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特集1
新時代の学びを支える先端技術活用推進方策(最終まとめ)について

文部科学省初等中等教育局 初等中等教育企画課
学びの先端技術活用推進室

新時代の学びを支える先端技術のフル活用に向けた基本的な方向性として公表した「柴山・学びの革新プラン」を踏まえ、本年6月25日に「新時代の学びを支える先端技術活用推進方策」の最終まとめを公表しました。今回の文部科学広報では、最終まとめの概要について御紹介いたします。

はじめに
これから到来するSociety 5.0時代を見据え、文部科学省において、昨年11月に学校教育の中核を担う教師を支え、その質を高めるツールとして先端技術を積極的に取り入れること等をまとめた「新時代の学びを支える先端技術のフル活用に向けて ~ 柴山・学びの革新プラン ~ 」(以下「柴山・学びの革新プラン」という。)を公表しました。
この柴山・学びの革新プランを踏まえて、文部科学省初等中等教育局に「学びの先端技術活用推進室」を新設し、子供の力を最大限引き出す学びを実現するために、ICTを基盤とした先端技術を効果的に活用するための具体的な方策について検討し、本年3月に「新時代の学びを支える先端技術活用推進方策(中間まとめ)」(以下「中間まとめ」という。)を示しました。
今回、本年5月に公表された教育再生実行会議の「技術の進展に応じた教育の革新、新時代に対応した高等学校改革について(第十一次提言)」も踏まえつつ、地方自治体、事業者、研究者等の知見を有する関係者と意見交換を行い、中間まとめの内容を更に深掘りし、新時代に求められる教育の在り方や、教育現場でICT環境を基盤とした先端技術や教育ビッグデータを活用する意義と課題について整理するとともに、今後の取組方策をまとめた「新時代の学びを支える先端技術活用推進方策(最終まとめ)」を本年6月25日に公表しました。
これらの施策が実効性を持って行われるよう、文部科学大臣を本部長とする「先端技術・教育ビッグデータ利活用推進本部」を設置し、同日に第1回会合を開催しました。
また、本年4月、中央教育審議会に、Society 5.0時代を見据え、義務教育9年間を見通した児童生徒の発達の段階に応じた学級担任制と教科担任制の在り方や習熟度別指導の在り方などの今後の指導体制の在り方、教育課程の在り方、児童生徒一人一人の能力、適性等に応じた指導の在り方、高等学校教育の在り方、教職員配置や教員免許制度の在り方などの初等中等教育全般の教育制度をはじめとした様々な方策に関する諮問(「新しい時代の初等中等教育の在り方について」)が行われ、検討の緒に就いたところです。
中央教育審議会の議論と併せて、本報告で示したICTを基盤とした先端技術と教育ビッグデータを効果的に活用していくための様々な取組を両輪として、新時代の学校、子供の学びを実現するための取組を加速してまいります。

1 新時代における先端技術・教育ビッグデータを効果的に活用した学びの在り方
(1)新時代に求められる教育とは
【新時代の教育の方向性】
AI等の技術革新が進んでいく新たな時代においては、人間ならではの強み、すなわち、高い志をもちつつ、技術革新と価値創造の源となる飛躍的な知の発見・創造など新たな社会をけん引する能力が求められ、そのような能力の前提として、文章の意味を正確に理解する読解力、計算力や数学的思考力などの基盤的な学力の確実な習得も必要です。
そのためには、
① 膨大な情報から何が重要かを主体的に判断し、自ら問いを立ててその解決を目指し、他者と協働しながら新たな価値を創造できる資質・能力の育成
② ①を前提として、これからの時代を生きていく上で基盤となる言語能力や情報活用能力、AI活用の前提となる数学的思考力をはじめとした資質・能力の育成
につながる教育が必要不可欠です。

