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特集2
ユネスコエコパーク(生物圏保存地域)
~自然と人の調和と共生~

文部科学省国際統括官付(日本ユネスコ国内委員会事務局)

◦ユネスコエコパークは、多様な生態系の保全と地域の自然資源の持続的な利活用を通して、自然と人間社会の共生を図るユネスコ事業です。
◦ユネスコエコパークは、生物多様性を保全し、自然に学ぶとともに、文化的にも経済・社会的にも持続可能な発展を目指す地域のモデルとして注目されています。
◦令和元年6月には、「甲武信」(こぶし)が国内10か所目のユネスコエコパークとして認定されました。

ユネスコエコパークとは
ユネスコエコパーク(生物圏保存地域)は、生物多様性の保全を目的に、ユネスコ人間と生物圏(MAB)計画(1971年に開始した、自然及び天然資源の持続可能な利用と保全に関する科学的研究を行う政府間共同事業)の一環として1976年に開始されました。
ユネスコエコパークは、豊かな生態系を有し、地域の自然資源を活用した持続可能な経済活動を進めるモデル地域であり、ユネスコエコパークの世界ネットワークの一員として更に取組を進めることが期待されています。現在、世界ネットワークには124か国701地域、国内では10地域が登録されています。
ユネスコエコパークとしての取組を進めることで、地域の自然の成り立ちや、そこに育まれた歴史文化に対する理解が深まるほか、地域づくりの担い手の育成にも繋がっています。

ユネスコエコパークの特徴
世界自然遺産が、顕著な普遍的価値を有する自然を厳格に保護することを主目的とするのに対し、ユネスコエコパークは自然保護と地域の人々の生活(人間の干渉を含む生態系の保全と経済社会活動)とが両立した持続的な発展を目指しています。
これを実現するため、次のような特徴的な仕組みを持っています。

(1)自然保護だけが目的ではない:経済・社会の発展を視野に入れた機能設定
ユネスコエコパークは、自然を保護・保全するだけでなく、フィールドワークなどの学術活動や、地域内での農林業、エコツーリズムなど自然資源を利活用した経済活動を通じて、自然と調和した人間社会の発展を目指しています。
ユネスコエコパークの機能として、①生物多様性の保全、②学術支援、③経済と社会の発展という三つが掲げられています。それぞれの機能は独立のものではなく、ユネスコエコパークを相互に強化する関係です。

(2)人々の居住域も含めて地域設定されている:循環型で持続可能な地域づくりを実践
ユネスコエコパークの持つ機能を果たすために、認定地域は、①核心地域、 ②緩衝地域、 ③移行地域という三つのゾーンから構成されています。
①核心地域:多様な生態系や自然景観を厳格に保護し長期的に保全する地域
②緩衝地域:核心地域に隣接する自然環境で、核心地域を保護するとともに、持続可能な発展のための環境教育やエコツーリズムなどに利用される地域
③移行地域:人々が居住し、地域の自然の恵みを生かした特色ある産業振興が展開される地域

(3)ユネスコエコパーク同士で学び合う:世界ネットワークへの加盟
認定された地域は、「ユネスコ生物圏保存地域世界ネットワーク(World Network of Biosphere Reserve:WNBR)」へ加盟します。また、東アジア、東南アジア、ヨーロッパといった地域ごとの国際ネットワークも設立されており、国際レベル、地域レベルのネットワークを通じた活動が展開されています。これらのネットワークを通じて、課題を共有し、グッドプラクティスを学び合うことで、各ユネスコエコパークの取組が更に推進されています。
また、ネットワーク内の活動にとどまらず、JICA研修など、海外からの研修受入れなど、国際的な交流が広がっています。
国内では、「日本ユネスコエコパークネットワーク(JBRN)」が2010年に設立され、各地域の取組を学び合う場となっています。

