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高等教育の充実

文部科学省高等教育局

グローバル化や第4次産業革命、少子高齢化の進展等、社会が大きく変化しつつある中、高等教育は、幅広い教養と高い専門性を備えた人材の育成、各分野を牽引し世界で活躍できる人材の育成、新たな価値を生み出しイノベーション創出を担う人材の育成、様々な研究を通じた諸問題の解決など、国民生活や社会経済の発展に寄与することに加え、地域活性化の拠点としての役割も担っており、新たな知と価値を創造・発信し、能動的に社会をリードしていくことに多大な期待が寄せられています。
我が国の大学の量的規模を概観すると(図1参照)、大学進学者の多くを占める18歳人口は、平成4年度の205万人をピークに減少しており、国立社会保障・人口問題研究所の推計によれば、現在約117万人の18歳人口が、2030年には103万人、2040年には88万人に減少すると試算されています。
これまでは大学進学率の上昇により、少子化の中でも大学の学士課程への進学者は増加し続けており、令和元年度では、短期大学を含む大学進学率は58.1%となっており、専門学校等を含めた高等教育機関の進学率は82.8%となっています。しかしながら、今後は少子化の一層の進展により、今後、大学進学者数自体が減少していくものと考えられます。
ただし、人生100年時代を迎え、今後は多様な年齢層の学生の入学が求められていること、グローバル化の中で多様な国籍の教員や学生が求められていることなどを考えると、18歳で入学する日本人以外の学生が増加していくことも期待されています。
また、我が国の大学教育の質については、学生の授業以外の学修時間が非常に短いなど、教育の質を保証するための取組が不十分であるといった指摘がなされており、各大学においては自ら責任を持って教育の質を保証し、その成果を社会に対しても積極的に情報公開していくことが必要です。
こうした状況を踏まえ、平成29年3月に「我が国の高等教育に関する将来構想について」を文部科学大臣から中央教育審議会に諮問し、おおむね2040年頃の社会を見据えた、これからの時代の高等教育の将来構想について、総合的な検討を要請しました。本諮問を受け、中央教育審議会大学分科会将来構想部会を中心に審議が進められ、平成30年11月には、Society5.0の到来や18歳人口の減少等の社会の変化を踏まえ、①専門に関する知識のみではなく、文理横断型の教育への転換とともに、教育の質の保証を進め、「何を学び、身に付けることができたのか」という学修の成果の可視化の促進、②地域における質の高い高等教育機会の確保のための各大学間の「強み」を生かした連携・統合の在り方や、18歳人口の減少を踏まえた高等教育機関全体の規模などについて提言した「2040年に向けた高等教育のグランドデザイン(答申)」が取りまとめられました。
本答申を踏まえ、文部科学省においては、大学等における教育研究の質の向上や管理運営の改善等を図るため、「学校教育法等の一部を改正する法律」を令和元年度の通常国会に提出し、関係法律の改正を行ったほか、令和2年1月には、各大学の教育面での改善・改革に資する取組に関する留意点等をまとめた「教学マネジメント指針」(令和2年1月中央教育審議会大学分科会)(https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo0/toushin/1411360_00001.html)を策定しました。
引き続き、これからの時代に活躍できる人材を育成するため、更なる高等教育の充実を図っていきます。

教育費負担の軽減
1 高等教育の修学支援新制度
高等教育の負担軽減については、これまでも授業料等減免や奨学金制度の充実に取り組んできましたが、なお、低所得世帯の子供たちは全世帯平均に比べて高等教育機関への進学率が低い状況にあります。子供たちが、経済的事情により進学を断念することのないよう、進学の機会を確保することが重要です。
このため、真に支援が必要な低所得世帯の子供たちに対し、質の高い高等教育機関への修学に係る経済的負担を軽減し、我が国における急速な少子化の進展への対処に寄与するという目的のもと、「新しい経済政策パッケージ」(平成29年12月8日閣議決定)等を踏まえ、「大学等における修学の支援に関する法律」案を国会に提出し、同法案は令和元年5月10日に成立しました。これにより、令和2年4月より高等教育の修学支援新制度を実施することになりました。
具体的には授業料等減免制度の創設と給付型奨学金の支給の拡充を実施するものです。また、これらは、少子化に対処するための施策として、消費税率引上げによる財源を活用します。対象者は住民税非課税世帯とそれに準ずる世帯の学生等で、具体的な支援額等は次の図表のとおりです。
支援対象となる学生等については、高校在学時の成績だけで否定的な判断をせず、高校等が、レポートの提出や面談等により本人の学修意欲や進学目的等を確認します。他方、大学等への進学後は、学修状況について厳しい要件を課し、これに満たない場合には支援を打ち切ることとしています。
また、社会で自立し活躍できる、豊かな人間性を備えた創造的な人材を育成できる大学等を支援措置の対象とするため、大学等にも一定の要件を求めることとしています。大学等からの申請を受けて、国及び地方公共団体において審査を行い、令和元年9月に新制度の対象機関を公表しました。
〈参考〉高等教育の修学支援新制度の対象機関(確認大学等)
https://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/hutankeigen/1420041.htm

