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特集2
令和元年度文部科学白書
特集1:教育の情報化  GIGAスクール構想の実現に向けて
特集2:ラグビーワールドカップ2019日本大会の軌跡とレガシー

文部科学省総合教育政策局政策課

文部科学省では、教育、科学技術・学術、スポーツ、文化芸術にわたる文部科学省全体の施策を広く国民に紹介することを目的とし、文部科学白書を毎年刊行しています。
このたび、令和元年度文部科学白書を公表しました。

文部科学省では、令和2年7月に、令和元年度文部科学白書を公表しました。文部科学白書は例年、第1部が特集、第2部が文教・科学技術施策全般の年次報告となっています。本稿では、特集の概要をお伝えします。
令和元年度文部科学白書では、特集テーマとして、「教育の情報化  GIGAスクール構想の実現に向けて 」、「ラグビーワールドカップ2019日本大会の軌跡とレガシー」の二つを取り上げました。

特集1
教育の情報化  GIGAスクール構想の実現に向けて

Society5.0時代を生きる子供たちにとって、教育においてもICTを基盤とした先端技術等の効果的な活用が求められます。一方で、現在の学校ICT環境の整備は社会から大きく遅れており、自治体間の格差も広がっています。また、情報格差が、経済格差延いては学力格差を生じさせ、さらに情報格差を生みだすという悪循環の構造が存在しこれを是正していかなければなりません。加えて、新型コロナウイルス感染症対策による学校休業では、学びにおいて家庭と学校とをつなぐ必要性も高まりました。全国で子供たちがひとしく教育を受けられるよう、令和時代のスタンダードな学校像として、全国一斉のICT環境整備が急務となっています。本特集では、令和元年度補正予算事業「GIGAスクール構想の実現」において、教育の情報化の基盤として進めている学校ICT環境整備にフォーカスし、これまでの動向やその概要、さらに新型コロナウイルス感染症を受けた令和2年度補正予算事業の概要、今後の展望について紹介しています。

第1節 教育の情報化を取り巻く現状
○学校のICT環境の現状
学校のICT環境は、「教育のICT化に向けた環境整備5か年計画(2018~2022年度)」に基づき、単年度1805億円の地方財政措置が講じられてきました。文部科学省ではこの地方財政措置の積極的な活用の促進に向け、先進的に取り組んでいる自治体の学校におけるICT活用事例の紹介や、市町村ごとの整備状況をわかりやすくグラフ化し地図で示すなどの取組を実施してきたところです。
しかしながら、文部科学省が実施する「平成30年度学校における教育の情報化の実態等に関する調査」によれば、第3期教育基本計画に定めた学習者用コンピュータの整備目標値である3人に1台に対して、平成31年3月現在の全国平均値は5.4人に1台(前年度は5.6人に1台)にとどまっています。また、都道府県別に見ると最高で1.9人に1台、最低で7.5人に1台となっており、さらに市区町村別ではその差が拡大しているなど、自治体の取組により大きなばらつきが見られ、子供たちが通う学校の環境に差が生じてしまっている状況です。

○教育におけるICT利活用の現状
経済協力開発機構(OECD)が2018年度に実施した「生徒の学習達成度調査(PISA:ピザ)」では、参加国の生徒にICT活用調査も調査しています。
この結果では、学校外でのインターネットの利用時間は、ネット上でのチャットやゲームを利用する頻度の高い生徒の割合がOECD平均を超える一方で、コンピュータを使って宿題をする頻度がOECD加盟国中最下位であるという結果が示されました。
同じくOECDが2018年に教員を対象に実施した「国際教員指導環境調査(TALIS:タリス)」の結果によれば、わが国の教員が学校で児童生徒に課題や学級での活動にICTを活用させる割合は20%に至っておらず、TALIS参加国48か国の中で最下位レベルという結果が示されています。
これらの結果から、日本では子供たちにとっても学校現場にとっても、言い換えれば社会全体が学習のためにICTを活用するという認識が極めて低いこと、その結果、特に学校における利活用が世界から大きく後塵を拝しているという状況に至っていることが分かります。

