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特集
新たな宇宙開発時代の幕開け

研究開発局宇宙開発利用課

米国提案の国際宇宙探査計画「アルテミス計画」を契機として、世界の宇宙開発は今後大きく展開していくことが予想されています。月面探査活動や、日本人宇宙飛行士の活躍の機会確保に向けた取組、民間活力の活用等今後の日本の取組のほか、国際宇宙ステーションにおける協力やはやぶさ2によるサンプルリターンなど、これまで世界の宇宙開発をリードしてきた日本の技術・経験について御紹介します。


アルテミス計画への参画

米国提案の国際宇宙探査計画「アルテミス計画」への参画

 1969年、アポロ11号が月面着陸に成功し、人類が新たな活動領域の開発へ向けた偉大な一歩を踏み出しました。約50年経った今、多くの国で月や火星の探査ミッションが計画される中、米国は再度人類を月へ送る構想を表明しました。米国は、各国と協力し、月の周りを回る有人宇宙ステーション「ゲートウェイ」を建設するとともに、月での持続的な活動に必要な技術を獲得し、それらを足掛かりに、2030年代に火星に人類を送ることを計画しています。この壮大な構想は、ギリシャ神話のアポローンの双子の女神の名前から、「アルテミス計画」と名付けられました。
 アルテミス計画への参画は、外交・安全保障、国際競争力・国際的プレゼンスの向上、非宇宙分野も含む多様な産業の拡大、火星など更なる深宇宙探査の推進等の観点から意義を有することから、我が国では、令和元年10月に同計画への参画を政府決定しました。政府が宇宙開発利用に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るために策定している宇宙基本計画においても、令和2年6月の改訂により、アルテミス計画参画の機会を活用し、日本人宇宙飛行士の活躍の機会を確保する等、宇宙先進国としてのプレゼンスを十分に発揮しつつ、政府を挙げて、我が国にとって意義ある取組を戦略的・効率的に進めていくことが明記されました。
 アルテミス計画への参画に当たっては、ゲートウェイへのバッテリー等の機器提供、物資補給、月面の着陸地点の選定等に資する各種データの取得・共有、月探査を支える移動手段となる与圧ローバの開発といった我が国にとって優位性や波及効果の高い技術の獲得・蓄積を目指しつつ、貢献することとしています。

日本人飛行士の活躍へ向けて共同宣言へ署名

 令和2年7月には、萩生田文部科学大臣とブライデンスタインNASA長官が「月探査協力に関する文部科学省と米国航空宇宙局の共同宣言(JEDI)」に署名しました。本共同宣言においては、アルテミス計画に対する我が国の協力内容を具体化するとともに、日本人宇宙飛行士をゲートウェイや月に送り出すことについて、その詳細を今後更に協議することについて合意しました。本共同宣言により、日本人が史上初めて月に降り立つことに向けて大きな一歩を踏み出しました。

安全で持続的な宇宙探査活動のために

 令和2年10月には、アルテミス計画を含む幅広い宇宙活動における科学的データの適切な公表や宇宙ゴミの排出抑制等の諸原則について、各国との共通認識を示す政治的宣言である「アルテミス合意」に萩生田文部科学大臣と井上宇宙政策担当大臣が署名しました。我が国の他、米国、カナダ、イギリス、イタリア、オーストラリア、ルクセンブルク、UAEの計8か国が署名し、その後ウクライナが署名するなど、今後も署名国が増える見込みです。本合意は、アルテミス計画を各国と協力して、安全かつ持続的な宇宙活動を実施していく上で重要な宣言であり、同計画を含む宇宙探査活動が一層推進されることが期待されます。


日本人宇宙飛行士の活躍

野口宇宙飛行士の国際宇宙ステーション長期滞在

 令和2年11月16日午前9時27分、野口聡一宇宙飛行士、ほか3名の米国人宇宙飛行士が搭乗するクルードラゴン宇宙船が国際宇宙ステーション(ISS)に向けて米国NASAケネディー宇宙センターから打ち上げられ、その約一日後に無事到着し、約半年間のISS滞在を開始しました。滞在中には、iPS細胞を利用した生命科学実験や国際宇宙探査に向けた技術実証などを行う予定であり、我が国の未来の発展につながるような活躍が期待されます。
 また、野口宇宙飛行士を載せたクルードラゴンは、米国の民間事業者であるスペースX社が開発したもので、野口さんの打上げが、その運用初号機となります。クルードラゴン宇宙船に搭乗する米国以外の搭乗員第一号が日本人宇宙飛行士となったことは、日本人宇宙飛行士のこれまでの活躍と日本の有人宇宙活動の成果の証であり、我が国の国際的な地位の向上の観点からも大きな意義があります。