2 無利子奨学金事業
令和2年度予算においては、平成29年度に希望者全員に対する貸与を実現した無利子奨学金について、制度を確実に実施し、引き続き貸与基準を満たす希望者全員への貸与を行っていきます。また、平成29年度に導入した返還負担を大幅に軽減する所得連動返還型奨学金制度も着実に実施することとしています。

3 大学院学生の経済的支援の拡充
第5期科学技術基本計画において掲げられた「博士課程(後期)在籍者の2割程度が生活費相当額程度を受給できることを目指す」という目標の達成に向け、特別研究員事業(DC)や日本学生支援機構の奨学金事業における業績優秀者返還免除等に取り組むとともに、学費や経済的支援について大学が必要な情報を提供することの努力義務化を定める省令改正を行っています。また、「研究力強化・若手研究者支援総合パッケージ」を踏まえ、各大学における学内奨学金やRA制度の充実の促進、競争的研究費や共同研究費におけるリサーチアシスタント等の適切な給与水準の確保の推進に取り組んでまいります。

高大接続改革について
我が国は今、グローバル化の進展や技術革新、生産年齢人口の急減等、大きな社会変動の中にあり、この状況下で問題を発見し、答えを生み出し、新たな価値を創造する力が重要になっています。このため、文部科学省では、高等学校教育、大学教育、大学入学者選抜の三者の一体的な改革を通じて、①知識・技能、②思考力、判断力、表現力、③主体性を持って多様な人々と協働して学ぶ態度、これらの「学力の3要素」を確実に育成・評価するため、高大接続改革の取組を進めています。

1 高等学校教育改革
①平成30年に告示された高等学校の新しい学習指導要領では、「主体的・対話的で深い学び」の視点からの授業改善を通じて、三つの資質・能力(「知識及び技能」「思考力・判断力・表現力」「学びに向かう力、人間性」)を子供たちにバランスよく育成することとしており、令和4年度から年次進行で実施する予定です。
②学習・指導方法の改善、教員の指導力の向上については、生徒の資質・能力を育成する「主体的・対話的で深い学び」の実現に向けた授業改善を目指すとともに、教員の資質・能力向上については、独立行政法人教職員支援機構に設置された次世代教育推進センターにおいて、授業改善に資する情報提供を行うなど、学校現場に対する支援策を講じています。また、多忙な教職員に対する支援策として、オンラインによる「校内研修シリーズ」の発信など、研修機会の提供にも努めています。
③多面的評価の充実については、学校内外での学習活動全般を通して、生徒の資質・能力の多面的な評価を推進しています。具体的取組の一つとして、「高校生に求められる基礎学力の確実な習得」と「学習意欲の喚起」を図るため、文部科学省が一定の要件を示し、民間の試験等を認定する「高校生のための学びの基礎診断」制度を創設し、平成31年度から利活用を開始しています。(再掲)
学習評価については、高等学校の観点別学習状況の評価を更に充実し、その質を高める観点から国が示す参考様式において、観点別学習状況の評価の記載欄を新たに設けています。さらに、大学入試選抜について、指導要録をもとに作成される調査書についても、観点別学習状況の評価の活用も含めて、入学者選抜で必要となる情報を整理することとしています。

2 大学教育改革
①三つの方針に基づく大学教育の質的転換については、①卒業認定・学位授与、②教育課程の編成・実施、③入学者受入れの「三つの方針」の策定・公表を各大学に義務付け(平成29年4月施行。)、「三つの方針」の策定・運用に関して参考となるガイドラインを中央教育審議会が作成しました。さらに、「2040年に向けた高等教育のグランドデザイン(答申)」(平成30年1月中央教育審議会)を踏まえ、各大学における教学マネジメントの確立の支援を進めるため、「教学マネジメント指針」が取りまとめられました。
②認証評価については、「三つの方針」等を共通評価項目とすることや、内部質保証を重視するなど、平成30年度より新たな基準に基づく評価が行われています。

