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総合的・一体的なスポーツ行政の推進

スポーツ庁

Ⅰ ラグビーワールドカップ2019、2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会に向けた取組
1 ラグビーワールドカップ2019について
ラグビー伝統国以外で初の開催となったラグビーワールドカップ2019。世界中の注目を集めるとともに、日本中を感動の渦にまきこみ成功裏に閉幕しました。全国12か所の開催都市において、世界中から集まった20チームが熱戦を繰り広げ、スタジアムには目を輝かせながら応援する多くの子供たちの姿がありました。
9月20日の東京スタジアムでの開幕戦、日本代表は満員の観客が見守る中、ロシア代表に30対10で勝利しました。続く第2戦では、優勝候補の一角であったアイルランドに歴史的勝利を飾るなど予選グループ戦を全勝し、日本ラグビー史上初のベスト8入りを成し遂げました。
仲間のために体をはり、屈強な相手に向かっていく選手たちの姿やノーサイドの精神に、多くの国民が心を打たれ「ONE TEAM」等の流行語が生まれるなど、多様性と結束の力を示した日本代表チームの活躍に日本中が大いに盛り上がりを見せました。
また、試合会場やファンゾーン、各代表チームのキャンプ地には多くのファンが訪れ、地域に根ざした交流の輪が広がりました。台風19号の影響で試合が中止となった釜石では、カナダ代表の選手たちが土砂を取り除くなどのボランティア活動を行い、ナミビア代表は滞在先の宮古市でファン交流会を開催するなど、スポーツの垣根を超えた交流も生まれました。
スポーツ庁では、平成24年度より、国民のラグビー競技に関する認知度・関心度を高めるため、「タグラグビー(ラグビーからタックルなどの接触プレーを排したボールゲーム)指導者研修大会」の開催、「放課後ラグビー教室」の実施など、幅広い層へのラグビー競技の普及や指導者の養成に加え、ラグビーを通じた国際交流に取り組みました。
さらに、大会終了後には「ラグビーの振興に関する関係者会議」を開催し、今後、関係者の皆様の声を聞きながら、国際競技力強化や競技人口の拡大等について議論を進めることとしており、また、令和元年度の補正予算においてラグビーを行うための芝の敷設を含む公立の運動場の整備に20億円を計上しました。このように子供や地域住民の方々がラグビーを楽しむ機会を創出し、レガシーを次世代にしっかりと引き継いでいけるような取組を行っています。
ボランティアの方々を始め多くの関係者に支えられ大成功を収めたラグビーワールドカップの開催は多くのものを私たちにもたらしてくれました。
今後、本大会で得た知見を最大限に活用するとともに、関係省庁や関係団体等と連携し、2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会を始めとした国際競技大会の成功に向けて取り組んでいきます。

2 2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会等に向けた取組について
平成25年9月の国際オリンピック委員会(IOC)総会において、2020年オリンピック・パラリンピック競技大会を東京で開催することが決定しました。
2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会(以下、「2020年東京大会」という。)については、令和2年3月に延期が決定し、同月、2020年東京オリンピック競技大会は令和3年7月23日から、2020年東京パラリンピック競技大会は令和3年8月24日から開催されることが決定しました。スポーツ庁としては、この2020年東京大会を、日本社会を元気にする契機とするだけでなく、大会開催の効果を全国に波及させるため、オリンピック・パラリンピックムーブメントの推進や、スポーツを通じた国民の健康増進、スポーツの成長産業化、我が国の文化の魅力を国内外に積極的に発信する文化プログラムの実施など、様々な取組を展開しています。