星出宇宙飛行士、国際宇宙ステーション船長就任へ

 さらに、令和3年の春ごろには、野口宇宙飛行士に続き、星出彰彦宇宙飛行士が、クルードラゴン宇宙船の運用2号機に搭乗し、ISSに向けて打ち上げられる予定となっています。星出宇宙飛行士は、約半年間のISS滞在中、船長を務める予定であり、これは、星出飛行士の能力が高く評価された結果であるとともに、日本実験棟「きぼう」や宇宙ステーション補給機「こうのとり」の着実な運用を通じて、我が国が国際的な信頼を築いていることの表れと考えています。

新たな日本人宇宙飛行士の募集について

 このように、日本人宇宙飛行士が目覚ましい活躍をされている中、令和2年10月23日に、萩生田文部科学大臣は、令和3年秋頃から、新しい宇宙飛行士の募集を開始することについて発表しました。
 この背景には、先述の令和2年7月の文部科学大臣とNASA長官による月探査協力に関する共同宣言によって、ゲートウェイや月面における日本人宇宙飛行士の活躍機会の見通しが得られたことに加え、令和2年10月13日(米国時間)に、アルテミス合意に我が国を含む8か国が署名したことなどにより、国際宇宙探査や月探査に向けた機運が高まっていることが挙げられます。
 また、文部科学大臣は、今後、一定規模の宇宙飛行士の数を維持するため、5年に1度程度の頻度で募集を行うことを想定していることも、併せて発表しました。これにより、将来宇宙飛行士になることを希望する方々に、一定の予見性をもっていただけると考えています。今回、様々な事情で応募することができない方も、次回や次々回に向けて検討していただければと考えています。
 募集開始までの1年程度の期間において、応募を希望される方々には、十分な準備をしていただきたいと思います。また、文部科学省としても、宇宙航空研究開発機構(JAXA)と協力しながら、様々なイベントや広報活動を行っていきたいと考えています。


ロケット・補給機の運用・開発

世界最高水準の基幹ロケット及び補給機

 他国に依存しない自立性の高い宇宙活動を実現するためには、我が国の安全保障の確保や災害対策・国土強靱化等に貢献する衛星等の打上げに必要な基幹ロケット等の宇宙輸送システムを、自立的に開発・運用できる能力を継続的に強化することが重要です。
 このため、文部科学省では、H-ⅡA/Bロケット、イプシロンロケット、H3ロケットを基幹ロケットに位置付け、運用及び開発・高度化を推進しています。我が国の基幹ロケットは、世界最高水準となる打上げ成功率と打上げのオンタイム率(あらかじめ定められた日時に打上げを行った割合)を実現しています。特に、H-ⅡBロケットについては、ISSに物資を輸送する宇宙ステーション補給機「こうのとり」(HTV)の打上げを担い、今年5月の9号機の打上げをもって運用を終了しましたが、これまでの9回すべての打上げに成功するとともに、天候による打上げ延期を除き、打上げのオンタイム率も高く、我が国の技術の信頼性の向上に大きく貢献しています。「こうのとり」については、最大約6トンという世界最大級の補給能力を備えており、宇宙飛行士の生活に必要不可欠な水・食料に加え、大型実験装置やISS運用の根幹を支えるバッテリーなどISSに大型装置を輸送できる唯一の手段であり、また各国が現在運用している物資補給機の中で唯一の成功率100%を誇っており、各国からの期待を集めました。

新たな基幹ロケット及び補給機の開発

 加えて、欧米の大型ロケットとの国際的な市場獲得競争が進む中で、我が国の基幹ロケットの国際競争力の更なる強化に向けて、民間企業と連携して、新たな基幹ロケットとしてH3ロケットの開発を進めています。H3ロケットは、これまでのH-ⅡA/Bロケットの技術を継承し、我が国の強みである高い信頼性を確保するとともに、打上げ能力の向上、打上げ間隔の縮減、費用の低減を図ることとしています。令和3年度の試験機初号機、令和4年度の試験機2号機の打上げを目指して、新型のメインエンジンであるLE-9の燃焼試験を進めるなど、着実に開発を進めています。また、H3ロケットの固体ロケットブースタ等の開発成果をイプシロンロケットに適用することで、H3ロケットとのシナジー効果を発揮してイプシロンロケットを低コスト化するための開発も進めています。
 さらに、H3ロケットは、「こうのとり」の後継機として開発が進められている新型宇宙ステーション補給機(HTV-X)の打上げにも活用される予定です。HTV-Xについては、「こうのとり」の経験を活かして、ISSへの輸送能力を向上させることによる輸送コストの大幅な削減や、ゲートウェイへの物資補給を含む様々なミッションへの応用も目指して開発を進めています。


