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「文化芸術立国」の実現を目指して

文化庁

文化芸術は、豊かな人間性を育み、創造力と感性を育むなど、人間が人間らしく生きるための糧です。また、文化芸術は、それを通じてあらゆる人々が社会に参画することで、多様性を受け入れることができる心豊かな社会の形成に寄与するものであるほか、観光やまちづくり、産業等の関連分野において、新たな需要や高い付加価値を生み出し、質の高い経済活動等を実現するものであるなど、多様な価値を有しており、重要な役割を担っています。文化庁は、こうした文化の振興を図り、「文化芸術立国」の実現に向けて取り組みます。

文化芸術推進基本計画(第一期)と文化庁予算と組織
1 文化芸術推進基本計画(第一期)について
政府は、文化芸術に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るため、改正文化芸術基本法に基づき、文化審議会や文化芸術推進会議等を経て「文化芸術推進基本計画」(以下「基本計画」)を定めています。
基本計画では、文化芸術が本質的価値に加え、社会的・経済的価値を有するものであることを明確化したほか、少子高齢化やグローバル化、高度情報化など変化する社会の要請に応じつつ、関連分野との連携を視野に入れた総合的な文化芸術政策の展開が求められていること、また、今後の文化芸術政策の目指すべき姿として次の四つの目標と、今後の5年間(平成30年度から令和4年度)の文化芸術政策の基本的な方向性として六つの戦略を定めています。
目標1 文化芸術の創造・発展・継承と教育
目標2 創造的で活力ある社会
目標3 心豊かで多様性のある社会
目標4 地域の文化芸術を推進するプラットフォーム

戦略1 文化芸術の創造・発展・継承と豊かな文化芸術教育の充実
戦略2 文化芸術に対する効果的な投資とイノベーションの実現
戦略3 国際文化交流・協力の推進と文化芸術を通じた相互理解・国家ブランディングへの貢献
戦略4 多様な価値観の形成と包括的環境の推進による社会的価値の醸成
戦略5 多様で高い能力を有する専門的人材の確保・育成
戦略6 地域の連携・協働を推進するプラットフォームの形成
関係府省庁をはじめ各関係機関との連携及び協働を図りながら、基本計画に基づき必要な取組を進めます。

2 文化庁予算及び組織について
令和2年度文化庁予算においては、首里城やノートルダム大聖堂での火災を踏まえ、災害等から文化財を護るための防災対策や文化財の確実な継承に向けた保存・活用の促進、舞台芸術などの文化芸術の創造活動や、文化芸術人材の育成及び子供たちの文化芸術体験の推進、文化振興の拠点としての博物館活動への支援など文化発信を支える基盤の整備・充実など、対前年度0.1億円増の1067億円を計上しています。
このほか、国際観光旅客税財源を活用し、「日本博」を契機とした観光コンテンツの拡充など、文化資源の磨き上げによるインバウンドのための環境整備を行います。
また、文化庁として新たな政策課題にスピード感をもって適切に対応していくため、博物館・美術館の活動支援体制の強化や食文化の推進に向けた体制整備を図ることとし、令和2年度から参事官(文化観光担当)及び参事官(食文化担当)を新設しました。

京都への本格移転に向けた取組
平成30年6月に「文部科学省設置法」等を改正し、その附帯決議において、「文化庁が京都への本格移転に向け、予定しているその効果及び影響の検証結果については、文化庁の京都移転が、政府関係機関の地方への移転の先行事例であることを踏まえ、適宜国会へ報告すること」とされました。すでに平成29年度から先行移転として京都で設置されている「地域文化創生本部」へ一部の職員を派遣し、京都で執務を行っていますが、令和元年度には、臨時国会期間中に一部職員が京都で執務を行うとともに、テレビ会議等の機器を活用し会議等への出席を行うなど、本格的な移転を見据えた業務のシミュレーションを行いました。
移転時期については、庁舎の工期延伸により令和4年8月下旬竣工を目指すことが京都府より示されましたが、竣工後速やかに移転できるよう、引き続き京都府・京都市や関係省庁、地方創生や観光などの関連分野とも連携しながら取組を進めていきます。

2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会を契機とした文化プログラム
1 文化プログラムの推進について
2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会は、文化の祭典でもあり、魅力ある日本文化を世界に発信するとともに、地域の文化資源を掘り起こし、地方創生や観光振興の実現にもつなげる絶好の機会です。
このため、文化庁では、大会組織委員会や関係省庁、地方公共団体、民間団体等と連携しつつ、「日本博」をはじめとする文化プログラムを積極的に推進しています。また、全国各地の文化プログラム等の情報を広く収集し、インターネット上で管理・集約する「文化情報プラットフォーム」やその情報を基にした文化プログラム総合ポータルサイト「Culture NIPPON」の試験的な運用にも継続的に取り組んでいます。令和2年2月18日には、文化プログラムへの参加促進等を目的として「文化プログラム参加促進シンポジウム」を開催し、大会組織委員会や東京都とともに、文化プログラムへの積極的な参加を呼び掛けました。

2 「日本博」について
文化庁では、2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会を契機とする文化プログラムの中核的事業として、「日本博」を全国各地で展開しています。
「日本博」は、縄文時代から現代まで続く日本の美を各分野にわたって体系的に展開していく大型プロジェクトであり、「日本人と自然」という総合テーマの下に各地域が誇る様々な文化資源を年間通じて体系的に創成・展開するとともに、国内外への戦略的プロモーションを推進し、文化による国家ブランディングの強化、観光インバウンドの飛躍的・持続的拡充を図ります。

3 「文化観光拠点施設を中核とした地域における文化観光の推進に関する法律」について
東京オリンピック・パラリンピック競技大会は世界中の注目が日本に集まる絶好の機会です。この機を捉え、文化の振興を起点として、観光の振興及び地域の活性化の好循環を創出するためには、地域において文化の理解を深めることができる機会を拡大し、これにより国内外からの観光旅客の来訪を促進していくことが重要となっています。こうした観点から、博物館等の文化施設を拠点として、地域の文化観光を推進するため、「文化観光拠点施設を中核とした地域における文化観光の推進に関する法律案」を国会に提出し、令和2年4月10日に成立されました。
この法律では、新たに「文化観光」を、文化資源の観覧や文化体験等を通じて、文化についての理解を深めることを目的とする観光として定義し、地域における文化観光の推進の拠点となる文化施設を「文化観光拠点施設」と定義しています。
また、このような文化観光を地域で推進していくため、主務大臣である文部科学大臣と国土交通大臣が定める基本方針に基づく拠点計画及び地域計画の認定や、当該認定を受けた計画に基づく事業に対する特別の措置等について定めています。
今後、この法律上の措置に加え、関連する予算・地方財政措置・税制も含めた総合的な支援を通じ、地域における文化観光を推進していきます。