3 大学入学者選抜改革
大学入学者選抜の改革については、高校までに育成した「学力の3要素」を大学入学者選抜で多面的・総合的に評価し、大学教育において高校までに培った力を更に向上・発展させるためのものであり、これまでの大学入試センター試験に代わり、令和3年度大学入学者選抜から、高校までに育成した思考力・判断力・表現力等の評価をより重視した「大学入学共通テスト」を導入するとともに、各大学においても入学志願者の能力・意欲・適性等をより多面的・総合的に評価していくための入学者選抜が実施されることになります。
①大学入学者選抜における英語4技能評価について
高等学校学習指導要領において、英語の「読む」「聞く」「話す」「書く」の4技能の総合的な育成が求められていることを踏まえ、大学入学者選抜においても、高校段階までに育成した英語4技能を適切に評価するために、高校教育や大学入学者選抜で活用が進んでいる英語資格・検定試験の成績を大学入試センターで一元的に集約・管理し、大学へ成績提供する「大学入試英語成績提供システム」を令和2年度から導入することとしていました。
しかしながら、受験生が経済的な状況や居住している地域に関わらず、等しく安心して試験を受けられるようするためには更なる時間が必要だと判断し、令和元年11月1日、令和2年度からの導入延期を発表しました。
システム導入見送り後も、各大学の判断により、大学入学者選抜において英語資格・検定試験を活用することは可能であり、文部科学省では、各大学の令和3年度大学入学者選抜における英語資格・検定試験活用の有無、活用方法等を取りまとめ、受験生の利便性に資するよう、文部科学省のホームページで紹介しています。
(https://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/koudai/detail/1420229.htm)
②大学入学者選抜における記述式問題について
「大学入学共通テスト」においては、自らの力で考えをまとめたり、相手が理解できるよう根拠に基づいて論述したりする等の思考力・判断力・表現力を評価するため、国語、数学において記述式問題を導入することとしていました。
しかしながら、受験生の不安を払拭し、安心して受験できる体制を早急に整えることは困難であると判断し、令和元年12月17日、令和3年度「大学入学共通テスト」における導入を見送ることを発表しました。
それに伴い、令和2年1月29日、令和3年度「大学入学共通テスト」に関して、文部科学省においては出題教科・科目及び試験時間について、大学入試センターにおいては出題範囲や問題の作成方針について、必要となる見直しをそれぞれ決定し、公表しました。
③大学入試のあり方に関する検討会議について
文部科学省では、こうした経緯を踏まえ、英語4技能評価や記述式問題の出題を含めた今後の大学入学者選抜の在り方について検討するため、令和元年12月27日、文部科学大臣のもとに「大学入試のあり方に関する検討会議」を設置しました。
検討に当たっては、これまで指摘された課題や、「大学入試英語成績提供システム」の導入延期や記述式問題が見送りとなった経緯も検証し、それらを踏まえて議論が行われています。
文部科学省としては、高大接続改革そのものや、思考力・判断力・表現力や、英語によるコミュニケーション能力を育成・評価することの必要性は変わるものではないと考えています。検討会議においても、これらの重要性は踏まえた上で、入学者選抜と高校教育や大学教育との役割分担をどう考えるか、どこまでを入学者選抜で問うか、大学入学共通テストと各大学の個別の入学者選抜との役割分担をどのように考えるか等について、率直な議論を行い、令和2年末を目途に広く国民に受け入れられる提言をまとめていけるよう、検討を進めているところです。

