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特集
ラグビーワールドカップ2019日本大会について

スポーツ庁国際課

2019年9月20日から11月2日まで、ラグビーワールドカップ2019が日本で開催されました。
ラグビーワールドカップ2019日本大会の概要やスポーツ庁としてのラグビーワールドカップ成功へ向けた取組、国内外から多くの方が全国の各会場へ足を運んだことが開催都市へもたらした影響などについて紹介します。

ラグビーワールドカップ2019日本大会の開催について
ラグビーワールドカップについて
ラグビーワールドカップとは、4年に一度行われる15人制ラグビー世界王者決定戦です。世界中のラグビープレーヤーにとっては、選ばれた人間だけが出場できる憧れの舞台です。約7週間という長丁場で行われるラグビーワールドカップは、夏季オリンピック、FIFAワールドカップと並ぶ世界三大スポーツ大会の一つと言われています。
今回の日本大会は、アジアで初の開催であるとともに、ラグビー伝統国以外で初の開催となり、アジア圏を含む世界中から注目を集めました。

○開催期間
2019年9月20日(金)~11月2日(土)
○参加チーム
20チーム(5チーム×4プール)
・前回大会成績によって出場権を獲得したチーム:12チーム
・予選によって出場権を獲得したチーム:8チーム
○試合形式
48試合
・プール戦(プール内総当たり戦):40試合
・決勝トーナメント 準々決勝・準決勝・3位決定戦・決勝:8試合
○試合会場(開催都市)
・札幌ドーム(札幌市)
・釜石鵜住居復興スタジアム(岩手県・釜石市)
・熊谷ラグビー場(埼玉県・熊谷市)
・東京スタジアム(東京都)
・横浜国際総合競技場(神奈川県・横浜市)
・小笠山総合運動公園エコパスタジアム(静岡県)
・豊田スタジアム(愛知県・豊田市)
・東大阪市花園ラグビー場(大阪府・東大阪市)
・神戸市御崎公園球技場(神戸市)
・東平尾公園博多の森球技場(福岡県・福岡市)
・熊本県民総合運動公園陸上競技場(熊本県・熊本市)
・大分スポーツ公園総合競技場(大分県)
○日本代表の試合結果
・予選プールA
第1戦 ○日本 30−10 ●ロシア
(会場:東京スタジアム)
第2戦 ○日本 19−12 ●アイルランド
(会場:小笠山総合運動公園エコパスタジアム)
第3戦 ○日本 38−19 ●サモア
(会場:豊田スタジアム)
第4戦 ○日本 28−21 ●スコットランド
(会場:横浜国際総合競技場)
※予選プールA(4勝0敗)1位通過
・決勝トーナメント
準々決勝 ●日本3−26 ○南アフリカ
(会場:東京スタジアム)
※準々決勝敗退(ベスト8)

大会成功へ向けた取組
スポーツ庁として、関係府省庁と協力し、ラグビーワールドカップの成功に向けて様々な支援を行いました。
例えば、会場設備の整備や大会運営等に係る財政支援・措置、関係法令の整備、普及啓発等、多角的に支援を行い、公益財団法人ラグビーワールドカップ2019組織委員会(以下、RWC組織委員会)や開催都市と連携し、大会成功に向けて万全の準備を進めました。

会場設備の整備
大会で使用する各会場へ財政的支援を実施しました。横浜国際総合競技場に対し、決勝会場として求められる仕様に整備(改修)するため、平成28年度2次補正予算として20億円の支援を行いました。また、スポーツ庁の所管法人である独立行政法人日本スポーツ振興センターのスポーツ振興くじ(toto)により、岩手県釜石市、埼玉県、静岡県、愛知県豊田市、大阪府東大阪市、熊本県、大分県にある7会場を整備するために計30億円の支援を行いました。

大会運営等に係る財政支援・措置
スポーツ庁や関係府省庁は大会運営等に対し、様々な財政支援、措置を行いました。
RWC組織委員会からラグビーワールドカップリミテッド(ラグビーワールドカップを運営管理する団体)に支払われる大会保証料について、法人税等の国内源泉所得の課税対象とならないよう所要の措置を講じることを要望し、現行制度の運用で対処することが認められました。
開催自治体又は公認キャンプ候補地自治体における地域交流等の取組に対しては、特別交付税を措置しました。また、開催自治体又は公認キャンプ候補地自治体が行う施設改修に対して地方債を措置しました(地域活性化事業債)。そのほか、ラグビーワールドカップ特別仕様ナンバープレートの交付や日本郵便株式会社による寄附金付記念切手等の発行、記念貨幣の発行、全都道府県及び全政令指定都市による大会協賛宝くじの販売、ラグビーワールドカップ2019関係府省庁連絡会議の開催等を行いました。

