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国際協力・交流の推進

文部科学省大臣官房国際課・国際統括官付

はじめに
グローバル化が加速する中、今後も諸外国との協力や交流を強化していくことが重要です。
様々な国際イベントの機会を通じて積極的に日本の立場を発信し、また国際的なコンセンサス形成に貢献することは、日本の国際社会における地位向上に不可欠です。さらに、令和2年度より順次実施される新学習指導要領では、「持続可能な社会の創り手」の育成というESDの考えが盛り込まれました。Society 5.0時代に国際的に活躍しうる人材の育成のため、関係機関とも協力し諸政策を進めます。
本章では、文部科学省が実施する国際協力・交流に関する取組を紹介します。

持続可能な開発目標(SDGs)の実現に向けた取組の推進
平成27年に国連サミットで採択された「持続可能な開発目標(SDGs)」の実現に向け、諸外国政府や国際連合教育科学文化機関(ユネスコ)等の国際機関と連携し様々な取組を実施しています。
特に、持続可能な開発のための教育(ESD:Education for Sustainable Development)は、「現代社会における地球規模の課題を自らに関わる問題として主体的にとらえ、その解決に向けて自分で考え、行動を起こす力を身に付けるとともに、新たな価値観や行動等の変容をもたらすための教育」と定義されており、持続可能な社会の創り手の育成を通じて、SDGsの実現に大きく貢献するものです。我が国における学校教育の分野では、令和2年度から順次実施される小学校、中学校、及び高等学校の新学習指導要領においてこれからの学校に求められることとして、前文及び総則に「持続可能な社会の創り手」の育成が掲げられています。さらに、令和元年12月に改定されたSDGs実施指針においても、SDGsの実現に向けた次世代、教育機関、研究機関の役割がより明確にされるとともに、東京オリンピック・パラリンピック競技大会の機会の活用やSDGsと文化・芸術との連携等が掲げられています。

外国人材の受入れ・共生の推進
近年、日本語指導が必要な児童生徒や国内の日本語学習者が大幅に増加していること、新たな在留資格「特定技能」が創設されたこと等を背景として、政府は平成30年12月以来、「外国人材の受入れ・共生のための総合的対応策」を策定・更新し、日本人と外国人の共生社会の実現に向けて必要な取組を推進しています。文部科学省としても、浮島前文部科学副大臣を座長として「外国人の受入れ・共生のための教育推進検討チーム」を設置し、令和元年6月に、今後重点的に進めるアクションを取りまとめました。
まず、「生活者としての外国人」に対する日本語教育の充実のため、地域における日本語教育環境を強化するための総合的な体制整備やICT教材の対応言語の拡大等を行います。
また、外国人児童生徒の就学機会を適切に確保するため、「外国人の子供の就学状況調査」の結果に基づく就学状況把握・就学促進の好事例の普及、日本語指導等きめ細かな指導を行う自治体の支援を行います。
さらに、留学生の就職支援の強化及び、留学生の在籍管理が不適正な大学等に対する在留資格審査の厳格化等を行います。
以上三つの取組を柱に、外国人材の受入れ・共生のための環境整備を、引き続き強力に推進してまいります。

国際教育協力の推進
1 日本型教育の海外展開
戦後の復興から経済成長を遂げ、大震災などの困難も乗り越え、成熟した先進国の地位を維持している日本を支える人づくり、日本の教育に対し、新興国をはじめ諸外国からの関心が高まっています。知・徳・体のバランスのとれた力を育むことを目指す初等中等教育や、実験実習を中心とした5年一貫の実践的な技術者教育を行う高等専門学校制度など、我が国の教育制度を取り入れたいとのニーズが各国から寄せられています。
こうした状況を踏まえ、文部科学省は、日本型教育の海外展開に関し、外務省や経済産業省、国際協力機構(JICA)、日本貿易振興機構(JETRO)、民間教育産業等と協力する場(プラットフォーム)の構築や企業や大学等が行う海外展開事業を支援する「日本型教育の海外展開 官民協働プラットフォーム」事業(EDU-Portニッポン)を平成28年度から実施しています。
令和元年度には、中南米とベトナムを対象に地域別分科会を実施し、地域別のニーズの明確化、機関・企業間の連携の機会の提供等を行いました。また、幼児教育や教師教育等の特定のトピックに関するセミナーを実施し、海外展開をしている事業者やJICA、文部科学省による事例紹介等を行いました。さらに、アラブ首長国連邦で開催された教育見本市「GESSドバイ」に文部科学省ブースを出展し、日本型教育のPRを行いました。
本事業を通じて官民が連携して諸外国との教育協力の案件形成を行い、海外展開モデルケースの形成や、国内の教育環境・基盤の整備、諸外国との教育に係る人材交流の強化をすることで、日本型教育の海外展開と我が国の教育の国際化の推進を目指します。

