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科学技術・学術政策の推進

文部科学省 科学技術・学術政策局/研究振興局/研究開発局

はじめに
現在、我が国は、急速に進む少子高齢化に伴う生産年齢人口の減少や、中国、韓国をはじめとした諸外国の台頭による国際競争力の相対的低下など、様々な課題に直面しています。科学技術イノベーションは、これらの課題を解決し、我が国が将来にわたって成長と繁栄を遂げるための「要」であり、政府一丸となって実現する「生産性革命」の中核となるものです。
こうした現状を踏まえ、平成28年度からスタートした「第5期科学技術基本計画」では、①世界に先駆けた「Society 5.0」の実現に向けた一連の取組に代表される、未来の産業創造と社会変革に向けた新たな価値創出の取組、②経済・社会的課題への対応、③人材育成や学術研究・基礎研究など、科学技術イノベーションの基盤的な力の強化、④オープンイノベーションの推進等、イノベーション創出に向けた人材、知、資金の好循環システムの構築の四つを重要な柱と位置付けています。この計画に基づき、関係各府省庁が連携を図りつつ、成果の最大化に向けて科学技術政策を推進しているところです。
文部科学省では、「世界で最もイノベーションに適した国」を目指し、科学技術イノベーション創出のための様々な取組を実施しています。令和元年度補正予算、及び令和2年度政府予算においては、特に、研究力向上に資する基盤的な力の更なる強化や、大胆な発想に基づく挑戦的な研究開発に取り組むための、ムーンショット型研究開発制度の創設、また世界最高水準の大型研究施設であるスーパーコンピュータ「富岳」及び次世代放射光施設の推進や、月周回有人拠点「ゲートウェイ」を含む国際宇宙探査への参画等のために必要な経費を確保しました。本章では、これらを始めとした科学技術イノベーションの創出や、幅広い分野の研究開発に向けた文部科学省における取組の全体像について紹介します。

未来社会の実現に向けた先端研究の抜本的強化
文部科学省では、「Society 5.0」という未来社会実現の鍵となる人工知能、ビッグデータ等の情報科学技術、ナノテクノロジー・材料科学技術、光・量子技術等の先端的な研究開発や戦略的な融合研究において主に次のような取組を実施します。

1 情報科学技術分野における研究開発の推進
情報科学技術は、あらゆる分野の成果創出の鍵であり、近年、人工知能をはじめとして世界中で盛んに研究開発が進められています。政府全体としては、教育改革、研究開発、社会実装等の観点からの総合的な政策パッケージとして、「AI戦略 2019」が令和元年6月に取りまとめられました。本戦略に基づく取組が、関係府省の連携の下、一体的に進められています。研究開発については、本戦略に基づき、AI関連中核センター(産業技術総合研究所、理化学研究所、情報通信研究機構)を中核とし、大学・公的研究機関をつなぐネットワークである、「人工知能研究開発ネットワーク」が令和元年12月に設立されました。このほか、戦略では、人工知能に関する基盤的・融合的な研究開発の推進や、研究インフラの整備等を進めることとされています。そこで、文部科学省では、①理化学研究所「革新知能統合研究センター」において、革新的な人工知能の基盤技術等の研究開発を推進するとともに、②科学技術振興機構(JST)において、人工知能等の分野における若手研究者の独創的な発想や、挑戦的な研究課題への支援を行い、①②を「AIP:人工知能/ビッグデータ/IoT/サイバーセキュリティ統合プロジェクト」として一体的に推進しています。
また、平成30年度からは、「Society 5.0実現化研究拠点支援事業」として採択された大阪大学による情報科学技術を核としたSociety 5.0の実証・課題解決の先端中核拠点の形成を支援しています。

2 ナノテクノロジー・材料科学技術分野における研究開発の推進
ナノテクノロジー・材料科学技術は、未来社会における新たな価値創出の鍵となり、様々な分野を支える基礎基盤技術です。ナノテク・材料分野の中核的役割を果たす国立研究開発法人物質・材料研究機構(NIMS)では、新物質・新材料の創製や、幅広い社会ニーズに応える材料の高度化に向けた研究開発を行うとともに、技術移転の促進、情報発信、研究者の養成、国際的ネットワークの構築等を推進します。
さらに同機構では「革新的材料開発力強化プログラム(M-cube)」として、産業界と大学等を結ぶオープンプラットフォームの形成、世界中の人・モノ・資金が集まる国際研究拠点の構築、材料情報統合データプラットフォームなど世界最高水準の研究基盤の整備を一体的に推進することに加え、AIやロボット技術等を研究開発の現場に導入するスマートラボラトリ化を推進することにより、我が国全体の材料開発力の強化を目指します。
また、文部科学省では、ナノテクノロジーに関する最先端の研究設備と活用のノウハウを提供し、産学官連携や異分野融合、人材育成等を推進する「ナノテクノロジープラットフォーム」等、様々な取組を推進します。

3 量子科学技術(光・量子技術)分野における研究開発の推進
量子科学技術は、新たな価値創出の中核となる強みを有する基盤技術であり、近年、世界的な研究開発が激化しています。政府は令和2年1月、統合イノベーション戦略推進会議の下、短期的な技術開発にとどまらず、産業・イノベーションまでを念頭に置き、かつ中長期的な視点に立った新たな国家戦略として、「量子技術イノベーション戦略」を策定しました。
文部科学省では、平成30年度から、経済・社会的な重要課題に対し、量子科学技術を駆使して、非連続的な解決を目指す研究開発プログラムである「光・量子飛躍フラッグシッププログラム(Q-LEAP)」を実施しています。本プログラムでは、①量子情報処理(主に量子シミュレータ・量子コンピュータ)、②量子計測・センシング、③次世代レーザーを対象とし、プログラムディレクターによるきめ細かな進捗管理によりプロトタイプによる実証を目指すFlagshipプロジェクトや、基礎基盤研究を推進します。さらに、同戦略を踏まえ、量子AIや量子生命、人材育成等を推進します。
また、国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構(QST)において、量子科学技術を一体的、総合的に推進します。さらに、生命現象の根本原理の解明を目指すとともに、医療・健康分野等に革新を起こすべく先端的研究開発を行う量子生命科学の研究開発を進めます。

科学技術イノベーション・システムの構築
文部科学省では、科学技術イノベーションの推進に向けたシステム改革や出口を明確に見据えた挑戦的な研究開発の推進に係る取組として、主に以下のような取組を実施します。

1 本格的産学官連携によるオープンイノベーションの推進
近年、産業構造は資本集約型から知識集約型に大きく変化しようとしており、産業界において、オープンイノベーションを本格化させようとしています。こうした中で、これまでの産学連携は大学と企業の研究開発部門との協力が主だったところ、大学・企業のトップが関与する、本格的でパイプの太い持続的な産学官連携(本格的な産学官連携の実現)へと発展させることが不可欠になってきています。
このため、文部科学省では、本格的な産学官連携の実現に向けて、「共創の場形成支援」事業において、政策課題や大学等研究機関の強みを生かした特色に基づくオープンイノベーション拠点の形成を推進しています。
また、大学内において、競争領域に重点を置いた大型共同研究を集中管理する体制(オープンイノベーション機構)の構築を平成30年度から支援しています。

2 地方創生に資するイノベーション・エコシステムの形成
地域の特性を生かした科学技術イノベーションの推進は、地域産業の高付加価値化や新産業・雇用創出につながることから、極めて重要です。
文部科学省では、地域の発展ビジョンと主体性を重視した施策を通じて、地域科学技術イノベーションの創出に取り組んでまいりました。
平成31年度においては、平成28年度から取り組んでいる「地域イノベーション・エコシステム形成プログラム」を拡大し、地域の成長に貢献しようとする地域大学等に、事業プロデュースチームを創設し、地域内外の人材や技術を取り込みながら、地域が持つ強みを生かした科学技術イノベーションを推進し、新産業・新事業の創出を図ることにより、グローバルな展開も視野に入れた日本型イノベーション・エコシステムの形成を目指します。
また、平成31年度より新たに、「科学技術イノベーションによる地域社会課題解決(DESIGN-i)」を開始しました。これにより、地方公共団体、大学、産業界などが連携し、地域が目指すべき将来像を描くとともに、それを実現するために必要な課題解決を、科学技術イノベーションを通じて実現していくことを目指します。