関係法令の整備
ドローンを用いたテロ事案等の各国での発生やその脅威の高まりを受け、大会関係施設等に対する危険の未然防止、大会の安全な実施に向け、平成31年ラグビーワールドカップ大会特別措置法を改正しました。

ラグビーワールドカップトロフィーツアー
ラグビーワールドカップ優勝チームに贈られるウェブ・エリス・カップが巡回するトロフィーツアーは、2017年11月のイングランドを皮切りに、約2年をかけて20の国と地域を巡回しました。今回、マレーシア、インド、ネパールやチリなど今までトロフィーが持ち込まれたことのない国と地域も訪れました。最後の訪問先は「日本」で、各開催都市での一般展示に加え、地元のラグビースクールや大学のラグビー合宿、田んぼラグビーなども訪れました。また、2018年7月に豪雨により洪水被害に遭った広島の小学校への訪問、2019年8月には大会アンバサダーや大学ラグビー選手とともに日本一高い富士山へ登頂したことも話題となりました。それらは、「インパクト・ビヨンド2019」(日本で開催される「ラグビーワールドカップ2019日本大会」を日本とアジアでラグビーを普及させる絶好の機会と捉え、この地域のラグビー競技普及戦略を図ることを目的としたプログラム)を支援していくことも目的の一つとしていました。
2019年8月7日、8日には、「こども霞が関見学デー」(文部科学省をはじめとした府省庁等が連携して、それぞれの業務説明や省内見学などを行うもの)のプログラムの一つとして、トロフィーが一般公開されました。公開初日には、記念式典が行われ、柴山文部科学大臣(当時)、鈴木スポーツ庁長官の他、室伏広治ラグビーワールドカップ2019ドリームサポーター、嶋津昭ラグビーワールドカップ2019組織委員会事務総長が出席し、訪れる子供たちを歓迎しました。

ラグビーワールドカップ普及啓発事業
ラグビーワールドカップ2019日本大会の開催によって、国内でもラグビーへの関心が高まっています。しかし、大会招致の段階では、世界的に見ると、日本でのラグビー認知度はまだ低い状況でした。スポーツ庁では、2014年からラグビーワールドカップのさらなる成功に向け、「2019年ラグビーワールドカップ普及啓発事業」として「放課後ラグビーによる競技者の拡大」「タグラグビーによる競技の普及」「ラグビーを通じた国際交流」の3本柱で普及・啓発活動を行ってきました。
○放課後ラグビープログラム
公益財団法人日本ラグビーフットボール協会への委託事業として、チーム活動を行わない平日のラグビー教室を実施しています。トップリーグのチーム、都道府県ラグビー協会、大学のラグビー部、NPO団体などが主体となり、各地の小学5・6年生~中学3年生を対象に、それぞれ10回程度のカリキュラムが行われています。現在、ラグビー部のある中学校の数は少なく、小学生まで地域のクラブで活動をしてきた子供たちが、中学生年代でもラグビーを続けられる環境を作ることにより、中学生年代の空洞化・他競技への流出を改善し、部活動ではない新しい学外クラブの創設を目指しています。
○タグラグビー
タックルの代わりとして腰につけた2本の「タグ」(ひも状のもの)を取ることで、激しい接触をなくしたラグビーとして、全国の小・中学生年代へラグビー競技の普及・拡大を後押しするために実施されています。小さな子供たちが大好きな鬼ごっこと深く関連するボールゲームという点で、小学生にとっても非常に取り組みやすく、「運動が苦手でも楽しめる」「安全」「豊富な運動量」「学年や性別を問わない」という特長があります。現在、体育の授業の取り入れやすさから、小・中学校学習指導要領へも記載がされています。
タグラグビーを通じて、試合終了後の〝ノーサイドの精神〟、友達と協力する大切さ、相手を思いやる気持ちといったラグビー独特の文化を学ぶことで、未来のラグビー選手となる小・中学生が増える可能性も秘めています。
○ラグビーを通じた国際交流プログラム事業
高校生年代においては、「ラグビーを通じた国際交流プログラム事業」を実施しています。これは、英語及びラグビー技術の向上を目的とした留学プログラムで、過去にラグビーワールドカップを開催したラグビー先進国との国際交流を行っています。
この事業は、2015年から毎年、日本の女子学生10名ほどがラグビー強豪国の一つであるニュージーランドを訪問し、ニュージーランド人家庭のホームステイ先に滞在し、文化・伝統に触れながら、国際感覚を身につけることを目的としています。
ニュージーランドには、街中の公園などいたるところにゴールポストが設置され、誰もが気軽にラグビーを体験できる環境に驚いたと参加者の帰国後のレポートで語られています。ニュージーランドで、トップレベルのコーチから指導を受け、英語力の研鑽に努めた経験は、ラグビーの普及及びラグビーの将来を次世代が真剣に考える機会として大いに期待されています。
※ラグビーワールドカップ普及啓発事業参考URL:https://www.rugby-japan.jp/RugbyFamilyGuide/monbu.html