大学院教育の充実
文部科学省は、高度な専門的知識と倫理観を基礎に自ら考え行動し、新たな知及びそれに基づく価値を創造し、グローバルに活躍し未来を牽引する「知のプロフェッショナル」を育成するための大学院教育改革を推進しています。令和元年度は、引き続き「第3次大学院教育振興施策要綱」(平成28年3月31日文部科学大臣決定)を踏まえた大学院教育の充実・強化を図るとともに、中央教育審議会大学分科会において「2040年を見据えた大学院教育の体質改善~社会や学修者の需要に応える大学院教育の実現~(審議まとめ)」(https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo4/houkoku/1412988.htm)を踏まえて、大学院における三つの方針(学位授与の方針、教育課程編成の方針、入学者受入れの方針)の策定及び公表の義務化や博士課程学生に対して教育能力を培う機会(プレFD)の実施又は情報提供の努力義務化を定める省令改正を行いました。
また、博士課程教育については、広く産学官にわたりグローバルに活躍するリーダーを養成するため、産・学・官の参画を得つつ、専門分野の枠を超えて博士課程前期・後期一貫した学位プログラムを構築・展開する大学院教育の抜本的改革を支援する「博士課程教育リーディングプログラム」(https://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/kaikaku/hakushikatei/1306945.htm)を平成23年度から令和元年度までの9年間実施し、計33大学62プログラムを支援しました。
さらに、卓越した博士人材を育成するとともに、人材育成・交流及び新たな共同研究が持続的に展開される卓越した拠点を形成するため、各大学が自身の強みを核に、これまでの大学院改革の成果をいかし国内外の大学・研究機関・民間企業等と組織的な連携を行いつつ世界最高水準の教育力・研究力を結集した5年一貫の博士課程教育プログラムを構築することを支援する「卓越大学院プログラム」(https://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/kaikaku/takuetudaigakuin/index.htm)を実施し、平成30年度に15プログラム、令和元年度に11プログラムを採択しました。
このような取組を通じて大学院と大学院学生に対する社会の評価を高め、優れた人材を大学院に引き付け、博士号取得者が高度な知識と高い倫理観を備えたリーダー候補として各界各層で活躍する好循環の実現に向け、大学院教育の充実のための施策を推進しています。

国立大学改革
国立大学は、高度な学術研究の推進、計画的な人材育成、地域活性化への貢献や高等教育の機会均等の確保といった重要な役割を担っています。
平成16年の国立大学の法人化以降、国立大学においては、それぞれの強みや特色を生かした自主的・自律的な機能強化に向けた取組が進められてきました。昨今の急激な社会経済状況の変化の中で、国立大学に対しては、産業競争力強化・イノベーション創出の拠点としての役割や、地方創生の中核的拠点としての機能の発揮など、我が国の成長と発展への積極的な貢献をしてほしいという社会の大きな期待が寄せられています。
文部科学省では、平成27年6月に、第3期中期目標期間において、国立大学が期待される役割を果たし、その「知の創出機能」を最大化させていくための改革の方向性を取りまとめた「国立大学経営力戦略」を策定し、大学に対し、経営力と財務基盤の強化を通じた自己改革を促しています。
また、第3期中期目標期間における予算配分の仕組みとして、各大学の強み・特色を踏まえた機能強化の方向性に応じた「三つの重点支援の枠組み」により、評価に基づく重点支援を通じて各国立大学の機能強化を推進するとともに、令和元年度から「成果を中心とする実績状況に基づく配分」の仕組みを新たに導入し、評価のわかりやすさや透明性の向上、各大学の主体的な取組の推進、教育研究の安定性・継続性への配慮のもとで改革インセンティブの向上を図ることとしています。
令和2年度予算においては、国立大学法人運営費交付金は、対前年度▲164億円減の1兆807億円となっていますが、高等教育修学支援新制度の授業料等減免分として内閣府において別途264億円を計上しており、合わせて、対前年度100億円増の1兆1,070億円を計上しています。
今後の国立大学改革に向けては、第4期中期目標期間(令和4年度~)を見据え、国立大学の役割や改革の方向性等を取りまとめた「国立大学改革方針」を令和元年6月に策定し、本方針の下、各大学との徹底対話等を通じて、改革を推進していくこととしています。
また、人事給与マネジメント改革として、若手教員の活躍機会を創出し、教員の挑戦意欲を向上できるよう、年俸制の導入をはじめ、厳格な業績評価やクロスアポイントメント制度等、様々な取組を総合的に促進してまいります。
さらに、ガバナンス改革として、令和元年5月に一法人複数大学制や経営と教学の分離等の選択の可能化、学外理事の複数登用の義務化の措置を行う旨を内容とする国立大学法人法の一部改正を行ったところです。また、令和2年3月には、国立大学法人自身が自らの経営を律しつつ、国立大学の教育・研究・社会貢献機能を更に高めるため、「国立大学法人ガバナンス・コード」を策定しました。
文部科学省としては、国立大学が我が国の人材育成・学術研究の中核として、継続的・安定的に教育研究活動を実施できるよう運営費交付金等の確保に取り組むとともに、各大学の自主的な発想に基づく改革を、より一層支援してまいります。

