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「伝統建築工匠の技:木造建造物を受け継ぐための伝統技術」のユネスコ無形文化遺産登録
(代表一覧表への記載)について

文化庁文化資源活用課

令和2(2020)年12月17日、オンラインで開催された第15回無形文化遺産保護条約政府間委員会において、日本が提案した「伝統建築工匠の技:木造建造物を受け継ぐための伝統技術」の代表一覧表への「記載」が決議されました。無形文化遺産保護条約と今回記載された内容について紹介します。

無形文化遺産保護条約
無形文化遺産を保護することを目的として、平成15(2003)年10月のユネスコ総会において、「無形文化遺産の保護に関する条約」が採択され、平成18(2006)年4月に発効しました。日本は平成16(2004)年6月に世界で3番目に締結し、2020年12月現在、締約国は180か国となっています。この条約の最高機関として締約国会議が、また、条約実施のための運用指示書の作成、「人類の無形文化遺産の代表的な一覧表」(以下「代表一覧表」という。)や「緊急に保護する必要がある無形文化遺産の一覧表」の作成等を担う機関として無形文化遺産の保護のための政府間委員会が設置運営されています。
社会や集団、又は個人が担い手となり体現する無形文化遺産は、文化の多様性、人類の創造性を高めるという意味でそれぞれが重要であり、相互に価値の優劣はないという理念の下で条約が運用されているため、代表一覧表は、「顕著な普遍的価値」を基準に含む世界遺産(一覧表)とは位置付けが異なります。我が国は、このような条約の趣旨を踏まえ、日本全国各地域に存在する無形文化遺産の多様性や豊かさ、保護の取組等について、国際社会に積極的にアピールしていくという観点から、代表一覧表の作成が始まった当初から、提案を行ってきました。

第15回政府間委員会の結果
令和2(2020)年12月14日から12月19日(パリ現地時間)にかけて、オンラインで、ユネスコ無形文化遺産保護条約第15回政府間委員会が開催されました。今回の委員会はジャマイカ・キングストンでの開催が予定されていましたが、世界的な新型コロナウイルスの蔓延により、議事を限定しての、オンラインでの開催となりました。事務局のあるフランス・パリと議長国であるジャマイカ、そして全世界がオンラインでつながるという、これまでとは異なる委員会形式で、新たな光景で議論が展開されました。
12月17日(日本時間の同日夜)、我が国から提案した「伝統建築工匠の技:木造建造物を受け継ぐための伝統技術」(以下、「伝統建築工匠の技」という。)が審議され、決議の採択を示す議長の木槌が鳴らされ、代表一覧表に「記載」(登録)されることが決定しました。これにより、代表一覧表に記載された我が国の無形文化遺産は22件(世界全体の記載件数は492件)となりました。なお、今回記載された「伝統建築工匠の技」は、平成21(2009)年に提案したものの当時のユネスコ事務局の状況もあり、未審査となっていた「建造物修理・木工」について、近年の国内外における無形文化遺産をめぐる様々な動向を踏まえ、国選定保存技術(保存団体認定)の17件を構成要素としてグループ化し、平成31(2019)年3月に、提案したものです。国の選定保存技術からの初めての記載例となりました。

「伝統建築工匠の技:木造建造物を受け継ぐための伝統技術」
「伝統建築工匠の技」は、木・草・土などの自然素材を建築空間に生かす知恵、周期的な保存修理を見据えた材料の採取や再利用、健全な建築当初の部材とやむを得ず取り替える部材との調和や一体化を実現する高度な木工・屋根葺・左官・装飾・畳製作など、建築遺産とともに古代から途絶えることなく伝統を受け継ぎながら、工夫を重ねて発展してきた伝統建築技術です。
木工・屋根葺・左官・装飾・畳などの伝統建築修理の技術は、木・草・土などの脆弱な自然素材で地震や台風に耐える構造と豊かな建築空間を生み出し、木造の歴史的建築遺産に不可欠な保存修理を実現する高度な技術で、棟梁を中心とする職種を越えた組織の下、伝統を受け継ぎながら、工夫を重ねて発展してきました。
また、歴史的建築遺産と技術の継承を実現する適切な周期の保存修理は、郷土の絆や歴史を確かめる行事でもあり、多様な森や草原等の保全を木材、檜皮、茅、漆、い草などの資材育成と採取のサイクルによって実現するなど、持続可能な開発に寄与しています。「伝統建築工匠の技」は、法隆寺をはじめとする我が国が誇る木造建造物や、日本の建築文化を支える無形文化遺産の保護・伝承の事例で、有形・無形の文化財とそれを支える技術や材料採取までを保護する日本の文化遺産保護制度の特色を示してもいます。
政府間委員会では、審査において特に、このような「伝統建築工匠の技」について、無形文化遺産と有形文化遺産の関係性を示していることや持続可能な開発に沿っていること、コミュニティの参画の模範的な事例となること等が“good example”として高く評価され、記載(登録)が決定しました。


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