(1)オリンピック・パラリンピック教育の推進
2020年東京大会を契機に、国民一人一人がスポーツの価値やオリンピック・パラリンピックの意義に触れることで、スポーツの価値を再認識し、多くの方がスポーツに親しむようになることは大会のレガシーの一つとして重要です。
また、平成27年11月に閣議決定された「二〇二〇年東京オリンピック競技大会・東京パラリンピック競技大会の準備及び運営に関する施策の推進を図るための基本方針」においても、次世代に誇れる有形・無形の遺産(レガシー)を全国に創出することとされており、スポーツ庁では、オリンピック・パラリンピック教育をこのレガシー創出の重要な取組の一つとして推進しています。
平成27年2月にはオリンピック・パラリンピック教育を推進するための方策等について、有識者会議を設置し、平成28年7月に「オリンピック・パラリンピック教育の推進にむけて」として最終報告を取りまとめました。
また、平成27年度から、オリンピック・パラリンピック教育の推進のための効果的な手法に関する調査研究事業として、大学が研究拠点となり、宮城県・京都府・福岡県の3府・県において初等中等教育機関等と連携した実践的な取組を開始しました。
平成28年度からは、オリンピック・パラリンピック・ムーブメント全国展開事業を実施しており、平成29年度は全国20の府・県・政令市で、平成30年度は全国35の道・府・県・政令市で、令和元年度は全国45の道・府・県・政令市で事業が展開されています。なお、平成29年度からは全国中核拠点である筑波大学、早稲田大学、日本体育大学のほか、東京都や東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会(東京2020組織委員会)、日本オリンピック委員会(JOC)、日本パラリンピック委員会(JPC)などと意見を共有する全国コンソーシアムを設け、ここで出た意見を地域拠点に還元することで充実した取組ができるように努めています。
さらに、令和元年5月7日から令和元年7月31日にかけて、全国の運動会や体育祭等におけるオリンピック・パラリンピックに関連した取組を募集し表彰する「東京2020みんなのスポーツフェスティバル」が実施されました。全国の学校80校から125件の応募があり、10件の優秀校が選ばれましたが、この中からスポーツ実施率の向上につながる取組を行った学校にスポーツ庁長官賞を授与いたしました。
運動会や体育祭が、スポーツを楽しむきっかけとなり、東京大会への関心が一層高まることを期待しています。
(2)ホストタウンの推進
政府では、2020年東京大会の開催という機会を国全体で最大限活かし、全国津々浦々にまで大会の効果を行き渡らせ、地域活性化につなげていくことを目指しています。
特に、大会の開催により多くの選手・観客等が来訪することを契機に、地域の活性化等を推進するため、大会参加国・地域との人的・経済的・文化的な相互交流を図る地方公共団体を「ホストタウン」として、全国に広げるための取組を進めています。
令和2年3月31日には、ホストタウンの第十九次登録団体を公表し、登録数は423件となりました。
2020年東京大会に向けて、今後も取組の推進が期待されています。
(3)国立競技場の竣工
2020年東京大会のメインスタジアムとなる国立競技場については、世界の人々に感動を与える場となるよう、「アスリート第一、世界最高のユニバーサルデザイン、周辺環境等との調和・日本らしさ」を基本理念として、整備を進め、令和元年11月に竣工しました。竣工式や、一般公開のオープニングイベントなどを開催した後、令和2年1月からは東京2020組織委員会による仮設工事等が行われています。大会成功に向けて、着実に準備を進めていきます。
Ⅱ スポーツ庁が重点的に取り組む施策
スポーツ庁では第2期スポーツ基本計画(平成29年3月)の趣旨を踏まえ、国際競技力の向上はもとより、スポーツを通じた健康増進、地域・経済の活性化、国際交流・協力、障害者スポーツの振興、学校体育の充実など、関係省庁や民間企業と一体となってスポーツ行政を総合的・一体的に推進しています。

