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特集
平成31年度(令和元年度)全国学力・学習状況調査等の結果と活用について

文部科学省 総合教育政策局調査企画課学力調査室
国立教育政策研究所 教育課程研究センター
研究開発部学力調査課

平成31年4月18日(木)に実施した「平成31年度(令和元年度)全国学力・学習状況調査」の調査結果を、令和元年7月31日(水)に公表しました。
本特集では、調査の概要、結果の分析結果、結果の活用方法について紹介します。

平成31年4月18日(木)に実施した「平成31年度(令和元年度)全国学力・学習状況調査」の調査結果を、令和元年7月31日(水)に公表するとともに、各教育委員会、各学校に調査結果を提供しました。平成31年度(令和元年度)全国学力・学習状況調査の概要及び結果と分析・活用について説明します。
全国学力・学習状況調査は、平成19年度から始まり、今年度で12回目の実施となります。来年度から全面実施される新学習指導要領では、教科等の目標や内容について、生きて働く「知識及び技能」、未知の状況にも対応できる「思考力、判断力、表現力等」、学びを人生や社会に生かそうとする「学びに向かう力、人間性等」という三つの柱に基づいて再整理されており、これらの資質・能力の三つの柱は相互に関係し合いながら育成されるものという考え方に立っています。今年度の調査問題からは、こうした新学習指導要領の考え方への理解を促すため、従来の「主として『知識』に関する問題」と「主として『活用』に関する問題」を一体的に問うこととしました。これにより、常に活用できるようになっていることが望ましい知識・技能の習得と、知識・技能を実生活の様々な場面に活用する力の双方を連関させて一体的に育成することの重要性を示しています。
また、今年度より初めて中学校で英語調査を導入しました。社会のグローバル化が進展する中で、第2期教育振興基本計画(平成25年6月14日閣議決定)の提言の一環として提示された小・中・高等学校を通じた英語教育改革の流れの中で、悉皆で調査をする全国学力・学習状況調査において、3年に1度程度、中学校の英語調査を実施することとなりました。生徒の英語力に関する課題や地域による取組の差などを踏まえ、生徒の英語力を適切に把握し、その分析結果を活用して、教育委員会や学校における指導・評価の改善を促すとともに、生徒の英語力を着実に向上させるための教育施策や指導の在り方等を検証することが重要です。
第3期教育振興基本計画(平成30年6月15日閣議決定)においては、特に留意すべき視点の一つとして客観的な根拠を重視した教育政策の推進を位置付けており、教育政策の多様な成果を多角的に分析しつつ、実効性のあるPDCAサイクルを十分に機能させて教育政策を推進していくことを目指しています。児童生徒の学力・学習状況についても、多角的な分析を行い、国・地方公共団体・学校それぞれが、客観的な根拠を重視して政策や指導の改善・充実に取り組む必要があります。全国学力・学習状況調査の結果は、そういった多角的な分析を行う際に有意義なデータであり、各教育委員会や各学校においても、積極的に活用し、更なる指導の改善・充実に努めていただきたいと考えます。

1 平成31年度(令和元年度)全国学力・学習状況調査の概要
(1)調査の目的
全国学力・学習状況調査は、
○国としては、全国的な児童生徒の学力や学習状況を把握・分析して、教育施策の改善・充実に生かす
○教育委員会としては、自治体や学校の学力水準を検証し、教育委員会の施策の改善・充実に生かす
○学校としては、個々の児童生徒の学習状況を把握して指導に生かすとともに、学校全体としての指導方法の検証・改善につなげる
○以上のような取組を通じて、教育に関する継続的な検証改善サイクルを確立する
ことを目的として実施しています。
(2)調査対象
平成31年度(令和元年度)全国学力・学習状況調査は、国・公・私立学校の小学校・義務教育学校前期課程・特別支援学校小学部の第6学年、中学校・義務教育学校後期課程・中等教育学校前期課程・特別支援学校中学部の第3学年の児童生徒を調査対象に、悉皆調査方式で行いました。
(3)調査内容
調査内容は、教科に関する調査、児童生徒に対する学習習慣や生活習慣等に関する質問紙調査、学校に対する学習環境等に関する質問紙調査を行いました。
教科に関する調査は、国語、算数・数学、英語(中学校)について、出題範囲は調査する学年の前年度までに含まれる指導事項を原則とし、出題内容はそれぞれの学年・教科に関し、次のとおりとしています。
①身に付けておかなければ後の学年等の学習内容に影響を及ぼす内容や、実生活において不可欠であり常に活用できるようになっていることが望ましい知識・技能など
②知識・技能等を実生活の様々な場面に活用する力や、様々な課題解決のための構想を立て実践し評価・改善する力などに関わる内容
調査問題では、①と②を一体的に問うこととしており、英語においては、「聞くこと」「読むこと」「話すこと」「書くこと」に関する問題を出題しました。
質問紙調査は、児童生徒及び学校に対して実施しており、調査事項は、次のとおりです。
①児童生徒に対する調査
・学習意欲、学習方法、学習環境、生活の諸側面等に関する調査
②学校に対する調査
・指導方法に関する取組や人的・物的な教育条件の整備の状況等に関する調査
(4)調査対象及び集計対象児童生徒・学校数
平成31年4月18日(木)に調査を実施した学校数・児童生徒数は、次のとおりです。