2 高等教育分野における国際教育協力
実験・研究を重視した少人数制を取る日本式工学教育は、開発途上国で高く評価されており、文部科学省は、JICAが日本の大学等の協力を得て実施する開発途上国における高等教育機関の機能強化に関する様々な事業に協力してきました。
平成22年2月には、「エジプト日本科学技術大学」(E-JUST)が開学、平成23年9月には「マレーシア日本国際工科院」(MJIIT)が開校、平成28年9月にはベトナムに「日越大学」が開学しました。日本の協力を得て自国に大学を設置したいとの要望は様々な国から寄せられており、今後もトルコ等での大学設立構想に協力していきます。
さらに、ASEAN地域の大学と日本の大学のネットワークを強化する「ASEAN工学系高等教育ネットワーク」(AUN/SEED-Net)にも日本の多くの大学が参画しています。

3 初等中等教育分野における国際教育協力
教員の国際協力への参加促進のため、平成13年度にJICA海外協力隊「現職教員特別参加制度」が創設されました。
本制度では、対象教員が現職の身分を保持したまま活動に参加でき、学年暦に合わせた派遣期間の設定、一次選考(技術選考)の免除など教員の参加を促す様々な措置を講じています。その結果、これまでの18年間で1400名を超える教員が開発途上国に派遣されています。
教育委員会や学校においても、本制度の趣旨と成果を理解の上、国際的な視点や経験を持った人材の育成に、本制度を積極的に御活用ください。

4 新時代の教育のための国際協働
平成28年のG7教育大臣会合の成果文書「倉敷宣言」において、教育に関する理念・課題の共有や国際協働の重要性が確認されたことを踏まえ、平成29年度から「Society 5.0時代の教育のための国際協働プログラム」(教員交流)を実施しています。令和2年度は、「Society 5.0時代に向けた教育」と「インクルーシブ(包括的)で公平な教育」をテーマに事業を実施します。本事業を通じて各国の豊かな経験を相互に学び合い、教育分野における諸外国との関係強化を図るとともに、様々な教育課題に関する教育実践の改善に取り組んでいます。

国際機関を通じた協力
文部科学省では、ユネスコ(国際連合教育科学文化機関)をはじめとして、OECD(経済協力開発機構)やAPEC(アジア・太平洋経済協力)、国連大学といった国際機関と協力し、様々な取組を行っています。