3 ベンチャー・エコシステム形成の推進
大学発ベンチャーの新規創設数は、一時期減少傾向でしたが、近年は回復基調にあります。
大学発ベンチャーは、イノベーションの担い手として期待される一方、販路の開拓、知的財産の取扱い、資金調達等に関して潜在的な問題を抱えています。
文部科学省では、強い大学発ベンチャーの創出を加速させるため、(1)創業前の段階から、大学の革新的技術の研究開発支援と、事業化ノウハウを持った人材による事業育成を一体的に実施する「大学発新産業創出プログラム(START)」、(2)これまで各大学で実施してきたアントレプレナー育成事業に係る取組の成果や知見を活用しつつ、人材育成プログラムへの受講生の拡大やロールモデル創出の加速に向けたプログラムの発展に取り組むことで、起業活動率の向上、アントレプレナーシップの醸成を目指す「次世代アントレプレナー育成事業(EDGE-NEXT)」、(3)特許群化やパッケージ化を進めることで国策上重要な特許等の活用促進を図る「知財活用支援事業」等の取組を一体的に推進しています。

4 ハイリスク・ハイインパクトな研究開発の推進
新しい知識やアイデアが、組織や国の競争力を大きく左右する現代においては、新しい試みに果敢に挑戦し、非連続なイノベーションを積極的に生み出すハイリスク・ハイインパクトな研究開発を推進していくことが重要です。
そこで、「未来社会創造事業」では、経済・社会的にインパクトが見込まれ、技術的にも挑戦的な課題を設定し、民間投資を誘発しつつ、実用化が可能かどうかを見極められる段階を目指した研究開発を実施します。
さらに、本事業では多様な研究開発活動を支える計測分析技術・機器等の開発も進めています。
また、少子高齢化の進展や大規模自然災害への備え、地球温暖化問題への対処等の課題解決のため、我が国発の破壊的イノベーションの創出を目指し、従来技術の延長にない、より大胆な発想に基づく挑戦的な研究開発を推進することが重要です。
このため、「ムーンショット型研究開発制度」では、国際シンポジウムを開催して国内外の有識者の知見を取り入れ、総合科学技術・イノベーション会議において六つの野心的な目標を定めました。これらの目標の下、関係府省が一体となり、より大胆な発想に基づく挑戦的な研究開発を推進します。

基礎研究力強化と世界最高水準の研究拠点の形成
学術研究・基礎研究は、イノベーションの源泉たる科学技術のシーズを生み出すとともに、新しい知的・文化的価値を創造し、社会の発展に寄与するものです。このため、研究者の独創的な発想に基づく多様で質の高い学術研究及び世界最先端の基礎研究の推進等を図るとともに、平成31年4月にとりまとめられた「研究力向上改革2019」に基づき、我が国の基礎研究のより一層の推進に向けて、今後も全力で取り組んでまいります。

1 科学研究費助成事業(科研費)
新しい知の創出と重厚な知的蓄積の形成を図るため、人文学・社会科学から自然科学まで全ての分野にわたり、あらゆる学術研究を支援します。
学術の現代的要請(挑戦性、総合性、融合性、国際性)やイノベーションをめぐる動向に対し、より的確に対応するため、平成29年1月に改定した「科研費改革の実施方針」に基づき、審査システムの見直しをはじめとする抜本的な改革を進めています。
令和2年度には、研究者のキャリア形成に応じた支援を図る「科研費若手支援プラン」の実行により、若手研究者への支援を重点的に強化するとともに、振興・融合領域の開拓の強化のため、学術の体系や方向の変革・転換を先導する新種目「学術変革領域研究」を創設し、「挑戦的研究(開拓)」を新たに基金化します。

2 戦略的創造研究推進事業(新技術シーズ創出)
トップダウンで定めた戦略目標・研究領域において、大学等の研究者から提案を募り、組織・分野の枠を越えた時限的な研究体制を構築して、イノベーション指向の戦略的な基礎研究を推進するとともに、若手研究者等の挑戦的な研究の機会の創出などを実施し、有望な成果について研究を加速・深化します。

3 研究大学強化促進事業
世界水準の優れた研究大学群を増強するため、研究マネジメント人材(リサーチ・アドミニストレーターを含む)群の確保・活用と集中的な研究環境改革の一体的な推進を支援し、我が国全体の研究力強化を図ります。

4 「創発的研究の場」の形成
我が国が将来にわたってノーベル賞級のインパクトをもたらす研究成果を創出し続けるためには、研究者がしっかりと腰を据えて、自由で挑戦的な研究に打ち込める環境が必要です。このため、文部科学省では、最長10年間にわたる柔軟で安定的な研究費の支援と、研究者を取り巻く研究環境の向上を一体的に推進する「創発的研究支援事業」を新設し、令和元年度補正予算において500億円の基金を国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)に造成しました。あわせて、令和元年度補正予算において研究者のニーズが高い先端的な研究設備の整備を支援しました。整備された研究設備を広く共用することで、若手研究者らの研究力向上を図るとともに、未来の鍵を握る重要分野(物質・材料科学、量子技術、生命科学、情報科学)における我が国の競争力の強化につなげていきます。

5 世界トップレベル研究拠点プログラム(WPI)
世界トップレベル研究拠点プログラム(WPI)は、国際的な頭脳獲得競争が激化する中、優れた研究人材が世界中から集う、高度に国際化された研究環境と世界トップレベルの研究水準を誇る「目に見える国際頭脳循環拠点」を形成することを目指す事業です。令和2年度には、拠点形成に取り組んでいる拠点に対して、引き続き支援を行うとともに、WPI拠点としてこれまでに培ってきた強みや成果を最大限に活かしていくため、国際頭脳循環の深化や拠点間連携の強化を含む成果の横展開・高度化等を推進します。

6 人文学・社会科学の振興
人文学・社会科学は、人間・文化・社会を研究対象としており、人間の精神生活の基盤を築くとともに、社会的諸問題の解決に寄与するという重要な役割を担っています。このため、令和2年度には、「領域開拓」、「実社会対応」、「グローバル展開」の視点に基づく課題設定型の研究やデータの利活用基盤の構築とともに、新たに、研究者等が研究課題を共創する場の整備を推進します。また、共同研究拠点の形成支援等を通じ、人文学・社会科学の振興を図ります。

7 共同利用・共同研究体制の強化・充実
我が国では、大学の研究所や大学共同利用機関において、大型の研究設備や貴重な学術資料等を全国の研究者が共同で利用し、共同研究を行う共同利用・共同研究の体制が整備されています。こうした体制は我が国独自の仕組みであり、国際的な研究成果を生み出すなど、学術研究の発展に大きく貢献しています。文部科学省では、共同利用・共同研究体制を強化・充実させることで、我が国の強み・特色を活かした研究水準の向上を目指しています。
(1)共同利用・共同研究拠点
文部科学省では、国公私立大学に附置される研究施設のうち、研究実績、研究水準、研究環境等の面で各研究分野の中核的な施設と認められ、全国の研究者に利用させることを通じて、我が国の学術研究の発展に特に有益である研究施設を共同利用・共同研究拠点として認定しています。令和2年4月現在、全国で53大学の100拠点(国立大学73拠点、公立大学9拠点、私立大学18拠点)が認定を受けて活動しています。
さらに、平成30年度からは、国際的な共同利用・共同研究を実施する研究施設を国際共同利用・共同研究拠点として認定しています。令和2年4月現在、全国で7拠点(国立大学6拠点、私立大学1拠点)を認定し、国際的な研究環境を整備するための取組を支援しています。
(2)大学共同利用機関
大学共同利用機関は、最先端の大型装置や貴重な資料・データ等を個々の大学の枠を越えて全国の研究者の利用に供し、共同研究を行う場として我が国の学術研究の発展を支えています。文部科学省では、大学共同利用機関が、我が国の基礎科学力の復権をけん引するとともに、今日の社会的課題の解決に貢献できるよう、その機能強化のための取組を進めています。
(3)学術研究の大型プロジェクト
文部科学省は、共同利用・共同研究体制の下、最先端の大型研究装置等により人類未踏の研究課題に挑み、世界の学術研究を先導するとともに、国内外の優れた研究者を結集し、国際的な研究拠点を形成する学術研究の大型プロジェクトを「大規模学術フロンティア促進事業」として支援しています。
●ハイパーカミオカンデ(HK)計画の推進
平成27年度の梶田隆章・東京大学宇宙線研究所長のノーベル物理学賞受賞につながる研究成果を上げたスーパーカミオカンデ(SK)やその次世代計画であるハイパーカミオカンデ(HK)計画が学術研究の大型プロジェクトのひとつとして挙げられます。HKは、SKを飛躍的に上回る観測性能を備え、陽子崩壊探索などのニュートリノ研究を通じた新たな物理法則の発見や素粒子と宇宙の謎を解き明かすことを目指しており、令和元年度より建設に着手しています。
●大型電波望遠鏡「アルマ」による国際共同利用研究の推進
大型電波望遠鏡「アルマ」計画は、平成31年4月に国際共同研究プロジェクトより発表された、史上初となるブラックホールの撮影成功にも大きく貢献するなど、銀河・惑星系の形成過程や生命起源の謎に迫る成果を着実に上げています。
●新しいステージに向けた学術情報ネットワーク(SINET)整備
国立情報学研究所が整備するSINETは、全国900以上の大学や研究機関、海外の研究ネットワークを相互接続する、学術研究・教育活動に不可欠な学術情報基盤です。
令和元年度には、特にデータ通信量が多い東京―大阪間に世界最高水準の400Gbps回線を導入し、共同研究等の通信環境を強化しています。令和2年度においても、SINET上でオープンサイエンスの推進に向けた研究データ基盤の運用を開始するなど、さらなる機能強化を図ります。