ユネスコエコパークの効果
SDGs(持続可能な開発目標)達成への貢献やESD(持続可能な開発のための教育)の推進
自然と人間の共生を目指すユネスコエコパークは、国連が掲げる持続可能な開発目標(SDGs)との関連が深く、特に、SDG15「陸の豊かさも守ろう」、SDG11「住み続けられるまちづくりを」、SDG12「つくる責任、つかう責任」といった目標の達成に貢献しています。地域の生態系の豊かさや、自然の上に成り立ってきた伝統文化・産業などを再認識することで、自然と調和した地域再生を促す契機となっています。
また、日本のユネスコエコパークの多くは、持続可能な社会を構築する担い手を育むための教育であるESD(Education for Sustainable Development)を実践する場として活用されています。児童生徒や大学生など幅広い年代が森林再生や過疎地域における持続可能な社会づくりといった地域の課題解決に取り組むなど、持続可能な社会づくりを実践的な体験活動を通して学ぶフィールドとなっています。

国内のユネスコエコパークでの機能別取組み例
国内には現在10地域がユネスコエコパークに認定されています。
これらの地域では、市町村を中心に学術関係者や市民グループなど様々な関係者の協力を得ながら、保全、学術研究、経済・社会の各機能に対応した取組を推進しています。

機能1 生物多様性の保全
住民参加による野生動物保護:ライチョウサポーターの認定(南アルプスユネスコエコパーク)
南アルプス地域に生息するライチョウは世界の最南限に生息する種であり、南アルプスユネスコエコパークのシンボルとなっています。しかし、近年その生息環境の変化から個体数が激減している状況にあり、現在、環境省のライチョウ保護増殖事業計画により、北岳において「域内飼育」による保護活動が続けられています。
南アルプス自然環境保全活用連携協議会では、地域住民一帯となった保護活動に取り組むため、高山帯に生息するライチョウの生態や現在の生息状況等を地域の方々に知っていただくとともに、訪問する登山者からのライチョウ目撃情報により、ライチョウの生態を継続的に調査できるよう「南アルプスライチョウサポーター制度」を開設しました。
このサポーター制度は、サポーター養成講座を受講した市民等が実際に南アルプスを登山した際、目撃したライチョウの発見情報を本協議会もしくは環境省のウェブサイト「いきものログ」に投稿する仕組みとなっています。
ライチョウサポーター養成講座は、平成28(2016)年より3か年計画で、山梨・長野・静岡の各県及び首都圏において実施されました。
養成講座では、ユネスコエコパークの理念や取組、南アルプスの自然環境、ライチョウの生態や分布についての講義があり、受講を終えると、認定証とガイドブック、バッジが交付され、ライチョウサポーターとして認定されます。
3年間を通して、登山者はもちろんのこと、家族や小学生など幅広い参加を得て、13会場で954名の方が認定されました。養成講座は毎回定員を超える参加者があり、ライチョウの保護に対する関心の高さがうかがえました。
認定されたサポーターには、情報提供メールの配信や、上野動物園において現在のライチョウ保護にかかる取組を視察するといったフォローアップ研修等も開催し、ライチョウ保護の普及啓発に継続して努めています。
これらの取組を通して南アルプスに生息するライチョウの生態や状況への理解が深まるとともに、地域全体でライチョウを見守る機運が高まりました。