1 スポーツを通じた健康増進について
スポーツ基本法の前文で、「スポーツは、心身の健康の保持増進にも重要な役割を果たすものであり、健康で活力に満ちた長寿社会の実現に不可欠」であると規定されているとおり、我が国の国民医療費が年々増加傾向にある中、運動・スポーツを実施することによる効果として、健康増進、健康寿命の延伸が注目されるようになってきています。
スポーツを通じた健康増進を図っていくためには、国民全体のスポーツへの参画を促進するとともに、国民の誰もが、いつでも、どこでも、いつまでもスポーツに親しむことのできる環境整備が必要です。このため、令和元年7月に、一人でも多くの方がスポーツに親しむ社会の実現を目的とし、生活の中に自然とスポーツが取り込まれている「スポーツ・イン・ライフ」(生活の中にスポーツを)という姿を目指し、『Sport in Life プロジェクト』をスタートしました。本プロジェクトの趣旨に賛同し、コンソーシアムに加盟いただいた団体・企業とともに、スポーツをする機運の醸成に取り組んでいきます。
また、特にスポーツ実施率の低い20代から50代のいわゆる「ビジネスパーソン」は、仕事や家事等によりスポーツに取り組む時間を確保しにくいとの声があることから、官民連携により、通勤時間や休憩時間等を活用して気軽に運動・スポーツに取り組める環境を整備しています。
さらに、男性と比べてスポーツ実施率の低い女性を対象に「女性スポーツ促進キャンペーン」を展開し、その一環としてNHK番組「チコちゃんに叱られる!」のMC「チコちゃん」をアンバサダーに任命。また、オリジナルダンス「Like a Parade」を制作して配信するなど、女性や若年層にスポーツの楽しさを訴求しています。
加えて、地方公共団体におけるスポーツを通じた健康増進に関する施策を持続可能な取組とするため、域内の体制整備及び運動・スポーツに興味・関心を持ち、習慣化につながる取組を推進しています。

2 学校体育・運動部活動について
平成29年に小学校及び中学校、平成30年に高等学校の新学習指導要領が公示され、小学校は令和2年度、中学校は令和3年度から全面実施、高等学校は令和4年度入学生より年次進行での実施がなされることとなっています。体育科・保健体育科では、心と体を一体として捉え、生涯にわたって心身の健康を保持増進し、豊かなスポーツライフを実現するための資質・能力を育成することを目指しています。その中で、小学校から高等学校までを見通して、指導内容の系統化や明確化を図っています。スポーツ庁では、学習指導要領の改訂の趣旨を踏まえ、学校において体育科・保健体育科の指導の充実を図るため、引き続き、全国都道府県・指定都市教育委員会の学校体育を担当する指導主事向けの研究協議会や実技研修会等の開催を通じて、学習指導要領の趣旨の徹底を図ることとしています。また、これまでに作成した映像による参考資料等や全国体力・運動能力、運動習慣等調査結果の学校等での活用も推進していきます。
学校における体育活動の安全確保については、死亡事故や重大な事故などの事例を分析し、基本的な安全対策についてまとめた「学校における体育活動中の事故防止について(報告書)」の内容を映像によって示した資料を作成して全国の小中高等学校等に配布しています。令和2年度も引き続き教育委員会や大学、スポーツ団体、医療機関などの関係者間において事故防止のための最新の知見や事例等に係る情報を共有し、全国各地で協議を行うこととしています。
運動部活動については、生徒にとって望ましいスポーツ環境を構築する観点に立ち、生徒がスポーツを楽しむことで運動習慣の確立を図り、生涯にわたって心身の健康を保持増進し、豊かなスポーツライフを実現するための資質・能力の育成を図ること等を重視して、地域、学校、競技種目等に応じた多様な形で最適に実施されることを目指すため、平成30年3月に「運動部活動の在り方に関する総合的なガイドライン」を作成し、公表しました。
本ガイドラインは、義務教育である中学校段階の運動部活動を主な対象(高等学校段階においても原則適用)とし、