民間活力の活用

宇宙探査イノベーションハブの取組

 野口宇宙飛行士が搭乗した宇宙船は、民間事業者が開発したものでした。このように、宇宙開発に民間が主体的に関わる機会は、今後も増えていくことが予想されています。また、将来、月面での本格的な活動を行っていく上では、エネルギー、通信、土木建築、食料生産、物流、医療、エンターテイメント等の従来の宇宙関連分野を超えた多様なプレーヤーの参加が不可欠です。
 一方、非宇宙関連分野の企業にとって宇宙開発への参加は容易なものではありません。そこで、将来の探査に必要となる、開発要素のある技術分野について、JAXAから知見を持つ民間事業者に広く参加を呼びかけ、採択課題を共同で研究する「宇宙探査イノベーションハブ」(探査ハブ)という仕組みができました。
 探査ハブの最大の特徴は、宇宙と非宇宙の異分野融合によってイノベーションを創出し、その成果(技術)を使って民間は専門的な支援を受けながら地上での事業化を、JAXAは宇宙実証を協力しながらも分担して行う点です。地上で事業を行っている間は、技術の維持、向上、発展が民間事業者によって自ずと図られます。こうして維持・蓄積される知見が、JAXAの技術実証や将来の月面活動に活かされることが期待されます。
 探査ハブには、平成27年度からこれまでに非宇宙企業93社を含む約150機関が共同研究に参加しています。

宇宙イノベーションパートナーシップ(J-SPARC)

 近年、国内外でベンチャー企業を含む民間企業の宇宙活動が活発になっていますが、今後、宇宙分野の産業・科学技術基盤の更なる強化に向けて、民間企業の参入を促進し、国と民間企業が連携して技術開発・事業創出を進めていくことが重要です。
 このため、JAXAでは、ベンチャー企業を含む民間企業等を主体とする事業を出口とした技術開発・実証等を行う共創型研究開発プログラムである「宇宙イノベーションパートナーシップ」(J-SPARC)を平成30年5月から開始しています。
 J-SPARCでは、民間企業等とJAXAがそれぞれの強み・リソースを持ち寄り、新たな宇宙関連事業の創出や宇宙分野に閉じることのない技術革新を目指しています。共創プロジェクトには、事業コンセプト及び事業計画等の企画及び検討や技術的実現可能性の検討を共同で行う「コンセプト共創タイプ」、事業計画の実施に向けて必要な共同技術開発及び実証を行う「事業共同実証タイプ」があります。この他、共創プロジェクト化を目指した事前対話活動や新規のマーケットを創出する活動など事業化促進に資する活動などの取組も進めています。
 これまでにJAXAは民間企業等との250件以上もの事前対話活動を行い、その結果、ベンチャー企業や非宇宙企業を含む民間企業と連携して30を超える共創プロジェクト・活動を実施してきました。例えば、JAXAの技術的知見を活用して、小型ロケットの開発や小型衛星によるデータ提供サービス事業を目指すベンチャー企業への支援等を行うとともに、ISSの日本実験棟「きぼう」と地上の双方向ライブ番組配信システム等を核とした宇宙メディア事業の実証など、宇宙を楽しむことをテーマとしたこれまでにない新たな事業の創出にも繋がっています。また、宇宙食の保存技術を応用した長期間保存可能なゼリーやJAXAが保有する月データを活用して宇宙を疑似体験できる教育コンテンツの販売など、既に事業化に繋がった事例もあり、引き続き、新たな事業の創出に資する取組を推進していくこととしています。


