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重要有形民俗文化財の指定等について

文化庁文化財第一課

重要有形民俗文化財、重要無形民俗文化財の指定、登録有形民俗文化財の登録、記録作成等の措置を講ずべき無形の民俗文化財の選択が答申されました。

令和3年1月15日に開かれた文化審議会文化財分科会において、重要有形民俗文化財の指定1件、重要無形民俗文化財の指定5件、登録有形民俗文化財の登録2件、記録作成等の措置を講ずべき無形の民俗文化財の選択2件が答申されました。この結果、重要有形民俗文化財は224件、重要無形民俗文化財は323件、登録有形民俗文化財は46件、記録作成等の措置を講ずべき無形の民俗文化財は650件となる予定です。


重要有形民俗文化財の指定
上尾の摘田・畑作用具
埼玉県上尾市
摘田と呼ばれる水稲の直播き栽培と、麦を中心とする畑作に使用された用具の収集です。
上尾市は、大宮台地に位置し、農業は水はけのよい土壌を生かした畑作を基本とし、稲作は用排水路の設置が困難な地形的制約から、台地の谷内部やその周辺の湿地帯で行われてきました。
関東平野における台地上での農業経営や畑作地域における稲作の地域的様相を知ることができる資料群であり、我が国の稲作栽培や、農耕文化の変遷を理解する上で重要です。


重要無形民俗文化財の指定
放生津八幡宮祭の曳山・築山行事
富山県射水市
富山県射水市にある放生津八幡宮の秋季祭礼に行われる行事であり、13基の曳山が市内を巡行する「曳山行事」と、放生津八幡宮の境内に臨時の山を置き、神仏の人形などを飾る「築山行事」から構成されます。当地の曳山行事の形態は、近世後期以降、富山湾沿岸の港町に伝播し、放生津型曳山文化圏を形成しています。一方、築山行事は、全国的にも類例が少ない臨時の置山の行事で、曳山行事とともに伝承されていて貴重です。
北陸地方における祭礼行事の地域的展開や我が国における山・鉾・屋台行事の変遷を理解する上で重要です。


重要無形民俗文化財の指定
寒水の掛踊
岐阜県郡上市明宝寒水
寒水の掛踊は、岐阜県郡上市に伝承される大規模な風流の太鼓踊で、寒水白山神社の例祭で奉納されています。本件は、太鼓と鉦を打ちつつ踊る拍子打ち、拍子打ちを輪になって囲み、多様な踊りを見せる踊り手、踊り歌の歌い手により繰り広げられます。
近畿圏に多く伝承される風流の太鼓踊に見られる特色をよく伝えており、その分布や変遷の過程を理解する上で重要です。また、演者の出で立ちや、規模において独自性が認められることから、地域的特色も示しており重要です。


重要無形民俗文化財の指定
阿波晩茶の製造技術
徳島県勝浦郡上勝町、那賀郡那賀町、海部郡美波町
徳島県勝浦郡上勝町、那賀郡那賀町、海部郡美波町に伝承されている発酵茶の製造技術です。徳島県の山間地域に古くから伝承されており、他の地域にほぼ類例がなく、地域的特色が顕著な技術です。煎茶や番茶などの不発酵茶とは異なり、熱処理を加えて茶葉の酸化発酵が生じないようにした上で、更に漬け込んで乳酸発酵を促す特徴があります。
伝統的な製法が維持されており、我が国における発酵茶の伝承や製茶技術の地域的な展開を理解する上で重要です。


重要無形民俗文化財の指定
対馬の盆踊
長崎県対馬市
長崎県対馬市各地の村落において、旧暦7月の盆に踊られる風流踊です。各地区旧家の長男を中心とする男性によって踊られ、また、二列縦隊を基本隊形とする盆踊です。
本件は、成立背景も重層的で、複合的な内容を含んでおり、また、手振りや足使い、扇使いといった所作も独特です。九州最北端の離島である対馬における盆踊の展開や特徴をうかがわせる事例であり、芸能の変遷の過程や地域的特色を示して重要です。


重要無形民俗文化財の指定
野原八幡宮風流
熊本県荒尾市菰屋、野原、川登
熊本県荒尾市の菰屋、野原、川登の3地区にそれぞれ伝わる稚児による太鼓踊です。打手と称する二人の稚児が、それぞれ小太鼓と大太鼓を担当し、風流を演じます。
福岡県南部から熊本県北部にかけて分布する太鼓踊のうち、小太鼓と大太鼓のやりとりを今日によく伝える貴重な伝承であり、九州における風流の芸能の変遷の過程や地域的特色を示して重要です。


登録有形民俗文化財の登録
高野山奉納小型木製五輪塔及び関連資料
和歌山県伊都郡高野町
平成31年に高野山真別所圓通寺本堂の須弥壇から発見された木製の五輪塔群です。木箱15点に収納され、木箱の墨書などから。江戸時代の後期の製作と推定されます。
五輪塔の底部に奉納者等の銘文があり、資料性が高いこと、奉納者が全国にわたり、高野山の僧侶の広範な活動を伺うことができることなど、我が国における霊山信仰や死者供養の様相を考える上で注目されます。


登録有形民俗文化財の登録
鞆の鍛冶用具及び製品
広島県福山市
近世以来、船具に関する鍛造技術で全国的に知られた、港町の鞆における鍛冶用具と製品の収集です。
鍛冶用具は、船釘や錨などを製作するためのものが一式揃っており、また、製品は、鞆錨の名で全国的に知られた錨のほか、各地で木造船の建造に使われた船釘が多数収集されているなど、資料性が高いものとなっています。
瀬戸内海の沿岸地域における産業の特色や、我が国の鍛造技術の変遷を考える上で注目されます。


記録作成等の措置を講ずべき無形の民俗文化財の選択
用瀬の流しびな
鳥取県鳥取市用瀬町
鳥取県鳥取市用瀬町に伝承される女児の三月節供の行事です。晴れ着で着飾った女の子たちが雛人形に災厄を託して川に流し、無病息災や無事な成長を祈願するものです。
流しびなは、鳥取県では因幡地方で広く行われていましたが、伝承が途絶えた地域が多く、現在では当地に残るのみとなっており、我が国の民間信仰や節供行事の変遷を考える上で貴重です。


記録作成等の措置を講ずべき無形の民俗文化財の選択
松江のホーランエンヤ
島根県松江市
松江のホーランエンヤは、島根県松江市にある城山稲荷神社の船祭です。10年に一度の式年祭において、華やかに飾られた大船行列が神霊をともない往還します。
ホーランエンヤの唄に合わせた船祭は、日本海側や瀬戸内海の沿岸部に見られますが、本件は、数多くの祭礼船が集団的に往還する船祭として注目されます。また、式年祭の地域的な様相を知る上で貴重であり、我が国の船祭の変遷を理解する上で重要です。

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