクション・プログラム(GAP)」の後継枠組みとして、令和12年までのESDの新たな国際的な実施枠組みである「持続可能な開発のための教育:SDGs実現に向けて(ESD for 2030)」が令和元年11月の第40回ユネスコ総会で採択、同年12月の第74回国連総会で承認され、令和2年11月には、本枠組み下で取り組まれるべき具体的な行動を示すロードマップがユネスコにより公表されました。この新たな実施枠組みでは、ESDは全てのSDGsの実現に貢献し、持続可能な社会の構築に資すると捉え、ESDを更に推進していく方針となっています。また、令和3年5月にはESDに関するユネスコ世界会議がドイツ・ベルリンで開催予定であり、ESD for 2030の開始に当たりユネスコ加盟国全体でESDの更なる推進に向けて議論がなされる予定です。

(3)ESD推進のための具体的な取組

ESD for 2030に基づく各ステークホルダーの取組を促すため、持続可能な開発のための教育に関する関係省庁連絡会議(事務局:文部科学省,環境省)において、ESDに取り組むステークホルダーや有識者との意見交換を行いながら、新たなESD国内実施計画の策定を進めています。。文部科学省では、ユネスコスクール(ユネスコ憲章に示されたユネスコの理念を実現するため、ユネスコが認定する平和や国際的な連携を実践する学校)をESDの推進拠点と位置付け、ESD及びユネスコ活動の推進に取り組んできました。ユネスコスクールでは、カリキュラム・マネジメントや社会に開かれた教育課程等、ESDの実践に関する多くの優良事例が生まれており、それらを毎年ユネスコスクール全国大会(ESD研究大会)において共有しています。令和2年度の第12回大会では約800名の教育関係者がオンラインで参加し、①解決方法を探る、行動につなげる、②各学校の成果等を学校間、地域、国内外へつなげる、③学校の実践、取組を評価し、成果を広めるという三つの観点から、実践研究と分科会を実施しました。ユネスコスクール全国大会は、令和3年度も引き続き開催予定です。このほか、ESD推進に向けたユース世代による活動の促進にも取り組んでいます。

令和元年度からは、「SDGs達成の担い手育成(ESD)推進事業」を実施し、国内の教育現場におけるSDGsの実現の担い手を育むためのカリキュラム開発、教員の能力向上、評価手法の開発等に取り組む大学、教育委員会、及びNGO等を支援しています。また、環境省と文部科学省の協力により、持続可能な地域づくりと人づくりの官民協働プラットフォームである「ESD推進ネットワーク」を形成し、その拠点として全国の「ESD活動支援センター」及び「地域ESD拠点」が多様な活動を展開しています。

ユネスコを通じた世界的なESDの推進の取組として、日本政府の支援でユネスコが実施する「ユネスコ/日本ESD賞」があります。この賞は、世界中のESDの実践者にとってより良い取組に挑戦する動機付けと、優れた取組を世界中に広めることを目的に実施されるもので、2015年から2019年まで世界中からの推薦案件の中から毎年3件が表彰されたところです。2021年も秋に3件の選出・表彰が予定されています。

(4)ユネスコの科学事業を通じたSDGs実現への貢献

ユネスコ科学事業においても、SDGsへの貢献は共通の重要課題となっています。

まず、ユネスコの科学分野の登録認定事業として、ユネスコエコパーク及びユネスコ世界ジオパークがあります。ユネスコエコパークとは、自然と人間社会の共生に重点を置き、生態系の保全と持続可能な利活用の調和を目的とした事業であり、我が国では10か所登録されています。また、ユネスコ世界ジオパークは、国際的に価値のある地質遺産を保護し、そうした地質遺産がもたらした自然環境や地域の文化への理解を深め、科学研究や教育、地域振興等に活用することにより、自然と人間との共生及び持続可能な開発を実現することを目的とした事業で、我が国では9か所登録されています。両事業は、人々の生活と自然の調和を通じた、地域レベルでのSDGs達成を体現する取組としても注目されています。

さらに、海洋科学の分野では、2021年より「持続可能な開発のための国連海洋科学の10年」が開始しています。これは、海洋科学の推進により、持続可能な開発目標SDG14「海の豊かさを守ろう」等)を達成するため、2021年から2030年の10年間に集中的に取組を実施する国際枠組みとして、2017年12月の第72回国連総会で採択されたもので、ユネスコの政府間海洋学委員会(IOC)が実施計画策定機関となり、2018年から2年間の準備期間を経て、実施計画が2020年12月に第75回国連総会海洋及び海洋法に関する包括決議において、感謝とともに留意され、策定されました。

