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特集
中央教育審議会初等中等教育分科会
「令和の日本型学校教育」の構築を目指して(中間まとめ)について

文部科学省初等中等教育局初等中等教育企画課

Society 5.0時代の到来や新型コロナウイルスの感染拡大といった急激に変化する時代の中で、2020年代を通じて実現を目指す学校教育の姿について、中央教育審議会初等中等教育分科会において御議論いただき、令和2年10月7日に「令和の日本型学校教育」の構築を目指して(中間まとめ)がとりまとまりました。 本稿では、中央教育審議会初等中等教育分科会における審議状況と、「中間まとめ」の概要について御紹介いたします。

はじめに
人工知能(AI)、ビッグデータ、Internet of Things(IoT)、ロボティクス等の先端技術が高度化して、あらゆる産業や社会生活に取り入れられたSociety 5.0時代が到来しつつあり、社会の在り方そのものがこれまでとは「非連続」といえるほど劇的に変わる状況が生じつつあります。
このように変化し続ける社会状況を見据え、初等中等教育の現状及び課題を踏まえてこれからの初等中等教育の在り方について総合的に検討するため、平成31年4月17日に開催された中央教育審議会総会において、文部科学大臣から、「新しい時代の初等中等教育の在り方」について諮問を行いました。
諮問の内容は大きく以下の4点です。
①新時代に対応した義務教育の在り方
②新時代に対応した高等学校教育の在り方
③増加する外国人児童生徒等への教育の在り方
④これからの時代に応じた教師の在り方や教育環境の整備等
本諮問は非常に多岐にわたる内容となっているため、中央教育審議会初等中等教育分科会(以下、「分科会」という。)の下に「新しい時代の初等中等教育の在り方特別部会」(以下、「特別部会」という。)が設けられ、教育課程部会や教員養成部会等、関係する部会や有識者会議等とも連携しつつ、諮問全体について横断的に審議が進められています。

令和元年12月には、分科会において、これまでの審議を踏まえた論点取りまとめが行われました。論点取りまとめでは、2020年代を通じて実現を目指す新しい時代を見据えた学校教育の姿として、多様な子供たちを誰一人取り残すことのない個別最適な学びの実現や、その学びを支えるための質の高い教育活動を実施可能とする環境の整備が示されました。その上で、このような教育を実現していくために必要な方向性が示されるとともに、今後検討を行うべき論点がまとめられました。

審議の経緯(新型コロナウイルス感染症の拡大を受けて)
その後、論点取りまとめを踏まえ、更に議論を深めるべく、関係部会等での審議が進められる中、新型コロナウイルス感染症の拡大という危機に直面し、会議の中止や延期を余儀なくされました。また、本年3月からは、全国で臨時休業の措置が取られ、長期にわたり、子供たちが学校に通えないという事態が生じました。
この事態を受け、分科会及び特別部会においては、オンラインで緊急会議が開催され、4月30日に、臨時休業等により学校に登校できない子供たちへの支援と学校再開後の在り方について、「全国の学校教育関係者の皆さんへ」と題したメッセージが発表されました。
さらに、今般の新型コロナウイルス感染症の拡大によって大きな注目が集まった遠隔・オンライン教育を含むICTの活用についても集中的な議論が行われました。ウィズコロナ、ポストコロナのそれぞれの段階において、ICTを活用してどのように子供たちの学びを保障・充実させていくことが必要かが議論され、特にポストコロナの段階では、対面指導か遠隔・オンライン教育か、どちらか一方を選ぶのではなく、発達段階に応じて、それらを適切に組み合わせて使いこなす(ハイブリッド化)ことで、個別最適な学びと協働的な学びを展開することが必要であるという方向性が示されました。

「令和の日本型学校教育」の構築を目指して(中間まとめ)について
このような分科会及び特別部会での議論と並行する形で、関係部会やワーキンググループにおいて議論が深められ、その議論を踏まえ、10月7日に、初等中等教育分科会において、「令和の日本型学校教育」の構築を目指して(中間まとめ)が取りまとめられました。
本「中間まとめ」では、第Ⅰ部を総論、第Ⅱ部を各論とし、総論では、2020年代を通じて実現を目指す学校教育を「令和の日本型学校教育」と名付け、その姿を描くことで、目指すべき方向性が示されました。