【公正に個別最適化された学び ~ 誰一人取り残すことなく子供の力を最大限引き出す学び ~ 】
また、子供の多様化に正面から向き合うことが、新たな時代においてはますます重要です。現状においても、不登校等の理由によって、他の子供とともに学習することが困難な子供の増加、自閉症スペクトラム(ASD)、学習障害(LD)、注意欠陥多動性障害(ADHD)といった発達障害の可能性のある子供や、特定分野に特異な才能を持つ子供など、多様な特性を持った子供が同じ教室にいることが見受けられます。また、国内に在留する外国人の増加に伴い、日本の公立学校(小学校、中学校、義務教育学校、高等学校、中等教育学校、特別支援学校)に在籍する子供の中で、日本語指導が必要な子供も大きく増えています。
このような多様な子供が誰一人取り残されることなく未来の社会で羽ばたく前提となる基礎学力を確実に身に付けるととともに、社会性・文化的価値観を醸成していくことが必要であり、このためには、知・徳・体を一体的に育む日本の学校教育の強みを維持・発展させつつ、多様な子供の一人一人の個性や置かれている状況に最適な学びを可能にしていくこと、つまり、「公正に個別最適化された学び」を進めていくことが重要です。

(2)教育現場でICT環境を基盤とした先端技術・教育ビッグデータを活用することの意義
(1)で記載した教育を実現する上で、学校でICT環境を基盤とした先端技術や教育ビッグデータを活用することは、これまで得られなかった学びの効果が生まれるなど、学びを変革していく大きな可能性があります。
ICT環境を基盤とした先端技術や教育ビッグデータを活用することで得られる具体的な効果として期待できるものを類型化すると左図のとおりです。
右図の効果は現時点の技術から想定される効果を示しているものであり、今後の技術の進展によって更に現在想像もされていない効果が次々と加わることが想定されます。このため、子供の学びの質を高めていくために学びに先端技術を導入することは、〝あった方がよい〟という存在ではなく、〝なくてはならない〟存在となっていくことが考えられます。
なお、学校に先端技術を導入することで、「教師がAI等の機械に代替されるのではないか」との意見もありますが、AI等を活用して行える場合は上手に活用し、むしろ人間にしかできないことに教師の役割はシフトしていくことになると考えられます。つまり、知識・技能と思考力・判断力・表現力等を関連付け、教育の専門家たる教師が見取りながら効果的に学ぶことや、学校や学級という集団のメリットを生かし、教師の発問等を通じて何が重要かを主体的に考えたり、地域や民間企業・NPO等をはじめとした多様な主体との関わり合いの中で課題の解決や新たな価値の創造に挑んだりすることは、いかに先端技術が進展しても人が人からしか学び得ないことです。このような、人が人から直接学ぶことができる希少性から、教師はこれまで以上に重要性が増すと考えられます。

(3)現在の学校をめぐる状況と課題
(2)で記載したように、先端技術及び教育ビッグデータの利活用はこれまでにない効果を学校教育にもたらす可能性があるものですが、全国の学校現場の現状からすると、実現に向けて克服すべき課題は多いため、今回、最終まとめにおいて、これらの課題を克服するために
○ 遠隔教育をはじめICTを基盤とした先端技術の効果的な活用の在り方と教育ビッグデータの効果的な活用の在り方
○ 基盤となるICT環境の整備
についての方策をまとめました。

