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トップアスリートとの特別対談「スポーツ庁長官 室伏広治のアスリート近影」
羽根田卓也選手(カヌー)編 木村敬一選手(パラ競泳)編

スポーツ庁競技スポーツ課

室伏スポーツ庁長官が、トップアスリートの生の声に迫ります。
新型コロナウイルス感染症により、2020年、世界は一変しました。東京オリンピック・パラリンピックも1年延期となり、大きく変わってしまった日々の中で、トップアスリートはどのような想いで戦い、何を感じているのでしょうか。
日本を代表するアスリートの「今」に迫り、彼らの言葉や姿勢を通じてそれぞれの競技やアスリート自身の魅力、さらには社会におけるスポーツの力を発信していくため、トップアスリートと室伏スポーツ庁長官との対談を実施しました。
今回は、カヌー・スラロームの羽根田卓也選手とパラ競泳の木村敬一選手との対談内容を抜粋の上で一部編集して紹介します。

○:ファシリテーター 櫻木 瑶子 大臣報道官)

羽根田 卓也選手との対談
羽根田 卓也選手
 北京(2008)、ロンドン(2012)、リオデジャネイロ(2016)の3大会連続で五輪に出場。前回のリオ大会において、カヌーではアジア人として初のメダルとなる銅メダルを獲得。
※この対談は、2020年12月に実施したものです。

羽根田選手は、室伏長官からトレーニングの助言を受ける機会を2017年から設けているということですが、そのきっかけを教えてください。
羽根田選手
 室伏さんは、一番自分の身体と向き合っていて、自分の潜在能力を引き出したアスリートでもあり、ずっと憧れながら活躍を見ていました。そんな方から「トレーニングに来てみてよ」とお声かけをいただいたのでこれは是非と思い、門を叩きました。自分がやったことがないトレーニングばかりで、自分が気付いていないような感覚を呼び起こしてくれる、目から鱗のような体験をいろいろさせていただきました。それが新しい刺激となって、僕のカヌーにすごく今生きていると思います。

室伏長官
 今、コロナ禍でトレーニングはどうしていますか。

羽根田選手
 昨年の4~6月は、ジムにも行けず家の中だけでトレーニングをする時間が続いたんですが、そんなとき、室伏長官がいろんなものをトレーニングに活用したり、新たな手法を取り入れたりする、そんなトレーニングに対するクリエイティビティを思い出して、自分でもいろんなものをトレーニングに使って、どんな状況であっても前を向いて取り組む大切さを学んだ良い期間だったかなと思います。

室伏長官
 いろいろなことにチャレンジされていましたよね。それにより、幅が広がったとか、気持ち変わったということはありましたか。

羽根田選手
 いろいろなものに触れてみた時間の中で、お茶もやってみたのですが、お茶にはいろんな世界、考え、哲学があって、そういうものを学ぶことで、自分の人間力や人間としての強さにつながったと感じます。それが今年の東京オリンピックの本番の勝負強さにもつながると思うので、「出会い」は改めて大切だと思いました。

自粛期間中、自宅でのトレーニングをSNSで発信されていましたが、どういう思いで発信をされていましたか?
羽根田選手
 もちろん現役選手は競技に専念するのが一番の仕事ですが、スロバキア人のコーチに、「選手は自分だけの力じゃなくて、いろんなサポートや応援があって成り立っている。そういう支援をしてくださっている方々に対して、ポジティブな姿勢を発信することは、選手の義務である」と言われて、はっとしました。トレーニングの内容は以前から発信していたんですけど、それをもっと意識するようになって、コロナ禍で自分が発信することで、より皆さんを改めて勇気づけることができるんだなと実感しました。「勇気をもらいました」とか「私も僕も頑張ります」という声を頂いたので、それが自分の励みにもなって、お互いに相乗効果が生まれたんじゃないかと思います。

室伏長官
 私も、新聞紙を丸める運動などの家でもできるエクササイズを、スポーツ庁のホームページで紹介しています。

家でもできる、新聞を片手で丸めるエクササイズに、羽根田選手と室伏長官が挑戦!詳しくは動画を御覧ください。

室伏長官
 コロナ禍でこんな状況だからこそ、スポーツは大切だと私は思っています。競技スポーツのみならず、日本全体が元気になるような、こういうときこそスポーツが社会に貢献できることはあると思いますか。

羽根田選手
 私は、スポーツをやっているときは、没頭できるんです。何かに没頭できる瞬間って、人間として非常に幸せな瞬間じゃないかなと思っていて、それは必ずしも競技スポーツではなくて、おうちエクササイズでも何でも、体を動かすことで何か一つのことに集中できて、没頭することで、ちょっとしたストレスから離れることができたりするので、スポーツをするきっかけだとか、スポーツをやる前向きなマインドをアスリートとしても皆さんに伝えていくことができたらなと思っています。

羽根田選手
 スポーツ庁長官という立場で、競技としてスポーツに取り組んでいる選手に対してお願いや求めることはありますか?

