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アフターコロナの時代の「新しい学びの姿」の創造に向けて
~専修学校オンラインセミナーの事例より~

文部科学省総合教育政策局 生涯学習推進課専修学校教育振興室

各学校現場では、新型コロナウイルス感染症の感染リスクを抑えつつ、教育活動を継続するために日々、試行錯誤されていることと思います。以下では、皆様の参考にしていただくために、専修学校における「新しい学びの姿」の取組事例を具体的に御紹介します。

専修学校の学校再開の状況
今般の新型コロナウイルス感染症の感染拡大により、多くの専修学校で、授業の開始時期の延期や遠隔授業の実施などの対応をとっていただきましたが、緊急事態宣言の全面解除を経て、6月1日時点で、ほぼ全ての専修学校で授業が再開されています。
また、専門学校について、授業の実施方法別に見ると、対面授業のみが5割、対面授業と遠隔授業の併用が4割、遠隔授業のみが1割弱となっています。この結果は、対面での授業が1割弱、遠隔授業のみが6割であった大学の傾向とは対照的です。実習や演習などの科目が多くを占める専修学校ならではの教育の特色から、感染拡大防止策を講じた上で、早期の対面授業の再開を判断されたのかもしれません。調査によれば、対面授業を実施している多くの学校では、消毒や換気等の徹底、マスクやフェイスシールドの着用、机の距離の確保、実験・実習の分散実施といった、いわゆる三密対策を行い、取り得る限り万全の対策により感染拡大の防止に取り組んでいることがわかりました。
ただ、それだけでなく、学校を開き、生徒に一日も早く本来の姿に近い形で学びのスタートを切らせてあげたいとの専修学校関係者の切なる思いもあったのではないでしょうか。

「アフターコロナの時代の『新しい学びの姿』オンラインセミナー」作成のねらい
対面や遠隔で授業が再開された学校では、感染拡大防止のために、様々な配慮をしていただいているところですが、先に述べたとおり、専修学校では、講義形式の授業に比して、実習や実技の科目のウエイトが高いという特色があり、これまで通りのやり方で対面授業を実施すると感染リスクの観点から課題があるケースも考えられます。一方で、感染リスクを過度に恐れるあまり、本来予定していた教育活動が停滞し、生徒の学びの機会が奪われることになってはいけません。
文部科学広報6月号で御紹介した「遠隔授業オンラインセミナー」公開当時からフェーズが大きく変わり、9割以上の学校で対面授業が行われているという専門学校を巡る情勢の変化もありました。
この間、文部科学省や関係省庁から学校関係者の皆様には、教育活動の実施に当たり、通知等で留意点をお示ししてまいりましたが、今回のような前例のない事態に対処するためには、文章に加えビジュアルでお伝えした方が、より共通理解が図られるのではないかと考えました。
そこで、感染リスクを抑えながら、教育活動の質を維持するために、どのような工夫が考えられるのかについて具体的にお示しするために、「専門学校等における新型コロナウイルス感染症への対応ガイドラインについて」(令和2年6月5日総合教育政策局長通知)などを踏まえ、アフターコロナも見据えて各専修学校が取り組んでいる「新しい学びの姿」を紹介する動画を作成することにしました。
この動画では、看護や介護、調理といった各分野の養成団体等から御推薦いただいた11校(7月末に3校が追加となり計14校)の専修学校の皆様の御協力を得て、学校全体の感染予防対策の工夫、対面授業、特に実習を中心とした授業の工夫、生徒への支援などを柱として、各専修学校に動画を作成していただきました。
特に強調したいことは、本動画で紹介した事例は、専修学校だけでなく、小・中学校や高等学校で日常的に行われるグループワークや実験、調理実習など、各教科において感染リスクの高い学習活動の実施方法を御検討する際にも大いに参考になるのではないか、という点です。
さらには、中学校・高等学校の生徒の進路選択の時期が近づく中、専修学校の教育内容や学ぶ魅力について広く知ってもらうことも重要です。
今、新型コロナウイルス感染症のまん延により、身の危険を感じながらも市民生活を支える人々に敬意を込めて、「エッセンシャル・ワーカー」という言葉を耳にする機会が増えてまいりました。専門学校が輩出した多くの人材が、看護師や保育士、介護福祉士、歯科衛生士、美容師など、社会が円滑に回るために不可欠な仕事に就いて日々、御活躍されています。このような分野に注目が集まっている今だからこそ、キャリア教育の一環として子供たちにも是非、動画を見ていただきたいと考えています。
御協力いただいた各専修学校では、日常業務に加え、学校再開後の校務御多忙の中、御依頼してから1週間ほどの短期間で動画を作成いただきました。御依頼に当たっては、遠隔授業の動画と同様、より多くの方に閲覧いただけるよう「原則5分以内」での作成をお願いしました。御無理を申し上げましたが、どの学校も個性がキラリと光るすばらしい動画を作成いただき、専修学校の皆様のチームワーク、底力、スピード感を改めて感じました。
こうして、専修学校の皆様と文部科学省による合作動画第2弾「アフターコロナの時代の『新しい学びの姿』オンラインセミナー」が6月26日に公開されました。(URL:https://www.youtube.com/playlist?list=PLGpGsGZ3lmbDKeg0m-7_Qse7lWCeddhEk)
本稿では誌面の都合上、動画で取り上げている学校の取組のうち5校についてその概要を御紹介させていただきます。