2 学校現場における先端技術・教育ビッグデータの効果的な活用
(1)学校現場で先端技術の効果的な活用を促進するために
(ア)先端技術の効果的な活用のための基本的考え方
学校現場における先端技術の活用に関し、「導入が効果的である」という声がある一方で、「必要性や有効性が分からない」といった声も一定数存在します。本項では、学習指導要領の求める資質・能力を育成、深化し、子供の力を最大限引き出すための先端技術の活用に関して基本的な考え方を示しています。
① 先端技術の機能に応じた効果的な活用の在り方
技術の進展は日進月歩であり、子供の学びや教師の支援のための製品やサービスの開発が日々行われていますが、現時点におけるツールを分類し、機能、効果及び留意点を列挙するとおおむね左図のとおりです。
② 発達段階に応じた活用
学校における先端技術の活用の場面や頻度等に関しては、子供の発達段階を十分考慮する必要があり、例えば、幼児期は直接的な体験が重要であることを踏まえ、園での生活では得がたい場合に補完的に先端技術を活用する必要があります。小学校の低学年においては、語彙、読解力、数的感覚など学力の基礎を身につける時期であるとともに日常生活における様々な体験・経験を通じた学びが必要な時期であるため、文字を書く、実測する、実験する、人と会話するときに感じる温度感や表情の変化等の実体験を通じた経験が重要であることに留意が必要です。
一方、成長につれて、スマートフォン等のICT機器を使用する機会が増える実態があることから、小学校の低学年のうちからICT機器を使用する機会を通じて情報活用能力や使用に当たっての留意点を学んでいくことも必要です。
(イ)基本的考え方の更なる実証・精緻化
今回、先端技術の効果的な活用のための基本的な考え方を整理したところですが、この考え方を踏まえつつ、教育的効果の見地から、学校現場における実際の適切で効果的な活用場面等を含めてより詳細な先端技術の効果的な活用方針を示していくことが必要です。
文部科学省では、令和元年度から、「新時代の学びにおける先端技術導入実証研究事業」を実施し、先端技術を活用することの効果や留意点の深掘りの実証を進めています。また、国立教育政策研究所では、「高度情報技術の進展に応じた教育革新に関する研究プロジェクト」を実施し、AIやビッグデータ等の高度情報技術の進展に応じた教育革新の展望と実現に向けた検証を進めています。これらも参考にしながら、令和2年度内を目途に先端技術が持つ強みを最大限引き出すための「学校現場における先端技術利活用ガイドライン」を策定する予定です。

(2)教育ビッグデータの現状・課題と可能性
(1)で記載の先端技術の機能を十分に発揮し、公正に個別最適化された学びに向かっていくためには、個人ごとの学習等に関する細かな記録やデータの収集、蓄積、分析が必要です。
現在、技術の発展により、これまで取得することが困難だったデータや、取得に非常に手間がかかるためほとんど取られていなかったデータを、簡易で継続的に、個人の学習記録として取ることが技術的に可能となってきています。
一方、近年、様々な主体によってデータの収集が行われているが、日本国内においては収集しているデータ項目やデータ収集に使われている用語等が各主体によってまちまちであり、これらを統一するルールも定められておらず、データの連携や分析が効果的に行われていない状況です。
教育ビッグデータの活用には様々な可能性があります。例えば、スタディ・ログ(学習履歴)をはじめとした教育ビッグデータが継続的に収集、蓄積、分析されることで、学習者自らが振り返りに活用するなど個別に最適な学びを行うことができるようになるほか、将来的には医療や福祉等の他分野ともデータ連携することでよりきめ細かな指導・支援が可能となり得ます。このように、教育ビッグデータの活用は学習者の成長を促す可能性を大きく広げることにつながり、未来の教育に重要で不可欠な基盤となるものです。