第2節 教育の情報化に関する施策
○先端技術活用推進方策
このような動きの中、文部科学省は令和元年6月、「新時代の学びを支える先端技術活用推進方策(最終まとめ)」を公表しました。これは、Society5.0時代を見据え、新時代に求められる教育の在り方や、教育現場でICT環境を基盤とした先端技術や教育ビッグデータを活用する意義と課題、今後の取組方策をまとめたものです。
今後、文部科学省では、令和2年度内を目途に「学校現場における先端技術利活用ガイドライン」を策定することとしています。また、教育データの利活用に関して、同じく令和2年度中に有識者を交えて一定の結論を得るなどして、取組を加速していきます。
○GIGAスクール構想の実現
これまでの地方財政措置を活用した環境整備の促進だけではない国が主導する学校のICT環境整備の早急な対応の必要性について、政府で議論が積み重ねられました。
その結果、令和元年12月5日に閣議決定された「安心と成長の未来を拓く総合経済対策」では、「初等中等教育において、Society5.0という新たな時代を担う人材の教育や、特別な支援を必要とするなどの多様な子供たちを誰一人取り残すことのない一人一人に応じた個別最適化学習にふさわしい環境を速やかに整備するため、学校における高速大容量のネットワーク環境(校内LAN)の整備を推進するとともに、特に、義務教育段階において、令和5年度までに、全学年の児童生徒一人一人がそれぞれ端末を持ち、十分に活用できる環境の実現を目指すこととし、事業を実施する地方公共団体に対し、国として継続的に財源を確保し、必要な支援を講ずること」との方針が示されました。さらにこれを踏まえ、「GIGAスクール構想の実現」として、元年度補正予算に2318億円が計上されました。
本事業は、校内通信ネットワーク整備事業と、児童生徒1人1台端末整備事業の二つの柱からなります。
ネットワーク整備については、希望する国公私立全ての小学校・中学校・特別支援学校・高等学校等における校内LANを整備するため、各学校の設置者に対し、校内ネットワーク整備にあたっての諸経費の一部を補助することとしています。補助割合については2分の1とするものの、一部地方交付税措置を充てることにより、自治体の負担が少なく整備できるよう全国一律の整備に取り組むこととしています。
もう一つの端末整備については、1人1台端末の整備に向け、国公私立の小学校・中学校・特別支援学校等の児童生徒が使用するPC端末のうち、地方財政措置がなされていない全体の3分の2について国が支援することとし、上限4万5千円の定額補助を行うこととしています。
これらの予算の措置に当たっては、各自治体において様々な整備計画や活用計画をまとめてもらうことを条件としており、これら計画を基に継続的な学校ICT環境整備、ICT利活用がなされるよう、国と自治体がPDCAを回していくこととしています。
今回の整備では、大規模な端末導入などの整備を効率化して安価なものとすべく、従来のアンプレミスの端末から、クラウドを活用したブラウザベースと呼ばれる端末を三つのOSごとに標準仕様書として示しました。さらに、新たな方針に沿った通信環境整備に向けた仕様も提示しています。
○GIGAスクール構想の加速による学びの保障
新型コロナウイルス感染症の拡大防止のために令和2年3月に全国各地で行われた学校の臨時休業に際しては、遠隔学習などICTを活用し子供たちが学習を継続できるよう取り組む地域が報告される一方で、多くの地域においてはそもそもの環境が整備されておらず対応できないなど、自治体間の取組において格差がより顕著になりました。
こうした事態を踏まえ、令和2年4月20日に「新型コロナウイルス感染症緊急経済対策」が閣議決定され、「令和5年度までの児童生徒1人1台端末の整備スケジュールの加速、学校現場へのICT技術者の配置の支援、在宅・オンライン学習に必要な通信環境の整備を図るとともに、在宅でのPC等を用いた問題演習による学習・評価が可能なプラットフォームの実現を目指す」こととされるとともに、令和2年度補正予算ではGIGAスクール構想の加速による学びの保障のため必要な経費として2292億円が計上されています。