1 適切な運営のための体制整備
2 合理的でかつ効率的・効果的な活動の推進のための取組
3 適切な休養日等の設定
4 生徒のニーズを踏まえたスポーツ環境の整備
5 学校単位で参加する大会等の見直し
について、学校や学校の設置者、地方公共団体、スポーツ団体が取り組む内容を示しています。

3 大学スポーツの振興について
大学におけるスポーツ活動には、大学の教育課程としての体育の授業、学問体系としてのスポーツ科学及び課外活動(体育会活動、サークル活動、ボランティア等)の側面があります。全ての学生がスポーツの価値を理解することは、大学の活性化やスポーツを通じた社会発展につながるものです。また、大学の持つスポーツ資源(学生、指導者、研究者、施設等)の活用は、国民の健康増進や障害者スポーツの振興に資するとともに、地域や経済の活性化の起爆剤となり得るものです。しかし、我が国の大学は、スポーツの振興に係る体制が不十分な場合が多く、また、大学スポーツ全体を統括し、その発展を戦略的に検討する組織が少ないのが現状です。
このため、文部科学省及びスポーツ庁は、平成28年4月から「大学スポーツの振興に関する検討会議」を開催して大学スポーツの活性化について議論を行い、29年3月に取りまとめを行いました。本取りまとめにおいては、大学スポーツの振興に向けて、大学トップ層の理解醸成、スポーツマネジメント人材の育成、各大学のスポーツ分野の取組を戦略的、一体的に行う部局の設置、大学スポーツ全体を統括し発展を戦略的に推進する組織の設置が重要であるとの方向性が示されました。
取りまとめを受け、平成30年7月より大学、学生競技連盟が中心となり開催された準備委員会を経て、大学横断的かつ競技横断的統括組織である一般社団法人大学スポーツ協会(英名:Japan Association for University Athletics and Sport略称:UNIVAS)が31年3月1日設立されました。
スポーツ庁は、大学スポーツ協会の設立理念に基づいた学業充実、安全安心・医科学、事業・マーケティング分野等の活動事業をサポートするとともに、大学内のスポーツ活動の企画立案、コーディネート、資金調達等を担う専門人材である大学スポーツアドミニストレーターの配置やスポーツ分野を一体的に統括する部局の設置を進めています。大学スポーツアドミニストレーターについては、令和3年度までに配置する大学を100大学にするという目標を掲げ、大学スポーツにおける先進的モデル事業を進めており、令和元年度には13大学を選定しました。

4 障害者スポーツについて
スポーツ基本計画の主な目標の一つに、スポーツを通じた共生社会の実現があります。このためには、多くの障害者がスポーツに親しめる環境を整備することにより、障害者スポーツの裾野を広げていくことが重要です。
このため、各地域における課題に対応して障害者スポーツの振興体制の強化や身近な場所でスポーツを実施できる環境を整えるとともに、障害者スポーツ団体と民間企業とのマッチング等により障害者スポーツ団体の体制の強化を図り、他団体や民間企業と連携した活動の充実につなげる取組を進めています。さらに、令和元年度から、スポーツ車いす、スポーツ義足等の地域の障害者スポーツ用具の保有資源を有効活用し、個人利用を容易にする事業モデル構築の支援を実施しています。
また、2020年東京大会を契機に、全国の特別支援学校でスポーツ・文化・教育の祭典を実施するとともに、特別支援学校を地域の拠点としていくことを目指す「Special プロジェクト2020」を実施しています。

5 スポーツの成長産業化について
スポーツ産業の活性化による収益をスポーツ環境の充実に還元し、スポーツ人口の拡大へとつなげる自律的好循環を生み出していくことが重要です。
このため、令和元年6月に閣議決定された「成長戦略フォローアップ」でも、「スポーツ市場規模を2020年までに10兆円、2025年までに15兆円に拡大することを目指す」こと、及び「全国のスタジアム・アリーナについて、多様な世代が集う交流拠点として、2017年から2025年までに20拠点を実現する」ことが目標として掲げられています。
