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学びを通じたステップアップ支援促進事業 ~様々な角度からの社会人の学びの応援~

文部科学省総合教育政策局 生涯学習推進課 職業教育推進係

先月号で社会人の学びを応援する事業を紹介いたしましたが、今月号は特に「高校中退者等」に焦点を置いた支援事業について紹介します。
また、告知事項もあるのでぜひ御覧ください。

事業の背景
平成22年の国勢調査において、20歳から39歳のうち、最終学歴が中学卒業程度の者が約143万人と学校卒業者の約5%に相当するという結果が出ました。
また、高校卒業資格がないことにより、就職活動における求人情報や、大学等への進学機会が限られ、将来のキャリア形成にも影響が生じるため高卒資格が必要であると考えている者も約8割程度います。
そのような状況で、高校中退者や、高校等への未進学者に対して、都道府県や、市区町村においても十分な対象者の捕捉ができておらず、支援体制も十分とは言えない状況がありました。また、多くの自治体において、こうした現状や、課題を認識しつつも予算確保の観点や、支援に関するノウハウを有していない等、対応が難しいという状況があります。
こうした状況や課題を踏まえ、「学びを通じたステップアップ事業(以下、ステップアップ事業)」が平成29年度より始まりました。

事業の概要
就職やキャリアアップにおいて不利な立場にある高校中途退学者等を対象に、高等学校等卒業程度の学力を身に付けさせるための学習相談及び学習支援を実施する地方公共団体の取組を支援するとともに、新たな支援体制のモデル開発を実施することとしています。
平成29年度に本事業を開始して以来、様々な自治体や団体が本事業に御協力をいただいたところですが、ここで幾つかの事例について紹介いたします。

取組
○愛知県における取組事例
(背景)
愛知県では、中学校不登校生徒数年間8,000人以上、高校等中途退学者年間2,300人以上など、全国的に見ても支援の対象となる者が非常に多い状況にありました。
また、中学校段階までは市町村における学習支援が行われていましたが、中学卒業後の進路未定者・高校中退者に対しては、市町村における支援が途絶えてしまっていることに加え、県としても本事業実施以前には、中退者等に対する学習支援の施策は実施していませんでした。
そのような状況から「若者・外国人未来塾」と「若者未来応援協議会」の二つの取り組みを柱に平成29年度からステップアップ事業を実施しました。
(取組内容)
①若者・外国人未来塾について
県内3か所(名古屋・豊橋・豊田)において、無料の学習支援と相談や助言を行う取組で、中学卒業後の進路未定者や高校中退者、引きこもり状態の方及び外国人等、社会的困難を抱える若者を対象とし、主に高卒認定試験の合格を目標に取り組みました。また、令和元年度は、県の予算で2か所(半田・春日井)を加え、県内5か所で実施しました。
名古屋会場においては日本語習得の不十分な外国人のための日本語学習支援や、PC講座も行いました。
②若者未来応援協議会について
学識経験者の助言の下、サポステをはじめとする就労支援団体・機関のほか、保健、福祉、多文化共生の関係機関・団体等との意見交換の機会を設定し、効果的な連携・協働の在り方について協議するため、県教育委員会生涯学習課が以下の三つの協議会を設置し、実施しました。
ア.合同協議会(年2回 委員20名)
・県レベルでの事業周知と連携体制の構築等
イ.地区協議会(年2回 委員各9~30人)
・各地区における連携・支援体制の構築等
ウ.研究部会(年2回 委員11名)
・事業の評価、普及・啓発の方策検討等
また、県内各中学校及び高校に、中学卒業後進路未定者や高校中退者及びその保護者に対する本事業の案内を依頼しました。さらに県立高校4校をモデル校に定め、先駆的に取り組んでいただきました。
(取組の成果)
令和元年度においては、学習支援に85名が参加し、高卒認定試験については11名が全科目合格したほか、支援対象者の生活や学習環境の改善や、支援ネットワークの拡大などの成果が得られました。
これまで3年間の取組を継続しながら、年間を通じた切れ目のない支援の提供や、外国人参加者など多様化する学習支援参加者への対応、学習支援地域の拡大などを課題として、令和2年度も取組を進め、支援体制の構築・拡大に取り組みます。