機能2 学術支援機能
ESD・エコツーリズムを意識した環境教育プログラムの開発(志賀高原ユネスコエコパーク)
志賀高原ユネスコエコパークでは、観光協会(志賀高原ガイド組合)を通じて、一般・団体・学校など対象問わずエコツーリズムを推進しており、2013年からは特に学校(小・中・高)を対象とした「環境学習プログラム」を企画・実施しています。「事前講義」、「野外実習」、「レポート作成」という一連の流れを通じ、ユネスコエコパークをフィールド(題材)に「自然と人間社会の共生」について学ぶ内容となっており、このプログラム提供をきっかけに、新たに当地を訪問する都市部学校も増えてきており、誘客拡大の一助となっています。
自然環境を後世に残すための取組などを中心に当地における実例をパワーポイントでわかりやすく解説する「事前講義」、その学習を踏まえてユネスコエコパーク核心・緩衝地域を公認ガイドとともに解説付きでトレッキングする「野外実習」、この二つの実習を通して感じたことや今後どう自然を守りつなげていくかの考えをまとめる「レポート作成」という三つの一貫したカテゴリーを通じ、一つのプログラムとして開発されています。レポート作成前にグループ討議などを行う「ディスカッション」もオプションとして用意されています。
ESDを強く意識しながら人と自然が共生している志賀高原で、自然に触れる体験だけでなく、実例や体感を通じて自然環境の保全や持続可能な利活用について理解を深めていただくなど、子供たちの将来に向けた価値観、思考力、分析力を高めるための学習の場を提供できるよう研究を続けています。
なお、現在は核心・緩衝地域を中心に展開していることから、より効果的で分かりやすいプログラム構築を目指し、カリキュラムの充実や、人々の暮らしや産業の場である移行地域へのメニュー拡充などについて検討を進めています。

大学のフィールドワークの場としての活用(白山ユネスコエコパーク)
白山ユネスコエコパークでは、大学における研修や教育活動でのフィールドワークを進める交流拠点づくりを進めており、エリア内の地域資源を活用した各種プログラム開発への協力を強化しています。
2018年7月には、金沢大学を中心に実施した「ユーラシア地域をまたぐユネスコエコパーク大学教育プログラムの共同開発」において、ロシア、ベラルーシ及び日本国内のユネスコエコパーク関係者が相互交流するための国際シンポジウムが開催され、白山ユネスコエコパークにおける管理運営の実態が国際的に共有されるとともに、移行地域に位置する石川県白山市白峰地域での地元団体関係者が主体となった現地研修会が実施されました。白峰地域は、重要伝統的建造物群保存地区に指定され、豪雪地帯の特徴的な文化や生活様式が今でも色濃く残る地域であり、参加者は江戸時代末期に建造された家屋の見学などを通じて地域の歴史や自然環境と暮らしとのつながりを学ぶきっかけとなりました。さらに、国内外の各ユネスコエコパークにおける管理運営の違いなどについて活発な意見交換が図られました。
一方で、金沢大学では2015年から留学生を対象にした地域訪問型プログラムの構築が域学連携で進められています。例えば、2018年には一連の実績をふまえた文化交流プログラムを発展させ、ロシア人学生が白山ユネスコエコパーク内である富山県五箇山及び岐阜県白川村を訪問し、各々の文化や地域が抱える課題について学ぶ機会を提供しました。同時に、白峰地域で参加した祭りでは、地元住民と一体となったコミュニケーションが育まれました。白山ユネスコエコパークでの実地経験をもとに、参加学生からはSDGsの視点から地域の課題解決に向けた方策が提起されました。
こうした取組を受けて、2019年2月には、同大学が「金沢大学国際機構SDGsジオ・エコパーク研究センター」をNPO法人白山しらみね自然学校の活動拠点「与平」内に開設しました。加えて、同年3月には、東京大学が「東京大学地域未来社会連携研究機構北陸サテライト」を同地域に開設するなど、大学のフィールドワーク拠点形成に向けた動きが白山エリア内で相次いで見られています。
白山ユネスコエコパークでは、これらの拠点を基盤に、地元コミュニティと研究教育機関が連携して地域の課題解決に向けた活動を更に進め、今後とも各種情報発信を通じて、大学のフィールド拠点形成を推進し、将来的に、ユネスコエコパークの持続的な管理やSDGsの達成に結びつけることを目指しています。