舞台芸術活動等の推進
我が国の舞台芸術の水準を向上させるとともに、より多くの国民に対して優れた舞台芸術の鑑賞機会を提供するため、音楽、舞踊、演劇、伝統芸能、大衆芸能といった公演活動について支援を行っています。また、我が国の優れた舞台芸術を世界に発信するための取組に対して支援を行うことで、国際発信力を強化し、国際文化交流を推進しています。このほか、芸術の創造と発展を図ることを目的として、「文化庁芸術祭」を毎年秋に開催しています。
さらに、次代の文化芸術を担う新進芸術家等に対し高度な技術・知識を習得させるための事業や文化の作り手と受け手をつなぐ役割を担うアートマネジメント人材を育成する事業のほか、若手芸術家が海外での実践的な研修に従事する機会を提供する等の人材育成に取り組んでいます。

メディア芸術の振興
1 アニメーション・マンガなどのメディア芸術の振興
我が国のアニメーション、マンガ、ゲーム、メディアアート等のメディア芸術は、その作品を通じて広く国民に親しまれるとともに、海外で高く評価され、我が国への理解や関心を高めています。
このメディア芸術を一層振興するため、創作活動への支援、普及、人材育成などに重点を置いて、施策の充実を図ります。
具体的には、文化庁メディア芸術祭の開催を一つの柱として我が国の優れたメディア芸術作品を国内外に発信しています。また、優秀な若手クリエイターやアニメーターの育成支援等を通じ次世代を担う人材の育成に努めているほか、メディア芸術作品の収集・保存・活用の取組を推進しています。

2 日本映画の振興
映画は、演劇や音楽、美術等の諸芸術を含んだ総合芸術であり、国民の最も身近な娯楽の一つとして生活の中に定着している、国民的な芸術文化です。
文化庁では日本映画の振興のため、優れた日本映画の製作支援や撮影環境の充実等を通じて創造活動を促進するほか、国内外の映画祭等における積極的な発信・海外展開・人材交流を行うとともに、日本映画の魅力や多様性を強化し、その基盤を維持するため、映画に関わる人材育成を行っています。

子供たちの芸術教育の充実・文化芸術活動の推進
1 学校における芸術教育・文化部活動の充実
①学習指導要領に基づく芸術教育の充実
これまで実施していた伝統音楽研修会に加え、令和元年度から新たに小・中・高等学校等で芸術系教科等を担当する教員等の研修会を実施し、学校における芸術教育の充実を図ります。
②子供たちの体験活動機会拡大のための取組
子供たちの豊かな創造力・想像力や思考力、コミュニケーション能力などを養うとともに、将来の芸術家や観客層を育成し、優れた文化芸術の創造につなげることを目的として、小学校・中学校等において、一流の文化芸術団体による実演芸術の巡回公演や、個人又は少人数の芸術家を派遣し、芸術家による計画的・継続的なワークショップ等を含めた質の高い文化芸術を鑑賞・体験する機会の確保を図っています。
③文化部活動の環境整備のための取組
生徒のバランスの取れた生活や学校の働き方改革の観点から「文化部活動の在り方に関する総合的なガイドライン」を平成30年12月に策定し、公表しました。本ガイドラインは、義務教育である中学校段階の文化部活動を主な対象(高等学校段階においても原則的に適用、小学校段階についても休養日や活動時間を適切に設定すること)とし、「適切な運営のための体制整備」「適切な休養日等の設定」「大会等の見直し」等について、本ガイドラインに基づき持続可能な文化部活動にかかる取組を徹底するよう、地方公共団体、教育委員会及び学校法人等の学校設置者、学校並びに関係団体に求めています。
また、高校生の芸術文化活動の向上・充実と、相互交流を深めることを狙いとして、昭和52年から続く我が国最大規模の高校生の文化の祭典である、「全国高等学校総合文化祭」を開催しています。第44回となる令和2年度は、「蒼海の知 緑樹の感 陽光の志 いま、南国土佐に集うとき」を大会テーマとして、高知県において開催されます。
この大会において、演劇、日本音楽、郷土芸能の各部門で優秀な成績を収めた高校等が、東京の国立劇場に一堂に会し、演技・演奏を披露する「全国高等学校総合文化祭優秀校東京公演」を毎年夏に開催するほか、我が国の伝統文化の継承・発展に取り組む高校生が日頃の成果を披露し、交流する場となる全国高校生伝統文化フェスティバルを京都で開催しています。

2 子供たちの文化芸術活動の推進
子供たちが親とともに、民俗芸能、工芸技術、邦楽、日本舞踊、茶道、華道などの伝統文化・生活文化等を体験・修得できる機会を提供します。さらに、これまで体験機会のなかった地域の子供たちにも、地方公共団体が中心となり、地域の指導者等の協力により、体験活動機会の充実を図ります。

文化芸術による共生社会の実現
1 障害者等による文化芸術活動の推進
平成30年6月に「障害者による文化芸術活動の推進に関する法律」が施行されたことを受け、同法に基づく国の基本計画が平成31年3月に策定されました。この計画に基づき、障害者による文化芸術活動の推進に関する施策を総合的かつ計画的に実施しているところです。また、障害のある方々の優れた文化芸術活動の国内外での公演・展示の実施や助成採択した映画作品や劇場・音楽堂等において公演される実演芸術のバリアフリー字幕・音声ガイド制作への支援、特別支援学校の生徒による作品の展示や実演芸術の発表の場の提供等、障害者の文化芸術活動の充実に向けた支援に取り組んでいます。
さらに、国立美術館、国立博物館で、展覧会の入場料を無料としているほか、全国各地の劇場、コンサートホール、美術館、博物館等において、車いす使用者も利用ができるトイレやエレベーターの設置を行う等、障害のある方々に対する環境改善も進めています。