大学の国際化と学生の双方向交流
社会の多様な場面でグローバル化が加速する中、国際的に活躍できる人材の育成の重要性が増しています。そうした高度人材の育成を担う中核として、我が国の大学には、教育・研究環境の国際化や学生の双方向交流の拡大など、国際化の推進が強く求められています。
文部科学省は、我が国の高等教育の国際通用性と国際競争力の向上を目的に、海外の卓越した大学との連携や大学改革により徹底した国際化を進める大学を支援する「スーパーグローバル大学創成支援事業」を平成26年度から開始し、37大学を採択・支援しています。また、本事業における優れた取組を広く発信する基幹サイト(https://tgu.mext.go.jp)を立ち上げるなどして、採択校のみならず、日本全国の大学へ、本事業の実施で得た成果の共有を図っています。
次に、留学を通じた国際交流は、優れた国際感覚を有する人材の育成に資するだけでなく、我が国の教育・研究の国際化と活性化を促し、国際理解の推進や知的国際貢献、経済発展をもたらすなど、重要な意義があります。海外の大学などに在籍する日本人は、OECD等の統計によれば平成16年以降減少が続いており、平成28年は約5万6000人でした。一方、我が国の高等教育機関又は日本語教育機関に在籍している外国人留学生は約29万9000人(平成30年5月1日現在)となっています。
この留学生交流について、平成25年6月に閣議決定した「日本再興戦略JAPAN is BACK」等では、2020年までに日本人の海外留学を12万人へ、外国人留学生の受入れを30万人に倍増することが掲げられています。日本人学生の海外留学促進のための施策としては、意欲と能力のある若者全員に留学機会を付与し、グローバルに活躍できる人材を育成するため、国費により海外留学を支援する奨学金により留学経費の負担軽減を図るとともに、民間企業等の協力を得た官民協働海外留学支援制度「トビタテ!留学JAPAN日本代表プログラム」を推進しています。これまでに約8000人の学生・生徒を採用し、順次海外留学を開始しています。一方、外国人留学生の受入れのための支援策としては、グローバル社会で活躍できる人材育成の促進や我が国の高等教育機関の国際競争力強化、「留学生30万人計画」の実現を図るため、海外での日本留学の魅力発信を強化するための日本留学サポート体制の構築、国費外国人留学生制度等の経済的支援の充実、留学生の日本国内での就職促進等を行っています。これらの施策により、優秀な外国人留学生の戦略的な受入れを推進し、グローバルに活躍する人材の育成に必要な環境の整備・充実を図ることとしています。
国外にも目を向けると、世界的に学生の流動性が高まり人材の獲得競争が激しさを増す中、質の保証に関する国際的な高等教育の連携枠組みの形成が活発化しています。我が国がより多くの優秀な学生を確保するためには、このような取組において主導的な役割を発揮していくことが重要です。
平成23年度に開始した「大学の世界展開力強化事業」においては、我が国にとって戦略的に重要な国・地域を対象とし、単位の相互認定等、質保証を伴う国際教育連携の取組を支援しています。
令和元年度には、EUと共同で公募・審査を実施し、日本の大学とEUの大学で共同修士課程プログラムを構築・実施する3件の取組を新たに採択しました。
また、今後のアジアにおける高等教育圏の形成を見据え、日中韓三国間で質の高い大学間交流を行う「キャンパス・アジア」等を推進しています。さらに、令和2年度はアフリカ諸国との新たな交流や、更なる交流の推進等を行う取組に対して新たに支援を行う予定です。
ASEAN+3の政府間の枠組みでも、質保証を伴う学生交流の促進に取り組んでいます。第1回ASEAN+3教育大臣会合(平成24年7月、インドネシア)にて、我が国は「ASEAN+3 高等教育の流動性・質保証に関するワーキング・グループ」を設置することを提案、以降毎年、各国政府の高等教育行政官によるワーキング・グループ会合を開催してきました。その成果として、平成28年5月には「学生交流と流動性に関するガイドライン」が、平成30年11月には、「留学生の学修履歴のための成績証明書及び補足資料に関するガイドライン」がASEAN+3教育大臣会合で承認されており、現在は、高等教育の流動性向上のための各大学による情報発信について、成果文書の策定を視野に議論を行っているところです。