科学技術イノベーション人材の育成・確保
我が国が成長を続け、新たな価値を生み出していくためには、科学技術イノベーションを担う優れた人材を育成・確保していくことが重要です。文部科学省では、若手研究者や女性研究者、研究支援人材など多様な人材の育成・確保や活躍促進を図る方策を戦略的に展開します。
特に、新たな研究領域に挑戦するような若手研究者が安定かつ自立して研究を推進できる環境を実現する取組を実施するとともに、次代の科学技術イノベーションを担う人材を継続的・体系的に育成していくために、理数系分野において優れた素質を持つ児童生徒等を発掘し、その才能を伸ばすための一貫した取組を推進します。

1 若手研究者等の育成・活躍促進
優れた若手研究者が産学官の研究機関において安定かつ自立した研究環境を得て自主的・自立的な研究に専念できるよう、研究者及び研究機関を支援する「卓越研究員事業」を実施します。
また、令和元年度より開始した事業として、世界トップクラスの研究者育成に向けたプログラムの開発を支援する「世界で活躍できる研究者戦略育成事業」を実施します。
さらに、各分野の博士人材等について、データサイエンス等を活用しアカデミア・産業界を問わず活躍できるトップクラスのエキスパート人材を育成する研修プログラムの開発を目指す「データ関連人材育成プログラム」を実施します。
このほか、「特別研究員事業」等を引き続き推進します。

2 女性研究者の活躍促進
女性研究者の活躍促進を図るため、「特別研究員-RPD」事業や、研究と出産・育児等のライフイベントとの両立や女性研究者の研究力向上を通じたリーダーの育成を一体的に推進するダイバーシティ実現に向けた大学等の取組を支援する「ダイバーシティ研究環境実現イニシアティブ」を実施し、女性研究者の支援の強化に取り組みます。

3 次代を担う人材の育成
将来の国際的な科学技術関係人材の育成をするために、先進的な理数系教育を実施する高校を指定する「スーパーサイエンスハイスクール」や大学等を活用して次世代の傑出した人材を育成する「グローバルサイエンスキャンパス」(高校生向け)、「ジュニアドクター育成塾」(小中学生向け)を引き続き支援します。
加えて、女子中高生が理系分野への興味・関心を高め、適切に理系進路を選択することができるよう、地域で継続的な取組を推進する「女子中高生の理系進路選択支援プログラム」や、「サイエンス・インカレ」、「科学の甲子園」、「科学の甲子園ジュニア」の推進、国際科学オリンピックの支援等、理数系の意欲・能力が高い生徒や学生が、科学技術に係る能力を競い、互いに研鑽する場を構築していきます。

4 技術士制度の活用促進
技術士は、技術士法に基づく名称独占の国家資格であり、国によって認められた高い技術と倫理を兼ね備えた優れた技術者です。
技術士制度のより一層の活用促進・普及拡大を図るため、資質能力向上や国際的通用性も視野に入れた制度の改正を行うとともに、関係省庁、企業等への働きかけも行っていきます。

Society 5.0を支える世界最高水準の大型研究施設の整備・利活用の促進
我が国や世界が直面する様々な課題の達成に科学技術が貢献していくためには、研究開発の共通基盤の強化が重要です。このため、世界に誇る最先端研究施設の整備・共用、大学・独立行政法人等が保有する研究基盤の共用・プラットフォーム化を推進します。

1 大型放射光施設(SPring-8)
SPring-8は、世界最高性能の放射光により、微細な物質構造や状態の解析を行う研究施設で、創薬につながるタンパク質の構造解析や高性能タイヤの開発といった成果を創出しています。安定した利用運転と産学官の幅広い利用者への共用を通じて、生命科学、環境・エネルギーから新材料開発まで広範な分野で先端的・革新的な研究開発に貢献します。

2 X線自由電子レーザー施設(SACLA)
SACLAは、放射光とレーザーの特長を併せ持った高度な光を発振し、原子レベルの超微細構造や、化学反応の動態変化の計測・分析を可能とする世界最先端の研究施設で、植物の光合成メカニズムの解明に向けた研究などが行われています。幅広い利用者へ最大限の共用を図り、世界を先導する成果の創出等に貢献します。

3 大強度陽子加速器施設(J-PARC)
J-PARCは、世界最高レベルのビーム強度を有し、中性子、ミュオン、ニュートリノ等を用いて物質・生命科学や、原子核・素粒子物理学等の多様な研究を推進する研究施設で、全固体セラミックス電池の開発といった産業利用による成果も創出しています。ビーム増強のための調整を行いつつ、国際研究拠点の形成に向けた研究環境の強化を図ります。

4 スーパーコンピュータ「富岳」の開発
我が国が直面する社会的・科学的課題の解決に貢献するため、令和3年度の運用開始を目標に、世界最高水準の汎用性のあるスーパーコンピュータの実現を目指します。

5 革新的ハイパフォーマンス・コンピューティング・インフラ(HPCI)
国内の大学等のスーパーコンピュータを高速ネットワークでつなぎ、多様なユーザーニーズに応える計算環境を実現するHPCIを構築するとともに、この利用を推進します。

6 官民地域パートナーシップによる次世代放射光施設の推進
最先端の科学技術は、物質の「構造解析」に加えて物質の「機能理解」へと向かっており、物質の電子状態やその変化を高精度で追える高輝度の軟X線利用環境の整備が重要となっています。このため、学術・産業ともに高い利用ニーズが見込まれる次世代放射光施設(軟X線向け高輝度3GeV級放射光源)について、2023年度の運転開始を目指して、施設整備を着実に進めます。

7 ナノテクノロジープラットフォーム
ナノテクノロジーに関する最先端の研究設備とその活用のノウハウを有する機関が協力して、技術領域に応じた全国的な設備の共用体制を構築するとともに、産学官連携や異分野融合を推進します。

8 先端研究基盤共用促進事業
全ての研究者に開かれた研究設備・機器により、産学官が共用可能な研究施設・設備を繋ぐ共用プラットフォームの形成、競争的研究費改革との連携等による研究機器の組織的な共用体制の確立(コアファシリティ化)を推進します。さらに、遠隔利用システム等を活用した研究機器の相互利用推進のための実証実験を行っています。

科学技術イノベーションの戦略的国際展開
世界の知を取り込み、我が国の国際競争力の維持・強化に資するため、また、世界の研究ネットワークの主要な一角に位置付けられるとともに、国際社会における存在感を発揮するためには、科学技術の戦略的な国際展開を図ることが重要です。このため、文部科学省では、国際頭脳循環・国際共同研究の推進、国際協力による持続可能な開発目標達成のための科学技術イノベーション(STI for SDGs)の推進、グローバルに活躍する若手研究者の育成等に取り組みます。