2 アイヌ文化の振興
文化庁では、アイヌを主題とした初の国立博物館である「国立アイヌ民族博物館」の令和2年度の開館に向けた準備を行ってきたところです。
「国立アイヌ民族博物館」は、アイヌの歴史や文化を主題とした初めての国立博物館であり、「私たちのことば」など「私たちの」で始まる六つのテーマで、アイヌの人々の視点から紹介する基本展示をはじめ、体験キットを手に取って理解を深める探究展示 テンパテンパ※、高精細の映像が楽しめるシアター、テーマ展示や特別展示等を通して、アイヌの歴史や文化を総合的・一体的に展示します。
また、館内の第一言語をアイヌ語とし、サインや展示解説等にアイヌ語を積極的に使用するとともに、最大8言語の多言語対応により、多様な来館者のアイヌの歴史と文化の理解促進とアイヌ語に触れる機会の創出を図っていることも特徴の一つです。(詳細はこちらを御覧ください。https://ainu-upopoy.jp/)
(※テンパテンパとは、「触ってね」という意味のアイヌ語)

地域における文化の振興
1 多様な文化を生かした地域づくり
文化芸術の持つ創造性を生かした地域振興、観光・産業振興等に取り組む地方公共団体を支援し、国全体が活性化するための基盤づくりや、地方公共団体が、地域住民や地域の芸・産学官とともに地域の文化芸術資源を活用した取組を支援しています。
国民文化祭は、地域の文化資源等の特色を生かし、一層の地域の文化の振興に寄与するため、観光をはじめとした様々な施策と有機的に連携した文化の祭典であり、文化庁と都道府県等との共催により昭和61年度から毎年開催しています。令和2年度は、「山の幸 海の幸 いざ神話の源流へ」をキャッチフレーズに、「第35回国民文化祭・みやざき2020」が宮崎県において開催されます。
さらに、訪日外国人の増加や活力ある豊かな地域社会を実現するため、芸術祭等を中核として観光、まちづくり、国際交流、福祉、教育、産業その他の関連分野と有機的に連携した国際発信力のある拠点形成の取組を支援し、全国各地の多様で豊かな文化を国内外へ発信しています。

2 生活文化等の振興・普及
生活文化・国民娯楽は、我が国の文化芸術に広がりを与え、それを支える土台として機能しています。また、和装や茶道、食文化など外国人がイメージする我が国の文化を数多く含んでおり、我が国の魅力そのものとして、観光振興や国際交流の推進等にも重要な役割を果たしています。文化庁では、こうした生活文化等が持つ多様な価値と魅力を生かし発信するとともに、各分野に関する実態調査を行い、生活文化の振興等を図ります。

文化財の保存と継承
1 文化財保護制度の改革
過疎化や少子高齢化などを背景に文化財の確実な継承が危機に瀕していることを受け、平成29年5月に文部科学大臣から文化審議会に対して諮問がなされ、同年12月に「文化財の確実な継承に向けたこれからの時代にふさわしい保存と活用の在り方について」(第一次答申)が答申されました。これを踏まえ、「文化財保護法及び地方教育行政の組織及び運営に関する法律の一部を改正する法律」が国会での審議を経て、平成30年に公布され、平成31年4月に施行されました。
改正法においては、文化財をまちづくりに生かしつつ、地域社会総がかりで、その継承に取り組んでいくため、文化財の計画的な保存・活用の促進や地方文化財保護行政の推進力の強化を図るべく、まず、都道府県が、域内の文化財の保存・活用に係る基本的な方針、広域区域ごとの取組、災害発生時の対応等を記載した文化財の保存・活用に関する総合的な施策の大綱を策定できることとしました(令和2年3月末現在15件策定)。次に、市町村が、文化財の保存・活用に関する総合的な計画(文化財保存活用地域計画)を作成し、国の認定を申請できるとしました(令和2年3月末現在9件を認定)。地域計画では、できる限り域内の文化財を網羅的に把握し、域内の文化財の保存及び活用に関する基本的な方針、保存・活用のために市町村が講ずる措置の内容等を記載することとなっており、作成した地域計画が国の認定を受けた場合、国に対して登録文化財とすべき物件を提案できることとしています。また、国指定等文化財の現状変更の許可等、文化庁長官の権限である一部の事務について、現在、移譲されている都道府県・市のみならず認定町村にも特例的に自ら事務を実施できることとしています。
さらに、文化財の担い手の拡大を図るため、市町村が、地域において文化財保存・活用の事業や調査研究を行ったりする民間団体を「文化財保存活用支援団体」として指定できる仕組みを創設しました。
一方、個々の文化財を確実に継承するため、国指定等文化財の所有者又は管理団体は、文化財の現状、保存管理上の留意事項や修理・活用の方針などを記載する当該文化財の「保存活用計画」を作成し、国の認定を申請できることとしています。計画で修理等の行為の内容や具体的な部位が特定され、かつ適切な行為であること等が認められ文化庁長官の計画認定を受けた場合には、通常個別に要する現状変更等の許可を事後届出で良いとするなど手続を弾力化しています。
さらに、文化財の所有者を支援する体制を充実させるため、「特別な事情があるとき」に選任することができることとされていた管理責任者について、文化財の「適切な管理のため必要があるとき」に選任できるよう要件を拡大しました。
地方公共団体において上述のような取組を推進し、地方文化財行政の一層の進展を図っていくためには、芸術文化分野を含む文化行政全体としての一体性を確保したり、景観・まちづくり行政、観光行政など他の行政分野も視野に入れた総合的・一体的な取組が重要となります。このため、教育委員会が行うこととされている文化財の保護に関する事務について、各地方公共団体が効果的と考える場合には、条例により、地方公共団体の長が担当できることとしています。ただし、地方公共団体の長が担当する場合には、専門的・技術的判断の確保や開発行為との均衡などを担保するため、文化財に関して優れた識見を有する者により構成される地方文化財保護審議会を必ず置くこととしています。