(1)総論
・急激に変化する時代の中で育むべき資質・能力
まず、現在の学校教育を取り巻く社会の変化と、その中で育むべき資質・能力について、まとめられています。
学習指導要領の改訂に関する平成28年の中央教育審議会答申においても、社会の変化が加速度を増し、複雑で予測困難となってきていることが指摘されましたが、新型コロナウイルス感染症の世界的な感染拡大により、その指摘が現実のものとなっていることが示されました。
このように急激に変化する時代の中で、我が国の学校教育には、一人一人の児童生徒が、自分のよさや可能性を認識するとともに、あらゆる他者を価値のある存在として尊重し、多様な人々と協働しながら様々な社会的変化を乗り越え、豊かな人生を切り拓き、持続可能な社会の創り手となることができるよう、その資質・能力を育成することが求められているとされています。

・日本型学校教育の成り立ちと成果、直面する課題と新たな動きについて
この資質・能力を育むための学校教育の在り方を検討するに当たり、「日本型学校教育」と言われる我が国の学校教育の成果と、変化する時代の中で直面する課題について整理されました(図1)。
学校が学習指導のみならず、生徒指導等の面でも主要な役割を担い、様々な場面を通じて、児童生徒の状況を総合的に把握して教師が指導を行うことで、子供たちの知・徳・体を一体で育む「日本型学校教育」は、全ての子供たちに一定水準の教育を保障する平等性の面、全人教育という面などについて諸外国から高く評価されているとされました。例えば、OECDによる我が国の教育政策レビューによれば、国際的に比較して、日本の児童生徒及び成人は、OECD各国の中でもトップクラスの成績であり、日本の教育が成功を収めている要素として、子供たちに対し、学校給食や課外活動などの広範囲にわたる全人的な教育を提供している点が指摘されています。
また、新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止のため、全国的に学校の臨時休業措置が取られ、地域によっては約3か月もの長期にわたって子供たちが学校に通えない状況が生じ、当たり前のように存在していた学校に通えない状況が続いた中で、子供たちや各家庭の日常において学校がどれだけ大きな存在であったのかということが、改めて浮き彫りになったとされました。また、家庭の社会経済文化的背景に格差がある中で、子供たちの学力格差が拡大するのではないかという指摘や、家庭における児童虐待の増加など、学校の臨時休業に伴う問題や懸念が生じたことにより、学校は、学習機会と学力を保障するという役割のみならず、全人的な発達・成長を保障する役割や、人と安全・安心につながることができる居場所・セーフティネットとして身体的、精神的な健康を保障するという福祉的な役割をも担っていることが再認識されたことも示されています。特に、全人格的な発達・成長の保障、居場所・セーフティネットとしての福祉的な役割は、日本型学校教育の強みであることに留意する必要があるとされています。
我が国の150年に及ぶ教科教育等に関する蓄積を支えてきた高い意欲や能力をもった教師やそれを支える職員の力により、日本型学校教育が高い成果を上げ、また現代社会において不可欠な役割を学校が担うようになっている一方で、社会構造の変化の中で、子供たちの多様化、教師の長時間勤務による疲弊、情報化の加速度的な進展、少子高齢化・人口減少、感染症等、今日の学校教育において様々な課題が生じていることも事実であるとされています。
こうした現状を踏まえ、学校における働き方改革や、GIGAスクール構想の実現といった動きも加速・充実させ、ICTも活用し、新学習指導要領を着実に実施しながら、従来の日本型学校教育を発展させた新しい時代の学校教育を実現する必要があるとされました。誰一人取り残すことのない、持続可能で多様性と包摂性のある社会の実現に向け、ツールとしてのICTを基盤としつつ、日本型学校教育を発展させ、2020年代を通じて実現を目指す学校教育が「令和の日本型学校教育」と名付けられ、その姿が次のとおり描かれました。