宇宙科学探査の取組

小惑星探査機「はやぶさ2」が帰還

 科学探査については、これまでブラックホールや超新星爆発などの高エネルギー現象を観測するX線天文衛星等の人工衛星の開発・運用や、小惑星探査機「はやぶさ」による小惑星「イトカワ」からのサンプル採収、X線・赤外線天文観測や月・惑星探査等の分野で世界トップレベルの業績を上げてきました。平成22年5月に打ち上げられ、平成27年12月に金星周回軌道へ投入された金星探査機「あかつき」は、金星大気における「スーパーローテーション」の維持メカニズムの解明につながる成果を上げ、平成28年12月に打ち上げたジオスペース探査衛星「あらせ」は、オーロラの発生プロセスを同定するプラズマの波の変動をとらえることに成功するなど、太陽と地球の相互作用等の理解の深化に大きく貢献しました。平成26年12月に打ち上げられた小惑星探査機「はやぶさ2」は、平成30年6月に小惑星「リュウグウ」に到着し、探査ローバによる探査、小惑星表面への人工クレーター形成、同一小惑星への2回の着陸(タッチダウン)成功など数々の世界初の快挙を成し遂げました。令和2年12月5日、「はやぶさ2」は、地球近傍でサンプルが封入されたカプセルを分離し、大気圏に再突入させ、カプセルは、同6日にオーストラリア南部の砂漠地帯に着陸し回収されました。日本への輸送後JAXA相模原キャンパスにおいてカプセル開封作業を行った結果「リュウグウ」から持ち帰ったサンプル量が約5.4グラムと確認され、目標値の0.1グラムを大幅に上回る結果となりました。今後サンプルの詳細分析が行われることにより、太陽系の起源や進化、地球における生命の原材料物質の解明につながることが期待されています。一方、「はやぶさ2」の探査機本体は、約11年をかけて新たな小惑星の探査に向かっています。探査機を長期間航行させる技術の獲得や将来地球に衝突する恐れのある小惑星の構造等を分析し、衝突回避や衝突時の被害の最小化等に資する研究につなげる予定です。なお、「はやぶさ2」が数々の世界初の偉業を成し遂げ我が国の宇宙探査の技術力の高さを実証し、学術の振興に貢献したとして、同17日にJAXAの「はやぶさ2プロジェクトチーム」が内閣総理大臣顕彰を受賞しました。このほか、欧州宇宙機関との国際協力による水星探査計画(BepiColombo)において我が国が開発を担当した水星磁気圏探査機「みお」(平成30年10月打上げ)が、水星への航行を続けており、令和7年に水星に到着する予定です。

月や火星の探査開始へ

 また、令和4年度に打ち上げを予定している我が国初となる月への無人着陸を目指す小型月着陸実証機(SLIM)は、「降りたいところに降りる」高精度のピンポイント着陸技術の実証を目指しており、得られた技術や月に関する観測データを米国等に提供することでアルテミス計画に貢献することが国際的に大きく期待されています。その他、ブラックホール等のX線で観測される高エネルギーの天体を観測するX線分光撮像衛星(XRISM)を令和4年度に打ち上げる予定です。また、火星衛星の起源や火星圏の進化の過程を明らかにするため、サンプルリターンを行う火星衛星探査計画(MMX)では、令和6年度に探査機を打ち上げる予定です。国際宇宙探査の主たる目標である火星圏探査に日本が優位性を持つ小天体探査技術を活用して参画することで、我が国が大型国際共同計画を主導し、探査技術の継承・発展に寄与することが期待されています。今後これらの計画を実行することにより、さらなる国際的なプレゼンスの向上や、人類のフロンティア拡大に資する宇宙科学分野の研究開発を推進していきます。


アジア・太平洋地域との連携

アジア・太平洋地域最大規模の宇宙機関会議を開催

 文部科学省ではアジア・太平洋地域において、宇宙活動、利用に関する情報交換並びに多国間協力推進の場としてアジア・太平洋地域宇宙機関会議(APRSAF)を開催しています。APRSAFは平成5年の設立以来、JAXA及び地域の宇宙機関とともに毎年1回程度開催しており、各国の宇宙機関や行政機関をはじめ、民間企業、大学・研究所など様々な組織から、これまで50を超える国・地域及び国際機関からの参加を得て、同地域最大規模の宇宙関連会議へと発展しました。
 令和元年11月には、名古屋で第26回会合を、「新たな宇宙時代を拓く多様な繋がりの発展」というテーマの下開催しました。本会合では、過去25年間のAPRSAFの活動を振り返るとともに、次の25年間を見据えて今後10年間で取り組む目標「名古屋ビジョン」を掲げました。名古屋ビジョンでは、広範な社会課題の解決、人材育成、政策実施能力の向上、ニュープレイヤーの参画促進の四つに目標を置いています。
 令和2年は、新型コロナ感染症拡大の状況に鑑み、オンラインイベント「APRSAFオンライン2020」を開催し、44か国から620名が参加しました。本イベントでは、「距離を超えた宇宙ビジョンの共有」をテーマに、スタートアップ企業や国際機関、研究機関を代表する多様なプレーヤーが、特に宇宙ビジネスの拡大に向けた方策について議論しました。また、地域内の宇宙機関長等が一堂に会し、新型コロナ感染症拡大を踏まえ、今後の持続可能な宇宙活動や社会課題への貢献について意見を交わしました。


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