なお、中学校の英語の調査結果としては、「聞くこと」「読むこと」「書くこと」調査の合計を集計しています。学校のパソコン端末等を利用して実施した「話すこと」調査は今回「参考値」として集計を行いました。

2 教科に関する調査の結果
(1)全体的な状況
教科に関する調査問題は、学習指導要領に基づき、児童生徒が十分に身に付け、活用できるようにしておくべきと考えられるものを、各領域等からバランスよく出題しました。その際、これまでの調査で見られた課題も踏まえて出題しています。これによって、改善状況を把握する狙いがあります。
今年度の調査における変更点としては、①新しい学習指導要領の考え方を踏まえた学習指導の改善に資するよう、従来のA・B問題といった出題区分を見直し、知識と活用を一体的に問う調査問題としたこと、②毎年実施している国語、算数・数学に加え、新たに中学校で英語の調査を実施したことです。英語については、「聞くこと」「読むこと」「話すこと」「書くこと」の4技能を調査しており、このうち「話すこと」調査は、各学校のパソコン端末を利用して実施しました。
調査結果の概要としては、国語、算数・数学において、複数の文章や資料等から必要な情報を整理して読み取ることや、事柄を数学的に解釈したり説明したりすることに課題が見られました。英語においては、話されたり書かれたりしている内容そのものを理解することはおおむねできていることが分かりました。しかし、その内容の要点を捉えたり、基本的な語や文法の知識を活用して文章を書いたりすること、「話すこと」に関しては、即興でやり取りをすることに課題が見られました。各問題についての詳細は報告書(後述)に記載しています。
(2)学習指導の改善・充実に向けた取組
調査問題は、各設問の正答率や解答の状況から課題等を把握し、学習指導の改善・充実を図ることができるように作成しています。また、児童生徒一人一人の具体的な解答状況を把握できるよう、設定する条件等に即して解答を分類、整理するものとして「解答類型」を設けています。「解答類型」を設けることにより、各設問の正答率だけでなく、一人一人の解答の状況から課題の有無を把握することができます。
各教育委員会や各学校においては、教科全体の平均正答率だけにとらわれることなく、各設問の正誤の状況、特に、個々の児童生徒がどのように間違えたのかという、各設問の解答状況に着目して、学習指導の改善・充実を図ることが重要です。
また、調査問題は、小学校は第5学年まで、中学校は第2学年までの内容を出題しています。調査結果から明らかになった課題については、調査の対象となった小学校第6学年や中学校第3学年のみならず、全校が一体となって、全ての学年の指導の改善・充実に生かしていくことが重要です。
さらに、小中学校の学校種や教科の枠を越えて課題が見られたものもあり、各教育委員会や各学校においては、課題やその対応等について共有しながら、学校種間や教科間の連携を図っていくことが期待されます。
国立教育政策研究所では、調査実施後、各教育委員会や各学校が速やかに児童生徒の学力や学習の状況、課題等を把握し、それらを踏まえた学習指導の改善・充実に取り組む際に役立てることができるよう、「解説資料」を作成しています。「解説資料」には、各設問の出題の趣旨、学習指導要領における領域・内容、解答類型等をまとめています。調査結果の返却を待たなくても、各教育委員会や各学校において、「解説資料」を基に、児童生徒に身に付けさせるべき力について情報を共有し、日頃の指導に生かしていただくことが可能です。また、自校採点により、自校の児童生徒の解答状況を可能な範囲で確認するということもできます。
「平成31年度全国学力・学習状況調査 解説資料」
http://www.nier.go.jp/19chousa/19chousa.htm

