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「文化芸術立国」の実現を目指して

文化庁

文化芸術は、豊かな人間性を育み、創造力と感性を育むなど、人間が人間らしく生きるための糧です。また、文化芸術は、それを通じてあらゆる人々が社会に参画することで、多様性を受け入れることができる心豊かな社会の形成に寄与するものであるほか、観光やまちづくり、産業等の関連分野において、新たな需要や高い付加価値を生み出し、質の高い経済活動等を実現するものであるなど、多様な価値を有しており、重要な役割を担っています。文化庁は、こうした文化の振興を図り、「文化芸術立国」の実現に向けて取り組みます。

文化芸術推進基本計画(第一期)と文化予算
①文化芸術推進基本計画(第一期)について
政府は、文化芸術に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るため、改正文化芸術基本法に基づき、文化審議会や文化芸術推進会議等を経て「文化芸術推進基本計画」(以下「基本計画」)を定めています。基本計画では、文化芸術が本質的価値に加え、社会的・経済的価値を有するものであることを明確化したほか、少子高齢化やグローバル化、高度情報化など変化する社会の要請に応じつつ、関連分野との連携を視野に入れた総合的な文化芸術政策の展開が求められていること、また、今後の文化芸術政策の目指すべき姿として次の四つの目標と、今後の5年間(2018年度から2022年度)の文化芸術政策の基本的な方向性として六つの戦略を定めています。
目標1 文化芸術の創造・発展・継承と教育
目標2 創造的で活力ある社会
目標3 心豊かで多様性のある社会
目標4 地域の文化芸術を推進するプラットフォーム

戦略1 文化芸術の創造・発展・継承と豊かな文化芸術教育の充実
戦略2 文化芸術に対する効果的な投資とイノベーションの実現
戦略3 国際文化交流・協力の推進と文化芸術を通じた相互理解・国家ブランディングへの貢献
戦略4 多様な価値観の形成と包摂的環境の推進による社会的価値の醸成
戦略5 多様で高い能力を有する専門的人材の確保・育成
戦略6 地域の連携・協働を推進するプラットフォームの形成

関係府省庁をはじめ各関係機関との連携及び協働を図りながら、基本計画に基づき必要な取組を進めます。
②文化庁予算について
2019年度文化庁予算には、文化芸術立国の実現に向けて、文化資源の“磨き上げ”による好循環の創出や、文化芸術の創造・発展と人材育成、文化財の確実な継承に向けた保存・活用の推進など、対前年度85億円増(7.8%増)の1167億円を計上しています。
この中には、2019年1月から徴収が開始された国際観光旅客税を財源充当する事業も含めて計上されています。「日本博」を契機とした観光コンテンツの拡充や、文化財の多言語解説の整備をはじめとする文化資源を活用した観光インバウンドのための環境整備を推進します。

新・文化庁の構築に向けた機能強化と本格移転に向けた取組
平成28年の「文化芸術立国の実現を加速する文化政策―「新・文化庁」を目指す機能強化と2020年以降への遺産(レガシー)創出に向けた緊急提言―(答申)」(平成28年11月17日 文化審議会)において、文化政策を総合的に調整し推進していくための体制の整備に努めることが答申され、加えて、平成29年の「文化芸術基本法」の改正において、文化庁の機能の拡充等を検討し、必要な措置を講ずるものとされました。
また、平成28年3月には地方創生等の観点から、「政府関係機関移転基本方針」(まち・ひと・しごと創生本部決定)において、文化庁の京都への全面的な移転が決定されました。
このような背景を踏まえ、「文部科学省設置法」等を改正して内部組織の再編を行い、平成30年10月に新体制を整えました。具体的には、文化に関する基本的な政策の企画及び立案並びに推進に関する事務等を文化庁の所掌事務に加えるとともに、学校における芸術に関する教育の基準の設定に関する事務及び博物館による社会教育の振興に関する事務を文部科学省本省から移管しました。また、文化部・文化財部の2部制の廃止や文化資源活用課の設置など、時代別・分野別の縦割型から、目的に対応した組織編制とし、政策課題への柔軟かつ機動的な取組に対応できるよう再編しました。
今後、遅くとも2021年度中を目指すとされる京都への本格的な移転に向け、ICTを活用した業務効率化など、業務の試行・改善の検討を行い、我が国全体の文化行政の更なる強化につなげるべく、引き続き関係省庁等と連携しながら、準備を進めます。