・2020年代を通じて実現すべき「令和の日本型学校教育」の姿
まず、「子供の学び」について、我が国ではこれまでも、学習指導要領において、児童生徒の興味・関心を生かした自主的、主体的な学習が促されるよう工夫することを求めるなど、「個に応じた指導」が重視されてきたことが確認されました。「個に応じた指導」とは、子供たち一人一人の特性や学習進度等に応じた指導等を行うとともに、自らの学習を調整し粘り強く取り組む態度を育成する「指導の個別化」と、子供たちの興味・関心等に応じ、その子供ならではの課題を設定する等、主体的に学習を最適化することを教師が促す「学習の個性化」を、教師視点から整理した概念であり、これを学習者の視点から整理した概念が「個別最適な学び」であると考えられました(図2)。
また、学校ならではの協働的な学び合いや多様な他者と協働した探究的な学び、様々な体験活動などを通じ、持続可能な社会の創り手として必要な資質・能力を育成する「協働的な学び」も重要であるとされました。知・徳・体を一体的に育むためには、教師と児童生徒、児童生徒同士の直接の関わり合いや、自分の感覚や行為を通して理解する実習・実験など、様々な場面でリアルな体験を通じて学ぶことが重要であると示されました。
そして、個別最適な学びの充実に当たっては、それが孤立した学びに陥らないよう、個別最適な学びの成果を協働的な学びに生かし、さらにその成果を個別最適な学びに還元するなど、個別最適な学びと協働的な学びの往還を実現することが必要であるとされました。
以上を踏まえ、本「中間まとめ」では、2020年代を通じて目指すべき令和の日本型学校教育の姿を、「全ての子供たちの可能性を引き出す、個別最適な学びと、協働的な学びの実現」とし、各学校段階における「子供の学び」、「教職員の姿」、「子供の学びや教職員を支える環境」について、目指すべき姿が示されました。

・「令和の日本型学校教育」の構築に向けた今後の方向性
家庭の経済状況や地域差、本人の特性等に関わらず、全ての子供たちの知・徳・体を一体的に育むため、これまで日本型学校教育が果たしてきた、①学習機会と学力の保障、②社会の形成者としての全人的な発達・成長の保障、③安全・安心な居場所・セーフティネットとしての身体的、精神的な健康の保障、という三つの保障を学校教育の本質的な役割として重視し、これを継承していくことが必要であるとされました。
その際、学校現場の負担軽減、教職員定数、専門スタッフの拡充等の人的資源、ICT環境や学校施設の整備等の物的資源を十分に供給・支援することが、国に求められる役割として挙げられました。
また、履修主義か修得主義か、遠隔・オンラインか対面・オフラインかといった「二項対立」の陥穽に陥らず、教育の質の向上のために、発達の段階や学習場面等により、どちらの良さも適切に組み合わせて活かしていくという考え方に立つべきであるとされています。
以上を踏まえ、「全ての子供たちの可能性を引き出す、個別最適な学びと、協働的な学び」を実現するための令和の日本型学校教育の構築に向けて、以下(1)から(6)までの六つの方向性が挙げられました(図3)。
(1)学校教育の質と多様性、包摂性を高め、教育の機会均等を実現する
(2)連携・分担による学校マネジメントを実現する
(3)これまでの実践とICTとの最適な組合せを実現する
(4)履修主義・修得主義等を適切に組み合わせる
(5)感染症や災害の発生等を乗り越えて学びを保障する
(6)社会構造の変化の中で、持続的で魅力ある学校教育を実現する
これら六つの改革の方向性を踏まえて、各論において、今後進めるべき具体的な取組が示されました。

(2)各論
1. 幼児教育の質の向上について
生涯にわたる人格形成の基礎を培う幼児教育の重要性を踏まえ、幼児教育の実践の質の向上とそのための環境整備が必要であることなどが基本的な考え方として示されています。幼児教育の内容・方法の改善・充実や、人材の確保・資質及び専門性の向上、幼児教育推進体制の構築などを進めていくこととされています。

2. 9年間を見通した新時代の義務教育の在り方について
児童生徒が多様化し、学校が様々な課題を抱える中であっても、義務教育において誰一人取り残さないということを徹底することなどが基本的な考え方として示されています。カリキュラム・マネジメントの充実に向け、総枠としての授業時数は引き続き確保しつつ、教科等ごとの授業時数の配分について一定の弾力化が可能となる制度を設けることや、義務教育9年間を見通し、小学校高学年からの教科担任制について令和4年度を目途に本格的に導入すること、そのために、小学校と中学校の両方の免許状が取得しやすくなるような制度を整備することとされている。また、不登校児童生徒やいじめの重大事態、虐待事案等に適切に対応するための方策などを検討していくこととされています。