1 国際的な共同研究の推進
国際頭脳循環への参画・研究ネットワーク構築をけん引すべく、相手国との協働による国際共同研究の共同公募を強力に推進し、我が国の国際共同研究の強化を着実に図ってまいります。具体的には「戦略的国際共同研究プログラム(SICORP)」では、政府間合意に基づきイコールパートナーシップ(対等な協力関係)の下、欧米先進国との分野の擦り合わせを経た共同公募や新興国・中進国とのマルチな枠組み構築を通じた共同公募など、相手国のポテンシャル・分野と協力フェーズに応じた多様な国際共同研究を推進しています。
また、「地球規模課題対応国際科学技術協力プログラム(SATREPS)」では、我が国の優れた科学技術と政府開発援助(ODA)との連携により、開発途上国のニーズに基づき、環境・エネルギー分野、生物資源分野、防災分野、感染症分野における地球規模課題の解決と将来的な社会実装につながる国際共同研究を推進しています。加えて出口ステークホルダーとの連携・協働を促すスキームを活用し、SDGs達成に向け研究成果の社会実装を加速させます。
さらに、令和元年度補正予算において、アフリカ・アジア等の途上国におけるSDGs達成に向けて、規制や社会受容等の「壁」により実用化のステップに進めていない我が国の科学技術について、現地での実証試験等の実施を通じた社会実装促進のために必要な経費を確保し、「持続可能開発目標達成支援事業」を実施いたします。

2 グローバルに活躍する若手研究者の育成等
国際的な頭脳循環の進展を踏まえ、我が国において優秀な人材を育成・確保するため、以下の取組を進めています。
優れた若手研究者に対し、海外の大学等研究機関において長期間(2年間)研究に専念できるよう支援する「海外特別研究員事業」や、博士後期課程学生等の短期的な海外派遣を支援する「若手研究者海外挑戦プログラム」を実施しています。
また、若手を中心とした外国人研究者を我が国の大学・研究機関等に招へいし、研究者間での研究協力関係を構築することを通じて我が国の学術研究の推進を図る「外国人特別研究員事業」を実施しています。
さらに、海外からの優秀な科学技術イノベーション人材の獲得に資するため、アジア諸国の青少年との科学技術交流プログラムを行う「日本・アジア青少年サイエンス交流事業」を実施しています。

社会とともに創り進める科学技術イノベーション政策の推進
科学技術イノベーション政策を「社会及び公共のための政策」と位置付け、その実現に向け、科学技術コミュニケーション活動の更なる促進等、国民の理解と信頼と支持を得るための取組を展開します。また、研究開発システムの改革を強力に推進することで、科学技術イノベーション政策の実効性を大幅に高めます。

1 科学技術イノベーション政策における「政策のための科学」の推進
文部科学省は、経済・社会等の状況を多面的な視点から把握・分析した上で、課題対応等に向けた有効な政策を立案する「客観的根拠(エビデンス)に基づく政策形成」の実現を目指し、科学技術イノベーション政策における「政策のための科学」推進事業を実施しています。
(1)基盤的研究・人材育成拠点の形成
客観的根拠に基づく政策形成を行う高度専門人材等を大学において育成します。平成25年度より5拠点・6大学において、学生を受け入れ、人材育成に取り組んでいます。また、平成26年度から政策研究大学院大学(総合拠点)に設置した「科学技術イノベーション政策研究センター(ScireXセンター)」を中心として、東京大学、一橋大学、大阪大学、京都大学及び九州大学(領域開拓拠点)との連携協力・協働の下に中核的拠点機能を整備し、エビデンスに基づく政策形成の実践のための指標、手法等の開発を行っています。
(2)データ・情報基盤の構築
科学技術・学術政策研究所(NISTEP)では、科学技術イノベーションに関するデータや情報を体系的かつ継続的に整備・蓄積していくためのデータ・情報基盤を構築しています。令和2年度は、引き続きデータ等の整備・高度化とデータの提供・活用を行います。

2 戦略的創造研究推進事業(社会技術研究開発)
科学技術振興機構社会技術研究開発センター(RISTEX)では、環境・エネルギー、少子高齢化、防災・減災に代表されるような様々な社会課題を解決するために、自然科学だけでなく人文・社会科学の知識をも活用し、多様なステークホルダーとの共創による研究開発を実施しています。令和元年度には、社会課題の典型であるSDGsの達成に向けて地域の社会課題を特定し、解決のためのシナリオやソリューションを創出する新たな研究開発プログラムを開始しました。

3 科学技術コミュニケーションと「共創」の推進
科学技術イノベーションにより、未来の産業創造と社会変革を実現し、持続可能な未来社会を構築するためには、様々なステークホルダーによる「共創」を推進し、科学技術イノベーションと社会との関係を深化させることが重要です。
最先端の科学技術及び科学技術コミュニケーション手法に関する情報の国内外への発信と交流のための総合的な拠点である日本科学未来館では、国民と研究者等の対話・協働を促す科学コミュニケーターの養成、展示やイベントを通して先端科学技術と社会の在り方を共に考える活動と、そのための新たな表現やコミュニケーション手法の開発、研究機関や学校・科学館等との連携活動等を行います。
科学技術振興機構「科学と社会」推進部では、多様なステークホルダーによる「共創」を推進するため、日本最大級のオープンフォーラム「サイエンスアゴラ」の開催や、ありたい未来社会像や解くべき課題とソリューションを検討・創造する場の構築、SDGs達成に向けた「科学技術イノベーションを用いて社会課題を解決する地域における優れた取組」を表彰する制度、最新の科学技術動向や共創活動等の情報発信等を行います。

4 科学技術イノベーション政策におけるPDCAサイクルの確立
科学技術イノベーション政策を効果的、効率的に推進するためには、PDCAサイクルを確立することが必要であり、研究開発評価は、その確立に重要な役割を担っています。
文部科学省では「国の研究開発評価に関する大綱的指針」(内閣総理大臣決定)及び平成29年4月に改定した「文部科学省における研究及び開発に関する評価指針」(文部科学大臣決定)に基づき、研究開発の特徴を踏まえ、その目的や政策上の位置付け、規模等に応じた評価を実施することで、科学技術イノベーション政策における研究開発活動の質を高めていきます。

5 公正な研究活動の推進
研究活動における不正行為は、科学への信頼を揺るがし、その発展を妨げる行為であり、絶対に許されるものではありません。
文部科学省では、「研究活動における不正行為への対応等に関するガイドライン」(平成26年8月26日大臣決定)を踏まえ、研究機関における不正防止等の取組の徹底を図るとともに、独立行政法人日本学術振興会、国立研究開発法人科学技術振興機構及び国立研究開発法人日本医療研究開発機構と連携し、研究機関による研究倫理教育の実施等を支援するなど、公正な研究活動を推進するための取組を引き続き行っていきます。

健康・医療分野の研究開発の推進
健康長寿社会の実現と医療関連分野における産業競争力の向上に貢献することを目指し、文部科学省では、iPS細胞研究等による世界最先端の医療の実現や、疾患の克服に向けた取組を強力に推進するとともに、臨床研究・治験や産業応用へとつなげる取組を実施しています。国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)における、基礎から実用化までの一貫した研究開発を、関係府省と連携して推進しています。

1 世界最先端の医療の実現
〈再生医療〉
●再生医療実現拠点ネットワークプログラム
京都大学iPS細胞研究所を中核拠点として臨床応用を見据えた安全性・標準化に関する研究や再生医療用iPS細胞ストックの構築を行うとともに、疾患・組織別に再生医療の実現を目指す拠点を整備し、拠点間の連携体制を構築しながらiPS細胞等を用いた再生医療・創薬をいち早く実現するための研究開発を推進しています。

〈ゲノム医療〉
●東北メディカル・メガバンク計画
東日本大震災の被災地域の方々の健康向上に貢献するとともに、ゲノム情報を含む大規模なコホート研究等を実施し、個別化予防等の次世代医療の実現を目指しています。

2 臨床研究・治験への取組
●橋渡し研究戦略的推進プログラム
橋渡し研究支援拠点を活用して大学等発の有望な基礎研究成果を育成し、さらに臨床研究中核病院と連携することで、革新的医療技術創出拠点として革新的な医薬品・医療機器等の実用化を促進しています。また、産学連携・人材育成機能を充実するとともに、医学・歯学・薬学系以外の先端技術・知識の利活用等による異分野融合型研究シーズの創出についても推進しています。