また、「高等教育の資格の承認に関するアジア太平洋地域規約」(通称:東京規約)に基づく、我が国公式の国内情報センター(National Information Center;NIC)として、令和元年9月、独立行政法人大学改革支援・学位授与機構(NIAD-QE)が機構内に「高等教育資格承認情報センター」を設置しました。本センターは、我が国の高等教育資格の国際通用性の確保と、諸外国との円滑な資格の承認に資することを目的としており、我が国を含む東京規約締約国を主とした各国の教育制度等に関する情報提供、海外のNIC等との連携、各種調査研究が行われております。本センターの情報発信により、アジア太平洋地域における高等教育の質の更なる向上が期待されます。さらに、令和元年11月には、グローバル化の更なる進展等を受け、地域規約と協調して相乗効果を発する目的で、第40回ユネスコ総会にて「高等教育の資格の承認に関する世界規約」が採択されています。

専門人材育成
1 専門職大学院における高度専門人材養成について
専門職大学院は、科学技術の進展や社会経済の多様化とグローバル化等を受け、社会的・国際的に通用する人材養成を行うため、高度専門職業人養成に特化した課程としての役割を担っています。
特徴としては、「理論と実務の架橋」を図ることにより、産業界・実業界等で求められる高度専門職(プロフェッショナル)を養成するものです。
現在、法曹養成(法科大学院)、教員養成(教職大学院)、MBA、MOT(技術経営)、会計、公共政策、公衆衛生、臨床心理等の分野で、118大学・167専攻が開設されており、関係業界等との連携による教育プログラム開発や分野ごとの評価制度等を通じて、質の高い高度専門職業人養成が行われており、今後も専門職大学院制度の充実と質の向上に向けた検討や施策が期待されています。
近年では、中央教育審議会大学分科会大学院部会専門職大学院ワーキンググループにおいて審議し、平成28年8月に「専門職大学院を中核とした高度専門職業人養成機能の充実・強化方策について」を取りまとめました。本報告書を踏まえ、社会(「出口」)との連携を強化する観点から、産業界等の意見を教育課程等に反映する教育課程連携協議会の設置に関する制度改正や、専門職大学院と学部等との連携の強化等を推進するために、専門職学位課程の専任教員の一定数が学部の専任教員を兼ねることができる等の制度改正を行いました。
また、経営系専門職大学院を始めとする経営系大学院と産業界等の相互の協力を促進し、我が国の経営系大学院の高度専門職業人養成の機能強化の在り方を議論するため、「経営系大学院機能強化検討協力者会議」を設置し、検討結果を令和元年7月に「我が国の経済社会を牽引する高度経営人材養成の在り方について(報告)」として取りまとめました。
法曹養成に特化した専門職大学院である法科大学院については、令和元年6月に「法科大学院の教育と司法試験等との連携等に関する法律」等の改正を行い、①法科大学院教育の充実、②「3+2」(図参照)の制度化と法科大学院在学中の司法試験受験資格導入による法曹志望者の時間的・経済的負担の軽減、③定員管理による予測可能性の高い法曹養成制度の実現等を図ることとしました。この制度改正により、令和2年度から、法学部等において、早期卒業を前提として法科大学院教育と一貫した教育を行う「法曹コース」が開設される予定です。
なお、文部科学省ホームページにおいて特設サイト(https://www.mext.go.jp/3plus2/)を開設し、新制度の紹介や先輩法曹等のインタビュー動画を公開しています。