○札幌市における取組事例
(背景)
札幌市では平成28年度に「子ども・若者の生活実態調査」を実施し、困難を抱える世帯では生活環境が十分に整っておらず学習の理解度が低い、大学進学を希望する割合が低い等、家庭の経済状況が子供の学びの環境等に影響を与える可能性を把握し、平成29年度に「札幌市子どもの貧困対策計画(平成30年~34年)」を策定しました。
また、ステップアップ事業実施以前から、ひきこもりやニート等、困難を有する若者に対する自立支援や、生活困窮・一人親世帯の子供及び児童養護施設入所児童に対する学習支援・経済的支援等に取り組んできましたが、義務教育終了や高校中退等により学校とのつながりが途切れてしまった若者の学び直しのニーズに応え、社会的自立までを総合的に支援するため平成30年度からステップアップ事業を受託し、「若者の社会的自立促進事業」を開始しました。
(取組内容)
市内中心部に近い若者支援施設「札幌市若者支援総合センター」を中心とした六つの会場において学習支援を実施しました。また、参加者及び参加を検討する方向けの学習相談も、来所・電話・メールなどの方法によって行いました。
学習支援においては参加者と学習支援コーディネーターが面談を行い、目標設定の後、個人の能力や目標に応じたカリキュラムを作成し取り組みました。特に高卒認定試験前には、それぞれの参加者の学習習得段階を見極め、ポイントを絞って学習プランを立てるなど、目標の達成に向けた効果的な支援を行いました。
SNSも活用し、来所できなかった利用者に対しても定期的な連絡を行い、支援が途絶えないように努めました。また、体調面や経済面を理由に支援を停止した参加者に対しても、再び意欲が高まるように、定期的な連絡を行っています。
さらに、試験合格によって学習支援が終了した参加者に対して就労支援を引き続き実施し、進学等のため支援終了となった者についても、定期的な連絡を取り、アフターフォローを行っています。
(取組の成果)
令和元年度のステップアップ事業においては、前年度から継続して16名が学習支援に参加し、さらに新規利用者も31名と前年を上回りました。高卒認定試験については6名が全科目合格し資格取得に至り、その後就労を開始した者や、保育士資格取得を目指し専門学校に入学した者、ハローワークの職業訓練へ移行した者など着実なステップアップが見られました。その他、不登校状態にあった生徒が科目合格により自信を取り戻し通学を再開するといった成果にもつながっています。
学習面以外にも、アルバイト中心の生活で余裕がなく、食事をとれないままセンターに来所する利用者に対し無償で食事を提供し、生活面の安定を図ったり、妊娠・出産等により高校を退学した10代の若者に対し、子を連れて参加できる会場・スタッフなどの環境を整えるなど、複合的な課題を抱える利用者を包括的に支える環境づくりに取り組んでいます。
令和2年度も引き続きステップアップ事業を受託し、引き続き支援ニーズを積極的に掘り起こし、取組を継続いたします。

○高知県における取組事例
(背景)
平成27年度の国勢調査によると、高知県は、若年無業者数の人口比率において全国上位となっています。また、高等学校の中途退学率も全国上位の状況です。
本県においては若者サポートステーション事業などを通じて、平成19年から平成31年3月末までに2,696人への就労・修学支援を実施してきましたが、そのうち1,306人が高等学校未卒であり、社会的自立を目指す上で、多くの困難を抱えています。
若者の修学を促すとともに、就労への道筋を立てることを目的に、ステップアップ事業に取り組んでいます。
(取組内容)
県内5か所にある若者サポートステーション(以下サポステ)においてサポステスタッフ及び学習支援・相談員による、個別及び少人数での学習支援・相談を実施しました。また、高等学校と連携を図り進路未定で中途退学した者の情報収集を行う仕組み、「若者はばたけネット」を構築し、高校中退者への積極的なアプローチを実施したほか、各市町村教育委員会(各中学校)とも連携を深め、不登校生徒や進路未決定で中学校を卒業した者への支援も積極的に行いました。
(取組の成果)
個別及び少人数での学習支援により個々の能力に応じた学習支援を提供することができました。また個別相談を行うことで、個々の課題に対応することができました。「若者はばたけネット」による情報収集から一定数の支援が必要な者を捕捉することができ、サポステ登録につながっています。令和元年度高卒認定試験においても15名が合格するなどの成果が見られています。
令和2年度もステップアップ事業を受託し、サポステ施設以外での学習相談・学習支援のニーズを把握するとともに、送迎支援など必要に応じて対応し、支援の充実を図ります。

○学びを通じたステップアップ支援促進事業今後の取組
多くの地方自治体や団体における取組によって、高校中退者等への支援体制の構築が図られ、支援内容も充実してきました。本事業により構築された支援モデルが全国に展開され、高校中退者等に対する支援体制が更に充実するよう地方自治体等への支援を行ってまいります。

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