3 重点プロジェクト等
〈がん〉
●次世代がん医療創生研究事業
がんの生物学的な本態解明に迫る研究、がんゲノム情報など患者の臨床データに基づいた研究及びこれらの融合研究を推進することにより、画期的な治療法や診断法の実用化に向けた研究を加速し、早期段階で製薬企業等へ導出することを目指しています。

〈感染症〉
●新興・再興感染症研究基盤創生事業等
感染症流行地の研究拠点における研究の推進や長崎大学BSL4施設を中核とした研究基盤の整備により、国内外の感染症研究基盤を強化します。また、海外研究拠点で得られる検体・情報等を活用した研究や多様な分野が連携した研究を実施し、感染症の予防・診断・治療に資する基礎的研究を推進します。
このほか、科学研究費助成事業(特別研究促進費)を利用して、今般発生した新型コロナウイルス感染症(COVID-19)についても、アジア地域の感染症研究拠点を活用した研究を支援しています。

〈創薬支援〉
●創薬等ライフサイエンス研究支援基盤事業
我が国の優れた基礎研究の成果を医薬品としての実用化につなげるため、創薬等のライフサイエンス研究に資する高度な技術や施設等を共有する先端研究基盤を整備・強化して、大学・研究機関等による創薬標的探索研究や作用機序解明に向けた機能解析研究等を支援しています。

〈精神・神経疾患〉
●脳科学研究戦略推進プログラム・革新的技術による脳機能ネットワークの全容解明プロジェクト
精神・神経疾患の克服等に向け、非ヒト霊長類研究等の我が国の強み・特色を活かしつつ、ヒトの脳の神経回路レベルでの動作原理等の解明を目指しています。脳画像等の大規模データベース構築のための技術基盤を整備し、ライフステージに応じた健常から疾患に至る脳画像等の総合的解析研究などを実施します。

4 ライフサイエンス分野における生命倫理・安全対策
ライフサイエンス研究の推進に当たっては、生命倫理及び安全確保上の課題に配慮することが必要です。
ヒト受精胚等を用いる研究については、令和元年6月に総合科学技術・イノベーション会議(CSTI)において、遺伝性・先天性疾患の病態の解明や治療方法の開発に資するためのヒト受精胚にゲノム編集技術等を用いる基礎的研究等を容認する見解が示されました。文部科学省及び厚生労働省では、その見解を踏まえた研究の適正な実施の確保を図るため、「ヒト受精胚に遺伝情報改変技術等を用いる研究に関する倫理指針」、「ヒト受精胚の作成を行う生殖補助医療研究に関する倫理指針」及び「特定胚の取扱いに関する指針」の改正に向けた検討を進めています。また、「ヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針」や「人を対象とする医学系研究に関する倫理指針」については、両指針に基づく研究の適正な実施の確保とともに、研究の進展等の状況も踏まえ、文部科学省、厚生労働省及び経済産業省において両指針の整合等に関する見直しに向けた検討を進めています。
遺伝子組換え技術を用いる実験については、「遺伝子組換え生物等の使用等の規制による生物の多様性の確保に関する法律」に基づき、適切な実施を引き続き図ります。特に、新型コロナウイルスに関連する遺伝子組換え実験については、その重要性にかんがみて迅速性と安全性を確立させる取組を行っています。また、ゲノム編集技術の利用により得られた生物の同法における概念整理が環境省で行われたことを受けて、研究開発段階における当該生物の使用上の留意事項等を作成し、広く周知を図っています。

クリーンで経済的な環境エネルギーシステムの実現
2015年に掲げられたSDGsや「パリ協定」に基づき、昨年6月に「パリ協定に基づく成長戦略としての長期戦略」が閣議決定され、今世紀後半のできるだけ早期の脱炭素社会の実現が掲げられました。また、その目標を具体化した「革新的環境イノベーション戦略」が本年1月に策定され、温室効果ガスの削減と経済成長を両立しながら、気候変動対策に貢献するための研究開発はますます重要になっています。
昨年のノーベル化学賞では、エネルギーを貯蔵でき、脱炭素社会の実現に貢献するリチウムイオン蓄電池を開発した吉野彰氏が受賞するなど環境エネルギー分野における新しい技術への期待が高まっています。
こうした中、文部科学省では、クリーンで経済的な環境エネルギーシステムの実現に向けた研究開発を推進しています。

1 省エネルギー社会の実現に資する次世代半導体研究開発の推進
次世代半導体の研究開発は、我が国が強みを有する分野の一つであり、大きな省エネ効果が期待される次世代半導体を用いたパワーデバイス等の2030年の実用化に向け、理論・シミュレーションも活用した材料創製からデバイス・システム応用までの研究開発を一体的に推進しています。

2 環境エネルギー分野における革新的な技術の研究開発の推進
右記に加え、抜本的な温室効果ガス削減に向けた従来技術の延長線にない革新的エネルギー科学技術の研究開発を幅広く推進するとともに、リチウムイオン蓄電池に代わる次世代蓄電池等の世界に先駆けた低炭素化技術の研究開発を推進しています。
また、理化学研究所において、個々の構成要素の単なる集合としては予測不可能な驚くべき新しい物性や機能を生み出す創発物性科学分野の研究や、環境負荷の少ないモノづくりを理念とし、植物科学やケミカルバイオロジー等の異分野融合研究に加えてAI等の最先端技術を取り入れた新機軸の研究を推進しています。

3 ITER計画及びBA活動等の核融合研究開発の実施
エネルギー問題と環境問題を根本的に解決するものと期待される核融合エネルギーの実現に向け、国際約束に基づき、核融合実験炉の建設・運転を通じて科学的・技術的実現可能性の確立を目指すITER計画及び発電実証に向けた先進的研究開発を国内で行う幅広いアプローチ(BA)活動を計画的かつ着実に実施するとともに、核融合科学研究所における大型ヘリカル装置(LHD)計画をはじめとする大学等における学術研究も進めています。

4 地球環境問題への対応に必要な基盤情報の創出
気候モデル等の開発を通じて、気候変動の予測技術等の高度化や気候変動メカニズムの解明に取り組むとともに、防災等の気候変動適応策立案に必要な気候変動予測情報を創出するための研究開発を推進しています。
加えて、地球環境ビッグデータ(観測・予測情報等)を蓄積・統合解析し、気候変動等の地球規模課題の解決に資する情報基盤として、「データ統合・解析システム(DIAS)」を開発しています。また、DIASが産学官の多くのユーザーに長期的、安定的に利用されるための運用体制の構築や共通基盤技術の開発を推進しています。
さらに、我が国が主導的な役割を果たしている地球観測に関する政府間会合(GEO)等の国際的な枠組みにおいて研究成果を発信するとともに、気候変動を含む地球環境研究の世界規模のイニシアティブであるフューチャー・アース構想等により国内外のステークホルダーとの協働による研究を推進しています。

自然災害に対する強靱な社会に向けた研究開発の推進
我が国の国土は、地震・津波・火山、台風等の自然災害が多く発生する自然条件下にあります。
自然災害にはいまだに解明されていない部分が多く、大きな被害をもたらします。自然災害を正確に把握し、予測するための調査研究を進めるとともに、被害軽減を図るための研究開発を進め、防災・減災対策に活かしていくことが重要です。
このため、文部科学省では、地震・津波・火山等の調査観測・研究や、耐震技術開発などの防災に関する取組を実施しています。