機能3 経済と社会の発展
産学官連携による有機農業の再評価:ニホンミツバチと共に歩む新たな有機農業(綾ユネスコエコパーク)
綾ユネスコエコパークでは、宮崎大学と包括的連携協定を結び、綾町の生物多様性の保全と豊かな地域資源の有効活用を両立し、持続可能な地域づくりを可能とする研究に取り組んでもらい、その成果を地元のまちづくりに役立てることとしています。
特に力を入れているものに、綾町の農産物である日向夏に関して、周辺の森やニホンミツバチ(以下「ミツバチ」という。)など里山生態系からもたらされる生態系サービスを定量的に評価することを目的とした研究があります。
平成26年から、綾町の日向夏生産者の協力を得て、日向夏の花を訪れるミツバチの数を調査しています。現在、農家は受粉を手作業で行っている状況ですが、ミツバチによる受粉が多ければ、作業を効率化できる可能性があります。そこで、どんな農園にミツバチが多くやってくるかを、大学の研究室のチームで調べています。調査では、綾町の環境保全と自然生態系農業の取組が評価される結果が現れました。果樹園の周辺に天然林が多く、そして農地が多い場合にミツバチの訪花数が多いことが分かりました。既存の海外の研究事例では、農地には農薬が使われていることからミツバチの訪花数は農地面積とは負の相関関係でしたが、農薬の使用を制限する農業に長年取り組んでいる綾町では、農地がミツバチのえさ場になっていることが明らかになってきました。

里山生態林とのつながり
自然との共生の地域づくりを約半世紀かけて取り組んできた綾町では、ユネスコエコパーク認定を機に、里地里山地域を核とした里山生態林の新たな整備計画を進めています。その中心地となる綾町イオンの森は、教育、観光、各種資源利用等、生態系サービスの総合的利活用が可能な立地として期待されています。また、その周辺は日向夏果樹園に囲まれていることから、平成30年からミツバチの蜜源となる樹種を植樹するなど、日向夏生産とミツバチの暮らしに貢献する取組が始まりました。将来、綾町の日向夏とその果樹園で養蜂されるミツバチの蜂蜜が、綾ユネスコエコパークにおける自然の恵みを象徴する農産物=エコプロダクツとして、研究成果を裏付けにブランド化されることを目標にしています。

豪雪に育まれた自然と生活文化を守り、活かす(只見ユネスコエコパーク)
只見ユネスコエコパークは、豪雪地帯に位置する山間地域であり、豪雪による豊かな自然環境とそれを拠り所とした住民の伝統的な生活文化が残されています。一方、過疎高齢化が進む中で地域資源を持続可能な形で利活用してきた生活文化をいかに継承・発展させていくかが大きな課題です。こうした背景のもと、只見ユネスコエコパークでは、ユネスコMAB計画の理念・目的に則して、この地域の豊かな自然環境(ブナ林など)や生物多様性、天然資源を保護・保全しつつ、それらの持続可能な利活用を通じ、地域の伝統、文化、産業を継承・発展させ、地域の自立と活性化を図る中で、地域の社会経済的な発展を目指しています。

「自然首都・只見」伝承産品のブランド化
只見地域の「伝統的な資源利用の継承・発展」と「地場産業の育成」を目的とし、町内事業者や個人が町内の天然資源・農産物や伝統技術を使い生産した産品について、町が「自然首都・只見」伝承産品として認証し、ブランド化に取り組んでいます。
これまでにマタタビ、アケビなどの植物を使ったザル・カゴなどの伝統工芸、ワラビなどの乾燥山菜、トチノキやクリの蜂蜜、もち米と小麦の麦芽を使って作る伝統食のあめ(水あめ)等、現在29品が伝承産品に認証されています。これら産品は域内の施設で販売され、只見ユネスコエコパークの訪問者のお土産物として購入されています。伝承産品を通じて、只見地域の自然と調和した生活様式や資源利用の在り方について情報が発信されるとともに、生産者の収入の一部にもなっています。また、一部の産品は、途絶えてしまった伝統的な資源利用の方法を復活させることに繋がっています。そして、最も大事なことは、伝承産品それ自体の存在が、「持続可能な形で行われてきた伝統的な資源の利活用や技術の伝承が行われていることを示している」ということです。
只見ユネスコエコパーク活動支援補助金制度
平成30年度より、ユネスコエコパークを枠組みとした地域づくりを推進するため、只見ユネスコエコパーク推進に資する活動に取り組む只見町内の個人・団体等を対象に助成金制度を設けています。助成対象は、エコパークの三つの機能に関する事業に加えて、「自然首都・只見」伝承産品の開発に係る事業としており、初年度は伝承産品に係る事業や森林整備等での残材を利用した薪材生産事業等に助成しました。