1 ユネスコ
ユネスコは、教育・科学・文化等の分野における国際的な取組を通じて、世界の平和に貢献することを目的とする国連の専門機関です。SDGsの17の目標のうち、教育・科学技術・文化等に関する計九つの目標において重要な役割を果たすことを表明し、主に教育に関する国際的議論を主導します。令和元年11月にフランス・パリで開催された第40回ユネスコ総会には、上野文部科学副大臣が日本政府首席代表として出席して一般政策演説を行い、我が国としてユネスコの各種事業に引き続き積極的に貢献する旨を表明しました。
我が国においては、日本ユネスコ国内委員会を通じ、教育、科学、文化等の分野の関係者と連携しながら、ESDやユネスコエコパーク、ユネスコ世界ジオパークをはじめとした科学事業などを推進しています。グローバル化や技術革新が急速に進展する国際社会においてSDGsの実現に向けた取組が進む中、我が国がユネスコ活動において積極的な役割を果たしていくことが求められていることを踏まえ、令和元年10月に日本ユネスコ国内委員会の発意により、9年ぶりの建議として「ユネスコ活動の活性化について(建議)」が取りまとめられ、文部科学大臣及び外務大臣に対し提出されました。
(1)持続可能な開発のための教育の概要
前述したように、ESDは持続可能な社会の創り手の育成を通じて、SDGsの実現に大きく貢献するものであり、新学習指導要領にも「持続可能な社会の創り手」の育成が掲げられています。また、ESDは教育に関するゴール(SDG4)の中で、持続可能な開発を促進するために必要な知識及び技能の習得に寄与するものとして記載されており、すべてのSDGsの実現への鍵であることが、令和元年12月の国連決議でも確認されています。
(2)ESD推進のための具体的な取組
文部科学省では、ユネスコスクール(ユネスコ憲章に示されたユネスコの理念を実現するため、ユネスコが認定する平和や国際的な連携を実践する学校)をESDの推進拠点と位置付け、国内外の学校間交流、カリキュラムなど好事例の共有、教師の知見の向上等を通じて、ESDの普及・深化に取り組んでいます。令和元年11月には第11回ユネスコスクール全国大会(ESD研究大会)を開催し、全国から約800名の教育関係者が一堂に会しました。このほか、ESD推進に向けたユース世代による活動の促進にも取り組んでいます。
令和元年度からは、「SDGsの担い手育成(ESD)推進事業」を実施し、国内の教育現場におけるSDGsの実現の担い手を育むためのカリキュラム開発、教員の能力向上、評価手法の開発等に取り組む大学、教育委員会、及びNGO等を支援しています。また、環境省と文部科学省の協力により、持続可能な地域づくりと人づくりの官民協働プラットフォームである「ESD推進ネットワーク」を形成し、その拠点として全国の「ESD活動支援センター」及び「地域ESD拠点」が多様な活動を展開しています。
ユネスコを通じた世界的なESDの推進の取組として、優れたESDの取組を世界に広めるために、日本政府の財政支援により創設された「ユネスコ/日本ESD賞」については、2019年には新たに3団体が受賞しました。また、令和元年の国連ハイレベルウィークの際には、日本政府とユネスコの共催により「持続可能な開発のための教育(ESD):気候変動アクションに向けた学び」と題したサイドイベントが開催され、日本人生徒・学生2名を含む5名のパネリストが、気候変動という課題のために教育ができることについて議論を行いました。
(3)ESDの今後の展望
「ESDに関するグローバル・アクション・プログラム(GAP)」の後継枠組みとして、令和12年までのESDの新たな国際的な実施枠組みである「持続可能な開発のための教育:SDGs達成に向けて(ESD for 2030)」が令和元年11月の第40回ユネスコ総会及び同年12月の第74回国連総会で採択され、令和2年より開始しました。この新たな実施枠組みでは、ESDは全てのSDGsの実現に貢献し、持続可能な社会の構築に資すると捉え、ESDを更に推進していく方針となっています。
(4)ユネスコの科学事業を通じたSDGs実現への貢献
ユネスコ科学事業においても、SDGsへの貢献は共通の重要課題となっています。
まず、ユネスコの科学分野の登録認定事業として、ユネスコエコパーク及びユネスコ世界ジオパークがあります。ユネスコエコパークとは、自然と人間社会の共生に重点を置き、生態系の保全と持続可能な利活用の調和を目的とした事業であり、我が国では10か所登録されています。また、ユネスコ世界ジオパークは、国際的な地質学的重要性を有する地層、岩石、地形、火山、断層等の地質遺産を保護し、科学・教育・地域振興等に活用することにより、自然と人間との共生及び持続可能な開発を実現することを目的とした事業で、我が国では9か所認定されています。両事業は、人々の生活と自然の調和を通じた、地域レベルでのSDGs達成を体現する取組としても注目されています。
これらの事業のほか、ユネスコの国際科学協力事業である海洋科学及び水科学の分野においても、SDGsの目標として設定されており、その推進は非常に重要なものとなっています。文部科学省では、専門家の派遣や信託基金の拠出等を通じて、政府間海洋学委員会、政府間水文学計画等の取組を支援しています。