Sport for Tomorrowの枠組みにおけるアジア圏へのラグビー普及の取組
スポーツ庁では、「Sport for Tomorrow」(2014年からオリンピック・パラリンピック競技大会が開催する2020年までの7年間で開発途上国をはじめとする100か国・1000万人以上を対象に、日本政府が推進するスポーツを通じた国際貢献事業)を通じて、アジア圏へのラグビー普及にも努めています。
2016年から、公益財団法人日本ラグビーフットボール協会に委託し、アジア各国へラグビーの指導者の派遣や講演会等を実施しています。
2018年12月には、大会開催都市である大分県及び公認チームキャンプ地である別府市と連携して、ラオスでラグビーをツールに共生社会の実現を促進する取組を実施しました。タグラグビーに関する講習会及びワークショップを開催し、実際に障害を持つ子供や大人を含めてタグラグビーを実施したことで、障害の有無に関わらず互いを尊重し合うことへの啓発を行いました。その結果、日本が有する特別支援教育コンテンツとタグラグビーのノウハウの学びを通じて、特別支援教育が初期段階であるラオスに対して新しいアイディアを提供することができました。
2019年7月には、日本からインドへラグビー元日本代表選手やウィルチェアーラグビー指導者、スポーツとジェンダーの専門家を派遣し、普及活動を行いました。その一環として、全国大会に出場するチームの監督やコーチ、選手を対象としたラグビークリニックや競技用車いすを使ったウィルチェアーラグビー講習会、女性アスリートの環境改善や参画支援のためのジェンダーセミナーを実施しました。その結果、ラグビー特有の文化であるノーサイドやOne for all, All for oneの精神も共有され、ラグビーの価値や楽しさを伝えることができました。

大会が開催都市へもたらす影響
大会の開催によって試合会場やファンゾーン、各国代表の公認チームキャンプ地には、多くの外国人が訪れ、試合だけではなく、様々な文化交流を楽しむ姿が見られました。このように、スポーツを起点として広がる地域活性化の姿は、来年行われる2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会にも大きな影響を与えることになることが見込まれます。

ラグビーワールドカップを目的とした訪日
RWC組織委員会は、「ラグビーワールドカップ2019大会前経済効果分析レポート」で、大会を目的にする訪日外国人客は最大40万人、訪日外国人の旅費・宿泊費などによる経済効果は1,057億円になるという見込みを発表しました。また、試合と試合の間隔が長いことによって他の国際競技大会より大会期間が長く設定されているラグビーワールドカップでは、来日している外国人ファンが各国代表チームとともに全国を移動し、観光やレジャーなど長期間の日本滞在を楽しむ傾向があります。試合中継画面からも試合会場で応援している外国人たちの姿が数多く見られ、また、試合開催都市やキャンプ地では、各国代表チームと地元住民との間で数多くの交流が行われました。

国内外のファンが交流する公式ファンゾーン
試合後にお互いの健闘を称え合うラグビーのように、人と人との交流においても互いを知り、認め合うことが大切です。今回のラグビーワールドカップでは、日本代表チームの試合だけではなく、他国の代表チーム同士の試合にも注目が集まるなど、国や地域、チームを超えた交流が各地で行われました。そのような交流の拠点の一つが公式ファンゾーンです。
ファンゾーンとは、試合のライブ中継を大型ビジョンにより観戦できるスペースで、試合開催12都市の会場付近に18か所が開設されました。各地のファンゾーンでは、地域の特色を生かした演出やイベントが行われ、国内外から訪れるファン同士の交流が行われました。試合当日の朝からファンゾーンで楽しむ人や、会場付近で日本文化を体験する人の姿も見られ、海外からのファンにとって日本の文化を理解する貴重な場所になりました。
鈴木スポーツ庁長官は、試合会場やファンゾーンに対し、「試合会場は統一してRWC組織委員会が運営、公式ファンゾーンは開催自治体が運営していることで、この役割分担が、上手くいっている要因だろう。」と語っています。