スポーツ庁では、①スタジアム・アリーナ改革の推進、②スポーツ団体の経営力強化、③スポーツオープンイノベーションの推進、④スポーツ指導スキルとスポーツ施設のシェアリングエコノミーの推進等の施策に取り組んでいます。
「観るスポーツ」のためのスタジアム・アリーナは、地域活性化の起爆剤となる潜在力の高い基盤施設です。その潜在力を最大限発揮させるには民間活力の活用が必要であるため、平成29年6月に、スタジアム・アリーナ改革全体の方向性や国内外の先進事例、資金調達手法に係る検討事項、持続的な運営・管理に必要な事項等をまとめた「スタジアム・アリーナ改革ガイドブック(第2版)」を公表しました。また、平成31年3月には、スタジアム・アリーナが地域にもたらす経済的・社会的効果のロジックモデルを示した「社会的インパクト評価の手法を用いたスタジアム・アリーナ効果検証モデル」を公表しました。さらに、令和元年10月から、スタジアム・アリーナ改革の周知・普及を目的としたセミナーを全国10会場で開催するとともに、国の支援に係る一元的な相談窓口の設置(相談窓口URL:http://www.mext.go.jp/sports/b_menu/sports/mcatetop02/list/detail/1406525.htm)や専門家派遣等を通じて、先進事例の形成に取り組んでいます。令和2年3月には、政府目標である20拠点の選定のための基準等を定めた「多様な世代が集う交流拠点としてのスタジアム・アリーナ選定要綱」を策定しました。今後も必要な情報提供や各地域で進む先進的な取組を支援することにより、スタジアム・アリーナ改革を推進していきます。
また、スポーツ団体が、ガバナンスの確保やスポーツを通じた社会課題の解決といった社会的な要請に応えていくためには、収益の向上など安定的な経営基盤の確立が必要です。一方で、スポーツ団体では、経営人材の育成や流動の仕組みが十分でないことなどが要因で、専門性(財務、IT等)や国際的な視野のある人材、またそれらの人材を総合的にマネジメントする経営人材が不足している状況にあります。このため、スポーツビジネススキルも身につけることができる学科(スポーツMBA)の創設に向けたカリキュラム案の策定への支援や、外部人材の流入促進のための支援を行っています。また、「中央競技団体による中長期普及・マーケティング戦略策定・実行に向けた手引き」を令和2年3月に策定するとともに、他の中央競技団体の参考となるモデル形成支援を通じて、スポーツ団体の経営力強化を図っています。
さらに、スポーツの成長産業化のための基盤を形成するため、スポーツ界がオープンになり、スポーツの場におけるオープンイノベーションを推進し、スポーツへの投資促進やスポーツの価値高度化を図ることが必要です。その実現に向けて、スポーツ界が有するデータ・権利・施設等の多様なリソースと他の産業や学術機関等が有する技術・ノウハウ等のリソースとの融合を促し、新たな財・サービスの創出を促進するスポーツオープンイノベーションプラットフォーム(SOIP)の構築を推進しています。令和元年度には、SOIP構築に向け、現場レベルでの人的交流を図るカンファレンスの開催、我が国初となる中央競技団体をイノベーションプラットフォームとした他産業との連携による新サービスの創出プロジェクトに取り組みました。今後も、関係団体等との連携強化を図るとともに、国内における先進的な取組を顕彰するコンテストの開催などを通じて、スポーツオープンイノベーションを引き続き推進していきます。
加えて、スポーツ分野におけるシェアリングエコノミーを普及していくことは、スポーツ指導者と施設の稼働率・収益性を高め、スポーツ市場の拡大やスポーツ実施率向上にもつながる可能性があります。このため、平成30年6月からモデル形成に向けた実証事業を行うとともに、令和2年3月には、地方公共団体及び施設管理者向けに、施設情報のオープン化のためのプロセス等を示した「スポーツ指導スキルとスペースのシェアリングエコノミー導入手引き」を策定しました。今後、スポーツ分野におけるシェアリングエコノミーを推進していくため、先行するモデル事業を支援するとともに、指導者データのオープン化や導入の効果検証等を進めていきます。