2 文化財の指定をはじめとする保存・継承のための取組
文化財保護法に基づき、重要文化財、重要無形文化財、重要有形・無形民俗文化財、史跡・名勝・天然記念物、重要文化的景観、重要伝統的建造物群等を指定し、重点的に保護するとともに、重要文化的景観、重要伝統的建造物群保存地区を選定して地方公共団体の取組みを支援しています。また、登録制度による緩やかな保護制度により、多種多様な文化財の保存・活用を図っています。さらに、文化財の保存のために欠くことのできない伝統的な技術・技能のうち、保存の措置を講ずる必要のあるものを選定保存技術として選定するとともに、その保持者・保存団体を認定しています。
また、これらの文化財について、保存と活用を図るために所有者、管理団体等が実施する事業に対して補助を行い、保存整備や活用等を引き続き推進します。
あわせて、国民の財産である文化財の散逸・滅失を未然に防ぐとともに、国民の鑑賞機会の充実を図るため、国による適切な保存・活用が必要な国宝・重要文化財等の買上げを実施するとともに、貴重な史跡等を国民共有の財産として大切に保存し、その後の整備・活用に対応することを目的として、地方公共団体が緊急に史跡等を公有化する事業に対し補助を行います。
東日本大震災や平成28年熊本地震等の大規模災害への対応として、被害を受けた国指定等文化財について、早期の保存・修復を図るため、文化財の所有者等が実施する被災文化財の復旧事業に対する指導、経費の補助など、必要な措置を講じます。

3 埋蔵文化財の保護
土地に埋蔵された文化財を保護するため、文化財保護法に基づき、開発等により破壊されるおそれのある遺構等の発掘調査、記録作成等の事業に対し、補助を行っています。また、水中に存在する埋蔵文化財(水中遺跡)の保護体制の整備充実を図るため、地方公共団体が水中遺跡の保存活用を円滑に推進するための『発掘調査のてびき―水中遺跡調査編―』(仮称)の作成を進めます。
加えて、地域の特色ある埋蔵文化財活用事業により、埋蔵文化財を活用した体験学習会等の実施による理解促進・普及啓発や、埋蔵文化財の保管・展示や活動拠点のための施設として、廃校等を転用した埋運用を図ることによって、地域活性化を促進します。

4 古墳壁画の保存と活用
我が国では2例しか確認されていない極彩色古墳壁画である高松塚古墳及びキトラ古墳の両古墳壁画は、「国宝高松塚古墳壁画仮設修理施設」及び「キトラ古墳壁画保存管理施設」で保存管理・活用等が行われています。
国宝高松塚古墳壁画は、石室を解体して壁画を修理する保存方針に基づき、仮設修理施設において令和元年度まで保存修理作業等を実施してきました。引き続き壁画の保存管理を行いながら、施設内に保管している壁画の公開を実施します。
特別史跡キトラ古墳の恒久的な保存と確実な継承のため、平成28年秋にオープンした「キトラ古墳壁画体験館 四神の館」において、石室から取り外した国宝キトラ古墳壁画の保存と活用を推進し、整備された古墳の公開を進めます。

5 世界文化遺産と無形文化遺産
我が国を代表する固有の文化遺産を、ユネスコの世界遺産一覧表に記載することは、日本文化を世界に向けて発信するとともに、国民の歴史と文化を尊ぶ心を培う上で大きな意義を有します。令和元年7月には、「百舌鳥・古市古墳群-古代日本の墳墓群-」が世界遺産一覧表に記載されたところです。引き続き、一覧表に記載された世界遺産を適切に保護するとともに、我が国の誇る貴重な文化遺産の世界遺産一覧表への記載を推進します。
また、国際的な無形文化遺産の一層の認知やその重要性に関する意識の向上等に貢献するため、我が国の無形文化遺産の多様性や豊かさ、保護の取組等について、国際社会に積極的にアピールしていくことが求められます。平成31年3月に、「伝統建築工匠の技:木造建造物を受け継ぐための伝統技術」を、(令和2年審査予定)、令和2年3月に「風流踊」を無形文化遺産の代表一覧表に提案しています。引き続き、我が国の無形文化遺産を適切に保護・振興するとともにユネスコ無形文化遺産への登録を推進します。

6 文化財の防火対策
火災により、平成31年4月15日(現地時間)にノートルダム大聖堂や令和元年10月31日に首里城正殿等が焼損したことに多くの人が心を痛めました。これらの火災を受け、令和元年に国宝・重要文化財の管理状況等の現状を把握するため調査を実施しました。この調査の結果、国宝・重要文化財における消火設備の老朽化による機能低下の恐れ等が明らかになりました。このような結果を踏まえ、文化財の総合的な防火対策の検討・実施に資するよう国宝・重要文化財(建造物)及び国宝・重要文化財(美術工芸品)を保管する博物館等の防火対策ガイドラインを作成しました。加えて、世界遺産や国宝を対象とした総合的・計画的な防火対策を重点的に進めるため、「世界遺産・国宝等における防火対策5か年計画」(令和元年12月23日大臣決定)を策定しました。今後は同計画に基づき文化財の防火対策を進めていくこととしています。

文化財をはじめとする文化資源を活用した付加価値の創出
1 文化資源を活用したインバウンドのための環境整備
平成28年に策定された「明日の日本を支える観光ビジョン」において掲げられた「文化財の観光資源としての開花」を推進するため、文化庁では文化財を中核とする観光拠点の整備、並びに当該拠点等において実施される文化財等の観光資源としての魅力を向上させる取組への支援を行っています。
平成31年1月より、国際観光旅客税が創設され、観光先進国実現に向けた観光基盤の拡充・強化が推進されています。
文化財についても地域固有の文化資源として、国内外問わず多くの人々にその歴史的価値・魅力を発信すべく、国際観光旅客税を充当し、文化財に新たな付加価値を付与してより魅力的なものとなるよう「磨き上げる」取組を支援しています。

2 日本遺産の魅力発信
我が国の文化財や伝統文化を通じた地域の活性化を図るためには、その歴史的経緯や、地域の風土に根差した世代を超えて受け継がれている伝承、風習などを踏まえたストーリーの下に有形・無形の文化財をパッケージ化し、地域全体として一体的に整備・活用し国内外に積極的・効果的に情報発信等の取組を進めていくことが必要です。
地域の歴史的魅力や特色を通じて我が国の文化・伝統を語るストーリーを「日本遺産(JapanHeritage)」に認定するとともに、歴史的魅力にあふれた文化財群を地域主体で総合的に整備・活用し、国内外に戦略的に発信する取組を支援することにより、地域の活性化を図ります。
令和2年4月現在、全国で83のストーリーを認定しており、日本遺産を通じた地域活性化に資する情報発信や人材育成事業、普及啓発事業、活用整備に係る事業等に対して支援を行っています。