1 地震及び火山分野の調査研究の推進
(1)地震調査研究推進本部の取組
平成7年1月に発生した阪神・淡路大震災の経験を活かし、地震に関する調査研究の成果を社会に伝え、政府として一元的に推進するため、地震調査研究推進本部(本部長:文部科学大臣(以下「地震本部」という。)が設置されました。
地震本部では、これまでに、関係行政機関、大学等との連携協力の下、陸域の活断層の地域評価、海溝型地震の長期評価、津波評価、地震動予測地図の作成、緊急地震速報の実用化等の成果を得てきたところです。
令和2年度も引き続き、活断層等の長期評価や強震動評価、津波評価等の検討を進めるとともに、地震防災対策等への貢献を目指し、一層の成果普及を図ります。
(参考)地震本部による地震に関する評価
https://www.jishin.go.jp/evaluation/
(2)海底地震・津波観測網の構築・運用
①南海トラフ海底地震津波観測網(N-net)の構築
南海トラフ地震の想定震源のうち、まだ観測網を設置していない高知県沖~日向灘の海域に、南海トラフ海底地震津波観測網(N-net)の構築を進めます。
②日本海溝海底地震津波観測網(S-net)及び地震・津波観測監視システム(DONET)の運用
地震・津波の発生メカニズムの解明や、地震・津波の早期検知による警報の高度化を目的として、防災科学技術研究所において、日本海溝沿いに整備した日本海溝海底地震津波観測網(S-net)と和歌山県沖から高知県沖に整備した地震・津波観測監視システム(DONET)を運用しています。これら海域の観測網に加え、陸域の地震観測網、火山観測網とを合わせ、全国の陸域から海域までを網羅する「陸海統合地震津波火山観測網(MOWLAS)」として統合運用を行っています。
(3)重点的な地震防災研究や防災力向上のための研究
①首都圏を中心としたレジリエンス総合力向上プロジェクト
首都直下地震等への防災力を向上するため、官民連携超高密度地震観測システムの構築、 非構造部材を含む構造物の崩壊余裕度に関するセンサー情報の収集により、官民一体の総合的な災害対応や事業継続、個人の防災行動等に資するビッグデータを整備します。
②防災対策に資する南海トラフ地震調査研究プロジェクト
南海トラフ沿いでマグニチュード8クラスの大地震が発生し、残りの領域において連動して大地震が発生する可能性が高まるなどの「異常な現象」が起こった際に、その後の地震活動の推移を、科学的・定量的データを用いて評価する手法の開発を行います。また、こうした「異常な現象」が観測された場合の住民・企業等の防災対策の在り方や、防災対応を実行するに当たっての仕組みについて研究を実施します。
③日本海地震・津波調査プロジェクト
調査未了域が多く存在する日本海側において、自治体の地震・津波被害の想定や防災対策の策定等に貢献するため、海底地殻構造の調査観測や地震・津波の発生シミュレーション等を実施します。
(4)火山観測研究の推進及び人材育成(次世代火山研究・人材育成総合プロジェクト)
平成26年9月の御嶽山の噴火を踏まえて、我が国の火山研究を飛躍させるため、従前の観測研究に加え、他分野との連携・融合のもと、「観測・予測・対策」の一体的な火山研究の推進及び広範な知識と高度な技能を有する火山研究者の育成を目指します。

2 防災科学技術の研究開発の推進
(1)災害をリアルタイムで観測・予測するための研究開発
地震・津波・火山災害を観測する技術や予測する手法の研究開発等を推進します。
特に、海と陸の地震・津波・火山の観測網を統合した陸海統合地震津波火山観測網(MOWLAS)により得られたデータを用いた地震動・津波の即時予測技術の開発を行います。さらに、リモートセンシング技術等による多項目の火山観測データを活用し、多様な火山現象のメカニズムの解明や火山災害を軽減するための研究開発を進めます。
(2)社会基盤の強靭性の向上を目指した研究開発
地震発生時の社会基盤の強靱性の向上と事業継続能力の強化を目指し、実大三次元震動破壊実験施設(E-ディフェンス)等を活用した耐震技術開発とシミュレーション技術の高度化を行います。
具体的には、将来起こりうる巨大地震に対し、構造物の耐震性能評価、応答制御、機能維持技術等の地震減災に資する耐震技術研究を実施します。さらに、E-ディフェンスで実施した実験を解析するシミュレーション技術の耐震性能評価への活用に向け、シミュレーション技術の高度化・効率化、利便性向上等に関する研究開発を行います。
(3)災害リスクの低減に向けた基盤的研究開発
自然災害の軽減のために、個人や自治体、国が、それぞれ自らの「防災」を計画・実行することができるよう、地震災害をはじめ各種災害に関する危険性の評価と、これらを含めた各種災害リスク情報の利活用に関する研究を行います。
特に、津波ハザードマップや、低頻度巨大地震を考慮した地震動ハザードマップの作成手法に関する研究、積乱雲の一生を観測し、ゲリラ豪雨を観測し予測する手法の開発等の防災に資する研究を行います。

人類のフロンティアの開拓及び国家安全保障・基幹技術の強化
〈宇宙・航空〉
宇宙・航空分野について、文部科学省では、次の施策を推進しています。

1 基幹ロケットの運用・開発
我が国の基幹ロケットであるH-ⅡA、H-ⅡB及びイプシロンロケットは、令和2年2月のH-ⅡAロケット41号機打上げ成功により、連続47機の打ち上げに成功しており、98%以上の打上げ成功率(53機中52機)を達成しています。これは、我が国の宇宙技術が世界最高水準の信頼性を確立している証しであり、今後も着実に打上げ実績を重ねていきます。
また、我が国が自立的に宇宙活動を行う能力を維持発展させるため、令和2年度の初号機打上げに向け、平成26年度よりH3ロケット(新型基幹ロケット)の開発に着手し、現在、主エンジンであるLE-9エンジン及び固体ロケットブースタSRB-3の燃焼試験を行うなど、着実な開発を進めています。

2 人工衛星等による宇宙利用の推進
平成26年5月に打ち上げられた陸域観測技術衛星2号「だいち2号」(ALOS-2)は、地震や豪雨などの大規模自然災害の発生時に緊急観測を行い、災害状況の迅速な把握に役立てられています。現在、先進光学衛星(ALOS-3)(令和2年度打上げ予定)及び先進レーダ衛星(ALOS-4)(令和3年度打上げ予定)等を開発しています。
このほかにも、平成24年5月に打ち上げられた水循環変動観測衛星「しずく」(GCOM-W)、平成26年2月に打ち上げられた米国航空宇宙局(NASA)との国際協力プロジェクトである全球降水観測計画(GPM)主衛星、平成29年12月に打ち上げられた気候変動観測衛星「しきさい」(GCOM-C)及びプロジェクトである温室効果ガス観測技術衛星2号「いぶき2号」(GOSAT-2)による地球観測を実施し、地球環境問題の解明等に貢献しています。今後は、令和2年度打上げ予定の光データ中継衛星、「しずく」に搭載されたマイクロ波放射計(AMSR2)の後継センサ(AMSR3)と、「いぶき2号」の後継センサを搭載する温室効果ガス・水循環観測技術衛星(GOSAT-GW)(令和5年度打上げ予定)等の開発を進めていきます。
また、将来の放送・通信衛星の大容量化や多チャンネル化等に対応する衛星技術を獲得するため、総務省と連携し、技術試験衛星9号機(令和4年度打上げ予定)の開発に取り組んでいます。
さらに、平成31年1月のイプシロンロケット4号機で打ち上げられた革新的衛星技術実証1号機や令和3年度打上げ予定の同2号機によって民間事業者や大学等が製作する超小型衛星等の宇宙空間における実証機会の提供をしています。また、我が国の衛星を安定的に運用するため、地上からスペースデブリ(宇宙ゴミ)等を把握する宇宙状況把握(SSA)システムの能力向上や、世界に先駆けたデブリ除去技術の獲得を目指して取組を進めています。