これらの分野や水科学などを含むユネスコの国際科学協力事業において、SDGsの実現に向けた取組を更に推進するため、文部科学省では、専門家の派遣やユネスコ日本政府信託基金の拠出等を通じて、IOCが実施する「持続可能な開発のための国連海洋科学の10年」等に関する事業や人間と生物圏(MAB)計画、政府間水文学計画(IHP)等の科学分野の人材育成事業等を支援しています。

2 OECD

経済協力開発機構(OECD)では、PISA(生徒の学習到達度調査)、PIAAC(国際成人力調査)、TALIS(国際教員指導環境調査)等の各種国際比較分析及び調査・研究などの教育事業が行われており、我が国も事業に参加・協力しています。平成30年度には、PISA2018及びTALIS2018の調査が実施され、令和元年度にはその結果が公表されました。

現在、OECDでは、2030年の時代に必要となるキー・コンピテンシー(主要な資質・能力)を策定し新たな教育モデルの開発を目指す「Education2030」事業を推進しており、文部科学省では、本事業のグローバル・フォーラムへの出席や共同研究等を通じて積極的に参画しています。令和2年度においては、5月と10月に各国の生徒や教員、政府関係者等が参加するバーチャルワークショップが開催され、我が国からも生徒や教員からコロナ禍での学校における取組事例を発表するなど、我が国の情報を世界へ発信しました。さらに、令和3年3月には、東日本大震災から10年の節目として、福島大学とOECDでの共催によるオンライン・ワークショップが開催されました。当日は日本各地や海外からの、生徒・学生や教員、その他の関係者が参加し、過去の経験を振り返るとともに新しい教育の在り方についてのディスカッションが行われました。

令和2年4月には「Education2030」事業において取りまとめられた「OECDラーニング・コンパス(学びの羅針盤)2030」における主要コンセプトの日本語訳がOECDのホームページ上で公表されました。同年11月には、本事業が各国に行ったカリキュラムの再編成に関する調査に基づいて各国の状況と課題をまとめた報告書(「What Students Learn Matters:Towards a 21st Century Curriculum」と「Curriculum overload:A Way Forward」)が刊行されました。新たな教育モデルを構築する際の参考として活用されることが期待されています。

3 APEC

我が国は、アジア太平洋経済協力(APEC)への参加・協力を通じた、教育及び科学分野での交流を行っています。その一環として、タイ及びマレーシアとの共同事業としてデジタル社会における情報教育のカリキュラムに関する調査研究を行い、APEC域内への普及とともに、人材育成やネットワーキングを図っています。

令和2年度には各参加エコノミーにおける新型コロナ感染症による教育への影響を調査し、課題に対する対処や将来への提言をまとめた報告書(「Education Response to COVID-19 in the Asia-Pacific Region:Challenges and Solutions」)がAPECにより作成され、APEC域内における知見の共有がなされています。

4 国連大学

国連大学は、我が国に本部を置く唯一の国連機関であり、文部科学省は、国連大学本部施設の提供を行っています。国内には本部とともに、「サステイナビリティ高等研究所」が設置されています。国連大学では、持続可能な開発目標(SDGs)をはじめ国連における重要課題の解決に向けて、研究活動を行うほか、大学院プログラムを開設し国内外から学生を受け入れています。国連大学大学院プログラムが授与する学位は、我が国国内法上も学位として認定されています。また、令和2年度からは、国内大学がSDGsを推進するため、国連大学がハブとなり、SDGsの理解促進及び戦略策定に関して連携・対話するフォーラムを構築する「SDG大学連携プラットフォーム」事業が実施されています。文部科学省は、毎年事業費を拠出し、これらの活動への支援・協力を行っています。

国際バカロレアの普及・拡大

国際バカロレア(IB)は、課題論文、批判的思考の探究等の特色的なカリキュラム、双方向・協働型授業により、グローバル化に対応した素養・能力を育成する教育プログラムです。政府としては、「2022年度までに我が国における国際バカロレア認定校等を200校以上」とするとの目標を掲げ、その導入推進に取り組んでいます。なお、令和2年11月現在で、我が国におけるIB認定校等は、161校となっています。

文部科学省では、平成30年度に「文部科学省IB教育推進コンソーシアム」を設立し、IBに関する情報プラットフォームの構築やシンポジウムの開催、国内の関係者を糾合した協議会の開催、国内大学入試における国際バカロレア資格及びスコアの活用促進などを行ってきました。令和2年度には、IB教育導入サポーターを導入し、IBが導入されていない地域やIB導入に関心のある学校に対して、IB教育を導入するためのノウハウ提供等の支援を実施しています。令和3年度も、IBの導入を希望する学校・教育委員会等に向けたきめ細やかな支援を引き続き推進していきます。

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