6 スポーツを通じた地域活性化について
スポーツを通じた地域活性化を図る上では、地域の特色を活用したスポーツツーリズム等の推進を図ることが重要と考えられることから、スポーツと観光資源を掛け合わせて地域活性化に取り組む「地域スポーツコミッション」が行う、多数の参加者・観客が見込めるスポーツ大会・イベントの開催やスポーツ合宿・キャンプの誘致等の活動に対し、平成27年度より支援を行っています。令和元年度はアウトドアスポーツや武道といった日本が誇る地域資源を活かした取組を行う5地域を支援しました。
また、幅広い武道・観光関係者により構成された「武道ツーリズム研究会」を開催し、武道ツーリズムの課題と対応策を議論するとともに、そこで出された意見等を取りまとめた「武道ツーリズム推進方針」を策定しました。
さらに、スポーツツーリズムに取り組む意義を地方へ普及・拡大させるため、全国4か所(札幌・名古屋・京都・福岡)でスポーツツーリズムセミナーを開催しました。
加えて、スポーツ庁・文化庁・観光庁の三庁連携施策の一つである「スポーツ文化ツーリズムアワード」において、全国から優れた取組を募集し、金沢市で開催した「第4回スポーツ文化ツーリズムシンポジウム」の中で3庁の代表者より表彰しました。
また、平成30年3月に取りまとめた「スポーツツーリズム需要拡大戦略」に基づいた効果的なプロモーションを行うべく、令和元年度は日本のスノーアクティビティの魅力を発信する動画や、金沢市の武道ツーリズムの取組を特集した動画を作成し、国内外に配信しました。
合わせて、あらゆるスポーツシーンを支えるスポーツ施設が適切に整備・管理・運営されていくことも重要です。安全で魅力的で、多様な利用が可能となるスポーツ施設が、持続的に地域に存在していくための施策を展開しました。
今年度も引き続き、これらの取組を続けてまいります。

7 スポーツを通じた国際交流・協力について
スポーツの持つ価値を共有し、広めていくためにはスポーツを通じた国際交流・協力を推進していくことが重要です。スポーツ庁では、平成30年9月に、スポーツ国際戦略を策定し、スポーツを通じた国際交流や国際協力の成果が効果的かつ効率的に他分野にも拡大するよう、関係機関と連携して取組を進めています。
まず、「スポーツ国際展開基盤形成事業」において、スポーツに関する国際政策を統合的に展開し、その効果を最大限に高めるべく、国際競技連盟(IF)等の役員ポスト獲得や、国際的な実務能力及びネットワークを有する人材の養成に対する支援を実施するとともに、国内外の情報を収集・分析する拠点を形成し、戦略的な情報発信を行い、国際スポーツ界における我が国のプレゼンスの向上を図っています。
また、スポーツ国際展開の効果を他分野に拡大させるため、平成30年7月にスポーツ産業分野に関し、スポーツ庁、経済産業省、独立行政法人日本貿易振興機構(JETRO)及び独立行政法人日本スポーツ振興センター(JSC)の4者で基本合意書を締結しました。我が国のスポーツとスポーツ産業の海外展開の促進のため、連携を強化しながら取組を進めています。
さらに、スポーツ分野における各国との連携を強化するために、国際的な対話枠組みの構築も積極的に行っています。平成28年度より日中韓スポーツ大臣会合が、平成29年度より日・ASEANスポーツ大臣会合が隔年で開催されています。令和元年には、フィリピンのマニラで「第2回日・ASEANスポーツ大臣会合」及び「第1回日・ASEAN女性スポーツ会合」が開催され、日・ASEAN統合基金を活用した日・ASEAN間の女性スポーツ協力分野における具体事業の実施に向けた合意に至りました。
加えて、各国とのスポーツ協力をより密にするため、2国間のスポーツ分野における覚書を現在28か国と締結しています。