文化芸術によるイノベーションの創出、国家ブランドの構築
1 文化経済戦略の推進
国・地方公共団体・企業・個人が文化への戦略的投資を拡大し、文化を起点に産業等他分野と連携し、創出された新たな価値が文化に再投資され、持続的に発展する「文化と経済の好循環」を目指し、平成29年12月に「文化経済戦略」を策定しました。この戦略推進のための主要施策の内容や目標等を明らかにした「文化経済戦略アクションプラン」を平成30年8月に策定し、関係府省庁と緊密に連携しながら文化経済戦略を推進します。
また、近年、興行入場券の高額転売が社会問題となっていることを踏まえ、興行入場券の適正な流通を確保し、もって興行の振興を通じた文化及びスポーツの振興並びに国民の消費生活の安定等を目的とした「特定興行入場券の不正転売の禁止等による興行入場券の適正な流通の確保に関する法律」が平成30年12月に成立し、令和元年6月14日から施行されました。本法律の適切な運用を図るため、国民への周知等を行い、興行を通じた文化及びスポーツの振興を推進します。

2 企業等による芸術文化活動への支援
我が国における文化芸術活動を振興するために、日本作家及び現代日本アートの国際的な評価を高め、世界のアート市場規模に比して小規模にとどまっている我が国アート市場の活性化と我が国アートの持続的発展を可能とするシステムを形成します。
あわせて、公益社団法人企業メセナ協議会との連携の下、同協議会が主催する「メセナアワード」の一環として、「文化庁長官賞」を設け、企業や企業財団による優れたメセナ(芸術・文化振興による社会創造)活動の顕彰を行っています。

3 国際文化交流・協力の推進と日本文化の発信
国際文化交流・協力を推進するとともに、日本文化を戦略的に発信し、文化芸術を通じた諸外国との相互理解の促進及び国家ブランド構築への貢献を図ります。具体的には、我が国の芸術団体と外国の芸術団体との国際共同制作公演、我が国で開催される国際発信力のあるフェスティバル、海外で開催されるフェスティバルへの参加公演や国際展への出展、映画、メディア芸術の海外展開などを支援します。また、「国際文化交流に祭典の実施の推進に関する法律」に基づき、平成31年3月に閣議決定された「国際文化交流の祭典の推進に関する基本計画」を踏まえ、日本で行われる世界の関心を集める国際文化交流の祭典の実施を推進します。
さらに、日本の第一線で活躍する文化人、芸術家等を「文化交流使」として派遣し、日本の優れた芸術文化を広く世界に発信します。また、日中韓やASEAN+3といった枠組みでの文化に関する国際的な閣僚級会合への積極的な参加を通じて、文化面での日本のプレゼンス向上を目指します。特に日中韓文化大臣会合の下では、3か国から1都市ずつを選定し、様々な文化芸術イベントを通じて都市間で交流を行う「東アジア文化都市」事業等の実施を通じて、東アジア諸国との交流の拡大に努めます。
そのほか、国内のアーティスト・イン・レジデンス実施団体が行う国内外芸術家の滞在型創作活動等を支援することにより、海外のアーティスト・イン・レジデンス実施団体との国際的な協力関係を活発にし、双方向の国際文化交流を促進します。
また、我が国の知見を生かした文化遺産国際協力を推進し、人類共通の財産である世界各地の文化遺産の保護に貢献します。

博物館・劇場等の振興
1 博物館の振興
博物館は、歴史・芸術・民俗・産業・自然科学等に関する資料の収集、保管、展示、調査研究、教育普及等の本来の役割や機能に加え、観光・まちづくり・教育等の関連分野との有機的な連携を図りつつ、地域の文化振興の拠点となることが期待されています。
令和元年9月にはICOM(国際博物館会議)京都大会2019が開催され、大会史上最高となる4,590名の参加者があり、関西を中心に能や日本舞踊等の文化発信行事が開催されたほか、和歌山県立博物館と工業高校の連携の様子など、世界各地の博物館関係者に日本文化を実感してもらう絶好の機会となりました。また、大会では、博物館の定義をはじめ多角的な議論がなされました。文化庁は博物館全体を所管する立場から、こうした国際的な議論も反映しながら博物館のさらなる振興を図るべく、同年11月、文化審議会博物館部会を新設しました。今後も博物館に関する継続的かつ総合的な議論を進めていきます。
①博物館への支援
博物館職員の資質向上を図り、博物館活動を充実させるため、学芸員の資格認定試験や、博物館長及び学芸員等を対象とした専門的な研修等や博物館等を中核とした文化クラスター(集積地区)創出に向けた地域文化資源の面的・一体的整備、国際交流、地域へのアウトリーチ活動、人材育成等、博物館を活用・強化する取組を行います。
②国立館における取組
国立美術館・博物館は、今般の新型コロナウイルスの影響を踏まえ、各国立博物館や劇場の取組をオンラインで配信する等、来館できない方にも作品や公演を楽しんでもらえるよう取組を進めています。2020年4月現在は、開館状況や取組等に一部変更がありますが、平時は開館時間を延長して週2回の夜間開館(金・土曜日は20時まで)と、それに連動したコンサート・野外シネマなどの参加・体験型各種イベントを実施しています。また、東京国立博物館では、我が国の文化資源の魅力を広く発信することを目的として、インバウンドを含む来館者の満足度を高めるためのプラン(トーハク新時代プラン)を公表しており、さらなる充実に取り組みます。
③(独)国立美術館について
独立行政法人国立美術館は、6館(東京国立近代美術館、京都国立近代美術館、国立映画アーカイブ、国立西洋美術館、国立国際美術館、国立新美術館)が、それぞれの特色を生かしつつ、連携・協力し、国民のニーズや研究成果を踏まえ、魅力ある質の高い所蔵作品展、企画展及び企画上映を実施しています。
また、美術作品の収集・保管、教育普及活動やこれらに関する調査研究等を通じ、我が国の美術振興の拠点として、国内外の研究者との交流、学芸員等の資質向上のための研修、公私立美術館への助言、地方への巡回展などを行います。なお、東京国立近代美術館工芸館は、令和2年夏に東京から石川県金沢市に移転・開館します。
④(独)国立文化財機構について
独立行政法人国立文化財機構は、国立博物館4館(東京・京都・奈良・九州)を設置し、貴重な国民的財産である文化財の保存と活用を図ることを目的とし、有形文化財を収集・保管して広く観覧に供するとともに、東京文化財研究所、奈良文化財研究所、アジア太平洋無形文化遺産研究センターを加えた7施設において調査・研究などを行っています。同機構では、国宝・重要文化財を含めて約13万件の文化財を所蔵しています。これらの文化財を活用した平常展、企画展などとともに、平成30年7月に開設した文化財活用センターでの新たなコンテンツやプログラム開発等の取組を通じて日本の歴史・伝統文化や東洋文化の魅力を国内外に発信する拠点としての役割も担っています。なお、同機構は、平成26年7月に「文化財防災ネットワーク推進本部」を設置し、今後起こり得る大規模災害に対応した文化財等の救出・救援体制を確保するため、文化財の防災・救援業務に係る調査・研究等を行っています。
⑤(独)国立科学博物館について
独立行政法人国立科学博物館は、科学系博物館のナショナルセンターとして、自然史・科学技術史に関する調査研究、ナショナルコレクションとしての標本資料の構築・継承を行うとともに、それらの成果を活かした展示や学習支援活動を行っています。上野地区(上野本館)、筑波地区(筑波実験植物園、筑波研究施設)、白金台地区(附属自然教育園)の3地区で活動を展開し、国民の自然科学や科学技術に関する理解の増進に努めています。また、平成31年4月に「科学系博物館イノベーションセンター」を設置し、同法人の有するコレクション等を有効活用するとともに、地域振興にも貢献するなど、新たな事業を実施しています。
⑥国立近現代建築資料館について
国立近現代建築資料館では、我が国の近現代建築資料における劣化、散逸、海外流出防止を目的として、情報収集、資料の収集・保管及び調査研究を行っています。あわせて、展覧会の開催を通じて、我が国の建築文化に対する国民への理解増進を図っています。
(詳細は、こちらを御覧ください。http://nama.bunka.go.jp/)

