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スーパーコンピュータ ポスト「京」の名称が「富岳」に決定

文部科学省研究振興局参事官(情報担当)付 計算科学技術推進室

平成26年度よりスーパーコンピュータ「京」の後継機として開発を実施してきたポスト「京」の名称について、令和元年5月23日に理化学研究所よりスーパーコンピュータ「富岳」に決定したと発表されました。

スーパーコンピュータ等の情報基盤技術は、全ての人とモノがつながり、今までにない新たな価値を生み出す超スマート社会の実現を目指すSociety 5.0社会において、シミュレーションによる社会的課題の解決や人工知能開発や情報の流通・処理に関する技術開発を加速するために、必要不可欠な技術です。また、ビッグデータ解析やAIといった大規模データを用いた科学的手法(データ科学)は理論、実験・観測、シミュレーションに次ぐ「第4の科学」と呼ばれ、近年ではデータ科学と計算科学(シミュレーション)との融合・連携が注目されています。

「富岳」の由来
ポスト「京」の名称は
○世界トップレベルの研究拠点・スーパーコンピュータであることを知ってもらえること
○日本国内のみならず、世界中の方々にとって親しみやすい名称であること
を期待して、本年2月15日から4月8日まで理化学研究所において一般公募が実施され、5,181件の応募の中から決められました。
「富岳」は〝富士山〟の異名として、富士山の「高さ」が「性能の高さ」を表すとともに、富士山の「裾野の広がり」が「ユーザーの拡がり」を意味しています。また、富士山は海外の方々からの知名度も高いこと、世界のスーパーコンピュータの名称は、山にちなんだ名称の潮流があることなどを考慮して名づけられました。

「富岳」の開発について
「富岳」の開発は、我が国の科学技術の発展、産業競争力の強化に資するため、イノベーションの創出や国民の安全・安心の確保につながる最先端の研究基盤として、令和3年から4年の運用開始を目標に、平成26年度から開始されました。
「富岳」は最大で「京」の100倍のアプリケーション実効性能と消費電力30~40MWを目標に開発されています。また、システムとアプリケーションを協調的に開発(Co-design)することで、使用者にとって使い勝手の良い世界最高水準のスーパーコンピュータを目指しています。
さらにアプリケーション開発においては、国家的課題の解決を目指す社会的・科学的課題として、次の九つの重点課題を選定するとともに、「富岳」で新たに取り組むべきチャレンジングな課題として選定した四つの萌芽的課題と併せて推進しています。
(重点課題)
健康長寿社会の実現
・高速・高精度な創薬シミュレーションの実現による新薬開発加速化
・医療ビッグデータ解析と生体シミュレーションによる病気の早期発見と予防医療の支援実現
防災・環境問題
・気象ビッグデータ解析により、竜巻や豪雨を的確に予測
・地震の揺れ・津波の進入・市民の避難経路をメートル単位でシミュレーション
エネルギー問題
・太陽電池や燃料電池の低コスト・高性能化や人工光合成メタンハイドレートからメタン回収を実現
・電気自動車のモーターや発電機のための永久磁石を省レアメタル化で実現
産業競争力の強化
・次世代産業を支える新デバイスや材料の創成の加速化
・飛行機や自動車の実機試験を一部代替し、開発期間・コストを大幅に削減
基礎科学の発展
・宇宙でいつどのように物質が創られたのかなど、科学の根源的な問いへの挑戦
「富岳」は、平成30年11月に実施された総合科学技術・イノベーション会議での中間評価で、「ポスト「京」(当時)の製造・設置に向け遅延なく推進していくことが適当」とされたことを踏まえ、開発から製造段階へと移行しました。

「京」から「富岳」へ
「富岳」の製造・設置に伴い、平成24年の共用開始から約7年間稼働してきた「京」は、今年8月16日に計算資源の共用を終了し、9月から撤去を予定しています。
これまで「京」は単純な計算性能を評価するランキング「TOP500」では、平成23年6月と11月に世界1位を獲得し、実際のアプリケーションに使われる計算性能「HPCG」、「Graph500」のランキングでも、それぞれ3期連続、9期連続(通算10期)で世界1位を獲得しています。
加えて、世界で初めて、ナノレベルの高精度シミュレーションを実現し、これまでの限界を突破したデバイス設計に道筋を立てた研究や、ダークマターシミュレーションによる天体形成過程の研究で、シミュレーション分野で世界最高の賞であるゴードン・ベル賞を受賞しました。
また、気象衛星「ひまわり8号」のデータを「京」を使って解析し、今まで1時間ごとに更新されていた気象予測が10分ごとに更新できるようになり、将来の気象予測に革新をもたらすと期待されているほか、SPring-8、J-PARC、「京」を活用し高度なシミュレーション解析を実施することで、低燃費性能とグリップ性能を高次元で維持しながら耐摩耗性能を従来品から51%向上させた低燃費タイヤの開発・製品化に成功するなどの成果が生まれました。
「富岳」では「京」よりも大規模かつ高精度なシミュレーションにより、薬候補物質の生体内での反応をより詳細に解明することで、効果的・効率的な創薬の実現や、複数の地震を想定した災害予測、都市全体の複合災害の予測などによる、合理的な防災計画の立案への貢献などが期待されています。
文部科学省としては、「富岳」がSociety 5.0を支える重要な研究基盤であり、日本の高い技術力のシンボルとして、国内の大学や産業界などに広く利活用されるとともに、国際的にもその成果が発信されることを期待して、「富岳」の製造を着実に行うとともに、成果を早期に創出できるよう、取り組んでまいります。

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