このほか、2020年東京大会に向けて、①スポーツを通じた国際協力及び国際交流、②国際スポーツ人材育成拠点の構築、③国際的なアンチドーピング推進体制の強化支援を柱とする「Sport for Tomorrow(SFT)」プログラムに取り組んでいます。このプログラムは、2014年から2020年までの7年間で、開発途上国をはじめとする100か国以上の国において、1000万人以上を対象に、世界のより良い未来のために、未来を担う若者をはじめあらゆる世代の人々にスポーツの価値とオリンピック・パラリンピック・ムーブメントを広げていく取組です。具体的には、パラリンピック参加国・地域拡大支援、学校体育カリキュラム策定支援、長期・短期の人材養成プログラム等を行っています。2019年9月末までに予定より早く100か国・1000万人以上の目標を達成しました。
令和3年には、ワールドマスターズゲームズ2021関西が開催されます。ラグビーワールドカップ、オリンピック・パラリンピックは主にトップアスリートが活躍する大会ですが、ワールドマスターズゲームズは概ね30歳以上のスポーツ愛好者であれば誰でも参加できます。
我が国で国際競技大会を開催することは、我が国の競技力向上に資する環境の構築などスポーツの振興につながるだけでなく、世界のトップアスリートの競技を目の当たりにすることを通じて多くの国民に夢や感動を与えることにつながります。さらに、大会・イベントの開催は、地域の一体感の醸成やスポーツ人口・関心層の拡大等の社会的効果や、観光客数の増加等の経済効果の創出につながります。国際競技大会の積極的な招致・開催が円滑に行われるよう、関係団体等との連絡調整を行い、必要な協力・支援を行っています。引き続き、スポーツの力を活用しながら、国際交流・協力を戦略的に展開していきます。

8 我が国の国際競技力の向上について
オリンピック・パラリンピック競技大会をはじめとする国際競技大会における日本代表選手の活躍は、国民に夢と希望を与えるものであり、第2期スポーツ基本計画や「競技力強化のための今後の支援方針(鈴木プラン)」(平成28年10月)に基づき、国際競技力の向上に向けて以下の施策を実施しています。
一つ目は、各競技団体が行う日常的・継続的な強化活動の支援です。2019年度から、「ラストスパート期」としてそれまでの各競技団体の成果を踏まえ、「メダル獲得の最大化」の考えのもと支援を柔軟かつ大胆に重点化しています。
また、各競技団体が中長期の強化戦略に基づいて競技力強化を行うことを支援するため、JSCにJOC・JPC等を含めた協働チームを設置し、競技団体の強化戦略プランにおけるPDCAサイクルの各段階で多面的にコンサルテーション・モニタリング等を実施しています。
二つ目は、次世代アスリートを発掘・育成する戦略的な体制等の構築です。JSC、日本スポーツ協会、JOC、JPC及び地方公共団体等と連携し、全国各地の将来有望なアスリートの効果的な発掘・育成を支援するシステムの構築を進めています。
三つ目は、スポーツ医・科学、技術開発、情報等による多面的で高度な支援の充実です。スポーツ医・科学研究、支援を行う中枢機関である国立スポーツ科学センター(JISS)と高度なトレーニング環境を提供するナショナルトレーニングセンター(NTC)の機能を一体的に捉えたハイパフォーマンススポーツセンターについて機能強化を図るため、情報収集・分析や競技用具の開発等を行う体制の整備など、国際競技力が中長期にわたって向上するよう取り組んでいます。さらに、メダル獲得の可能性が高い競技を対象に、スポーツ医・科学、情報による専門的かつ高度な支援を実施しています。
また、スポーツと異分野の知見を活用するなど独創的で革新的な研究を推進するとともに、次世代を担う優秀な研究者を育成することができる拠点を「スポーツ研究イノベーション拠点」として指定し、JISSとの連携による成果の活用を含めて、競技力向上に資することができるよう取り組んでいます。
四つ目は、トップアスリートのニーズに対応できる拠点の充実です。NTCについては、オリンピック競技とパラリンピック競技の更なる共同利用化等を見据え拡充整備に取り組み、令和元年6月末に完成しました。