「アフターコロナの時代の『新しい学びの姿』オンラインセミナー」事例紹介
1.「コロナに負けない!新しい看護教育の実践:シミュレーション教育を用いた臨場感のある学内演習」(関西看護専門学校)

【動画の見どころ】
ウェブ会議システムを使用したカンファレンス、校内演習、教室での学習など、具体の学びの様子がきめ細かく丁寧に映像で紹介されています。

【感染防止対策】
手洗いを推奨するポスターや消毒薬を設置し、ドアノブやトイレなど感染リスクが高いと考えられる場所の清掃は職員で実施しています。

【授業の工夫】
講義計画について、3年生の履修を最優先に考えた上で、1・2年生の授業のうち、免疫や感染に関する授業を早期に学習できるよう調整し、感染リスクが高くなる演習は開講時期を後期に変更しています。また、遠隔授業を併用し、learning boxには全学年で34科目160本を超える動画が配信され、生徒からの質問にも答えることができます。

【実習の工夫】
実習に先立ち、ウェブ会議システムによるカンファレンスを毎日実施。その後の校内実習では、実習グループごとに教室、実習室の配置を計画。密接が避けられない看護援助に際してはフェイスシールドを着用して行われています。

【学びの魅力】
相手から信頼され安心していただける存在が、看護師です。そのために日々学習し、経験を積み重ねる必要があります。学内で学習し、練習したことを臨地実習で実際に体験していく中で、確実に身についていることを体感できる楽しさがあります。時にはうまくいかないこともありますが、しっかりとリフレクションを行うことで自分のものにすることができ、看護を提供した方の元気になっていく姿を一番近くで見守ることができる喜びもあります。

2.「ファッション教育も新時代へ:遠隔授業と対面授業のハイブリッド型の授業」(文化服装学院)

【動画の見どころ】
リアルと動画を組み合わせた教育の具体を示しながら、全編を通じてモノ作り教育の魅力が紹介されています。

【感染防止対策】
分散登校については、クラスを半分ずつに分ける、午前午後に分ける、曜日で登校日を割り振る、といった様々な形態が採用されています。

【実習の工夫】
Google Classroomに公開した動画やパワーポイントで予習した上で授業を受けることをシステム化しています。実習では、特に注意すべきところに説明を限定することで、説明時間を減らし、対面授業を点検や実習に無駄なく使えるよう工夫されています。
また、三密を防ぐために自分自身で着装し、フェイスガード、マスクをして確認するとともに、接客対応の授業では、フェイスガードやアクリル板を使用しています。

【学びの魅力】
ファッションは色、シルエット、デザイン、コーディネート等のほんのわずかな違いで、皆さんを、自分自身をよりきれいに見せます。きれい、カッコいい、おしゃれを意識することはファッションに限らず、どのような仕事でも、よりクオリティを、より付加価値を高めます。ファッションを学ぶことはこの力を育みます。

3.「これからの介護現場を担う人材育成:見本動画と実践による理論立てた技能の修得」(トリニティカレッジ広島医療福祉専門学校)

【動画の見どころ】
介護における体の使い方について、遠隔授業と対面授業を組み合わせて学ぶ様子を、実際の生徒に密着して、具体的に紹介されています。

【授業の工夫】
介護者の体の使い方を習得できるよう、①生徒はあらかじめ教員のデモンストレーションの動画を視聴、②自宅で動画を見ながら家で練習、③生徒同士で介護者、利用者役を演じ、実際に遠隔授業で見たような体の使い方ができているかを撮影、④撮影した動画を見ながら、介護者の体の使い方や利用者へ安全に支援が行えているかを確認、といったプロセスで学ぶことにより、生徒はより自分の動きを客観的に分析できるようになります。

【学びの魅力】
知識と技術を身に付け、自分の心と体をいつもベストな状態に保ちながら、目の前にいる人の笑顔を見続けることができることが魅力です。

4.「公衆衛生の一端を担う職業教育:徹底した感染予防対策を講じた理容・美容実習」(国際理容美容専門学校)