第3節 今後に向けて
これら補正予算における補助事業等を活用しながら、学校のみならず緊急時には家庭においても、ICTの活用により全ての子供たちの学びを保障できる環境を早急に実現できるよう、「GIGAスクール構想」における自治体の整備への支援を加速してまいります。
ICT活用の推進に当たっては、子供たちがICTを適切かつ効果的に活用できるよう情報手段の基本的な操作の習得や、プログラミング的思考、情報モラル等を含む情報活用能力を育成していくことも重要です。また1人1台端末環境の整備と併せて、統合型校務支援システムをはじめとしたICTの導入・運用を加速していくことで、授業準備や成績処理等の負担軽減にも資するものであり、学校における働き方改革にもつながっていきます。
文部科学省としては、1人1台端末と高速大容量の通信ネットワークというハード面の整備に加えて、ソフト面、指導体制を一体とした教育改革に取り組んでいきます。
ソフト面の充実としては、デジタル教科書・教材など良質なデジタルコンテンツの活用を令和2年度から順次促進します。元年12月に「教育の情報化に関する手引き(令和元年12月)」を公表し、各学校段階・教科等におけるICTを活用した指導の具体例を提示していますが、今後とも情報の収集・把握を行い、その普及を進めていきます。これらの取組により、デジタルならではの学びの充実を図っていきます。
指導体制の充実としては、各地域の指導者養成研修の実施、ICT環境整備の加速とその効果的な活用を一層促進するためのICT活用教育アドバイザーの活用や学校における教員のICT活用をサポートするためのICT支援員の活用促進といった取組を行うことで、日常的にICTを活用できる体制を整えていきます。
1人1台端末環境と高速大容量の通信ネットワークの一体的な整備により、日本の学校教育は大きく変わります。平成の時代、ICT端末は「学校にあったらいいな」というものでしたが、令和の時代には「マストアイテム」であり、「スタンダード」である社会を早期に構築していきます。

特集2
ラグビーワールドカップ2019
日本大会の軌跡とレガシー
第1節 総論
2019(令和元)年9月から11月にかけて、日本全国12会場でラグビーワールドカップ2019日本大会(以下、「RWC2019日本大会」という。)が開催されました。大会での日本代表の活躍は日本中に多くの感動をもたらし、RWC2019日本大会の成功は社会に大きなインパクトを与えました。また、日本はアジアかつラグビー伝統国以外で初めての開催地としてアジア圏を含む世界中から大きな注目を集めました。
大会は、日本代表の活躍はもとよりラグビーワールドカップ2019組織委員会(以下、RWC組織委員会という。)や開催都市等の多大な努力によって円滑な大会運営が行われ、成功裏に閉幕しました。チケット販売や観客動員も好調で、チケットの販売数は、最終的な販売可能席約185万3000枚のうち約184万枚となり、販売率は約99.3%(中止となったプール戦3試合を含む)に達し、観客動員数は延べ170万4443人、1試合平均観客数は3万7877人でした(ともに中止となったプール戦3試合を除く)。各開催都市に開設された全国16か所のファンゾーンには、国内外から多くの人が訪れ、大会期間中、全会場合計の来場者数は113万7288人でした。ファンゾーンでの交流は、単に試合を観戦するだけでなく、国内外のファン同士を結び付ける大きなきっかけとなりました。なお、チケットの販売率やファンゾーンの入場者数は、これまで開催されたラグビーワールドカップの中で最高記録となっています。
本特集では、まずRWC2019日本大会の概要や結果をまとめ、アジア初のベスト8進出を果たした日本代表の活躍を振り返ります。そして、文部科学省として行った大会成功に向けた機運醸成を図るための取組や地方自治体の取組、大会のレガシーとして今後進めていくラグビー普及に向けた取組等について紹介します。

第2節 大会の開催について
ラグビーワールドカップは、4年に1度開催される15人制ラグビーの世界王者決定戦で、オリンピック・パラリンピック競技大会、FIFAワールドカップ(サッカー)とともに世界三大スポーツ大会と呼ばれています。第1回大会は1987(昭和62)年にニュージーランドとオーストラリアの共催で開催されました。以後、イングランドやウェールズなどのラグビー伝統国で開催され、今回で第9回となりました。回を重ねるごとに大会の規模が拡大し、世界中の注目を集めています。
大会の開幕戦が行われた9月20日は、試合前にオープニングセレモニーが執り行われました。オープニングセレモニーでは、大会マスコットのモデルにもなっている歌舞伎の連獅子のパフォーマンスや富士山になぞらえたスクリーンにこれまでの大会の映像が映し出されるなどの演出がなされました。また、本大会の名誉総裁である秋篠宮皇嗣殿下は、「この大会を一つの契機として、ラグビーフットボールがさらに発展していくとともに、スポーツを通じた交流が、世界の人々の友情と親交を深めていくことを心から願い」、開会を宣言されました。