さらに、調査結果の公表の際に作成する「報告書」では、設問ごとに、正答率や解答類型ごとの反応率、分析結果と課題、学習指導の改善・充実を図る際のポイント等をまとめています。各教育委員会や各学校で、「報告書」を参考にしながらそれぞれの課題に応じた指導の改善・充実を図っていただくことを期待しています。
「平成31年度(令和元年度)全国学力・学習状況調査 報告書」
http://www.nier.go.jp/19chousakekkahoukoku/index.html

あわせて、授業の改善・充実を図る際の参考となるように、課題が見られた設問をいくつか取り上げて、具体的な授業のアイディアを例示した「授業アイディア例」を作成し、ホームページで公開しています。冊子体のものについては、10月中を目途に各教育委員会や各学校への配付を予定しています。調査の対象となっている学年だけでなく、学校全体、学校種を通じて、教材研究や研修会等の様々な場面で参考にしていただきたいです。
さらに、国立教育政策研究所では、教育委員会等の担当者等を対象とした説明会を開催したり、教育委員会が開催する研修会に学力調査官等を派遣したりするなど、指導・助言を行っています。各教育委員会や各学校においては、「報告書」や「授業アイディア例」とともに、こうした機会を活用していただき、各設問の正誤や平均正答率の高低だけでなく、教育施策や学校の学習指導における課題を把握・分析し、個々の児童生徒の実態に応じながら、施策や指導の改善・充実を継続的に図っていただくことを期待しています。

「平成31年度(令和元年度)全国学力・学習状況調査の結果を踏まえた授業アイディア例」
http://www.nier.go.jp/jugyourei/index.htm

3 質問紙調査の結果
質問紙調査は、児童生徒の学習意欲、学習方法等に関する「児童生徒質問紙調査」と学校における指導方法に関する取組、学習環境等に関する「学校質問紙調査」を実施しています。新規の調査項目として、来年度から全面実施される新学習指導要領に関連した調査項目や今年度初めて調査を行った中学校の英語に関する質問などがあります。
(1)国語、算数・数学について
国語、算数・数学における児童生徒の興味関心は経年変化を見ると増加傾向にあり、「国語の勉強/算数・数学の勉強が好き」だと回答した児童生徒の方が平均正答率が高い傾向が見られました。また、学校における指導状況について、国語と算数・数学のいずれの項目においても、最も肯定的な回答をした学校の割合が増加傾向にあります。
(2)中学校英語について
今年度初めて調査を実施した中学校英語についても、国語、算数・数学と同様に、興味関心や授業の理解度に関する質問に肯定的に回答した生徒の方が、英語の平均正答率が高い傾向が見られます。とりわけ、「英語の勉強は好きか」「英語の授業はよくわかるか」については、「生徒の学校外での日常的な英語の使用機会(地域の人や海外の人と話す、手紙やメールを書く、TVやHPを見る、英会話教室に通うなど)があるか」との質問よりも、平均正答率との関係が明瞭です。
英語の領域別の指導状況を見ると、「聞くこと」「読むこと」「書くこと」に関する言語活動について肯定的な回答をした学校の割合はいずれも9割近く、「話すこと(発表)」については肯定的な回答をした学校の割合が8割、即興で伝え合うなどの「話すこと(やり取り)」や技能統合的な活動については6割を超えます。すべての領域において、それぞれに関する言語活動を行っている学校の方が当該領域の平均正答率が高い傾向が見られ、学校における指導が影響していることがうかがえます。また、就学援助を受けている生徒の割合を考慮した三重クロス分析においても、就学援助を受けている生徒の割合が高い学校、低い学校どちらにおいても、聞いたり読んだりしたことについて、その内容を英語で書いたりする言語活動を行った学校の方が、英語の平均正答率が高い傾向が見られました。
(3)主体的・対話的で深い学びの視点からの授業改善に関する取組状況
主体的・対話的で深い学びの視点からの授業改善に関する取組状況について、児童生徒・学校ともに、肯定的な回答を選択した方が、教科の平均正答率が高い傾向が見られました。また、就学援助を受けている児童生徒の割合を考慮した三重クロス分析(学校質問紙)においても、同様の傾向が見られました。総合的な学習の時間や学級会等の特別活動に意欲的に取り組んでいる小中学校の方が、習得・活用及び探求の学習過程を見通した指導方法の改善や、学級全員で挑戦する課題を与えることにより取り組んでいる傾向が見られました。
(4)ICTを活用した学習状況
ICTを活用した学習状況について、「授業でもっとコンピュータなどのICTを活用したいと思うか」との質問に肯定的に回答した割合は、児童が8割を超え、生徒が8割程度であり、ICTを活用した授業に対する児童生徒の興味関心は高いといえます。また、児童生徒ともに、授業でのコンピュータなどのICTの使用頻度が高いほど、もっと活用したいという興味関心が高くなる傾向が見られました。
(5)児童生徒の自己肯定感、挑戦心、達成感等に関する状況
児童生徒の自己肯定感、挑戦心、達成感等に関する状況について、「先生は、授業やテストで間違えたところや、理解できなかったところについて、分かるまで教えてくれるか」との質問に肯定的に回答をした児童生徒の割合は増加しており、児童は9割、生徒は8割を超え、学習指導において、児童生徒は教師に対して一定の満足感を得ている傾向がうかがえます。
質問紙調査からは、児童生徒の学習意欲・学習環境・生活習慣等や学校の指導方法に関する取組、教育条件の整備の状況等の具体的な状況を把握・検証することが重要です。また、これらの状況と学力との関係について分析を行ったり、学力や学習状況等の調査結果を組み合わせて各教育委員会、各学校における全体的な特徴を把握・分析したりすることなどにより、教育や教育施策の成果、取り組むべき課題等を明らかにし、教育施策や学習指導の改善・充実を図ることが大切です。

