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専修学校における遠隔授業の取組 ~生徒の学びを止めないために~

文部科学省総合教育政策局 生涯学習推進課専修学校教育振興室

新型コロナウイルス感染症の拡大を受け、専修学校において遠隔授業の導入が急速に広がっています。以下では先行して導入を進めている学校の取組事例を紹介します。

専修学校の遠隔授業の実施状況
新型コロナウイルス感染症の感染拡大を受け、他の学校種と同様、多くの専修学校においても遠隔授業が実施、あるいは実施に向けた検討が行われています。本稿では、こうした専修学校における遠隔授業の取組の具体について御紹介いたします。
専修学校は、実践的な職業教育や専門的な技術教育を行う教育機関であり、専門的な知識や技術を、少人数制によるきめ細やかな直接指導を行い、卒業後にいわば即戦力として活躍できる人材の養成を行っています。とりわけ、実習や演習、企業内実習などの科目のウエイトの高い学校が多いことが特色です。このような専修学校の教育の特色ゆえに、これまで専修学校においては遠隔授業の導入はあまり積極的に進められておりませんでした。
ところが、今般の状況下で対面を前提とした授業の実施が難しくなってきたことから、4月7日に緊急事態宣言が行われて以降、専門学校においても遠隔授業の検討が急ピッチで行われることになりました。
図1のとおり、専門学校を対象にした5月11日時点の調査では、既に実施していると答えた学校が6割強、実施検討中を含めると8割を超える学校で遠隔授業を実施する方針となっており、4月当初からわずか1月で実施・検討中の学校が3倍も伸びたことがわかります。社会の変化に対応したスピード感やフットワークの軽さ、強固なチームワークといった専修学校の強みが如何なく発揮された結果だと言えます。

専修学校における遠隔授業の取組事例集の公表
先に紹介した調査結果の「実施検討中」の専門学校はもちろんのこと、「実施している」と答えた多くの専門学校においても、今回の新型コロナウイルス感染症の影響によって初めて、遠隔授業の導入について検討がなされたと考えられます。
大学と比べ、専修学校ではITスキルを有する教職員が必ずしも多いとはいえない現状があります。手探りの状況の中で、様々な悩みを抱えておられることが専修学校関係者からも聞こえてまいりました。そこで、専修学校の皆様の参考となるよう、一般社団法人全国専門学校情報教育協会の協力も得て、5月15日に「新型コロナウイルス感染症対応に係る専修学校における遠隔授業の取組事例集」を公表(5月29日に一部更新)しました。(URL:https://www.mext.go.jp/content/20200529-mxt_kouhou01-000004520_2.pdf)
目的に合わせたツールの活用など遠隔授業を行う上での工夫や、実習動画で学んだ後、自宅で調理実習を行い成果物の写真を送付し評価するといった実習科目での取組、スマートフォンやPCの貸与など生徒の通信環境への配慮の例など、様々な事例を紹介しています。
現在、25校の専修学校の事例を掲載しておりますので御参照ください。

【5分でわかる実践映像】専修学校の遠隔授業オンラインセミナーの公開
○本動画作成のねらい
先に述べた通り取組事例集の公表はいたしましたが、初めて遠隔授業に取り組む学校にとっては、活字を読んだだけではなかなか伝わりづらい面もあることや、各学校が遠隔授業で用いているアプリケーションについても活字での説明では限界があったため、主に事例集に取り上げた学校の中から8校の専修学校の協力を得て、遠隔授業を行う上での工夫や、講義や実習などの科目での取組、生徒の通信環境等への配慮などについて動画で紹介していただくことにしました。
御協力いただいた各専修学校では、校務御多忙の中、一週間足らずという短期間の中で、動画を作成いただくとともに、動画は「原則5分以内」と時間制限をかけて御依頼しました。コンパクトに取組を御紹介いただくことが多くの方に御覧いただき、参考にしていただくために不可欠だと考えたからです。
こうして、専修学校の皆様と文部科学省による初の合作動画「専修学校の遠隔授業オンラインセミナー」が5月29日に公開されました。(URL:https://www.youtube.com/playlist?list=PLGpGsGZ3lmbBMM3FnbNfFyeISp1hnSGFn)

本稿では誌面の都合上、動画で取り上げている8校の取組のうち4校についてその概要を御紹介させていただきます。

○日本分析化学専門学校
この学校では、授業開始の1週間前に遠隔授業の実施に向けた実態調査を行い、準備を行うなど、限られた時間の中で教職員が一丸となって遠隔授業を推進されています。
【遠隔授業を行う上での工夫】
授業開始時は、生徒に場所を共有できない分、時間を共有していることを感じてもらうために多少時間を要するものの点呼を実施しています。また、毎日、校長や担任から生徒に対し、専用のホームページやメールからメッセージを配信し、生徒に安心して学べるよう心掛けています。
【実習科目での工夫】
遠隔授業では実験器具を実際に扱うことができないため、教員が実験の様子を画面の前で大きく映しながら演示し、登校日には三密を避けながら実験室で実際の実験を実施しています。
【生徒への支援】
申請があれば、校内の図書資料室で録画した授業の視聴が可能となるようにしています。また、Web個別面談を実施したり、教員が求人企業の紹介をする動画を作成したりするなどして、生徒の学習面や生活面、就職などの不安を解消する取組を行っています。
○九州技術教育専門学校(高等課程)
この学校では、一斉臨時休業要請が発表された翌日の2月28日に家庭のインターネット環境に関するアンケート及びヒアリング調査が行われ、生徒全員にパソコンを貸与することで、休業期間を設けることなく、3月2日からWeb会議システム「Google Meet」を利用した同時双方向型授業を全開講科目で実施されています。
【遠隔授業導入に際しての取組】
各教室には、ノートパソコンを1台ずつ準備し、ITスキルの低い先生は「いつも通りの授業をカメラの前でするだけ」という環境を整えられました。具体的には共有フォルダを利用した資料の配布、Web会議システムへの常時接続、毎朝の通信状況やカメラ、マイク等の環境チェックが行われています。
早期の遠隔授業導入を推進された、赤山校長先生は、「生徒も先生もオンライン授業に慣れることが大事です。」と声をかけられていました。