2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会に向けた文化プログラム
1 文化プログラムの展開について
2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会は、文化の祭典でもあり、魅力ある日本文化を世界に発信するとともに、地域の文化資源を掘り起こし、地方創生や観光振興の実現にもつなげる絶好の機会です。
このため、大会組織委員会や関係省庁、地方公共団体、民間団体等と連携しつつ、文化プログラムを積極的に推進しています。

2 「日本博」について
2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会を契機とする文化プログラムの中核的事業として、「日本博」を全国各地で展開します。
「日本博」は、縄文時代から現代まで続く日本の美を各分野にわたって体系的に展開していく大型プロジェクトであり、「日本人と自然」という総合テーマの下に各地域が誇る様々な文化資源を年間通じて体系的に創成・展開するとともに、国内外への戦略的広報を推進し、文化による国家ブランディングの強化、観光インバウンドの飛躍的・持続的拡充を図ります。

舞台芸術活動等の推進
文化庁では、我が国の舞台芸術の水準を向上させるとともに、より多くの国民に対して優れた舞台芸術の鑑賞機会を提供するため、音楽、舞踊、演劇、伝統芸能、大衆芸能といった公演活動について支援を行っています。また、我が国の優れた舞台芸術を世界に発信するための取組に対して支援を行うことで、国際発信力を強化し、国際文化交流を推進しています。このほか、芸術の創造と発展を図ることを目的として、「文化庁芸術祭」を毎年秋に開催しています。
さらに、多様で優れた文化芸術を継承し、発展させていくためには、文化芸術の担い手の育成が重要であることから、若手芸術家に海外で実践的な研修に従事する機会を提供しているほか、文化の作り手と受け手をつなぐ役割を担っているアートマネジメント人材の育成に取り組んでいます。

メディア芸術の振興
1 アニメーション・マンガなどのメディア芸術の振興
我が国のアニメーション、マンガ、ゲーム、メディアアート等のメディア芸術は、その作品を通じて広く国民に親しまれるとともに、海外で高く評価され、我が国への理解や関心を高めています。
このメディア芸術を一層振興するため、創作活動への支援、普及、人材育成などに重点を置いて、施策の充実を図ります。
具体的には、文化庁メディア芸術祭の開催を一つの柱として我が国の優れたメディア芸術作品を国内外に発信しています。また、「メディア芸術連携促進等事業」を推進することによって、優れたメディア芸術作品を生み出すための環境整備を行っています。さらに、優秀な若手クリエイターやアニメーターの育成支援等を通じ次世代を担う人材の育成に努めます。

2 日本映画の振興
日本映画を振興するため、創造活動の促進、国内外における積極的な発信、若手映画作家等の育成及び映画や映画に関わる者・団体等の交流を推進します。
具体的には、国際共同製作を含む優れた劇映画等に対する支援、海外映画祭への出品等支援など、総合的な映画の振興施策を推進します。

子供たちの芸術教育の充実・文化芸術活動の推進
1 学校における芸術教育の充実
平成30年10月より芸術に関する教育に関する事務を文部科学省本省から文化庁に移管しました。これにより、芸術に関する国民の資質向上について、学校教育における人材育成からトップレベルの芸術家の育成までの一体的な施策の展開を図ります。