室伏長官
 現役の選手が頑張っている姿そのものが、本当に皆の力になると思います。一方で、現役の選手は、発言力、発信力があり、羽根田選手が話すことで、若い人たちや同世代に共感が生まれるんじゃないかなと思います。若い人たちは注目していると思いますし、羽根田選手のような選手になりたいと思う人もいるわけですから、是非若い人の目標となって頑張ってほしいですし、また、スポーツの普及活動や振興にも是非御協力いただきたいと思います。

カヌー競技全体としてのレベルアップのために、第一人者としてどのように取り組みたいですか?
羽根田選手
 リオ大会をきっかけに、カヌー競技の認知度そのものは高まったと思うんですけど、日本は池もあるし湖、川、海にも囲まれて、水がたくさんある地域であるにもかかわらず、カヌーと触れ合う場所がないというのが、すごくもどかしいところです。選手だけでなく、レジャーから興味を持った方が、安心して選手に移行していけるような、幅広い世代の方が触れ合えるカヌーの土壌を日本で作れたらいいなと思っています。

室伏長官
 スポーツ庁としては、日本のスポーツ界全体を盛り上げていきたい。今おっしゃったように、できるだけ多くの方が参加しやすい環境にしたいと思います。正に羽根田選手を見てカヌーをやってみたいなという人がいても、どこでやったらいいのかなと、うまくそのマッチングができると、楽しむレジャーとしてのカヌーが広がり、競技人口も増えていく可能性もあると思います。そういった点からも是非協力していきたいですね。

日本として5年後、10年後、カヌーはどういう環境であるべきだと思いますか?
羽根田選手
 東京オリンピックのカヌー会場をきっかけに、カヌー競技を知ってもらったり、カヌーだけでなくウォーターアクティビティに非常に触れ合いやすい施設になっていますので、いろんなものに活用しながら、カヌーについても知っていただけたらと思っています。

この動画を御覧になっている国民の皆さんへ一言
羽根田選手
 今はとても特殊な状況で、それぞれ大変なことがあると思います。僕は僕の目標に向かってまっすぐ進んでいって、その過程でスポーツの力やスポーツの魅力を伝えながら、皆さんと一緒にこの状況を乗り越えていければいいなと思っています。

木村 敬一選手との対談
木村 敬一選手
 北京(2008)、ロンドン(2012)、リオデジャネイロ(2016)の3大会連続でパラリンピックに出場。前回のリオ大会では、日本人最多となる銀メダル2個、銅メダル2個を獲得。
この対談は、2020年12月に実施したものです。

競技を始めたきっかけは何だったのでしょうか?
木村選手
 生まれつきの全盲でほぼ見えない中で生活をしていたのですが、子供のころから運動はすごく好きだったみたいで、怪我がとても多かったのを母親が心配して、限られた空間の中で運動する分には安全なのかな、と考えた母が、小学校4年生のときにスイミングスクールに入れてくれたのが始まりでした。

前回のリオ大会で、100mバタフライでは銀メダルでした。どう感じられたでしょうか。
木村選手
 悲しかったですね。世界ランク1位の状態で臨んでいましたし、前年の世界選手権では優勝していたので、自分でも勝てるっていう自信があっやってきたと思ったので、「悔しい」っていうのは、まだ何か悔いがあるときに出てくると思うんですけど、もうそれ以上何したら良いか分からなかったので、悲しかったです。

東京大会に向けて、拠点をアメリカに移されていますが、アメリカを選んだ理由を教えてください。
木村選手
 リオまでの4年間ですごく頑張ったつもりだったので、それでも届かなかったってなると、それ以上のことをしなきゃいけなくて、でもそれをやるっていう自信がなかったんですよね。同じ環境の中で続ける自信がなかったので、何か思いきり変えないと、もう続けたくないなって思っていて。それで拠点を変えて挑戦したっていう言い方をしてくれる人もいるんですけど、どちらかと言うと、日本で続けることから逃げ出して、違う環境でやってみた、という感じですね。

室伏長官
 実際のトレーニングの環境などはどう違うのでしょうか。

木村選手
 指導者自身は、過去にもアメリカ代表のパラリンピック選手を指導していた経験がある方なので、パラリンピックに対する理解だとか、そういうものは最初からあったという状況ではありました。ただ、トレーニングする環境は、今、日本のナショナルトレーニングセンターに敵うところは多分ないんじゃないかなと思います。決して(アメリカの方が)プールがすごく良いとか、トレーニングジムがすごく充実しているということでもなく、食生活も日本人に合っているわけではなかったので。そういう環境面だけで言うと、アメリカの方がものすごく良かったわけではないと思うんです。ただ、もう全てが新鮮で、そこでやっている自分が、日々強くなっているというのを実感していました。もちろん、言葉もしゃべれなかったですし、何するにしても、いろいろ考えて一生懸命やる必要があったので、呼吸しているだけでも自分成長しているなって思いました。楽しかったなと思います。