(ア)データの標準化
① データの標準化の必要性
教育ビッグデータを効果的に活用していくためには、収集するデータの種類や単位(以下「データの意味」という。)がサービス提供者や使用者ごとに異なるのではなく、相互に交換、蓄積、分析が可能となるように収集するデータの意味を揃えることが必要不可欠な条件です。
我が国においても教育ビッグデータの活用が本格的に始まりつつある今、収集する①データ内容の規格を揃えることと、②技術的な規格を揃えること、つまり、データの標準化を行うことが急務です。
データの標準化を進めている諸外国の事例を鑑みると、②の技術的な規格は、既に流通している国際標準規格を活用し、①の内容の規格は各国により文脈が異なるため、各国でそれぞれ内容を定めている傾向にあります。
内容の規格は、おおむね、在籍情報等の校務系データと、学習の記録である学習系データに大別にできます。
今後、我が国においても、文部科学省において早急に検討を進め、データ標準化(内容の規格及び技術的な規格)を設定していくことが必要です。
② 学習指導要領のコード化
ⅰ)意義と効果
①のデータ内容の標準化に関連して、特に学習系データに関しては、現在、民間の教材会社等において、様々なデジタルコンテンツが各社の教科書の単元ごとに付された独自のコードを設定した上で、各データに付与し、そのコードを踏まえてデータの関連付けや分析を行っています。このように各事業者が独自のコードを使用していると、例えば各学校が複数社のサービス利用により収集したデータに横串を通して体系的に分析を行うなどの利活用や展開ができず、せっかく収集したデータを当該サービス内でしか活用できないことになります。
事業者や使用者に関わらず、学習系データを横断的・体系的に活用するためには、共通のコードを使用することが必要です。このため、学習系データの標準化として、まず、学校の学習内容の標準として国が示している学習指導要領に基づき、内容・単元等に共通のコードを設定すること(学習指導要領のコード化)が適当であり、文部科学省において具体的な設定を進めていく必要があります。
ⅱ)具体的なイメージ
学習指導要領のコードは、学習指導要領の学校種、学年、教科、領域及び内容等を示す記号・番号の組合せを用いて、右図(右下)のイメージで詳細を検討していくことです。さらに、個々のコードに付加情報(例えば、用途別(指導案・問題等)、難易度等)を追加するかについても検討を行います。

3 基盤となるICT環境の整備
(1)ICT環境整備のあるべき姿と現状と課題
~ 世界最先端のICT環境に向けて ~
前章まで述べてきた先端技術や教育データの活用には、大前提としてICTの基盤が整っている必要があります。
現在、学校現場においては、様々な教材等における動画の利用や、教科書におけるURLやQRコードを通じたウェブサイトへの誘導が行われており、ICTの活用は必須のものとなりつつあります。
一方、OECD国際教員指導環境調査(TALIS)2018においては、我が国の中学校教員が「生徒に課題や学級での活動にICT(情報通信技術)を活用させる」という項目に「いつも」又は「しばしば」と回答した割合が17.9%と参加国(48か国・地域)中で次いで2番目に少ない(参加国平均は51.3%)ことが明らかとなるなど、我が国のICT活用状況は世界から大きく後塵を拝しており、危機的な状況です。
もはや学校のICT環境は、その導入が学習に効果的であるかどうかを議論する段階ではなく、鉛筆やノート等の文房具と同様に教育現場において不可欠なものとなっていることを強く認識する必要があります。この危機的な状況を抜け出し、世界最先端のICT環境に向かう必要があり、文部科学省は、その実現に向け、世界最先端のICT環境に向かうためのロードマップを今年度中に策定する予定です。
各地方自治体においても、このような危機的な教育環境を十分踏まえた上で、それぞれの教育の情報化の推進に関する計画を早急に策定し、整備を加速することを期待しています。
各地方自治体のICT環境整備の実態に加え、整備が進んでいない原因としては、必要な機器の整備コストが高いこと、そもそもどのような整備を行うべきか判断がつかないことなどが理由として挙げられます。
この点、「2018年度以降の学校におけるICT環境の整備方針」を踏まえ、「教育のICT化に向けた環境整備5か年計画(2018~2022年度)」に基づき、学校ICT環境の整備に必要な経費については必要な地方財政措置がなされています。
まずは、上記の社会的な状況を踏まえ、将来を担う子供たちへの教育の充実の必要性を各地方自治体においても共有し、確実に取り組んでいくことが必要です。

