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国宝・重要文化財(美術工芸品)の指定について

文化庁文化財第一課

文化財第一課では絵画、彫刻、工芸品、書跡・典籍、古文書、考古資料、歴史資料の七つの分野で国宝・重要文化財の指定を毎年行っています。今年3月に新たに指定が決定した文化財の一部について、その概要を紹介します。

3月18日に開かれた文化審議会文化財分科会において、奈良県キトラ古墳壁画など国宝3件、重要文化財41件の指定が決定しました。これで美術工芸品の指定件数は国宝893件、重要文化財9,879件となります。

国宝
昭和25年の文化財保護法制定に伴い、それまでに古社寺保存法・国宝保存法によって指定された国宝は全て重要文化財と名を改められ、その中から新法の規定する国宝を指定してゆく作業が翌年から始められました。昭和30年代前半までにその作業は一段落し、その後は新発見や調査研究の進展、保存修理の成果などを反映させて適宜指定を進めています。

絵画の部
キトラ古墳壁画
国(文部科学省所管)
昭和58年に発見され、平成16年より行われた石室内壁からの剝ぎ取りと再構成・安定化処置が完了したことをうけて昨年重要文化財となり、この度国宝に昇格したものです。四方壁に青龍・白虎・朱雀・玄武の四方四神と十二支像、天井に天文図が描かれる壁画の全体構想が判明する点が貴重で、我が国の古代絵画史を考える上で不可欠な作例と評価されます(飛鳥時代)。

彫刻の部
薬師如来立像ほか
(宗)唐招提寺
唐招提寺木彫群として知られる6軀の木彫像で、その重厚な造形には、同寺の創建者で天平勝宝5年(754)に来着した唐僧鑑真の一行がもたらした最新の中国様式がうかがえます。榧材を用いた一木造りの造法は平安前期の木彫像の多くに用いられており、木彫を主体として展開する長い日本彫刻の歴史の起点に位置付けられる重要作例です(奈良時代)。

重要文化財
重要文化財の指定は絵画・彫刻・工芸品・書跡など旧法以来の分野に加えて、昭和50年の文化財保護法改正による歴史資料指定の開始や、近代遺産の指定の促進など、次第に対象とする範囲を拡大し、また近年では大量の資料群を一括指定する傾向が強まっています。

工芸品の部
銅置物「十二の鷹」
(独法)国立美術館(東京国立近代美術館保管)
金工家鈴木長吉(1848~1919)の製作になる鷹の置物で、明治26年(1893)開催のシカゴ万国博覧会に出品するために造られたものです。江戸時代に発達した鋳金・彫金・色絵などの高度な金工技術を駆使し、架に止まる12羽の鷹の様々な姿態をいきいきと写実的に表現しており、近代金工の傑作として高く評価されます(明治時代)。

書跡・典籍の部
続華厳経略疏刊定記巻第五
(公財)五島美術館
唐の慧苑の撰述になる『華厳経』(八十華厳)の注釈書です。巻末に二つの奥書があり、それぞれ延暦2年(783)及び同7年に校合(他本との照合によるチェック)が行われたことが知られ、これをやや遡る奈良時代末に書写されたとみられます。本文中には朱書の漢数字で、日本語による語順を示す返点が付けられており、校合の際の書入れと考えられます。我が国最古の返点で、国語学上極めて貴重な品です(奈良時代)。

古文書の部
豊臣家文書
個人蔵
豊臣秀吉の正室、ねねの兄を初代とする足守木下家に伝わった文書群です。秀吉やその甥、秀次に官位官職を与えた位記宣旨や、明国との和平交渉に関わる切紙など多彩な内容で、豊臣家の家文書として高い価値を有すると認められます(安土桃山~江戸時代)。

考古資料の部
大分県府内大友氏遺跡出土品
大分県(県立埋蔵文化財センター保管)
豊後大友氏の拠点である府内から出土した一括資料で、当時の治世や住民の生活を示す様々な遺物で構成されます。特にキリスト教信仰に関わる品や、東南アジア産の陶磁器など、国際貿易都市として栄えた府内の様相をよく伝え、我が国の中世都市の実態を解明する上で貴重な資料と評価されます(鎌倉~安土桃山時代)。

歴史資料の部
ホジ六〇一四号蒸気動車
東海旅客鉄道株式会社(リニア・鉄道館保管)
蒸気動車とは客車に蒸気機関を搭載した車輛で、小単位での高頻度・短距離輸送に適した車輛として輸入され、明治末に国産化が実現しました。今回指定する車輛は大正2年製作の国産車輛で、現存唯一の蒸気動車です。主要部分がよく保たれており、鉄道史上、科学技術史上に高い価値を有すると認められます(大正時代)。

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