2 子供たちの文化芸術活動の推進
①文化芸術による子供育成総合事業
子供たちの豊かな創造力・想像力や思考力、コミュニケーション能力などを養うとともに、将来の芸術家や観客層を育成し、優れた文化芸術の創造につなげることを目的として、「文化芸術による子供育成総合事業」を実施します。
小学校・中学校等において一流の文化芸術団体による実演芸術の巡回公演を行い、又は小学校・中学校等に個人又は少人数の芸術家を派遣し、子供たちに質の高い文化芸術を鑑賞・体験する機会を確保するとともに、芸術家による計画的・継続的なワークショップ等を行います。
②伝統文化親子教室事業
子供たちが親とともに、民俗芸能、工芸技術、邦楽、日本舞踊、茶道、華道などの伝統文化・生活文化等を体験・修得できる機会を提供します。また、これまで体験機会のなかった地域の子供たちにも、地方公共団体が中心となり、地域の指導者の活用等により、体験活動機会の充実を図ります。
③文化部活動改革に向けた取組
生徒のバランスの取れた生活や学校の働き方改革の観点から「文化部活動の在り方に関する総合的なガイドライン」を平成30年12月に策定し、公表しました。
本ガイドラインは、義務教育である中学校段階の文化部活動を主な対象(高等学校段階においても原則的に適用、小学校段階についても休養日や活動時間を適切に設定すること)とし、「適切な運営のための体制整備」「適切な休養日等の設定」「大会等の見直し」等について、本ガイドラインに基づき持続可能な文化部活動にかかる取組を徹底するよう、地方公共団体、教育委員会及び学校法人等の学校設置者、学校並びに関係団体に求めています。
④全国高等学校総合文化祭
全国高等学校総合文化祭は、高校生の芸術文化活動の向上・充実と、相互交流を深めることを狙いとして、昭和52年から開催している我が国最大規模の高校生の文化の祭典です。
第43回となる2019年度は、「創造の羽を広げ、蒼天へ舞え バルーンの如く」を大会テーマとして、佐賀県において開催されます。出場者が日頃の活動の成果を競い合い、交流を深めるとともに、大会の企画・運営にも高校生が中心的な役割を担うなど、高校生ならではの柔軟な発想や熱意にあふれた大会となっています。
この大会において、演劇、日本音楽、郷土芸能の各部門で優秀な成績を収めた高校等が、東京の国立劇場に一堂に会し、演技・演奏を披露する「全国高等学校総合文化祭優秀校東京公演」を毎年夏に開催しています。
また、京都で開催される全国高校生伝統文化フェスティバルでは、我が国の伝統文化の継承・発展に取り組む高校生が日頃の成果を披露するとともに交流を図っています。

文化芸術による共生社会の実現
1 障害者等による文化芸術活動の推進
平成30年6月に「障害者による文化芸術活動の推進に関する法律」が施行されたことを受け、同法に基づく国の基本計画が平成31年3月に策定されました。2019年度からは、この計画に基づき、障害者による文化芸術活動の推進に関する施策を総合的かつ計画的に実施します。
また、障害のある方々の優れた文化芸術活動の国内外での公演・展示の実施や助成採択した劇場・音楽堂等や映画作品のバリアフリー字幕・音声ガイド制作への支援、特別支援学校の生徒による作品の展示や実演芸術の発表の場の提供等、障害者の文化芸術活動の充実に向けた支援に取り組んでいます。
さらに、国立美術館、国立博物館で、展覧会の入場料を無料としているほか、全国各地の劇場、コンサートホール、美術館、博物館等において、車いす使用者も利用ができるトイレやエレベーターの設置を行う等、障害のある方々に対する環境改善も進めています。

