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特集2
研究力向上改革2019

文部科学省研究振興局振興企画課

論文の質・量双方の観点での国際的な地位の低下、国際共著論文の伸び悩み等にみられるように、近年、我が国の研究力が諸外国と比べ相対的に低下していることが課題となっています。このような現状を一刻も早く打破するため、2019年4月23日、研究「人材」「資金」「環境」の改革を「大学改革」と一体的に展開する「研究力向上改革2019」を公表しましたので、その内容について紹介します。

研究力向上改革2019の全体像
背景
近年、我が国の研究力が諸外国と比べ相対的に低下していることが課題となっています。
例えば研究論文については、
・日本の論文数や注目度の高い論文数(被引用度Top 10%補正論文数)は伸び悩み、質・量双方の観点での国際順位が低下
・Top 10%補正論文における国際共著論文数が、英国、ドイツなど他国と比べて少ない。
・日本の研究者が参画する注目度の高い研究領域の数が他国と比べて少ない。
といった課題が指摘されています。
このような現状を一刻も早く打破するため、2月1日に文部科学省が公表した「高等教育・研究改革イニシアティブ―柴山イニシアティブ―」を踏まえ、省内に永岡副大臣を座長とする「研究力向上加速」タスクフォースを設置し、
①世界をリードする質の高い「研究人材」と流動性の確保
②研究者の継続的な挑戦を支援する「研究資金」の改革
③研究生産性を向上させる「研究環境」の実現
に向け、大学改革と一体的に、科学技術イノベーションシステムの改革を加速・深化するための具体的方策について取りまとめ、4月23日に柴山大臣から「研究力向上改革2019」として公表しました。
また、5月13日には、総理を議長とする総合科学技術・イノベーション会議(CSTI)において報告を行っています。

全体像
「研究力向上改革2019」では、研究力向上に資する基盤的な力の更なる強化に向けて、研究「人材」「資金」「環境」のそれぞれの観点から、論点と具体的方策を取りまとめています。(具体的内容は後述)
「研究人材」の改革では、若手研究者の「安定」と「自立」の確保、「多様なキャリアパス」による「流動性」「国際性」の促進などを通じ研究人材の好循環を実現し、研究者をより魅力ある職にすることを目指します。
「研究資金」の改革では、すそ野の広い富士山型の研究資金体制を構築し、「多様性」を確保しつつ、「挑戦的」かつ「卓越」した世界水準の研究を支援します。
「研究環境」の改革では、研究室単位を超えて研究環境の向上を図る「ラボ改革」を通じ研究効率を最大化し、より自由に研究に打ち込める環境の実現を目指します。
「研究力向上改革2019」では、これら研究「人材」「資金」「環境」改革を、研究力向上につながるガバナンスの強化・マネジメント改革の推進といった大学改革と一体的に実行していきます。
今後、統合イノベーション戦略等の政府全体の目標・取組とも連携しつつ、中長期的には、第6期科学技術基本計画等への反映・連携を目指します。
また、日本学術会議、経団連、国公私立大学の関係団体等の産学官を巻き込みながら、研究者目線での不断の見直しを行うことで進化し続けるプランとしていきます。
文部科学省としては、「研究力向上改革2019」を踏まえ、関係施策の制度改善や、必要に応じて来年度概算要求等に反映するなど早急に実行に移すことにより、我が国の研究力の国際的地位のV字回復を目指し、国際頭脳循環の中心となる世界トップレベルの研究力を実現し、絶えず新たなイノベーションを生み続ける社会を実現してまいります。

研究力向上改革2019の具体的方策
「研究力向上改革2019」では、研究「人材」「資金」「環境」の三つの観点から論点と具体的方策を取りまとめております。

研究人材改革
○論点
研究者のライフサイクルの各ステージで次のような課題が存在しており、全体を通じて多様かつ柔軟なキャリアパスを提示することが必要になっています。
・博士課程への進学者数の減少
・研究者ポストの不安定性とキャリアパスの多様性の不足
・人材流動性(国内)が低調
・国際化、人材流動性(国際)が低調
・研究者以外の研究マネジメント強化に必要な人材の育成不足
○具体的方策
このため、以下の取組を進めることにより、研究人材強化体制を構築し、研究者をより魅力ある職にしていきます。
【若手研究者の「安定」と「自立」の確保、中堅以降も研究に専念できる環境の整備】
・プロジェクト雇用における若手研究者の任期長期化(原則5年程度以上に)と一定割合を自らの研究や教育研究・マネジメント能力向上のための時間に充当可能とする専従義務の緩和
・優れた若手研究者のポストの重点化に向けた卓越研究員事業の改善
・人事給与マネジメント改革の実施
・競争的資金の直接経費から研究以外の学内業務の代行経費の支出を可能とすることにより研究時間を確保するバイアウトの導入 等
【チーム型研究体制の構築】
・URAの質保証(認定制度)
・技術職員のキャリアパスの構築 等
【「キャリアパスの多様化」・「流動性」を促進する環境の整備】
・外国大学で博士号を取得した日本人教員の登用拡大
・求人公募における海外からの応募に係る負担の軽減(Web応募の拡大等) 等
【学位取得の魅力、多様なキャリアパスの提示】
・大学院教育改革の推進
・ファイナンシャルプランの提示
・多様な財源を活用した経済的支援の実施と決定時期の早期化等の運用改善 等