【動画の見どころ】
カット、シェービング、シャンプー、ネイルといった様々なバリエーションの実習の様子を動画でわかりやすく紹介されています。

【授業の工夫】
6月から実施している分散登校の非登校日に、オンデマンド型の講義授業や小テストを配信しています。その際、生徒のネットワーク環境を踏まえ、動画は短時間に収め、スライド資料も用いるよう工夫。

【実習の工夫】
シェービングやネイル、メイク、エステなどは相手との距離が近くなるため、飛沫防止策としてマスクやフェイススシールドを着用して実習を展開しています。

【学びの魅力】
理容美容業は人々の生活衛生上必要不可欠であり、IT・AI化が進んでも人が人に接客を通して技術を提供する職業です。お客様にきれいになっていただき「ありがとう」と感謝される価値ある仕事だと思います。

5.「指先一つで世界を変える:ハイブリッド授業によるコンピュータ教育」(専門学校穴吹コンピュータカレッジ)

【動画の見どころ】
学年・学科でオンラインと登校を交互に行う分散登校による学びの様子、密を避ける工夫、就職活動へのきめ細かな支援が紹介されています。動画の最後には、担当の先生から、熱のこもったメッセージがございます。

【授業の工夫】
生徒数などの状況を踏まえ、①生徒数が教室の収容人数に対して多い場合、受講する生徒を半分に分け、対面形式と自宅と教室を同時につなぐオンライン形式で実施、②対面授業に参加する生徒を2つの教室に分け、2つの教室で同じ画面を共有し密接を避ける形で実施、といった工夫が行われています。

【生徒への支援】
オンラインを想定した面接練習を行っており、個人面接練習では一人一人に合わせた内容で細かく指導されています。また、集団面接練習ではオンラインを活用し、新しい生活様式対応の指導法にも取り組まれています。

【学びの魅力】
コンピュータ業界やゲーム業界は、どんな場所でも指先一つで世界を変えたり、指先一つで世界を支えることができたり、指先一つで喜びや感動を与えるものを生み出したりできる数少ない魅力ある分野です。

新しい学びの姿の創造に向けて
新しい学びの姿と題したオンラインセミナーの一端を御紹介させていただきました。
感染リスクは抑えなければなりません。その一方で、教育活動も再開させなければなりません。暗中模索の状態にある教育関係者に一日も早く具体的な事例を御紹介したい、活字ではなく、多くの工夫がちりばめられた授業や実際の取組を映像として御紹介したいと考え企画しました。
視聴された方はお感じいただけるかと思いますが、感染リスクを抑えるための学校全体の取組や、実習などの授業での工夫、不安を抱える生徒へのきめ細やかな支援など、明日からすぐにいかせる取組が、幾つも見つかったのではないでしょうか。
また、前例のない状況でも、生徒の学びを止めないために創意工夫する先生方の熱い想いも目に映ったかと思います。
何よりも、学校が再開し、学校で学ぶという当たり前の日常に、心からの喜びを感じながら、知識や技能を身に付けようと意欲的に学ぶ生徒たちの姿を御覧になり、清々しい気持ちを持たれたことと思います。

今回の動画全体を通じて、多くの学校で分散登校や検温、消毒、換気などの対策をとっているほか、独自のガイドラインを策定する学校もあり、学校をあげて感染防止対策に取り組んでいることがわかりました。
実習をはじめとする対面授業では、三密を避けるために教室を分ける、大教室で生徒の距離をとりつつ大型モニターを活用する、などの事例を紹介していただきました。加えて、4月以降実施してきた遠隔授業の取組実績をいかし、知識を中心とする授業は遠隔授業で引き続き行いつつ、対面授業では、動画で学んだ内容の点検や自習のための時間に充てる、といった学校が多かったのが印象的でした。本動画で専門学校の方が、「これまで、リアルの授業を重要視する余り、動画の活用に二の足を踏んでいたが、動画の有効活用が始まった」と述べておられるように、遠隔授業と対面授業のハイブリッド型の授業形態を採用する学校が今後、ますます増え、専修学校の生徒の学びは大きく変革するかもしれません。
今、学校教育活動を継続しながら、「新しい生活様式」に移行し、生徒や教職員の行動を変えていくことが求められています。第二波、第三波に備えることも大切です。何より、この経験を将来に生かすことが重要です。
この動画が、現在進行形のコロナ禍を乗り切るためだけでなく、いつ起きるかわからない未来の危機に備え、さらには、新たな学びを創造するための「羅針盤」となることを祈ってやみません。
今後とも様々な情報を、随時アップしてまいりますので、文部科学省のYouTubeチャンネルを御覧ください。

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