2 劇場・音楽堂等の振興
①劇場・音楽堂等の活性化
「劇場、音楽堂等の活性化に関する法律(平成24年6月公布・施行)」を踏まえ、我が国の文化拠点である劇場・音楽堂等が行う、音楽、舞踊、演劇等の実演芸術の創造発信や専門的人材の養成、普及啓発のための事業、劇場・音楽堂等間のネットワーク形成に資する事業やバリアフリー・多言語対応の整備を支援することで、劇場・音楽堂等が地域の核として文化の発信をけん引することを目指しています。
②国立の劇場における取組
国立劇場(国立劇場、国立演芸場、国立能楽堂、国立文楽劇場及び国立劇場おきなわ)は、伝統芸能の保存と振興を図るため、歌舞伎、文楽、能楽、大衆芸能、組踊などの伝統芸能を、各種の演出や技法を尊重しながら、できる限り古典伝承のままの姿で公開し、国民が伝統芸能を鑑賞する機会を提供しています。また、伝統芸能の伝承者養成や調査研究等の事業を実施しています。
新国立劇場は、現代舞台芸術の振興と普及を図るため、国際的に比肩しうる高い水準のオペラ、バレエ、現代舞踊、演劇などの自主制作の公演を行い、国民が現代舞台芸術を鑑賞する機会を提供しています。また、現代舞台芸術の実演家等の研修や調査研究等の事業を実施しています。
これらの劇場の運営は、独立行政法人日本芸術文化振興会が行っており、効率的かつ効果的に事業の充実に努めています。

社会の変化に対応した国語・日本語教育に関する施策の推進
1 国語施策の推進
国語に関する問題は、文化審議会国語分科会(前身は国語審議会)が中心となって検討を行い、様々な改善を図っています。具体的には、国語の表記に関して、一般の社会生活における「目安」又は「よりどころ」として、「常用漢字表」「現代仮名遣い」「外来語の表記」などを制定してきました。最近では、平成26年2月に「「異字同訓」の漢字の使い分け例(報告)」、28年2月に「常用漢字表の字体・字形に関する指針(報告)」、30年3月に「分かり合うための言語コミュニケーション(報告)」をまとめています。また、30年11月には、「「障害」の表記に関するこれまでの考え方(国語分科会確認事項)」を確認しました。現在は、官公庁における文書作成について及び常用漢字表について審議を進めています。
また、国民全体の国語に対する関心と理解を深めるため、「国語問題研究協議会」の開催(令和2年8月3日・4日:山形県山形市、8月20日・21日:佐賀県佐賀市)や「国語に関する世論調査」の実施、加えて、文化庁ウェブサイト上で「国語施策情報」、文化審議会答申「敬語の指針」に基づく動画「敬語おもしろ相談室」、「国語に関する世論調査」に基づく動画「ことば食堂へようこそ!」の公開など、必要な施策に取り組んでいます。
さらに、平成21年2月にユネスコが消滅の危機にあると発表した、国内のアイヌ語など八つの言語・方言及び東日本大震災の影響が懸念される被災地の方言の実態把握と保存・継承のための調査研究や、その支援を行っています。令和2年度も引き続き、調査データが不十分な地域の方言調査をはじめ、危機言語・方言を抱える地域相互と研究者の連携を図るための協議会や危機言語・方言の状況とそれらの価値を認識する場としてのサミット(11月7日・8日:宮城県気仙沼市)等の開催、被災地方言の保存・継承のための取組支援、加えてアイヌ語のアナログ音声資料のデジタル化やアーカイブ作成支援、アーカイブ作成推進のための人材育成、民族共生象徴空間でのアイヌ語体験プログラムの更新を進めていきます。