(2)SINETの初等中等教育への開放
~ ICT環境整備の起爆剤とICTを活用した骨太な高大接続の実現 ~
教育に限らずあらゆる分野におけるこれからのICT環境といった場合、学習者用コンピュータだけではなく、高速・大容量のネットワークが不可欠です。先端技術の活用を進める上では、むしろ簡易な端末を強固なネットワークに接続するクラウドコンピューティングが世界的な潮流です。
今回、このような通信ネットワークの抜本的強化のため、これまで高等教育機関や研究機関の利用に限られていたSINETを全国の初等中等教育機関でも活用できるようにすることとしました。各学校から公衆網にVPN(Virtual Private Network)を組み合わせて直接SINETのノードへ接続することにより、超高速で大容量の通信が可能となり、まさに学校におけるICT環境整備を、世界最先端へと引き上げる起爆剤となるものです。
この実現に向け、ネットワークの物理的な構築やセキュリティ対策、運用体制など様々な準備が必要であることから、文部科学省内に検討体制を立ち上げ、SINETを運用する国立情報学研究所(NII)等と協力しつつ準備を加速します。
あわせて、このSINET接続のもう一つの大きな目的は、既にSINETと接続されている高等教育機関や研究機関と初等中等教育機関との連携を飛躍的に強めることです。
具体的には、初等中等教育機関側からは、大学の教師の授業を遠隔で受講できること、研究文献などの閲覧が容易になること、全国津々浦々の大学の研究を俯瞰できること、外国語教育や国際理解教育に資するために留学生との遠隔交流が促進されることなど、子供の進路の選択肢を広げる可能性が大きく高まることが期待されます。
また、高等教育機関や研究機関側にとっても、様々な教育コンテンツの開発、提供やデータ収集・分析による教育学に係る研究の飛躍的向上、教員養成課程の学生に対する遠隔での継続的な現場体験などのより実践的かつ効果的な教員養成、あらゆる学部、学科が小中高校生に授業や研究成果を発信することで早い段階からの子供に多様な学問分野に接触させることができるなど、その活用方法において非常に大きな可能性を有します。
これらのコンテンツや外部人材の利活用方策については、これまであまり接点のなかった大学教育の専門家と初等中等教育の専門家が一堂に会する検討体制を文部科学省内に立ち上げ、先述のネットワークの検討と一体となって検討・準備を進めます。

(3)クラウド活用の積極的推進
~ 「教育情報セキュリティポリシーに関するガイドライン」の在り方の検討 ~
文部科学省は平成29年10月に各地方自治体において、学校向けの情報セキュリティポリシーを策定する際の参考として、「教育情報セキュリティポリシーに関するガイドライン」(以下「ガイドライン」という。)を作成しました。このガイドラインの規定を踏まえることにより、強固なセキュリティ環境を構築できます。
その一方で、学習系情報、校務系情報を連携した学校現場におけるデータの利活用に関する取組の促進、技術の進展による安全・安価なクラウドサービスの普及などの状況の変化を踏まえ、ICT環境整備のインセンティブやICT環境を維持管理するためのコスト低減を図ることが必要です。
また、平成30年6月の各府省CIO連絡会議による「政府情報システムにおけるクラウドサービスの利用に係る基本方針」においても「クラウド・バイ・デフォルト」(クラウドサービスの利用を第一候補とすること)が決定されており、学校現場においても、学校ごとのサーバ管理が不要となり、クラウドコンピューティングによる大幅なコスト削減のみならず、セキュリティ・プライバシーのより高度な信頼性、災害対策、遠隔でのデータアクセスなど様々な可能性があるクラウド・バイ・デフォルトを進めることが必要です。
したがって、右図の方向性で、ガイドラインの改訂を図る予定です。