2 アイヌ文化の振興
政府では、アイヌ文化の復興等に関するナショナルセンターとして、北海道白老町に「民族共生象徴空間(愛称:ウポポイ)」の整備を進めており、文化庁では、その中核施設のうち、「国立アイヌ民族博物館」の整備を担い、施設整備や開業準備活動を行っています。
「国立アイヌ民族博物館」は、アイヌ民族の歴史や文化を主題とした初めての国立博物館として、東京オリンピック・パラリンピックに先立つ2020年4月の開館を予定しています。
「私たちのことば」など「私たちの」で始まる六つのテーマで、アイヌの人々が自分たちの文化を紹介する基本展示をはじめ、テーマ展示、子供展示、映像シアター、特別展示により、その歴史と文化、そして人々の現在の暮らしを多角的にわかりやすく紹介します。
また、展示解説文や音声ガイドには、インバウンドに対応した多言語のほか、アイヌ語を使用し、館内の案内表示にもアイヌ語の表記を行う予定です。(詳細はこちらを御覧ください。https://ainu-upopoy.jp/)

地域における文化の振興
1 多様な文化を生かした地域づくり
我が国には、全国各地に多様で豊かな文化が息づいています。こうした地域ごとの特色ある文化を生かして、地域振興につながる取組を支援します。

①国民文化祭
国民文化祭は、アマチュア活動を中心とした国民一般の様々な文化活動を全国規模で発表する場を提供し、顕彰等を実施することにより、文化活動への参加意欲を喚起し、新たな文化の創造を促し、地方文化の発展に寄与することを目的として、開催される文化の祭典です。第34回となる2019年度は、「文化の丁字路~西と東が出会う新潟~」をテーマとして新潟県で開催されます。
②文化芸術創造都市推進事業
文化芸術の持つ創造性を生かした地域振興、観光・産業振興等に取り組む地方自治体を支援するため、情報の収集・提供、会議・研修の実施等を通じて、国内ネットワークを強化し、国全体が文化芸術の持つ創造性により活性化するための基盤づくりを進めます。
③文化芸術創造拠点形成事業
地方公共団体が主体となり、地域住民や地域の芸・産学官とともに実施する、地域の文化芸術資源を活用した取組や、地方公共団体等による文化事業の企画・実施体制を構築・強化する取組を支援します。
④国際文化芸術発信拠点形成事業
2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会とその後を見据えた効果的な対外発信を行い、インバウンドの増加、活力ある豊かな地域社会を実現するため、芸術祭などを中核とし、文化芸術と観光、まちづくり、食、国際交流、福祉、教育、産業その他関連分野と有機的に連携した国際発信力のある拠点形成を支援します。

2 生活文化等の振興・普及
生活文化・国民娯楽は、我が国の文化芸術に広がりを与え、またそれを支える土台として機能しているとともに、和装や茶道、食文化など外国人がイメージする我が国の文化を数多く含んでおり、正に我が国の魅力そのものとして、観光振興や国際交流の推進等にも極めて重要な役割を果たしています。文化庁では、こうした生活文化等が持つ多様な価値と魅力を生かし発信するとともに、各分野に関する実態調査を行い、生活文化の振興等を図ります。