4 文部科学省の主な取組
今年度の調査結果を踏まえて、文部科学省としては、来年度から全面実施される新学習指導要領の趣旨・内容の周知徹底、主体的・対話的で深い学びの視点からの授業改善やカリキュラム・マネジメントに関する効果的な実践事例の収集・情報提供にしっかりと取り組んでいきます。
特に、今回初めて実施した英語調査からは、「話すこと」や「書くこと」など発信力の強化が課題として明らかになるとともに、生徒の学習意欲や学校での指導が重要であることが分かりました。英語の新学習指導要領においては、小・中・高等学校を通じて「聞くこと」「読むこと」「話すこと」「書くこと」の各領域をバランスよく育成することを目標としており、コミュニケーションを図る資質・能力を育成する取組を着実に実施していきます。
また、質問紙調査からは、授業でのコンピュータなどのICTの使用頻度が高いほど、もっと活用したいという児童生徒の興味関心が高いことが分かりました。令和元年6月に公表された「新時代の学びを支える先端技術活用推進方策」を踏まえ、学校のICT環境整備の加速化に向けた取組やICTを活用した教育を推進していきます。

5 調査結果を踏まえた取組
各教育委員会、各学校においては、調査結果に基づき、教育施策や学校の学習指導における成果や課題等を具体的に把握・検証し、児童生徒の学力・学習状況について多面的な分析を行い、その結果を踏まえ、学習指導の改善・充実に取り組むことが重要です。
文部科学省・国立教育政策研究所では、調査結果を踏まえた学習指導の充実や学習状況の改善に向けた取組への支援として、①調査結果の分析を踏まえた課題の有無や指導のポイント等を示した「報告書」の作成・配付、②課題が見られる事項について、授業のアイディア例をまとめたパンフレット「授業アイディア例」の作成・配付、③調査結果を踏まえた学習指導の改善・充実に向けた説明会の開催、④都道府県教育委員会等の要請に応じて助言を行うための学力調査官等の派遣、⑤各教育委員会、各学校における調査結果を活用した優れた取組事例の収集・普及、⑥専門家等による追加的な分析・検証などを行っています。

6 令和2年度調査について
令和2年度調査は、令和2年4月16日(木)に小学校・義務教育学校前期課程・特別支援学校小学部の第6学年、中学校・義務教育学校後期課程・中等教育学校前期課程・特別支援学校中学部の第3学年の児童生徒を調査対象に、国語、算数・数学の調査を実施する予定です。

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