第3節 日本代表の活躍
日本代表は、予選プールを全勝で勝ち抜き、史上初の決勝トーナメントに進出しました。
準々決勝では残念ながら大会優勝チームとなった南アフリカに敗れてしまいましたが、日本代表は全試合で熱戦を繰り広げ、日本中が熱気に包まれるとともに、ノーサイドとなるまで全力で戦う姿は国民に夢や感動を与えるものとなりました。この感動は、ラグビー自体がもつ魅力に加え、ラグビーの代表チーム特有である様々なバッググランドや民族といった多国籍の選手から構成される集団が、それぞれの選手の個性を活かしつつONE TEAMとして活躍したことも大きな要素となっています。

第4節 大会成功へ向けて
RWC2019日本大会の成功によって、国内でもラグビー競技への関心が高まっています。
しかし、大会招致の段階では、日本でのラグビー競技に対する認知度と普及度はまだ低い状況でした。そこで、文部科学省では、平成26年からラグビーワールドカップの成功に向け、「2019年ラグビーワールドカップ普及啓発事業」を実施し、委託先である公益財団法人日本ラグビーフットボール協会(以下、「JRFU」という。)と連携して「放課後ラグビーによる競技者の拡大」「タグラグビーによる競技の普及」「ラグビーを通じた国際交流」の3本柱で普及・啓発活動を行ってきました。
また、トロフィーツアーの中の一つとして「こども霞が関デー」でトロフィーの一般公開を実施するとともに、公益財団法人日本アンチ・ドーピング機構(以下、「JADA」という。)と連携し、ドーピング防止活動の推進を図りました。
さらに、スポーツ庁が官民連携のもとで実施する「Sport for Tomorrow」の枠組みの中でアジア各国へのラグビーの指導者の派遣や講演会等を実施してきました。また、文部科学省・スポーツ庁の取組に加え、公認チームキャンプ地として各代表チームを受け入れた地方自治体の取組についても紹介しています。

第5節 大会のレガシー
RWC2019日本大会出場国からの訪日外国人旅行者数は、9月、10月の2か月間で対前年同期比29.4%増となっており、RWC2019日本大会観戦者を含め多くの外国人が来日しました。また、全国各地が試合会場となっていたことから、地方での滞在も促進されました。
訪日外国人旅行者のうちRWC2019日本大会観戦者の1人当たり旅行支出は、38万5千円と試算され、観戦していない旅行者の15万9千円と比較して約2.4倍となりました。国籍別にみると、英国38万6千円、フランス47万6千円、米国32万8千円、オーストラリア40万8千円となり、いずれの国籍でも観戦していない同じ国籍の旅行者より高い額となりました。また、費目別にみると、スポーツ観戦費のほか、宿泊費や飲食費、酒類の購入費において、観戦していない人に比べて高い傾向がみられました。
RWC2019日本大会により、会場の内外で幅広い国際交流が進みました。力の限りを尽くした熱闘の後、ノーサイドの精神を体現して互いの健闘を讃えあう選手たちに対して、日本の観客は訪日観光客と一緒に、素晴らしいプレイには日本代表に限らず惜しみない声援を贈りました。このような会場からの応援に選手たちは日本式のお辞儀で応え、会場はさらなる一体感に包まれました。また、キャンプ地における国歌やハカでの歓迎など、ラグビーの精神の一つである「尊重」にも通じる相手の文化に対する敬意を込めた対応の様子は、海外にも広く伝わっています。
本大会では台風の影響で史上初めて試合が中止になりましたが、カナダ代表が被災地釜石で土砂や泥を撤去するボランティア活動を行うなど、ラグビー以外の部分でも感動と連帯が広がりました。さらに、本大会によって生み出された国際交流は、ボランティアをはじめ、訪日客を迎えた多くの人々との触れ合いとして、ラグビーを超えて大きく広がることとなりました。
RWC2019日本大会を皮切りに様々な国際競技大会が相次いで開催されており、これらの今後開催される国際競技大会に対し今大会で得られた知見を運営面等に反映し、各大会の成功につながるよう、文部科学省、スポーツ庁として最大限の協力を行っていきます。

「令和元年度文部科学白書」
発行:サンワ株式会社、定価:1950円(税別)
(https://www.mext.go.jp/b_menu/hakusho/html/hpab202001/1420041.htm)

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