また、NTCで対応できない冬季、海洋・水辺系、屋外系のオリンピック競技、高地トレーニング及びパラリンピック競技のトレーニング環境の充実を図るため、既存施設をNTC競技別強化拠点施設として指定しています。NTC競技別強化拠点施設については、ハイパフォーマンススポーツセンターとのネットワーク形成に取り組むとともに、拠点近隣の関係機関・施設とも連携を図り、競技力向上に必要な機能を拠点施設に付加するべく、機能強化に取り組んでいます。
スポーツ庁では、2020年東京大会に向けて支援するだけでなく、これらの取組を強力で持続可能な支援体制として構築・継承することを目指しています。

9 スポーツにおけるインテグリティの確保について
スポーツは本来、見る人々を感動させ、国民に勇気を与えるものです。しかしながら、昨今、スポーツ選手等による違法賭博や違法薬物、スポーツ団体での不正経理、スポーツ指導者による暴力、ファン等による人種差別や暴力行為、他者への不正行為等、スポーツの価値を損なう問題が頻発しています。そのため、第2期スポーツ基本計画では、2020年東京大会に向けて、我が国のスポーツ・インテグリティ(誠実性・健全性・高潔性)を高め、クリーンでフェアなスポーツの推進に一体的に取り組むことを通じて、スポーツの価値の一層の向上を目指していくこととしています。
スポーツ庁では、平成30年12月20日に「スポーツ・インテグリティの確保に向けたアクションプラン」を策定しました。同プランに基づき、スポーツ団体における適正なガバナンスの確保を図る仕組みを導入することとし、JSC及び統括団体(JSPO、JOC、公益財団法人日本障がい者スポーツ協会(JPSA))と連携し、中央競技団体のガバナンスの確保のために協力して取り組む体制を構築するため、平成30年12月に「スポーツ政策推進に関する円卓会議」を開催しました。
また、平成31年2月からスポーツ審議会スポーツ・インテグリティ部会において、スポーツ団体が遵守すべき原則・規範を定めた「スポーツ団体ガバナンスコード」に関する審議を開始し、令和元年6月に「スポーツ団体ガバナンスコード」〈中央競技団体向け〉、8月に「スポーツ団体ガバナンスコード」〈一般スポーツ団体向け〉をそれぞれ策定しました。同コードの策定により、単に不祥事事案の未然防止にとどまらず、スポーツの価値が最大限発揮されるよう、その重要な担い手であるスポーツ団体における適正なガバナンスの確保を図ることとしています。同コードに基づき、令和2年度から、中央競技団体は自らの取組状況を説明・公表するとともに、自らが加盟する統括団体から適合性審査を受けることとなります。また、中央競技団体以外のスポーツ団体(一般スポーツ団体)においては、令和2年度開設予定のJSCの専用ウェブサイトを活用し、同コードのセルフチェックシートに基づく自己説明を自主的に行うことが期待されます。
2020年東京大会は、ドーピングのないクリーンな大会とすることが世界から求められていること等を踏まえ、スポーツ庁では、関係団体等と連携して、ドーピング防止体制の強化を図っています。
具体的には、公益財団法人日本アンチ・ドーピング機構と協力し、世界各国から参加するアスリートのドーピング検査に対応できるよう、英語等の言語能力や豊富な実地経験を備えたドーピング検査員の育成に取り組んでいます。
また、JSCと連携し、禁止物質の不正取引や正当な理由のない禁止物質の保有など、ドーピング検査だけでは捕捉できないドーピング防止規則違反に対応するため、ドーピング通報窓口の運用等を通じた情報収集や専門的知見からの分析などのインテリジェンス活動を推進しています。
さらに、我が国のアスリート等からドーピング防止規則違反を出さないよう、若い世代への教育を強化するとともに、学校教育課程においてドーピング防止を含むスポーツの価値教育の促進にも取り組んでいます。これに加えて、令和元年度からは、アスリートを「意図しないドーピング」から守るため、医療従事者に対する情報提供等にも取り組んでいます。

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