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2019年3月10日(日)~11日(月)
文部科学省委託事業「数学アドバンストイノベーションプラットフォーム(AIMaP)」・JST CREST/さきがけ合同シンポジウム
数学パワーが世界を変える2019

文部科学省研究振興局基礎研究振興課

ビッグデータや人工知能(AI)の背後にある「数学」。数学パワーをいかに発揮するかが今後の発展のカギを握っています。文部科学省の取組における成果を一般の方に向けて発信する場として本シンポジウムを開催したので紹介します。

はじめに
昨今、ビッグデータの活用やAI(人工知能)の急激な進歩が注目を集めるようになっています。そして、これらの技術の急激な進歩は、情報科学分野のみならず数学の力を活用したものであると言えます。
しかしながら、このような「数学」の持つパワーは外からは見えづらく、一般的に広く知られているとは言えないのが現状です。このような「数学の持つパワー」を一般の方々にも知っていただくため、シンポジウム「数学パワーが世界を変える2019」を、3月10日(日)から3月11日(月)の2日間にわたり、東京ガーデンパレスにて開催しました。

「数学パワーが世界を変える2019」の開催
1日目:CREST・さきがけ・AIMaP合同シンポジウム
初日の3月10日(日)は、午前10時の開会時には満員に近い盛況となり、熱気あふれる中での開会となりました。
まず、文部科学省の千原由幸大臣官房審議官、科学技術振興機構の後藤吉正理事から開会挨拶の後、午前中は、「最適化/マッチング問題とその応用」について発表が行われました。まず、東京大学大学院情報理工学系研究科の岩田覚教授(CREST「数理モデリング」領域)から微分代数方程式モデルの最適化について発表がありました。続いて、株式会社富士通研究所 人工知能研究所の岩下洋哲氏、九州大学マス・フォア・インダストリ研究所の神山直之准教授(さきがけ「数学協働」領域)から、保育所の入所希望者と入所先の保育所とのマッチングについて、「きょうだいを同じ保育所に入れる」という条件を課すと問題が難しくなることが紹介され、この問題に数学的アプローチで取り組むことにより、これまでは市町村の担当者が多くの時間を費やしてきた保育所入所選考の業務が自動化され、市町村などで実用化されている事例が紹介されました。
その後、川上量生カドカワ(株)取締役から「経営に数学は必要か」と題して招待講演が行われ、ビジネスにおいてどのような数学が必要とされるのか、数学によってどのように世界が広がるのか、などについての講演が行われました。
午後は「生命現象の数理とその応用」について発表が行われました。まず、北海道大学大学院理学研究院の栄伸一郎教授より「分化の波を通して見る数理モデル構築と解析のための新しい試み」と題して、ショウジョウバエの視覚中枢における細胞分化のメカニズムを記述する数理モデル構築を目指した研究が紹介されました。続いて、この数理モデルを検証するための実験研究を行っている、金沢大学新学術創成研究機構の佐藤純教授からも「昆虫の複眼におけるタイリングパターンの制御メカニズム」と題した発表が行われるとともに、広島大学大学院理学研究科の李聖林准教授からは、「生命科学の美と不思議、そして謎解き屋の反応拡散方程式」と題した発表が行われました。
さらに、AIMaP事業の公開ワークショップが行われ、九州大学マス・フォア・インダストリ研究所の福本康秀教授よりAIMaP事業の概要が紹介されました。その後、本事業を通じて数学と諸科学分野・産業との協働が進化しつつある三つの事例が紹介されました。
まず、東京大学大学院数理科学研究科の時弘哲治教授からは、数理科学研究科と農学生命科学研究科との合同の合宿型研究集会をきっかけに、釣った魚の肉の品質が劣化するプロセスの解明を目指した共同研究につながった事例が紹介されました。この研究では、釣った魚が大気にさらされることにより魚肉中のタンパク質分解制御系が破たんし、タンパク質分解が暴走することが魚肉の品質劣化の一因として考えられることが明らかにされました。
次に、北海道大学電子科学研究所の寺本央准教授からは、非ノイマン型計算に関するワークショップをきっかけに北海道大学と日立製作所とのイジング型計算機に関する共同研究が加速し、インターネットを通じたプログラミングコンテストの優勝者のアイデアをもとに開発したアルゴリズムが既存の標準的なアルゴリズムを上回る性能を示すなどの成果が紹介されました。
最後に、(株)村田製作所の檜貝信一氏からは、九州大学マス・フォア・インダストリ研究所/大学院数理学研究科と東京大学大学院数理科学研究科とのスタディグループワークショップにおいて、リチウムイオン電池の全固体電池化に必要となる、固体電解質中のリチウムイオン伝導機構の解明に数学の力を借りられないかという問題を数学者に対して提起し、共同研究につながった事例などが紹介されました。
参加者アンケートでも回答者の4割近くが「期待以上」と答えるなど、多くの参加者から面白かったという声が寄せられる講演となりました。

「数学パワーが世界を変える2019」の開催
2日目:さきがけ「数学協働」2期生成果報告会
2日目の3月11日(月)は、さきがけ「数学協働」領域の2期生9名から、研究成果が発表されました。そして、企画セッションとして、9名のうち4名の研究者(大森亮介、中嶋浩平、永田賢二、奈良高明の各氏)から、数学以外の分野の研究者と話をする際にどのような困難があるか、その困難をどうすれば乗り越えられるか、その先にどのような良いことがあるのか、などについて具体的な研究事例が紹介され、議論が行われました。
このほかに、CREST「数理モデリング」領域の各チームの研究者やさきがけ「数学協働」領域の研究者などから、合計53件のポスター発表が2日間にわたって行われ、会場は満員の盛況で熱気に満ちた議論が行われました。

おわりに
このイベントは、2017年2月に初めて開催され今年で3回目を迎えたものです。今回のイベントには、1日目128名(うち企業15名、大学等99名、その他14名)、2日目73名(うち企業5名、大学等64名、その他4名)の参加があり、特に1日目は立ち見も出るなど、数学パワーへの関心の高さがうかがえました。
参加者アンケートでは、今後聞きたいテーマとして、「様々な研究分野や企業での数学応用事例」や「数学者と他分野・企業との共同研究事例」を挙げる方が多く、これも参考にしつつ今後も引き続き数学パワーの発信に努めてまいります。

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