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アイヌ文化を未来へつなぐ~国立アイヌ民族博物館開館~

文化庁企画調整課

国立アイヌ民族博物館(アヌココ アイヌ イコロマケンル)は、アイヌの歴史や文化の正しい認識と理解の促進、そして、新たなアイヌ文化の創造及び発展を目指します。

国立アイヌ民族博物館の使命
イランカラテ。令和2年7月12日、北海道白老郡白老町のポロト湖畔に、アイヌ文化復興等のナショナルセンターである「民族共生象徴空間(ウアイヌココタン)」(愛称:ウポポイ)がオープンしました。ウアイヌココタンは、ウ=互いに、アイヌコ=尊敬する・敬う、コタン=集落という意味のアイヌ語で、ウポポイは、(大勢で)歌うことを意味します。
ウポポイは、我が国の貴重な文化でありながら存立の危機にあるアイヌ文化の復興・発展の拠点として、将来に向けて、先住民族の尊厳を尊重し、差別のない多様で豊かな文化を持つ活力ある社会を築いていくための象徴となる空間であり、国立アイヌ民族博物館、国立民族共生公園、慰霊施設で構成されています。ウポポイの中核施設としての役割を担う国立アイヌ民族博物館は、先住民族であるアイヌの尊厳を尊重し、国内外にアイヌの歴史・文化等に関する正しい認識と理解を促進するとともに、新たなアイヌ文化の創造及び発展に寄与することを理念としており、①アイヌの歴史・文化・精神世界等に関する正しい知識を提供し、理解を促進する博物館、②アイヌの歴史・文化に関する十分な知識を持つ次世代の博物館専門家を育成する博物館、③アイヌの歴史・文化に関する調査と研究を行う博物館、④アイヌの歴史・文化等を展示する博物館等をつなぐ情報ネットワーク拠点となる博物館、これら四つの目的を掲げています。
博物館の建物は、正面上部に博物館のロゴマークを施し、正面玄関にあるアイヌ刺繍のゴザ文様レリーフをはじめ、館内の各所にアイヌ文様を取り入れるなど、アイヌ文化を象徴する建物となっています。博物館2階のパノラミックロビーからは、ポロト湖や伝統的コタンなどのウポポイの全景を眺めることができ、水と緑にあふれた豊かな自然を感じることができます。
なお、博物館のアイヌ語名称である「アヌココ アイヌ イコロマケンル」は、私たちの共有する宝物が入った建物という意味です。アイヌ語は、我が国の言語・方言のうち最も消滅の危機に瀕している言語であり、ユネスコの消滅の危機にある言語に指定されています。例えば、アイヌ語には「博物館」に相当するものが存在しないため、アイヌ語を伝承されている方々の協力を得て、アイヌ語の名称を考案し、各施設等にアイヌ語の名称を付けました。このように、ウポポイでは、アイヌ語の振興の観点から、全ての施設等にアイヌ語を付し、園内は全てアイヌ語を第一言語としています。

国立アイヌ民族博物館の展示
ここからは、国立アイヌ民族博物館の展示の内容について紹介します。

基本展示
国立アイヌ民族博物館の基本展示は、アイヌ民族が展示物や解説文の構成に関わるなど、アイヌ民族が自らの文化を紹介する形にしており、アイヌの視点から、「私たちのことば」、「私たちの世界」、「私たちのくらし」、「私たちの歴史」、「私たちのしごと」、「私たちの交流」の六つのテーマで構成しています。また、解説文、テーマ解説、キャプションなどは全てアイヌ語を第一言語とし、英語、中国語、韓国語のほか、大テーマや音声ガイドについてはロシア語、タイ語にも対応しています。

一 私たちのことば
アイヌ語は、かつては北海道、樺太、千島列島、本州の東北地方に分布していた言語で、地域によって様々な方言があります。明治以降の同化政策などによって現在の日常生活ではほとんど使われていませんが、近年、北海道を中心としたアイヌ語教室などにおいて、アイヌ語を学ぶ人が増えています。展示ゾーンの中央に位置する囲炉裏モニターは、アイヌの口承文芸のうち「神謡」「英雄叙事詩」「散文説話」の物語を、現代の語り手による映像で紹介しています。

二 私たちの世界
「私たちの世界」では、カムイとともにくらすアイヌの世界観を紹介しています。カムイと人間との関係性、自然観、現生観、死生観などについて、儀礼に使用する道具などとともに祖先からの伝承や説話などに基づく世界を展示しています。

三 私たちのくらし
「私たちのくらし」では、19世紀半ばの幕末から明治・大正期、そして現代まで伝承されてきた衣食住や音楽・舞踊、人の一生を「今に息づく装い」「受け継がれる食文化」「住まう」「人の一生」「受け継がれる芸能文化」の五つのテーマに分けて紹介しています。

四 私たちの歴史
「私たちの歴史」では、時代順に「遺跡から見た私たちの歴史」、「交易圏の拡大と縮小」、「私たちの生活が大きく変わる」、「現在(いまに続く、私たちの歩み」の四つのテーマでアイヌの歴史を紹介しています。「私たちの生活が大きく変わる」では、近代国家の形成において、アイヌの伝統的な習慣が禁じられる過程、社会運動の中におけるアイヌ民族としての主張や現在につながる文化振興等、様々な動きについて紹介しています。

五 私たちのしごと
アイヌ民族は、伝統的なくらしの中で、狩猟、漁労、農耕、採集などによって生きるための糧を自然から得ていました。山、海、川での漁猟や植物採集、農耕で使う道具や技には、自然環境に適した知恵や多くの工夫が見られます。「私たちのしごと」では、同化政策の中で、民族差別と向き合いながら、様々な職に就き、各地で活躍しているアイヌのしごととその道具から、現代に至る様子についても紹介しています。

六 私たちの交流
「私たちの交流」では、アイヌと周辺諸民族との交流やその足跡をテーマとし、「生活圏と海を越える交流」「外から見たアイヌ文化」「海外の先住民族との交流」という切り口で、近世から近代、そして現代の時間軸をたどり、アイヌ文化を多角的に紹介しています。

探究展示 テンパテンパ
テンパテンパは、アイヌ語でさわることを意味します。ここには基本展示室内のテーマに合わせたハンズオン資料や模型などが置かれています。現在、新型コロナウイルス感染症拡大防止のため、資料や模型にさわることはできませんが、職員から解説を受けたりすることで、更に展示を楽しめるような場となっています。

特別展示
特別展示室では、国内外からの資料を借用して開催する特別展・企画展をはじめ、最新の研究成果をもとに基本展示を補完するテーマ展示など、様々な展覧会を開催することとしています。現在、国立アイヌ民族博物館開館記念特別展として、「サスイシ 私たちが受け継ぐ文化~アイヌ文化を未来へつなぐ~」を開催しています。この展覧会では、現代に生きるアイヌの人々による文化の継承、そして新たな創造に焦点を当て、民具、アイヌ語、芸能等の継承の姿を紹介しています。

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