2 第四次産業革命がもたらす技術革新に対応する人材育成について
イノベーションが急速に進展し、科学技術が目まぐるしく進化する中、Society 5.0の実現に向け、AIなどの技術革新を社会実装につなげ、我が国の産業のさらなる発展に資する理工系人材の育成は不可欠です。そのため、高等教育段階における理工系分野の教育については、深い専門的知識と俯瞰的視野を持ち、科学技術の新たな発展に資する人材を育成する必要があります。
そこで、大学において、こうした産業社会のニーズを的確に受け止めた教育を進められるように、制度改正を行いました。具体的には、大学の組織編成等を規定する大学(院)設置基準について、工学系の学部において学科ごとの縦割り構造を抜本的に見直した柔軟な教育体制の編成が可能となる改正(平成30年)、学部の枠を越え、社会のニーズを踏まえた機動的で柔軟な教育プログラムの編成が可能となる改正(令和元年)を行ってきました。
また、サイバー空間とフィジカル空間が高度に融合するSociety 5.0においては、大量のデータを積極的に扱い、社会課題の解決に生かすことができる人材が不可欠で、そのための教育システムの構築が急がれます。文部科学省としては、平成28年度より、数理・データサイエンス・AI教育を推進するためのコンソーシアム(数理・データサイエンス教育強化拠点コンソーシアム)を構築し、この新たな教育分野のためのモデルカリキュラムの策定、教材開発等の取組を支援しています。
令和元年6月には、統合イノベーション戦略推進会議が「AI戦略2019」を決定しました。その中でも、数理・データサイエンス・AIについて、デジタル社会の基礎知識として、すべての学生がリテラシーを身につけること、それぞれの専門分野の特性を踏まえた応用力を身につけること、などが目標として掲げられています。まさに国をあげて、必要な取組を加速させていきます。

3 高等専門学校教育の充実
高等専門学校は、中学校卒業後の早い年齢から、5年一貫の専門的・実践的な技術者教育を特徴とする高等教育機関として、全国に57校が設置されています。産業界から高い評価を受けており、就職率は毎年100パーセント近く、極めて高い水準を維持しています。
近年は、工業化による経済発展を進める国を中心に、高等専門学校教育における15歳という早期からの専門人材育成が高く評価されています。そのため、国立高等専門学校機構において、各国のニーズを踏まえた技術者教育の充実に向けて、教育カリキュラムの開発や教員研修などの支援を進めています。

4 専門職大学等における専門職業人の養成
専門職大学、専門職短期大学及び専門職学科は、産業構造の急速な転換等を踏まえ、これからの社会で求められる実践的かつ創造的な専門職業人材を育成する新しいタイプの大学です。平成31年4月に創設され、令和2年度には、専門職大学9校、専門職短期大学2校が設置されています。
専門職大学等では、特定の職業のプロフェッショナルになるために必要な知識・理論と実践的なスキルの両方を身に付ける教育課程を設けることとしています。また、産業界、地域社会と大学が連携して教育課程の編成を行います。これらの特色により、質の高い職業教育を行う大学として、成長分野において活躍する人材や地域産業の担い手となる人材の養成に取り組んでいきます。また、社会人が学びやすい仕組みを設けることにより、社会人の学び直し(リカレント教育)ニーズへの取組の推進も目指していきます。
文部科学省では、専門職大学等の制度及び特色について御紹介するため、ポスターやパンフレットの他、スマートフォン向けウェブサイト及びYouTube動画(文部科学省/mextchannelに掲載)を設けていますので、御活用ください。
〈参考〉スマートフォン向けウェブサイト(専門職大学・専門職短期大学)
https://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/senmon/index.htm

医療系人材の養成
今後ますます進行する高齢化に伴う医療ニーズ等の変化に対応するため、医師や歯科医師、薬剤師、看護師をはじめとする質の高い医療系人材の養成や、臨床研究によって医薬品や医療機器等の開発を進め、我が国の経済成長を牽引できる人材の養成が求められています。
例えば医師や歯科医師の養成については、医学生・歯学生が卒業時までに身に付けておくべき必須の実践的診療能力を学修目標として提示した「モデル・コア・カリキュラム」を策定しており、各大学においてモデル・コア・カリキュラムを踏まえた特色ある教育が実施されています。また、看護師の養成についても、大学の学士課程における看護学教育の水準の維持向上に資するため、平成29年10月に、モデル・コア・カリキュラムを策定し、平成31年度から、各大学においてこれを参考とした教育が開始されています。
さらに、一部の地域における深刻な医師不足を踏まえ、地域医療の現場で活躍する医師を養成するため、医学部定員の臨時増員を行っています。令和2年度の医学部入学定員は、将来、地域医療に従事することを条件とする都道府県の修学資金の貸与枠と連動した「地域枠」の新規増員を含め、計9330人となっています。
また、質の高い医療系人材の養成のためには、卒前・卒後を通じた医療系人材の教育の場であるとともに、臨床研究による医薬品や医療機器等の開発の場であり、各地域の中核的な医療機関という重要な役割を果たす大学附属病院の機能を強化することも重要です。急速な医療ニーズの変化に対応できる次世代の医療系人材の確保に向けて、大学、大学院及び大学附属病院における優れた取組の支援を行っています。

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