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リカレント教育推進施策 ~社会人の学びの応援~

文部科学省総合教育政策局生涯学習推進課職業教育推進係

近年、世間にも広がり始めた「リカレント教育」「学び直し」というフレーズ、本パートではこれらが注目されるようになった背景、文科省で社会人の学びを応援する二つの施策を御紹介します。

「リカレント教育」・「学び直し」の意義・背景
近年の、我が国における「リカレント教育」「学び直し」に関する議論は平成29年に行われた「人生100年時代構想会議」において端を発しました。
人生100年時代や技術革新の進展が予想されるSociety 5.0の到来など、経済社会の大きな変化に対応するため、個々人が人生を再設計し、社会人が学び直しを通じてキャリアアップやキャリアチェンジを可能とする能力・スキルを身に付けることが重要とされています。
また、新型コロナウイルス感染症の影響で学び方や働き方、そして生活様式も変わっている中で、これまで以上に「変化に対応できる力」は重要視されてきます。本記事では「キャリアアップ・キャリアチェンジに必要な力」「変化に対応できる力」等を身に付けるための一助になるリカレント教育を推進するための施策について二つほど御紹介します。

社会人の学びの情報アクセス改善に向けた実践研究 社会人の学びのポータルサイト「マナパス」
○事業の概要
平成30年度「生涯学習に関する世論調査」ではおよそ4割の方が「社会人となった後に大学、大学院、短期大学、専門学校などの学校で学習したことがある、若しくは意欲がある」と回答しています。また、社会人が大学などで学習しやすくするために必要な取組として、「学習に関する情報を得る機会の拡充」という回答が4分の1程度ありました。
学ぶ意欲がありながら、学びに関する情報への接触機会の不足が原因で大学等におけるプログラムを受講することまで繋がりにくい、そのような課題を解決するために本事業は始まりました。
そして本事業の一つの大きな目玉が大学等における学び直し講座や支援に関する情報を総合的に発信する社会人の学びのポータルサイト「マナパス」を通じて行う情報発信です。
○ポータルサイト「マナパス」の概要
昨年4月に開設され、今年2月末時点では大学、大学院、専修学校における社会人向け講座や放送大学、JMOOCの講座等合計4,352の講座を掲載しております。(URL:https://manapass.jp/)
講座検索では、キーワード検索はもちろんのこと、学ぶ場所、学校種、教育課程、金額といった情報をはじめ、土日・平日夜間開講、奨学金や給付金制度の有無、e-learning等オンライン講座の活用有無といった各自の希望に沿った条件検索も充実しております。
(写真1)「マナパス」の検索画面

また、「女性活躍」、「Society 5.0」といった社会的にホットなテーマと「学び直し」を掛け合わせた特集記事に加えて、性別や年代を問わず様々な背景を持った方々の学び直しに関する修了者インタビューも掲載しています。加えて、新着情報や様々な講座情報について定期的に情報を発信するメールマガジンも配信しておりますので、是非御登録をお願いします。
また、大学等教育機関の関係者の皆様におかれましては、社会人向けの正規課程や履修証明プログラムのほか、公開講座の情報掲載も随時受け付けておりますので、御登録の程お願いします。

今後とも、学び直しを目指す方々のニーズに合った情報を配信していくとともに、少しでも多くの方が学び直しを通じて自己の能力やスキルの向上に繋げることができる社会にするために引き続きサイトをさらに充実したものにしていく次第です。