キャンプ地における各国代表チームの選手と地元住民との国際交流
試合開催地だけではなく、試合が行われないキャンプ地でも、他国の代表選手と誘致した地元住民との交流が盛んに行われました。
大分県別府市とニュージーランド ロトアル市では、30年ほど前から姉妹都市として交流が行われています。今回のニュージーランド代表チーム「オールブラックス」との地域交流イベントには、3000人もの県民が集結しました。オールブラックスの選手が手ほどきするラグビークリニックでは、地元の少年少女たちが選手たちと一緒にプレーし、貴重な経験となりました。交流イベントの最後には、会場に集まった全員でニュージーランド国歌を斉唱し、テレビや新聞でも話題となりました。

地域に根差した交流
若い世代にもラグビーワールドカップを機に競技の魅力と参加する各国代表チームの文化を知ってもらおうという動きが各地でありました。
例えば、福岡県内の中学校では、生徒がラグビー競技の歴史や精神、観戦予定の対戦国などについて調べ学習として情報収集し、発表会を行いました。東大阪市では、スポーツ庁の委託事業として、サモア・トンガ・フィジーの3か国の中学生を日本へ招待し、その中学生が市内の中学校を訪問してラグビー交流を行いました。また、初めて鉄道に乗ったりし、日本の文化を体験しました。その際の交流会では、鈴木スポーツ庁長官が自身のソウル五輪の金メダルを生徒たちに披露し、夢の実現に向けてエールを送りました。
試合会場の中には、2011年東日本大震災で被災した釜石、2016年熊本地震で被災した熊本と、被災から復興を遂げようとしている都市も含まれていました。地元の方々による御理解と力添えで試合当日を迎えることができ、復興の姿を世界に示すことができました。
釜石では、ワールドカップ期間中の10月13日、台風19号の影響でカナダ対ナミビアの試合が中止となりました。市内では川が氾濫して道路や住宅が冠水被害に見舞われました。そのような釜石の状況を見かねたカナダ代表の選手たちが土砂を取り除くなどのボランティア活動を行い、ナミビア代表の選手たちも滞在先の岩手県宮古市で台風被災者を元気づけたいと自らファン交流会を開催しました。両チームには、多くの賛辞が贈られ、このようなスポーツの垣根を越えた交流が各地で見られました。

おわりに
ラグビーワールドカップ2019日本大会は、日本代表が史上初めて決勝トーナメントに進出しました。その初戦である準々決勝で南アフリカ代表に敗れてしまいましたが、南アフリカ代表が続く準決勝、決勝と勝ち上がり、その結果、12年ぶりに優勝し、幕を閉じました。
大会期間中には、台風19号の影響で残念ながら3試合が中止となりましたが、RWC組織委員会や開催都市の努力により大きな問題はなく、成功裏に大会が終了しました。このことに対し、RWC組織委員会へ各方面から称賛の声が上がっています。ワールドラグビーのビル・ボーモント会長も、「台風ハギビスという非常に困難な災害に対する日本の対応は、このすばらしい国の人々の回復力と復興への決意の表れであると感じます。」と述べています。
観客の動員やチケットの販売も好調で、大会期間を通じての観客動員数は延べ170万4,443人、1試合平均観客数は3万7,877人(ともに中止となったプール戦3試合を除く)でした。チケットの販売数については、最終的に約185.3万枚を販売可能席とし、約184万枚(販売率は約99.3%:中止となった3試合を含む)でした。各開催都市が全国16か所に開設したファンゾーンについては、期間を通じて全会場とも多くの人が訪れ、大会期間中の全会場合計(速報値)で約113万7,000人の方が来場しました。
いよいよ来年には、2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会の開催が迫っております。今大会で得られた知見を運営面等に反映し、大会の成功につながるよう、文部科学省・スポーツ庁として最大限の協力を行っていきます。

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