3 宇宙科学と天文学の研究の推進
宇宙科学については、ブラックホールや超新星爆発などの高エネルギー現象を観測するX線天文衛星等の人工衛星の開発・運用や、小惑星探査機「はやぶさ」による小惑星「イトカワ」からのサンプル採収、X線・赤外線天文観測や月・惑星探査等の分野で世界トップレベルの業績を挙げてきました。平成28年12月に打ち上げたジオスペース探査衛星「あらせ」は、オーロラの発生プロセスを同定するプラズマの波の変動をとらえることに成功するなど、太陽と地球の相互作用等の理解の深化に貢献しました。平成26年12月に打ち上げられた「はやぶさ2」は、平成30年6月に小惑星「リュウグウ」に到着し、探査ローバによる探査、小惑星表面への人工クレーター形成、同一小惑星への2回の着陸(タッチダウン)成功などの世界初の快挙を成し遂げ、科学的に貴重な小惑星内部のサンプル採取にも成功したと見られています。今後、令和2年末頃に地球への帰還を予定しています。このほか、欧州宇宙機関との国際協力による水星探査計画(BepiColombo)において我が国が開発を担当した水星磁気圏探査機「みお」(平成30年10月打上げ)が、水星への航行を続けています(令和7年水星到着予定)。現在、我が国初となる月への無人着陸を目指す小型月着陸実証機「SLIM」(令和3年度打上げ予定)ブラックホール等のX線で観測される高エネルギーの天体を観測するX線分光撮像衛星「XRISM」(令和3年度打上げ予定)等の開発を進めており、国際的な地位の確立や、人類のフロンティア拡大に資する宇宙科学分野の研究開発を推進しています。
天文学については、南米チリのアタカマ高地にて、大型電波望遠鏡「アルマ」を日米欧の国際協力で運用しており、日本はACA(アタカマコンパクトアレイ)システムやサブミリ波帯を中心とした受信機システム等の製造を担当し、平成31年4月に国際共同研究プロジェクトより発表された、史上初となるブラックホールの撮影成功にも大きく貢献する等の成果を挙げています。また、米国ハワイ州のマウナケア山頂では、大型光学赤外線望遠鏡「すばる」を用いて中性子星合体による重力波発生現象を追跡観測し、金、白金などの重元素合成となる現場を初観測するなど、宇宙の起源と歴史の全体像の解明等に資する成果を挙げているほか、日米等の5か国共同で30m光学赤外線望遠鏡(TMT:Thirty Meter Telescope)を建設し、地球型系外惑星の探査等による新たな宇宙像の開拓等を目標とする計画について、令和9年度の完成を目指し取り組んでいます。

4 宇宙国際協力の推進
我が国は、米国、欧州、カナダ、ロシアとともに国際宇宙ステーション(ISS)計画に参加しています。
令和元年9月、宇宙ステーション補給機「こうのとり」8号機を打ち上げ、宇宙飛行士の生活に必要不可欠な水・食料のほか、ISSの運用の根幹を支える、日本製リチウムイオン電池を使用したバッテリや、JAXAと民間企業が共同開発した光通信実験装置等を輸送しました。「こうのとり」の補給ミッションを通じて、日本の技術力は高く評価されています。
また、ISSへの輸送コストの大幅な削減や、月周回有人拠点「ゲートウェイ」への物資補給を含む様々なミッションへの応用も期待される新型宇宙ステーション補給機(HTV-X)について、令和3年の打上げを目指して開発を進めています。
宇宙探査の分野では、様々な国で月や火星の探査ミッションが計画されるなど、関心が高まってきています。米国は平成31年3月、2024年までに月の南極への有人着陸を行うと表明しました。国際協力で月周回有人拠点「ゲートウェイ」を建設するとともに、月面での持続的な活動に必要な技術を獲得し、それらを足掛かりに、2030年代の火星有人着陸を目指しています。この米国提案による、「ゲートウェイ」を含め、月での持続的な活動を通じて火星有人探査を目指す国際宇宙探査計画は、ギリシャ神話のアポローンの双子の女神の名前から「アルテミス計画」と名付けられました。我が国では、令和元年10月に宇宙開発戦略本部において米国提案による国際宇宙探査への日本の参画方針を決定し、我が国の強みを活かした分野で戦略的に参画できるよう参画機関間で調整を進めています。
また、令和3年度に打上げを予定している小型月着陸実証機「SLIM」が月面へのピンポイント着陸を目指すほか、JAXAとインド宇宙機関との間で共同月着陸探査ミッションの実現性について検討を進めています。さらに、火星衛星探査計画(MMX)も将来の有人火星探査の布石という位置づけで、国際宇宙探査計画の一角となりました。
アジア・太平洋地域においては、宇宙活動、利用に関する情報交換並びに多国間協力推進の場として、平成5年から毎年1回程度、同地域で最大規模の宇宙協力の枠組みであるアジア・太平洋地域宇宙機関会議(APRSAF)を主催しています。令和元年11月には、名古屋で第26回会合を開催し、31か国・地域、9国際機関、民間企業より約470人が参加しました。今会合では、「新たな宇宙時代を拓く多様な繋がりの発展」というテーマの下、意見交換や宇宙政策に焦点を当てたセッションを実施し、過去25年間のAPRSAFの活動を振り返るとともに、次の25年間を見据えて今後10年間取り組む目標「名古屋イニシアチブ」を掲げました。このほかにも、過去に実施された超小型衛星ミッションやキャパシティビルディングの成果等の的確な把握と、それを踏まえた支援策等による我が国の宇宙技術の海外展開を見据えた国際協力を推進しています。

5 航空科学技術に関する研究開発
令和元年10月に科学技術・学術審議会 研究計画・評価分科会 航空科学技術委員会において「航空科学技術分野に関する研究開発ビジョン」の中間取りまとめが行われました。
航空輸送に対する社会要求が高まる中で、あるべき未来社会像を見据えつつ、我が国の航空機産業を下支えするため、技術的優位性を考慮しながら、ハイリスクな先進的技術や短期間で成果の出にくい基盤技術の研究開発を戦略的に実施するとともに、企業単独では保有の難しい大型試験設備の整備等を進めることとしています。
これを踏まえ、燃費と環境負荷性能を大幅に改善するコアエンジン技術(燃焼器、タービン等)及び機体騒音を低減する技術、特殊気象(雪、雷等)に起因する航空事故を防止する技術のほか、超音速機技術や航空機電動化技術についても研究開発を行っています。また、令和元年9月に導入した技術実証用国産エンジン(F7エンジン)を用いて次世代航空機用エンジン技術の実証試験を進めます。
このように、文部科学省では航空機産業の発展のため、関係府省と一丸となって、航空科学技術の研究開発を進めていきます。

〈海洋・極域〉
四方を海に囲まれた我が国にとって、海洋科学技術は、産業競争力の強化や経済・社会課題への対応に加えて、我が国の存続基盤を確固たるものにする、国家戦略上重要な科学技術です。そのため、文部科学省では、海洋の調査研究を進め、地球環境問題、鉱物・生物等の海洋資源の確保や、防災・減災等に資する技術開発を推進し、我が国の経済社会の発展及び国民生活の安全・安心の確保に貢献することを目指しています。また、Society 5.0の実現や将来のイノベーションの創出に向けた、未来の新産業創造へ寄与する研究開発を推進しています。

1 極域及び海洋の総合的理解とガバナンスの強化
近年、北極域の海氷の減少、世界的な海水温の上昇や海洋酸性化の進行、プラスチックごみによる海洋の汚染等、海洋環境が急速に変化しています。自然起源と人為起源による海洋環境の変化を理解し、海洋や海洋資源の保全・持続可能な利用、地球環境変動の解明を実現するため、漂流フロート、係留ブイ、船舶による観測等により、貧酸素化、海洋酸性化などの海洋環境変化に係るデータを取得するとともに、国際連携によるグローバルな海洋観測網を通じて、諸外国のデータも含め活用することにより、海洋環境の観測を推進します。
南極地域観測に関しては、南極地域観測第Ⅸ期6か年計画に基づき、南極観測船「しらせ」による輸送支援の下、地球環境変動の解明に向け、地球の諸現象に関する多様な研究・観測を推進します。
地球温暖化の影響が最も顕著に出現している北極を巡る諸課題に対しては、我が国の強みである科学技術を活かして貢献するため、昨年度まで実施してきた北極域研究推進プロジェクト(ArCS:Arctic Challenge for Sustainability)の成果を生かし、国際共同研究を通じた科学的知見の更なる充実や社会実装等を図るため、北極域研究加速プロジェクト(ArCSⅡ)を令和2年度から、開始します。さらに、令和2年度は、北極域研究船の基本設計とともに、具体的な利活用方策や費用対効果の検討等を進めていく予定です。
また、アジアで初となる第3回北極科学大臣会合(ASM3)を、アイスランドと共催により東京で開催することを予定しています。引き続き、地球規模課題の解決に貢献するため、南極及び北極における研究観測を、世界各国と協働して着実に実施します。

2 海洋資源の開発・利用
四方を海に囲まれている我が国にとって、海洋状況把握(MDA)の基礎となる海洋情報の収集・取得に関する取組を強化することは重要です。そのため、大学等が有する高度な技術や知見を幅広く活用し、海洋生態系や海洋環境等の海洋情報をより効率的かつ高精度に把握する革新的な観測・計測技術の開発を推進します。
また、近年、気候変動や乱獲等による海洋生物資源の枯渇が懸念されるなど、我が国の海洋生物資源の確保に関する問題意識が高まっています。これら海洋生物資源の安定した供給を持続するため、海洋生物の生理機能を解明し革新的な生産につなげる研究開発や、海洋生物の正確な資源量予測を行うための生態系の総合的解明に向けた研究開発を実施しています。