【遠隔授業を行う上での工夫】
iPadやペンタブレットを利用したホワイトボードアプリでの説明、Googleフォームを利用した問題演習・自動採点、画面共有やリモートデスクトップ機能を利用した資料の提示・操作サポート、Google Classroomを利用した課題の提示・生徒からの課題提出等を行われています。
【生徒への支援】
パソコンの貸与、インターネット環境がない少数の生徒のみ登校を許可、オンラインでの個別面談の実施、Googleハングアウトによるチャットでの質問・相談の対応、グループチャットによるクラス内のコミュニケーション等を行われています。
生徒に対するアンケートでは約7割の生徒が普段の授業と同程度かそれ以上にわかりやすいと回答がありました。
【保護者への情報伝達】
保護者用メーリングリストを作成し、遠隔授業への切り替えの説明や感染症対策の内容等を随時発信されています。

○日本医学柔整鍼灸専門学校
この学校では、遠隔授業の導入から実際の運用開始まで、幹部教職員によるテレビ会議システムの実体験、課題と対応策の検討、操作マニュアルの作成、ZOOMを使った模擬授業の実施、生徒向けの試行実施など手順を追って検討が行われました。
【遠隔授業を行う上での工夫】
遠隔授業のアプリケーションとしてZOOMを選択した理由として、スマートフォン1台でも参加可能であること、生徒によるアカウント登録が不要であること、他のテレビ会議システムと比較してデータ通信料が少ないことなど、生徒の負担が少ないことが一番の決め手となったということです。
また、操作補助や受講状況チェック等のため全ての授業に補助教員を配置しています。
【授業科目の工夫】
全4期のうち第1期を遠隔授業に充てるなど時間割が再編成されました。具体的には、第1期の実技科目を第2期以降に後ろ倒しする一方、難易度の高い科目が集中しないよう配慮しつつ一部の講義科目を第1期に前倒するなどカリキュラムの見直しが行われました。

○専門学校YICリハビリテーション大学校
この学校では、4月初旬に準備を開始し、まず、Moodleを用いて説明資料や課題の提示を行うことから開始し、5月よりZOOMとMoodleを同時に用いた双方向型の遠隔授業が実施されています。
【実習科目での工夫】
学校再開後にスムーズに実技科目の授業が行えるよう、事前に実技に関する動画をストリーミング配信し、生徒に予習してもらうこととしています。
【学校養成所での工夫】
医療機関での臨床実習は学校再開後に校内実習で代替し、医療機関の見学実習は新型コロナウイルス感染症の収束後に実施するようカリキュラムの組み換えが行われました。
【生徒への支援】
遠隔授業開始前に生徒に通信環境についてアンケート調査を行ったところ、スマートフォンのみを所有する生徒や通信制限のある生徒がいたため、説明資料は動画を控え、パワーポイントなどの資料を使用することにより教材を低容量化し、PCのない生徒や通信制限のある生徒に配慮を行っています。

今後の専修学校における遠隔授業の展望
専修学校の遠隔授業オンラインセミナーのごく一部をご紹介しましたが、本セミナーは多くの専修学校の皆さんが遠隔授業について試行錯誤されている今だからこそ、少しでも早くお届けしたいと思い企画したものです。
使用しているアプリケーションを選んだ決め手、遠隔授業導入までの検討プロセス、遠隔授業を効果的に行うための工夫、授業計画の見直しの具体、授業の様子、そして教材の低容量化、パソコンやルータの無料貸し出しなど生徒の通信環境の配慮などについても具体的に御紹介いただきました。
現在行っている遠隔授業の質の向上や、遠隔授業の導入を具体化する上で、様々なヒントが得られるものと考えています。
どの学校にも共通して言えることとしては、「まずはできるところからやってみる」というチャレンジ精神だったように思います。動画の中で、「遠隔授業の導入で最も重要なことは、設備やITリテラシーではなく、新しいことに取り組もうとする空気感だった。」と述べている学校や、校長先生自ら、「いつも通りの授業をカメラの前でやるだけ。」と遠隔授業のハードルを下げる環境づくりに心がけておられたのが印象的でした。
また、生徒からの遠隔授業の理解度や学校の対応へのアンケートなどをとり、極めて高い評価を得ているとの報告もありました。このことからも、先生方のきめ細やかな情報提供や、生徒の不安払拭のための日ごろからの御努力、学校と生徒との信頼関係があってこその結果だと思います。
5月25日に緊急事態宣言が全面解除されましたが、「新しい生活様式」を前提とした教育活動は当面続くことになるでしょう。また、第2波、第3波に備えるためにも、専修学校の生徒の学びを止めないために「学びのセーフティーネット」として遠隔授業ができる体制を整えておく必要があります。さらには、新型コロナウイルス感染症が収束した後においても遠隔授業は必要なツールになるものと考えています。
文部科学省でも、第一次補正予算に引き続き、第二次補正予算においても遠隔授業を実施するために必要な環境整備を支援し、実施のニーズのある専門学校、高等専修学校で遠隔授業が実施できる環境構築を進めてまいります。
今後も、文部科学省の新型コロナウイルス感染症対策特設サイトに随時、必要な情報を掲載してまいりますので御覧いただければと思います。
最後になりましたが、本稿に目を通された皆様、百聞は一見に如かず。オンラインセミナーを是非、御覧ください。

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