過疎高齢化の進む山間地域でユネスコエコパークを実現する
これらの事業を実施することで、只見地域の自然環境と伝統的な生活文化に関心を持ち、地域の課題を理解し、地域社会の維持・発展へ共に取り組んでくれる人材の発掘に繋がることが期待されます。しかしながら、域内の人材が限られる中では、域外の方の支援・協力が不可欠です。域外の支援・協力を得ていくためには、ユネスコエコパーク自身の受入れ体制の強化も求められています。

甲武信(こぶし)ユネスコエコパークの認定
山梨県森林環境部みどり自然課
令和元年6月、国内10地域目となる甲武信ユネスコエコパーク(構成地域:山梨県、埼玉県、長野県、東京都)が誕生しました。

甲武信ユネスコエコパークの概要
甲武信ユネスコエコパークは、甲武信ケ岳、金峰山、雲取山等の日本百名山に挙げられる山々が連なる奥秩父主稜を中心に、荒川、多摩川、笛吹川(富士川)、千曲川(信濃川)といった四つの我が国有数の大河川の源流域及び周辺地域をエリアとしています。多様な植生を育み、チョウ類の希少種の宝庫ともなっている山々やその裾野の地域には豊かな自然が広がっており、核心地域・緩衝地域は秩父多摩甲斐国立公園となっています。移行地域となる周辺地域では、環境に優しい林業や果樹栽培、高原野菜の栽培などが行われています。

認定までの道のり
「甲武信」地域では従来、首都圏や周辺地域の水源域として、事業者や地域住民により森づくりや自然保護活動が進められていました。ユネスコエコパーク認定に向けた取組は、このような民間団体による推進運動をきっかけとして始まり、その後、専門家などで構成される検討委員会での協議や住民との意見交換会を経て、平成28年5月に現協議会の前身となる、「甲武信水の森ユネスコエコパーク登録推進協議会」を設立し、本格的に始動しました。
同年10月には、平成29年の推薦を目指して日本ユネスコ国内委員会人間と生物圏(MAB)計画分科会(以下「分科会」という。)に申請書を提出しましたが、時期尚早として、この年の「甲武信」のユネスコへの推薦は、見送られることとなりました。
その後、平成29年6月に開催した協議会において、再申請を目指すことを決定、関係自治体等と協議を重ね、関係自治体とのイコールパートナーシップ関係の構築や区域の見直しを図った上で、同年10月に再申請しました。その後、平成30年3月に開催された分科会において、「甲武信」がユネスコへ推薦する地域として選定され、同年9月にパリのユネスコ本部へ申請書が提出されました。
推薦決定後も、一層の体制強化を図るため、専門家による検討委員会を「甲武信ユネスコエコパーク推進協議会保全活用委員会」とした上で、委員を産業、教育等の専門家に拡充するとともに、ニホンジカの保護・管理に関するワーキンググループを設置し、自然資源の保全と利活用を推進する体制を整えました。このほか、甲武信ユネスコエコパークに関する講演会を開催するなど、認定に向けた気運の醸成を図りました。
このような取組を経て、令和元年5月、ユネスコ人間と生物圏(MAB)計画国際諮問委員会から「甲武信」のユネスコエコパークへの認定を承認する勧告がなされ、同年6月19日、第31回人間と生物圏(MAB)計画国際調整理事会において正式に決定されました。
登録決定の当日は、協議会委員である各市町村の首長等が山梨県庁に参集し、現地パリに派遣した職員から、テレビ電話を通じて、直接、審査結果の報告を受けました。登録決定が報告されると、会場全体に拍手の嵐が巻き起こり、これまでの苦労が報われた瞬間となりました。