研究資金改革
○論点
研究者の継続的な挑戦を支援するため、研究フェーズに応じた研究資金制度の改革・連携が必要ですが、次のような課題があります。
・競争的資金が確保できない場合に研究の継続が困難
・拠点形成型プロジェクトについて、成果継続に向けた支援方策が必要
・若手が自立的な研究を実施する上で、安定的な資金の確保が課題
・新たな研究分野への挑戦が不足
・他国の動向に比し、国際頭脳循環への参画や国際的な共同研究の振興に課題
・研究費間の繋ぎを構築し、研究の発展の後押しが必要
・研究資金の採択の在り方 等
○具体的方策
このため、以下の取組を進めることにより、すそ野の広い富士山型の研究資金体制を構築し、「多様性」を確保しつつ、「挑戦的」かつ「卓越」した世界水準の研究を支援します。数十年後を見据え、社会の発展へとつながる基礎的・革新的なシーズの探求・発展によりSociety 5.0の実現に貢献します。
【基盤的経費と競争的資金によるデュアル・サポートを通じた多様性の確保】
・競争的資金の直接経費から研究代表者(PI)への人件費等への支出を可能とする研究費制度の見直しにより、大学が自由な裁量で活用可能な経費を拡大
・産学連携や知財マネジメントを通じた外部資金の獲得・企業からの投資の呼び込み 等
【拠点形成プログラムにおける成果の継続】
・大学改革と連携した拠点事業の成果継続へのインセンティブ付与
・拠点型産学官連携制度の大括り化
【研究力向上加速プランの更なる推進】
・若手研究者への重点支援
・新興・融合領域への挑戦促進
・海外で研さんを積み挑戦する機会の抜本的拡充
・国際共同研究の強化
【資金配分機関(FA)間連携の強化】
・戦略目標策定プロセスへの他の資金配分機関(FA)の関与
・支援メニューの再編・簡素化、相談窓口の設置 等
【内閣府との連携】
・申請書様式、執行ルールの統一
・府省共通研究開発管理システム(e-Rad)の改善 等
【制度の評価・検証の徹底】
・研究費制度の改善・検証
・審査の透明性の向上 等

研究環境改革
○論点
研究者が研究に充てる時間割合が減少傾向にあるとの指摘がありますが、次のような課題があり、研究者の事務負担の軽減策に加え、生産性向上に資する研究設備・機器等の計画的な導入や共用とそれらを支える技術専門人材の育成・確保を促進することで、研究時間の抜本的拡充と研究効率の最大化を同時に達成していく必要があります。
・研究費等に関する手続における更なる負担軽減・利便性向上が必要
・アンケート結果によれば、研究時間を増やすために効果ある取組として、「会議の頻度や負担を少なくすること」が最多
・委託費等での機器の購入における使い勝手が良くない
・スペース配分の硬直化や施設の機能劣化が、研究設備・機器等の整備・運用の支障になっている
・研究現場の生産性向上に資する機器等の開発・導入の取組が分野によってばらつき
・研究室単位での囲い込みが進行。研究組織内外の設備・機器等の共用や中長期的・計画的な整備更新ができていない
・大型の設備は自前での整備が困難。研究費では少額の機器等しか整備できない
・研究設備・機器等の導入・運用・共用促進を支える専門技術者が不足
○具体的方策
このため、以下の取組による、研究設備・機器等の環境整備と研究推進体制の強化を一体的に行う「ラボ改革」により、研究時間の抜本的拡充と研究効率の最大化を図り、研究者がより自由に研究に打ち込める環境を実現していきます。
【ラボ単位の環境整備】
・施設の戦略的リノベーションによるオープンラボ、機器共用等スペース創出
・AI・ロボット技術の活用等による研究室等のスマートラボラトリ化の促進を通じた研究の効率化
【組織としての環境整備】
・分散管理されてきた研究設備・機器をコアファシリティとして共用
【組織を超えた環境整備】
・国内有数の先端的な大型研究施設・設備の戦略的・計画的更新
・大学共同利用機関の検証実施や連合体の創設検討、共同利用・共同研究拠点の強化・充実
・大規模学術プロジェクトの厳格な進捗管理、優先順位付け、計画の新陳代謝促進
【研究推進体制の強化】
・研究基盤の運営の要たる「技術職員」の育成・活躍促進
【更なる研究効率の向上・事務負担の軽減】
・学内における会議等の負担軽減
・事務手続の電子化
・競争的資金制度の更なる改善
・学術情報基盤の整備

「研究力向上改革2019」に関する文部科学省のページのURL
http://www.mext.go.jp/a_menu/other/1416069.htm

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