(4)安価な環境整備に向けた具体的モデルの提示
学校において整備すべきICT環境については、平成29年12月26日付け「学校における教育の情報化の実態等に関する調査結果(平成28年度)〔速報値〕及び平成30年度以降の学校におけるICT環境の整備方針について(通知)」(以下「平成29年12月通知」という。)で示しています。
しかしながら、(1)で示したように、これまで地方自治体による整備が進まなかった理由として、何をどのように整備してよいか分かりにくいとの声とともに、コスト面の課題が挙げられています。
学習者用コンピュータは先端技術を取り入れた高価・高性能な機種である必要はなく、むしろ安価で一般に普及しているものを時代に合わせて更新していくことが望ましく、また、総コストも下げられます。我が国でも、店頭には一般向けの4万円台~5万円の端末も並んでいる一方で、教育市場における学習者用コンピュータの価格は硬直化しているとの声もあります。我が国の教育関係予算も限られている中、このままでは到底子供一人一台の学習者用コンピュータを実現することは難しく、一人一台を実現するためには大きな市場が広がっていることも念頭に、教育市場に安価な端末を大量に供給すべく協力を要請します。
そのためには、従来の端末に集中したオンプレミス型よりも、適切な通信ネットワークとパブリッククラウドに基づくクラウドコンピューティングが極めて有力な選択肢です。
世界を見ても、年々成長を続ける教育端末市場において、クラウドベースで安価な端末を提供するGoogle Chromebookが2018年には世界の35%、アメリカの総購入数の60%を占めているほか、MicrosoftやAppleも300ドル以下の低価格帯の端末の提供に集中しており、2018年第3四半期、アメリカの教育市場では300ドル以下のパソコン販売が75%を占めるに至っているのが現状です。
更なるコストダウンに向けて、地方自治体が大量に一括調達を行うことが効果的であることから、「全国ICT教育首長協議会」等と連携し、複数地方自治体による一括調達等の方策も積極的に検討していくべきです。さらに、調達に当たっては、サプライチェーン・リスクに対応するなど、サイバーセキュリティ上の悪影響を軽減するための措置が必要です。
このような認識を踏まえ、大型提示装置や学習者用コンピュータ関連をより安価に広く展開するため、左図は、分かりやすい具体的なモデルの一例です。
あわせて、一人一台を実現するために、BYOD(Bring Your Own Device)も含めた公費以外による整備等の選択肢や、直接調達に向けたより詳しい仕様や技術進歩に応じたアップデート等については、文部科学省「ICT活用教育アドバイザー」等の知見や総務省・経済産業省と連携を通じた検討を行い、今後随時情報提供いたします。
なお、BYODについては、家計に負担をかけることや使用頻度、必要な機器の保有状況等を考慮するとともに、学校段階の教育活動の実情も踏まえて検討することが必要です。

(5)関係者の意識の共有と専門性をもった人材の育成・確保のための取組の推進
ICT環境の可及的速やかな整備促進に向けては、関係者(首長部局・教育委員会・学校・教師等)が学校現場のICT環境整備の現状・課題、その必要性を共有するとともに、ICTを効果的に活用するための知識・知見を高めていくことが必要です。
文部科学省は、左図のような取組を実施します。
おわりに
AIなどの技術革新が進むSociety 5.0という新たな時代に対応するためには、不断の取組として、学校教育も変化していく必要があり、そのためには、ICTを基盤とした先端技術やそこから得られる教育ビッグデータを効果的に活用することで、子供の力を最大限引き出し、公正に個別最適化された学びを実現させていくことが求められます。
どの地域でも、どの学校においても、そのような子供の学びが実現されることが重要であり、教育環境の差異がなくなるためにも、別紙の工程表で示している本報告書の取組を着実にかつ迅速に行っていくことが必要です。
また、本報告書の実現に当たっては、関係各省庁のみならず、初等中等教育段階の学校、教育委員会を含めた地方自治体、高等教育機関、民間企業をはじめとした様々なステークホルダーとともに、総がかりで、取組を進めていきます。是非、以下に掲げるステークホルダーにもこの取組に係る理解と協力をお願いします。

学校関係者
教育の場においては、先端技術の活用は、ともするとデジタル対アナログ、人対機械のいずれを選ぶべきかという二項対立の議論に陥りがちであるが、社会の状況が変わろうとも、子供一人一人の状況に応じて可能性を最大限に引き出す目的に変わりはなく、先端技術を活用していくことは、この目的に向けて取り得る選択肢を多様にして可能性を大きく広げるものです。先端技術の活用により、学校の重要度が損なわれるのではなく、クラスにおけるグループディスカッションなどを通じた学び合いなどの、学校という場で学べることの重要さは更に大きくなります。
これまでの教授法をベースにしながら、先端技術を含めた最適なツールや教育ビッグデータを、個々の学校、学級、子供の状況に応じて、うまく組み合わせて効果的に活用する「ベストミックス」を進めていただくことを期待します。