3. 新時代に対応した高等学校教育の在り方について
高等学校に在籍する生徒の多様な実情・ニーズに応じた学びの実現が必要であることなどが基本的な考え方として示されています。その上で、高等学校の特色化・魅力化を促進するための普通科の在り方の見直しや、高等教育機関や地域社会等の関係機関と連携・協働した高度な学びの提供に向けた取組を更に進めていくこととされています。

4. 新時代の特別支援学校教育の在り方について
インクルーシブ教育システムの理念を踏まえ、障害のある子供とない子供が可能な限り共に教育を受けられる条件整備を行うとともに、通常の学級、通級による指導、特別支援学級、特別支援学校といった、連続性のある多様な学びの場の一層の充実・整備を着実に促進することなどが基本的な考え方として示されています。その上で、障害のある子供の学びの場の整備・連携強化、特別支援教育を担う教師の専門性の向上、関係機関の連携強化による切れ目ない支援の充実に向けた取組等を進めていくこととされています。

5. 増加する外国人児童生徒等への教育の在り方について
外国人の子供たちが共生社会の一員として今後の日本を形成する存在であることを前提に、関連施策の制度設計や必要な支援を行うことなどが基本的な考え方として示されています。このことを踏まえ、日本語教育等の充実のための学校全体での体制構築や、外国人の子供の就学状況の把握・就学促進に向けた取組、中学・高等学校段階での進学や就職等の進路選択の支援の充実を図っていくこととされています。

6. 遠隔・オンライン教育を含むICTを活用した学びの在り方について
発達段階に応じてICTを活用し、教師が対面指導と遠隔・オンライン教育を組み合わせた個別最適な学びと協働的な学びを展開していくことなどが基本的な考え方として示されています。このため、学習履歴(スタディ・ログ)等の教育データの更なる活用に向けた取組の加速や、全国的な学力調査のCBT化の検討、デジタル教科書・教材の普及促進を図っていくこととされています。また、臨時休業時における学びの保障や、学校で学びたくても学べない児童生徒への遠隔・オンライン教育の更なる活用について方策を検討していくこととされています。

7. 新時代の学びを支える環境整備について
今般の新型コロナウイルス感染症対応や「GIGAスクール構想」の実現を前提とした新しい時代の学びを支える学校教育の環境整備を図ることが基本的な考え方として示されています。「1人1台端末」や遠隔・オンライン教育に適合した教室環境等の整備を進めるとともに、少人数によるきめ細かな指導体制や小学校高学年からの教科担任制の在り方の検討を進め、指導体制や必要な施設・設備を計画的に整備することとされています。

8. 人口動態等を踏まえた学校運営や学校施設の在り方について
少子高齢化や人口減少等の中であっても、持続的で魅力ある学校教育が実施できるよう、学校配置や施設の維持管理、学校間の連携の在り方について検討していくことが基本的な考え方として示されています。教育関係部局と首長部局とによる、新たな分野横断的実行計画の策定等により教育環境の向上とコストの最適化を図ることなど、地域の実態に応じた学校運営や、個別施設計画に基づく計画的・効率的な施設整備を進めていくこととされています。

9. Society 5.0時代における教師及び教員組織の在り方について
社会的な変化の中で、教師の情報活用能力の向上が一層重要であることや、多様な知識・経験を持つ人材との連携を強化していくことが基本的な考え方として示されています。このことを踏まえ、教師のICT活用指導力の向上に向けて、教職課程の授業や、現職教師への研修の充実を図ることや、多様な外部人材が参画できる柔軟な教員組織の構築に向けた仕組みの構築など、具体的な取組を進めていくこととされています。

終わりに
今後、中央教育審議会において更に検討を進めていただき、本年度中を目途に答申を頂く予定となっています。この検討も踏まえ、文部科学省としても、必要な制度改正などに取り組みます。


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