2 外国人に対する日本語教育施策の推進
コミュニケーションの手段、文化発信の基盤としての日本語教育の推進を図るため様々な取組を行っています。
具体的には、文化審議会国語分科会に日本語教育小委員会を設置し、日本語教育や日本語に関する様々な課題について検討を行っています。例えば、外国人が日本社会の一員として日本語を用いて円滑に生活を送ることができるよう、「生活者としての外国人」に対する日本語教育の内容及び方法について示した「日本語教育の標準的なカリキュラム案について」等、五つの報告を平成25年2月までに取りまとめました。また、日本語教育人材に求められる資質・能力及び養成・研修における教育内容やモデルカリキュラムを示した「日本語教育人材の養成・研修の在り方について」(報告)改定版を平成31年3月に取りまとめました。この報告を踏まえ、日本語教育能力の判定について審議を行い、令和2年3月に、「日本語教育の資格の在り方について」(報告)を取りまとめました。今後は、ヨーロッパ言語共通参照枠(CEFR)を参考に「日本語教育の参照枠」の作成に向けた検討を行うとともに、日本語能力の判定基準についても審議を行う予定です。
また、「カリキュラム案」等を活用し、地域の実情に応じた日本語教育の実施等を支援する「生活者としての外国人」のための日本語教育事業を実施するとともに、地域日本語教育の総合的な体制づくり推進事業を実施し、都道府県や政令指定都市が関係機関等と有機的に連携し、日本語教育環境を強化するための総合的な体制を整備するための支援を行っています。
さらに、日本語教室が設置されていない地方公共団体にアドバイザーを派遣し、日本語教室の開設を支援するほか、日本語教室の設置が難しい地域に住む外国人に対してインターネット等を活用した日本語学習教材の開発・提供(令和2年4月公開予定)などを行う「「生活者としての外国人」のための日本語教室空白地域解消推進事業」を実施し地域の日本語教育を推進しています。
このほか「日本語教育人材養成・研修カリキュラム等開発・活用事業」を実施し、日本語教育に携わる人材の資質・能力の向上を図るとともに、多様な活動分野における日本語教育人材の育成と研修の担い手の育成を推進しています。
これら事業における取組の優れた実践事例等については、文化庁日本語教育大会などを通じ、周知・広報に努めることとしています。加えて、日本語教育関係機関が作成・開発し、公表している日本語教育に関する各種コンテンツ(教材、カリキュラム、報告書等)に関する情報を横断的に検索できるシステム「日本語教育コンテンツ共有システム(NEWS)」を運用しています。このほか、難民に対する日本語教育、日本語教育に関する調査・調査研究等の取組を行います。

新しい時代に対応した著作権施策の展開
今日、デジタル・ネットワークの発達に伴い、著作物等の創作、流通及び利用をめぐる状況は急速に変化しており、時代のニーズに対応した制度や環境整備が求められています。

1 著作権法及びプログラムの著作物に係る登録の特例に関する法律の一部を改正する法律案
令和2年3月10日に「著作権法及びプログラムの著作物に係る登録の特例に関する法律の一部を改正する法律案」が閣議決定され、第201回通常国会に提出されました。主な内容は以下のとおりです。
①インターネット上の海賊版対策の強化
昨今、深刻化している海賊版被害に対応するため、ユーザーを海賊版に誘導するリーチサイト等や海賊版のダウンロードに対する規制を行います。
本法案については、昨年提出が見送りとなった経緯がありますが、パブリックコメントや国民アンケート、有識者検討会における検討等を通じて、漫画家をはじめとする関係者や国民の皆さまの声を丁寧に伺いながら検討を重ねた結果、「海賊版対策としての実効性確保」と「国民の正当な情報収集等の萎縮防止」のバランスが取れた内容になっているものと考えております。
まず、リーチサイト対策については、リーチサイトにおける侵害コンテンツへのリンク提供を著作権侵害とみなすとともに、サイト運営者に刑事罰を科します。
次に、侵害コンテンツのダウンロード違法化については、対象を著作物全般に拡大しつつ、国民の萎縮防止のため一定の要件を付加します。具体的には、①スクリーンショットの際の写り込み、②漫画の1コマ~数コマなどの軽微なもの、③二次創作・パロディや④「著作権者の利益を不当に害しないと認められる特別な事情がある場合」のダウンロードを規制の対象外とします。刑事罰については、さらに、正規版が有償で提供されている場合、反復・継続して行う場合に限定します。また、附則に運用上の配慮規定などを設けます。
このほかに、写り込みに係る権利制限規定の対象範囲の拡充、行政手続に係る権利制限規定の整備、著作物等の利用許諾に係る権利の対抗制度の導入、著作権侵害訴訟における証拠収集手続の強化、アクセスコントロールに関する保護の強化及びプログラムの著作物に係る登録制度の整備が改正事項となっております。

2 平成30年改正の円滑な施行に向けた対応
平成31年1月1日、デジタル化・ネットワーク化の進展に対応した柔軟な権利制限規定の整備や教育の情報化に対応した権利制限規定等の整備を行う「著作権法の一部を改正する法律」が一部の規定を除いて、関連の政省令等とともに施行されました。
①柔軟な権利制限規定
我が国では、IoT、ビッグデータ、人工知能(AI)等の「第四次産業革命」に関する技術を活用したイノベーションの創出が期待されているところ、改正前の著作権法の権利制限規定には、法律上の要件が一定程度具体的に定められているものが多く、新たなイノベーション創出に対応できないことが指摘されておりました。このような状況を受け、産業界等から、新技術を活用した新たな著作物の利用にも柔軟に対応できる権利制限規定の整備が求められてきたため、平成30年に著作権法を改正し、規定の抽象度を高め、適切な柔軟性を持たせた柔軟な権利制限規定(第30条の4、第47条の4、第47条の5)を整備しました。
また、令和元年10月24日、柔軟な権利制限規定の趣旨・内容・解釈や具体的なサービス・行為の取扱い等について、文化庁としての基本的な考え方を示した「デジタル化・ネットワーク化の進展に対応した柔軟な権利制限規定に関する基本的な考え方」を策定しました(詳細はこちらを御覧ください。https://www.bunka.go.jp/seisaku/chosakuken/1422075.html)。これにより、産業界等において新技術を活用した新たなサービスが円滑に実施されることが期待されます。
②教育の情報化に対応した権利制限規定等の整備
教育の情報化に対応した権利制限規定等の整備については、平成30年の著作権法改正により、「授業目的公衆送信補償金制度」が導入され、教育機関の設置者が文化庁長官が指定する管理団体に補償金を支払うことを条件として、オンデマンド授業で講義映像や資料を送信したり、対面授業で使用する資料を外部サーバ経由で送信したりすることができるようになりました。
本制度は、法律の公布日から3年を超えない範囲内で政令で定める日までに施行することとされておりましたが、新型コロナウイルス感染症の流行に伴う遠隔授業等のニーズに緊急に対応するため、当初の予定を早め、令和2年4月28日から制度を施行し、暫定的な運用を開始する方向で調整を進めています。その際、指定管理団体は、教育機関のニーズに配慮し、令和2年度に限った特例的な補償金額を無償とする予定であり、令和3年度における有償の補償金に基づく本格的な運用に向けては、指定管理団体において別途補償金額の認可申請が行われる予定です。