教育委員会を含めた地方自治体関係者
IoTに代表されるようにICTを基盤とした先端技術が急速に生活の中に溶け込んできている中で、このような技術は教育の場に「あった方がよい」という存在ではなく、「なければならない」ものになりつつあります。そのためには、学校現場におけるICT環境の整備は必須であり、地域間で格差があるような状況の是正に努める必要があります。
また、例えば、SINETを活用することで、距離という制約を克服し、都市部等でなくても、日本全国の大学をはじめとした外部人材とつながり、子供のより質の高い学びの提供も可能になります。是非、将来を担う子供のためにICT環境整備の加速化に取り組んでいただくことを期待します。そのためにも、教育委員会とICT関係部局等が連携しつつ、最新のICT技術の動向を常に把握しながら、学校に最適な整備を計画し実行できるだけの知識を得ることも期待します。

高等教育・研究機関関係者
今回のSINETをはじめとしたICT環境の整備と活用により、初等中等教育と高等教育の連携が飛躍的に強まるものと期待します。初等中等教育と高等教育の接続開始をきっかけとして、最新のアカデミック環境が初等中等教育に提供されるだけでなく、高等教育機関にとっても教育学の観点からの様々な分析、教員養成の観点からの養成機会の増加、将来の大学入学者への早期の理解や関心の喚起など、大きな可能性をあります。そのメリットを生かして、大学も様々な形での初等中等教育との連携を進めてもらうことを期待します。
また、全国の高等教育機関は、産官学共同で進めている知識集約型社会の基盤インフラとしても期待されているSINETの活用を通じて、地域課題の解決に向けた高度な知識・技能の提供、地域課題の探究を継続するための高大接続開発プログラムの開発など、地域の教育機関のハブとしての役割を更に強く担うことを期待します。

民間企業関係者
3.等で記載したとおり、これまでの教育ICTのビジネスモデルでは環境整備には限界があり、一人一台の実現はおぼつかないことから、安価で汎用性の高い学習者用コンピュータと高速なネットワークなど、根本的なビジネスモデルの転換を期待します。海外では教育への貢献は社会貢献の一環との考えも浸透しています。学校でICT環境に囲まれる子供が、将来の企業の活動、更には我が国のSociety 5.0を支えることになる趣旨を踏まえ、端末、通信費など、様々な形での寄付や割引制度などの創設も共に考え、その最適解を出して実行していただくことも期待します。
また、各地域の具体的なICT環境整備や保守には、その地域のいわゆるICTベンダーが大きな役割を果たしているところが多いですが、これら業者が必ずしも最新の最適なICT環境を整備・保守できないとの声も聞きます。このような業者には、常にICTに関する最新の技術動向を把握しながら、他の業種の例や過去の例にとらわれず、子供のために最適で柔軟な整備を強く期待します。
また、技術の進展に伴い、いわゆる「EdTech」と呼ばれる教育に係る様々な技術やコンテンツが創出されることが予想されますが、その技術が学校現場で効果的に活用されるためには教師の役割が非常に重要であることから、教師に負担がかからず、誰でも利用できることを念頭において開発していただくことと併せて、個別の知識・技能の積み上げ・定着を図るための個人学習向けの教材や支援ツール、学習指導要領に掲げたこれからの必要な資質・能力の育成につながる深い理解や思考力等の育成に資する教材や支援ツールの開発を期待します。
あわせて、ICTを基盤とした技術の進展により、データを収集し、分析することが容易になるが、例えば欧州においては、学校が保有する学習データを学校以外の外部の者がどのように収集・分析等、利活用しているか否かについて透明化を図っています。データを収集する場合には、情報の保有者に対して収集の目的や分析する旨をしっかりと明示し、情報の保有者の許諾を得ることの徹底をお願いします。

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