室伏長官
 木村さんが海外に、単身で行かれて取り組んだことは、今後のアスリートにもやっぱり影響が必ずあると思いますね。ボーダーレスで取り組んで、試合をしたり、トレーニングをするというのは、すごく大事なことですしね、きっと友達だったり知り合いもできて、交流もあったと思いますので。

現在、日本での練習拠点はどうされているのですか。
木村選手
 ナショナルトレーニングセンターで、パラ選手も使える東館の方を使わせてもらっています。以前は、毎日、明日どこのプールで泳ごうと考えていたのが、今ではナショナルトレーニングセンターを予約すればコースを貸してもらえて、食事も施設内でとれて、宿泊もできてトレーニングもできて、快適ですよね。トレーニングに本当に全てのエネルギーを注げる環境ですね。また、トレーニングセンターでは、すごく厳しい感染症対策をしていて、毎日、行動記録と体温は全部一括して、各自に割り当てられたアカウントから入力するようになっていますし、何か異常があれば一切利用できません。間仕切りとかも至る所にあり、練習後の道具とかプールとかの消毒もしていますね。

室伏長官
 スポーツ庁としては、競技団体に行動計画書などをきちんと出していただきながら、できるだけふだんどおりトレーニングができるように、対策を練っています。思う存分トレーニングをしていただきたいと思います。

コロナ禍の中で、改めてスポーツの力というのは、どういう力があると感じますか?
木村選手
 やはり選手達が思い切りプレーしている姿というのは、何か元気をもらうものがあるなと思いました。それを、僕ら選手は体現できるからこそ、そこから何か発信する力を自分たちは持っているのかもしれないなと、自分が何かできることってあるんだなということを感じました。

室伏長官
 自分が頑張ることで皆を元気にさせることができるんじゃないかと思った、スポーツにはそういう力があると自覚されたことはすばらしいと思います。私は、現役時代の終盤の2011年に、東北の被災地に3か月後に行きました。友達を亡くしてしまったり、家を流されてしまったりという子たちがいて、一緒にスポーツや運動をすることで、最後笑顔になって、前向きになってくれました。彼らが当時は中学生だったのが、今では立派な大人になって、地元を牽引しているわけですから、そういう姿を見ると、やっぱりスポーツって力があるなと。アスリートが積極的に困ったところに行って、元気づけてあげることでも、若い人たちは影響を受けると思います。木村選手は、多くの方を元気づけることができる方だと思いますから、是非頑張ってほしいですね。

室伏長官
 東京大会が招致されて今に至るまで、障害者スポーツをとりまく環境はどう変わってきていて、今後どういうふうになっていく、また我々の描く将来のビジョンとしてどういったことが考えられると思いますか?

木村選手
 もう随分大きく変わってきたと思っています。具体的にはトレーニングの環境ですね、施設や支援額が以前とは全然違うと思うし、関わってくださる方の人数も全然違うパラのトップアスリートをとりまく環境はすごく変わって、進んできているなと思うんですよ。ただ、これが、どのレベルまで浸透して変わってきたのかが分からないなと。今トップでやっている選手がいなくなったときに、下から上がってくるというのはどれくらい現実的なのかなというのはよく分からない。大学に進むとか、企業に入るとか、支援を受けるチャンスはすごく増えてきていると思うんです。だから、本当に過渡期であって、今恐らく一番いろいろ考えないといけない、乗り越えていかないといけないときなのかなというふうに思っています。

室伏長官
 日本全国、自治体でも障害者スポーツの実施環境をより一層整えるよう取り組んでいく必要がある。

木村選手
 一般の方にも、障害者スポーツを知ってもらえるようになったなというのは凄く感じていて、SNSの反響やフォロワーが増えたり、メディアに取り上げていただけることが増えて、パラリンピックという言葉自体を知らない人はほとんどいないのではないかと思います。障害を持った人がスポーツをしていることに対するリスペクトもすごく持ってくれていると感じるので、そのあたりの変化が大きいです。

この動画を御覧になっている国民の皆様に一言
木村選手
 東京大会では、僕自身は、まだ獲っていない金メダルをしっかり獲得したいと思っています。また、海外の選手たちは凄く東京という街に期待してくれているなと思っていて、日本に行くこと、東京で泳ぐことを楽しみにしてくれている。僕は選手であると同時に、一人の日本人として、彼らを出迎える、ホストする立場で、東京って良かったなとか、良い大会だったなと思ってくれるような、大会にしていきたいなと思っています。

全体の対談の様子はスポーツ庁HPから御覧ください。この他の選手の対談につきましても、準備のできたものから順次公開し、次回以降の文部科学広報で紹介いたします!

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