3 著作権の円滑な流通の促進
インターネットの普及は、著作物のデジタル化とあいまって、著作物の流通形態を劇的に変化させています。このような状況の中で、著作物の流通促進の観点から、次の施策を行っています。
①「著作権等管理事業法」の的確な運用
著作権等の管理については、著作物等の利用者の便宜を図るとともに、権利の実効性を高めるため、著作物等を集中的に管理する方式が普及しています。
これらの事業を行う「著作権等管理事業者」に対して、「著作権等管理事業法」に基づき、年度ごとの事業報告の徴収や定期的な立入検査などを行い、適切に事業が行われるよう指導監督を行います(登録事業者数:28事業者〈令和元年7月1日現在〉)。
②権利処理の円滑化に向けた取組
著作権者等の所在が不明の場合に著作物等を適法に利用するための「裁定制度」の運用を行います。令和元年度は書籍における著作物や放送番組における実演など50,747件の著作物等の利用について裁定を行いました。なお、平成30年度には、裁定制度の利用円滑化の観点から、国及び地方公共団体等が裁定制度を利用する際、補償金の事前供託を不要とする法改正も行いました(平成31年1月1日施行)。(詳細はこちらを御覧ください。http://www.bunka.go.jp/seisaku/chosakuken/seidokaisetsu/chosakukensha_fumei/index.html)また、コンテンツの権利処理の円滑化を目的として、平成29年度からから令和元年度まで「コンテンツの権利情報集約化等に向けた実証事業」に取り組んできました。本実証事業では、CDだけでなく、配信音源等の楽曲の権利情報を検索できる「音楽権利情報検索ナビ」を試験公開し、実証事業終了後も、民間主体において運用できないかを検証してきました。

4 著作権教育の充実
著作権に関する意識や知識を身に付けることはますます重要となっており、現行の中学校や高等学校の学習指導要領においても著作権について取り扱っています。
また、全国各地での講習会の開催や教材の作成・提供を行っています。講習会は、国民一般、都道府県等著作権事務担当者、図書館等職員及び教職員を対象として毎年10数箇所で開催しています。また、文化庁ホームページ(http://www.bunka.go.jp/seisaku/chosakuken/seidokaisetsu/)を通じ、児童生徒や学生、一般等を対象とした著作権学習教材を提供するとともに、小学校、中学校、高等学校等にハローキティを使用した著作権の普及啓発ポスターの送付を行いました。このほか、教材や講習会等の情報を集約したポータルサイトを作成して、他の関係団体が作成する著作権学習教材等についても周知を行う予定です。

5 国際的課題への対応
デジタル化・ネットワーク化の進展に伴い、著作物の国境を越えた新たな流通形態が生まれ、我が国コンテンツの海外での侵害形態として、CD、DVD等いわゆる「パッケージ」の海賊版に加え、インターネット上の著作権侵害が深刻な問題となっています。
このような現状に対応した適切な海賊版(違法複製物)対策と国際ルールの構築を積極的に推進しています。
①海外における著作権侵害対策
アジア地域を中心に、我が国のゲームソフト、アニメ、音楽などに対する関心が高まる一方で、これらを違法に複製した海賊版の製造・流通及びインターネット上の著作権侵害が、放置することのできない深刻な問題となっています。そのため、権利者が海外において適切に権利執行するための環境整備を目的として、主に以下の取組を行っています。
(イ)政府間協議の場を通じた侵害発生国・地域への働きかけ
(ロ)アジア・太平洋諸国の政府職員を対象とした研修
(ハ)侵害発生国・地域における一般消費者を対象とした普及啓発活動
②国際的ルールづくりへの参画
国際的ルールづくりへの参画としては、現在WIPO(世界知的所有権機関)において放送機関に関する新条約の策定に向けた議論などが行われており、我が国は積極的に参画しています。また、「視聴覚的実演に関する北京条約」の締結について平成26年5月に国会承認されたことを踏まえ、同年6月に加入書を寄託しました。この度、令和2年4月28日から同条約が効力を生ずることとなり、我が国においても同日から効力を生ずることとなりました。さらに、EPA(経済連携協定)交渉等においてアジア諸国を中心に著作権等関係条約の締結を働き掛けています。

宗教法人制度と宗務行政
我が国には、多種多様な宗教団体が存在しており、それらの多くは宗教法人法に基づく宗教法人です。文化庁では、宗教法人制度を円滑に進めるため、次のとおり様々な取組を行っています。

1 宗教法人の管理運営の推進
文化庁は、都道府県の宗務行政に対する助言や、都道府県事務担当者研修会、宗教法人のための実務研修会の実施、手引書の作成などを行っています。また、我が国における宗教の動向を把握するため、毎年度、宗教界の協力を得て宗教法人に関する「宗教統計調査」を実施し、『宗教年鑑』として発行するほか、宗教に関する資料の収集を行っています。

2 不活動宗教法人対策の推進
宗教法人の中には、設立後、何らかの事情によって活動を停止してしまった、いわゆる「不活動宗教法人」が存在します。不活動宗教法人は、その法人格が売買の対象となり、第三者が法人格を悪用して事業を行うなど社会的な問題を引き起こすおそれがあり、ひいては宗教法人制度全体に対する社会的信頼を損なうことにもなりかねません。このため、文化庁と都道府県は、不活動状態に陥った法人について、活動再開ができない場合には、吸収合併や任意解散の認証によって、またこれらの方法で対応できない場合には、裁判所に解散命令の申立てを行うことによって、不活動宗教法人の整理を進めています。

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