3 海洋由来の自然災害への防災・減災
自然災害に対して強じんな社会の構築に向けて、海底広域研究船「かいめい」等を活用し、海底地殻変動を連続かつリアルタイムに観測するシステムを開発・整備するとともに、海底震源断層の広域かつ高精度な調査や、海底火山の観測・調査のための技術開発を実施します。また、調査・観測の結果を取り入れ、地殻変動・津波シミュレーションの高精度化に取り組みます。
さらに、東日本大震災の津波・地震により、多量のがれきの流出や藻場・干潟の喪失等が発生し、東北太平洋沿岸域の水産業は壊滅的な被害を受けました。被災地の水産業の復興のためには、長期にわたって変化する漁場・養殖場環境や海洋生態系の調査が課題となっています。このため、大学や研究機関等による復興支援のためのネットワークとして東北マリンサイエンス拠点を構築し、関係省庁や地元自治体、地元漁協等と連携しつつ、海洋生態系の調査研究を実施しています。

4 基盤的技術開発・基礎的研究の推進
我が国の経済・社会的な課題への対応や未来の産業創造に向け、海洋科学技術分野においても科学技術イノベーションの創出が強く求められており、産学官の英知を結集して戦略的に研究開発を実施し、得られた成果の社会還元をより一層推進することが必要とされています。このため、海洋に関する科学技術を支える基盤的技術などの開発・整備や、いまだ十分に解明されていない海洋の実態解明に向けた研究開発を推進しています。
また、我が国は、深海底の掘削により地球環境変動、地球内部構造、地殻内生命圏等を解明することを目的とした国際深海科学掘削計画(IODP)に参画しています。IODPは、日米欧主導の下で実施されている多国間国際協力プロジェクトであり、引き続き、計画を推進していきます。

〈原子力〉
東京電力福島第一原子力発電所(以下、「東電福島第一原発」という。)事故等を踏まえ、政府は、エネルギー基本計画(平成30年7月3日閣議決定)を策定しました。
これを踏まえ、文部科学省としては、原子力災害からの復興に関する廃炉や除染等に向けた研究開発(※詳細は「東日本大震災からの早期の復興再生」を参照)等について、責任を持って対応していきます。以下、具体的な取組を示します。

1 原子力の安全性の向上に向けた研究
試験研究炉等を活用し、軽水炉を含めた原子力施設の安全性向上に必要となる、シビアアクシデントへの進展防止・影響緩和に係る知見の取得や、安全評価手法の整備等を実施します。

2 原子力の基礎基盤研究とそれを支える人材育成
原子力特有の科学技術基盤を維持・強化するための基礎的データの取得や、バックエンドの負担軽減等につながる革新的な技術創出を目指した基礎基盤研究を実施するとともに、大学や産業界との連携を通じた次代の原子力を担う人材の育成を着実に実施します。また、多様な研究開発に活用されるJRR-3の運転再開に向けた取組や、発電だけでなく、水素製造など多様な熱の産業利用が見込まれ、固有の安全性を有する高温ガス炉についての研究開発等を推進します。

3 高速増殖炉サイクル技術
高速増殖原型炉もんじゅについては、平成28年12月に開催された原子力関係閣僚会議において、原子炉としての運転は再開せず、廃止措置に移行することとされました。現在、廃止措置計画(平成30年3月原子力規制委員会認可)に基づき、原子力機構において廃止措置に取り組んでいます。まずは、安全確保を最優先に令和4年末までに炉心から燃料池までの燃料体取り出し作業を終了することとしています。平成30年8月からは燃料体の炉外燃料貯蔵槽から燃料池への移送を開始し、令和元年9月からは燃料体の炉心から炉外燃料貯蔵槽への移送を開始しました。今後も「もんじゅ」の廃止措置については、立地地域の声に向き合いつつ、安全、着実かつ計画的に進めていきます。

4 国際的な核不拡散体制強化に向けた取組
我が国は、原子力平和利用のための世界で最も優れた経験や技術等を有しています。引き続き、その経験や技術を活かして国際原子力機関(IAEA)等と協力し、国際的な核不拡散・核セキュリティ体制の強化に積極的に貢献していきます。
具体的には、原子力機構核不拡散・核セキュリティ総合支援センター(ISCN)を通じ、引き続きアジア諸国等に対し核不拡散・核セキュリティ強化のための人材育成を行うとともに、核物質の高度な測定・検知及び核鑑識の技術開発を行います。

5 放射性廃棄物の処理・処分に関する取組
研究機関、大学、医療機関等から発生する放射性廃棄物の処理・処分に関する取組等を着実に行います。また、高速炉や加速器を用いた放射性廃棄物の減容化・有害度低減技術に関する研究開発を実施します。

6 地域との共生・国民の理解のための取組
立地地域をはじめとする国民の理解と共生のための取組を実施します。地域の持続的発展に向けた取組に対し支援するとともに、原子力研究開発施設に関する知識の普及を図る取組等を行います。

東日本大震災からの早期の復興再生
東電福島第一原発の安全かつ確実な廃止措置を実施するため、文部科学省では、平成26年6月に公表した「東京電力(株)福島第一原子力発電所の廃止措置等研究開発の加速プラン」に基づき、国内外の英知を結集し、基礎・基盤的な研究開発や人材育成の取組を推進しています。また、原子力災害からの復興を加速させるため、福島の環境回復に向けた取組を推進しています。
あわせて、被災者の迅速な救済に向けた原子力損害賠償の円滑化等に関する取組を実施していきます。

1 廃止措置に向けた研究開発及び人材育成
原子力機構廃炉環境国際共同研究センター(CLADS)において、福島県双葉郡富岡町に整備した「国際共同研究棟」を活用しつつ、燃料デブリの取扱いや放射性廃棄物の処理・処分、炉心内部における事故の経過の解明等の基礎・基盤的な研究を実施しています。さらに、「英知を結集した原子力科学技術・人材育成推進事業」により、CLADSを中核として原子力分野だけでなく様々な分野の優れた知見や経験を、大学や研究機関、企業等の組織の垣根を超えて緊密に融合・連携させることにより、中長期的な廃炉現場のニーズに対応する研究開発及び人材育成の取組を推進しています。

2 環境回復に関する研究開発
東電福島第一原発事故由来の放射性物質によって汚染された環境の回復に向けて、原子力機構が福島県や国立環境研究所とともに、精度の高い放射線測定に関する技術開発や、河川を含む環境中での放射性物質の動態に関する研究等を実施しています。

3 放射線安全研究の強化
福島の住民の方々が安全・安心に生活できるよう、国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構において、福島の被災地における安全な水利用・処理環境の構築に関して、集中型水処理システムの長期間フィールド試験等を実施しています。

4 原子力損害賠償の円滑化
東京電力福島原子力発電所事故により被害を受けた方々が一日でも早く安心で安全な生活を取り戻せるよう、迅速・公平・適正な救済が必要です。
文部科学省では、原子力損害賠償紛争審査会において、賠償すべき損害として一定の類型化が可能な損害項目やその範囲等を示した指針を策定するとともに、賠償状況のフォローアップを行っております。また、「原子力損害賠償紛争解決センター」において東京電力と被害者との和解の仲介を実施しています。
また、東京電力福島原子力発電所事故における対応のうち、一般的に実施することが妥当なもの等について所要の措置を講じる「原子力損害の賠償に関する法律の一部を改正する法律」(平成30年法律第90号)が成立しました。これにより、①原子力損害が発生した場合に、賠償の迅速かつ適切な実施を図るための方針(損害賠償実施方針)の作成・公表を原子力事業者に義務付ける制度、②原子力損害を受けた被害者に対して原子力事業者が仮払金の支払を行おうとする場合に、国が仮払金の支払のために必要な資金を貸し付ける制度、③原子力損害賠償紛争審査会が和解の仲介を打ち切った場合の時効の中断に関する特例等が創設され、令和2年1月1日に全面施行されました。

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