2 OECD
OECDでは、PISA(生徒の学習到達度調査)、PIAAC(国際成人力調査)、TALIS(国際教員指導環境調査)等の各種国際比較分析及び調査・研究などの教育事業が行われており、我が国も事業に参加・協力しています。平成30年度には、PISA2018及びTALIS2018の調査が実施され、令和元年度にはその結果が公表されました。
現在、OECDでは、2030年の時代に必要となるキー・コンピテンシー(主要な資質・能力)を策定し新たな教育モデルの開発を目指す「Education2030」事業を推進しており、文部科学省では、本事業の運営主体であるインフォーマル・ワーキング・グループ(IWG)への出席や共同研究等を通じて積極的に参画しています。令和元年5月には同事業の成果として、児童生徒が自分たちの未来をつくり上げていくために必要なプロセスやコンピテンシーとして「OECDラーニング・コンパス(学びの羅針盤)2030」が公表されました。
また、文部科学省では、国内の教育関係者と他のOECD加盟国の行政官・教育専門家・学校関係者等との意見交換の場を設けることにより、教育分野における国際協力を推進し、我が国及び諸外国における教育改革や教育政策立案に資することを目的としたセミナーをOECDと共催で開催しています。令和元年度は、G20サミットに際した教育関連イベントとして「21世紀の教育政策~Society 5.0時代における人材育成~」をOECD等と共催し、その第一部で、「Education for Innovation」をテーマにOECDによる基調講演、高校の生徒や卒業生、教員による事例発表、教育関係者等による対談を行いました。

3 APEC
APECへの参加・協力を通じた、教育及び科学分野での交流を行っています。その一環としてタイとの共同事業としてデジタル社会における算数・数学教育のカリキュラムに関する研究を行い、APEC域内への普及を図っています。
また、平成28年の第6回APEC教育大臣会合では「APEC教育戦略」が採択され、その翌年の平成29年に「APEC教育戦略行動計画」が策定されたところであることを受け、平成30年から本行動計画の進捗状況報告書が作成されました。

4 国連大学
国連大学は、我が国に本部を置く唯一の国連機関であり、文部科学省は、国連大学本部施設の提供を行っています。国内には本部とともに、「サステイナビリティ高等研究所」が設置されています。国連大学では、持続可能な開発目標(SDGs)をはじめ国連における重要課題の解決に向けて、研究活動を行うほか、大学院プログラムを開設し国内外から学生を受け入れています。国連大学大学院プログラムが授与する学位は、我が国国内法上も学位として認定されています。また、令和2年度からは、国内大学がSDGsを推進するため、国連大学がハブとなり、SDGsの理解促進及び戦略策定に関して連携・対話するフォーラムを構築する「SDGs推進大学フォーラム(仮称)」事業を実施予定です。文部科学省は、毎年事業費を拠出し、これらの活動に支援・協力を行っています。

国際バカロレアの普及・拡大
国際バカロレア(IB)は、課題論文、批判的思考の探究等の特色的なカリキュラム、双方向・協働型授業により、グローバル化に対応した素養・能力を育成する教育プログラムです。我が国における国際バカロレア認定校等は、令和元年11月現在で150校となっています。
文部科学省は、平成30年度に「文部科学省IB教育推進コンソーシアム」を設立し、国際バカロレアに関する情報プラットフォームの構築やシンポジウムの開催、国内の関係者を糾合した協議会の開催、国内大学入試における国際バカロレア資格及びスコアの活用促進などを行ってまいりました。令和2年度からは、国際バカロレアの導入を希望する学校・教育委員会等に向けたきめ細やかな支援を更に強化してまいります。

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