文化財の保存と継承
1 文化財保護制度の改革
過疎化や少子高齢化などを背景に文化財の確実な継承が危機に瀕していることを受け、平成29年5月に文部科学大臣から文化審議会に対して諮問がなされ、同年12月に「文化財の確実な継承に向けたこれからの時代にふさわしい保存と活用の在り方について」(第一次答申)が答申されました。これを踏まえ、「文化財保護法及び地方教育行政の組織及び運営に関する法律の一部を改正する法律」が国会での審議を経て、平成30年6月1日に成立しました。
改正法においては、文化財をまちづくりに生かしつつ、地域社会総がかりで、その継承に取り組んでいくため、文化財の計画的な保存・活用の促進や、地方文化財保護行政の推進力の強化を図るべく、新たな仕組みを位置付けることとしています。
まず、都道府県が、域内の文化財の保存・活用に係る基本的な方針、広域区域ごとの取組、災害発生時の対応等を記載した文化財の保存・活用に関する総合的な施策の大綱を策定できることとします。次に、市町村が、都道府県の大綱が策定されていればそれを勘案して、文化財の保存・活用に関する総合的な計画(文化財保存活用地域計画)を作成し、国の認定を申請できるとします。地域計画では、できる限り域内の文化財を網羅的に把握し、域内の文化財の保存及び活用に関する基本的な方針、保存・活用のために市町村が講ずる措置の内容等を記載します。作成に当たっては、住民等多様な主体の意見の反映に努めることとします。
作成した地域計画が国の認定を受けた場合、国に対して登録文化財とすべき物件を提案できることとします。また、国指定等文化財の現状変更の許可等、文化庁長官の権限である一部の事務について、現在移譲されている都道府県・市のみならず認定町村にも特例的に自ら事務を実施できることとします。
さらに、文化財の担い手の拡大を図るため、市町村が、地域において文化財保存・活用の事業や調査研究を行ったりする民間団体を「文化財保存活用支援団体」として指定できる仕組みを創設します。
一方、個々の文化財を確実に継承するため、国指定等文化財の所有者又は管理団体は、文化財の現状、保存管理上の留意事項や修理・活用の方針などを記載する当該文化財の「保存活用計画」を作成し、国の認定を申請できるとします。計画で修理等の行為の内容や具体的な部位が特定され、かつ適切な行為であること等が認められ文化庁長官の計画認定を受けた場合には、通常個別に要する現状変更等の許可を事後届出で良いとするなど手続を弾力化します。
さらに、文化財の所有者を支援する体制を充実させるため、現在、「特別な事情があるとき」に選任することができることとされている管理責任者について、文化財の「適切な管理のため必要があるとき」に選任できるよう要件を拡大しました。
地方公共団体において上述のような取組を推進し、地方文化財行政の一層の進展を図っていくためには、芸術文化分野を含む文化行政全体としての一体性を確保したり、景観・まちづくり行政、観光行政など他の行政分野も視野に入れた総合的・一体的な取組を可能としたりすることが重要となります。
このため、現在、教育委員会が行うこととされている文化財保護に関する事務について、各地方公共団体が効果的と考える場合には、条例により、地方公共団体の長が担当できることとします。ただし、地方公共団体の長が担当する場合には、専門的・技術的判断の確保や開発行為との均衡などを担保するため、文化財に関して優れた識見を有する者により構成される地方文化財保護審議会を必ず置くこととします。

2 文化財の指定をはじめとする保存・継承のための取組
文化財保護法に基づき、重要文化財、重要無形文化財、重要有形・無形民俗文化財、史跡・名勝・天然記念物、重要文化的景観、重要伝統的建造物群等を指定・選定し、重点的に保護するとともに、登録制度による緩やかな保護制度により、多種多様な文化財の保存・活用を図っています。さらに、文化財の保存のために欠くことのできない伝統的な技術・技能のうち、保存の措置を講ずる必要のあるものを選定保存技術として選定するとともに、その保持者・保存団体を認定しています。
また、これらの文化財について、保存と活用を図るために所有者、管理団体等が実施する事業に対して補助を行い、保存整備や活用等を引き続き推進します。
あわせて、国民の財産である文化財の散逸・滅失を未然に防ぐとともに、国民の鑑賞機会の充実を図るため、国による適切な保存・活用が必要な国宝・重要文化財等の買上げを実施するとともに、貴重な史跡等を国民共有の財産として大切に保存し、その後の整備・活用に対応することを目的として、地方公共団体が緊急に史跡等を公有化する事業に対し補助を行います。
東日本大震災や平成28年熊本地震等の大規模災害への対応として、被害を受けた国指定等文化財について、早期の保存・修復を図るため、文化財の所有者等が実施する被災文化財の復旧事業に対する指導、経費の補助など、必要な措置を講じます。