「甲武信」における三つの機能への取組事例
ユネスコエコパークの三つの機能(保全機能、学術的研究支援及び経済と社会の発展)に即して、「甲武信」では次のような取組を行っています。
(1)保全機能
甲武信ユネスコエコパークの大部分は秩父多摩甲斐国立公園として自然公園法に基づき保全・活用されています。また、これらの地域では、NPOを中心に地方自治体と都市部の大学が協働して展開する「多摩川源流大学」、水源地の森を市民の寄付により買い取る「水のトラスト」等、数々の民間団体が地域住民の主導のもとに活動しています。これに加え、源流の地方自治体が協力して環境保全等に取り組む甲武信源流サミット、山梨県が実施するFSC森林管理認証に適合した森林の管理による公益的機能の維持、強化等の地方自治体の取組も加わり、源流域を保全していく活発な取組が数多く展開されています。
(2)学術的研究支援
山梨、埼玉及び長野の3県は、ニホンジカの個体数増加による森林生態系への影響等について把握するため、継続的にモニタリング調査を行っています。また、甲武信ユネスコエコパーク内に広大な秩父演習林を有する東京大学は、演習林の多様な植生を活かし、森林動態のモニタリングや動植物種のリストの作成、シカ食害地の植生復元、気象、水量・水質の観測、各種地図情報のGISデータ整備を行うとともに、小中学生等を対象とした啓発活動のフィールドとしても積極的に活用しています。
(3)経済と社会の発展
甲武信ユネスコエコパークでは、自治体や民間団体、企業、住民による経済や暮らしに根付いた資源利用がなされており、これらの活動が今後も継続されることにより持続可能な発展につながります。一例として、NPO法人森林セラピーソサエティが認定する森林セラピー基地と森林セラピーロードに、山梨市の三富川浦西沢渓谷と甲府市の武田の杜の2か所が認定されており、森林内の散策による森林浴を通した、環境負荷の少ない資源利用・レクレーション利用を推進しています。更に山梨市では、活動を発展させ、森林や温泉資源、果樹資源等を生かした「心身の健康」をテーマに宿泊施設と体験メニュー等と連携し、ウエルネス・ツーリズムの拠点づくりを推進しています。

甲武信ユネスコエコパークの今後の展開
国際諮問委員会の勧告では、水源地としてのエコシステムを保全し、林産物をはじめとする天然資源を継続的に活用しようと努力している点が評価されており、地元自治体と地元関係者の取組がユネスコエコパーク認定への大きな推進力になりました。
今回の認定を契機に、それぞれの地域において、教育や研修、エコツーリズムなどを通じた、保全活動の担い手の育成、自然と人間社会との共生に関する取組が一層活発になることを期待しています。
また、世界的な評価を受けたことで、農林産物等の販売の促進のほか、観光面においても、これまで以上に多くの観光客が訪れることを期待しています。
ユネスコエコパークへの認定はゴールではなく、スタートです。引き続き、地域住民、企業、教育機関、行政機関など関係者が一丸となって、ユネスコエコパークの理念である自然環境の保全と地域資源の持続可能な利活用に向けて、強力に活動を推進していきます。

ユネスコエコパークの情報はコチラからもどうぞ!
日本ユネスコ国内委員会
「生物圏保存地域」HP
http://www.mext.go.jp/unesco/005/1341691.htm
日本ユネスコエコパーク
ネットワーク(JBRN)HP
https://main-jbrn.ssl-lolipop.jp/

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