職業実践力育成プログラム事業(BP)について
○事業の概要
大学、大学院、短期大学及び高等専門学校の正規の課程と履修証明プログラムで、主に社会人を対象とした実践的・専門的な課程を「職業実践力育成プログラム(BP)」として文部科学大臣が認定しています。平成27年度に創設され、毎年新たなプログラムを認定しています。令和2年5月時点においては計282課程を認定しています。
認定している課程の特徴については以下の通りです。(認定可否については以下のような点を考慮して判断しているところです。)
・修得可能な能力を具体的かつ明確に設定
・関連分野の企業等民間団体の意見を取り入れる
・履修証明プログラムの修了者に履修証明書が交付
・実務家教員や関連企業と連携した授業、フィールドワーク等実践を伴った科目で構成
・週末・夜間開講、集中講義、IT活用等社会人が受講しやすい環境を整備、
といったところです。
それでは、これらの特徴を有する幾つかのプログラムを御紹介します。
○筑波大学「放射線災害専門スタッフ養成プログラム」(https://ramsep.md.tsukuba.ac.jp/kyoiku_program/rishushomei_program)
本課程は平成30年4月に開設され、その年にBPに認定されました。放射線災害のあらゆる時相(災害発生時の緊急被ばく医療から復興期の健康管理まで)において、専門知識と技術を持って広く活動できる人材の養成を目指すものです。メディカルスタッフに限らず、災害に関連する専門職、事務関係者等、専門知識を持たない者に対してもトレーナーとして指導的立場で活躍できる能力の習得を目指します。
放射線災害で必要となる基礎的知識から専門的知識までを体系的に構成したe-learning講義、対面講義、実践的な演習を実施することにより放射線災害時に対応できる能力を身に付けることができます。
また、社会人が受講しやすい工夫として講義4科目80時間はe-learningにより提供、演習(スクーリング)40時間の日程は休日に設定するほか、仕事により出席できなかった方にはビデオ教材を提供しております。
昨今の新型コロナウイルス感染症による影響を鑑み、スクーリングについてはオンライン実習も視野に入れています。なお、本プログラムでは、これまでのe-learningコンテンツ配信のノウハウから、安定したオンライン実習が実施可能です。
○法政大学大学院「政策創造研究科政策創造専攻修士課程」(http://chiikizukuri.gr.jp/)
本プログラムは、平成20年に開設され、平成28年にBPに認定されました。豊かで持続可能な地域社会を実現する革新的な政策を研究・デザインし、その実現に向けたリーダーシップを発揮する人材の育成を目的としています。3分野(経済・社会・雇用創造群、文化・都市・観光創造群、地域産業・企業創造群)にわたるプログラムの中から総合的、具体的に学習することができます。
また、プログラムの中では、政策づくり、地域づくり、産業創出を担う地域イノベーションのリーダーに該当する職業(国、自治体、企業、シンクタンク、起業家等)として活躍するために必要な能力を身に付けることも可能です。
カリキュラムの特徴として、必修科目で政策分析や政策デザインの学問的基礎を学び、選択必修科目で自治体、NPO、企業と連携した政策形成及び問題解決実習を行います。プログラム科目では各領域の専門的知識やスキルを学び、プログラム演習では学生同士で自身の研究内容について発表を行い、指導教員からのアドバイスを受けながら最終的に自身の関心を持つテーマに関する修士論文作成を通じて、学修の総仕上げを行います。
社会人が受講しやすい工夫としては、夜間・週末開講、夏期の集中講義、ディレクターによる個別相談による支援を行っております。
また、新型コロナウイルス感染症拡大に伴い、本プログラムについては、大学院での授業時や通学時のコロナウイルスへの感染リスクを回避するため、4月21日(火)より開講の際、2020年度春学期の授業を全てオンライン授業で実施しております。
○電気通信大学「ウェブシステムデザインプログラム」(https://www.websys.edu.uec.ac.jp/)
本プログラムは本年4月より開設されました。
「web技術」、「ネットワーク」、「セキュリティ」の3分野からなるウェブシステムを体系的に理解し、システムの設計から構築・運営までの広範な知識を学び、組織内での技術的・技能的指導に活かすことのできるシステムエンジニアの養成を目指します。
カリキュラムについては、ウェブシステムを構成する分野の基礎的な知識を修得することに加え、サーバ・ネットワーク構築・運用演習、web UI/UXプログラミング演習、Djangoアプリケーション演習、Pythonプログラミング演習、サイバーセキュリティ演習等を通じて実践的な最新の知識・技能を修得することができます。
社会人が受講しやすい工夫としては、夜間・休日開講やe-learning等の活用をしております。
また、プログラムの運営における新型コロナウイルス感染症拡大防止のための取組としては、オンライン(ZOOM)を用いた授業、授業時間中及び時間外の受講者から担当講師へのSlackを用いた質問体制の整備、録画した講義の配信等を行っております。
○北九州市立大学「enPiT-everi社会人リカレント教育プログラム」(https://enpit-everi.jp)
本プログラムは平成31年4月に開設されました。文部科学省のenPiT-Pro事業の採択を受けた、北九州市立大学、九州工業大学、熊本大学、宮崎大学、広島市立大学による社会人向けの実践的な高度情報技術教育プログラムです。
九州・中国地方の特色ある産業を対象として、幅広い分野を大学連携で補完し合い、地元企業や地域コミュニティと協力しながらIoT活用事例や情報技術の専門知識を学修し、それを活用するための実践的演習を行い、人工知能やロボット技術などの新たな情報技術の知識と技能の習得を目的としています。
カリキュラムの特徴として、製造業や介護産業等様々な分野に関する事例講義によりAI、IoT、ロボット導入事例を学び、その中でデザイン思考やマネジメント思考を学ぶとともに地域課題をテーマに、多様な背景を持つ受講生や地域の方々と議論することを通じて発展的なチームの作り方についても学修します。また、ネットワーク・セキュリティ・画像処理・システム制御等に関する体系的な知識に関する講義を通じて、情報通信・信号処理・ソフトウェア開発・ものづくりなどの基本的な技能を習得します。さらに、実践的なラボ演習により、ものづくりにおける新しい情報技術に関する知識を体系的に理解し、実際の現場で活用するため技能を総合的に習得できるものとなっております。
社会人が受講しやすい工夫としては、講座についてはVODやオンライン科目を多数提供することで自宅や職場での受講を可能にすることや、演習や実習といったスクーリングが必要な講座は原則土曜日に開講し、大学拠点を選んで受講できるよう拠点間をオンラインで接続し、各拠点にティーチングアシスタントやエンジニアリングアドバイザーを配置しています。また、ZOOMを使ったフューチャーセッションやオリエテンテーションの遠隔実施、Chatworkによる受講者同士・講師・メンターによる質問対応や、受講状況のフォローアップ体制を取ることにより、授業時間以外でのコミュニケーションでもオンライン化が充実しています。
カリキュラムの進行における新型コロナウイルス感染拡大防止のための取組としては、元々、受講のためのオリエンテーションや手続も含め、科目の約七割がオンライン化されているため影響は少なく、大半は平常どおり運営しています。一方、オンライン化を行っていなかったスクーリング科目については、自宅でも受講可能とするために、指定するPC環境が準備できる受講生を対象にオンライン開講へと変更した科目、受講者への実習機材の貸出によりオンライン開講へと変更した科目、単純に実施時期を延期した科目などがあります。
また、年度や学期をまたぎ、複数期の修了科目の累積によって修了認定を行う制度に改定したことで、延期によって受講者の修了認定に影響がないようにしています。
オンラインの講義実施で最も注意しなければならないのは、受講者の接続に不具合が生じて講義が受けられないことです。このための対策として、事前に接続テストの機会を設けること、ZOOM接続で問題が生じた際の連絡手段としてChatworkによる受講者とのやり取りを定着させておくことで早期にトラブル解決することに配慮し、運営に取り組んでいます。

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