3 埋蔵文化財の保護
土地に埋蔵された文化財を保護するため、文化財保護法に基づき、開発等により破壊されるおそれのある遺構等の発掘調査、記録作成等の事業に対し、補助を行っています。また、水中に存在する埋蔵文化財(水中遺跡)の保護体制の整備充実を図るため、地方公共団体が水中遺跡の保存活用を円滑に推進するための『発掘調査のてびき―水中遺跡調査編―』(仮称)の作成を進めます。
加えて、地域の特色ある埋蔵文化財活用事業により、埋蔵文化財を活用した体験学習会等の実施による理解促進・普及啓発や、埋蔵文化財の保管・展示や活動拠点のための施設として、廃校等を転用した埋蔵文化財センター設備整備を行い、両者の一体的な運用を図ることによって、地域活性化を促進します。

4 古墳壁画の保存と活用
我が国では2例しか確認されていない極彩色古墳壁画である高松塚古墳及びキトラ古墳の両古墳壁画は、「国宝高松塚古墳壁画仮設修理施設」及び「キトラ古墳壁画保存管理施設」で保存修理・活用等が行われています。
国宝高松塚古墳壁画は、石室を解体して壁画を修理する保存方針に基づき、仮設修理施設において保存修理作業等を実施しています。引き続き壁画の保存修理作業をすすめるとともに、修理中の壁画を公開します。
特別史跡キトラ古墳の恒久的な保存と確実な継承のため、平成28年秋にオープンした「キトラ古墳壁画体験館 四神の館」において、石室から取り外した重要文化財キトラ古墳壁画の保存と活用を推進し、整備された古墳の公開を進めます。

5 世界文化遺産と無形文化遺産
我が国を代表する固有の文化遺産を、ユネスコの世界遺産一覧表に記載することは、日本文化を世界に向けて発信するとともに、国民の歴史と文化を尊ぶ心を培う上で大きな意義を有します。平成30年6月には、「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」が世界遺産一覧表に記載されたところです。引き続き、一覧表に記載された世界遺産を適切に保護するとともに、我が国の誇る貴重な文化遺産の世界遺産一覧表への記載を推進します。
また、国際的な無形文化遺産の一層の認知やその重要性に関する意識の向上等に貢献するため、我が国の無形文化遺産の多様性や豊かさ、保護の取組等について、国際社会に積極的にアピールしていくことが求められます。平成30年11月には、「来訪神:仮面・仮装の神々」が無形文化遺産の代表一覧表に記載されたところです。引き続き、我が国の無形文化遺産を適切に保護・振興するとともにユネスコ無形文化遺産への登録を推進します。

文化財をはじめとする文化資源を活用した付加価値の創出
1 文化資源を活用したインバウンドのための環境整備
平成28年に策定された「明日の日本を支える観光ビジョン」において掲げられた「文化財の観光資源としての開花」を推進するため、文化庁では文化財を中核とする観光拠点の整備、並びに当該拠点等において実施される文化財等の観光資源としての魅力を向上させる取組への支援を行っています。
平成31年1月より、 国際観光旅客税が創設され、観光先進国実現に向けた観光基盤の拡充・強化が推進されています。
文化財についても地域固有の文化資源として、国内外問わず多くの人々にその歴史的価値・魅力を発信すべく、国際観光旅客税を充当し、文化財に新たな付加価値を付与してより魅力的なものとなるよう「磨き上げ」る取組を支援します。

2 日本遺産の魅力発信
我が国の文化財や伝統文化を通じた地域の活性化を図るためには、その歴史的経緯や、地域の風土に根差した世代を超えて受け継がれている伝承、風習などを踏まえたストーリーの下に有形・無形の文化財をパッケージ化し、地域全体として一体的に整備・活用し国内外に積極的・効果的に情報発信等の取組を進めていくことが必要です。
地域の歴史的魅力や特色を通じて我が国の文化・伝統を語るストーリーを「日本遺産(Japan Heritage)」に認定するとともに、歴史的魅力にあふれた文化財群を地域主体で総合的に整備・活用し、国内外に戦略的に発信する取組を支援することにより、地域の活性化を図ります。
平成31年4月現在、全国で67つのストーリーを認定しており、日本遺産を通じた地域活性化に資する情報発信や人材育成事業、普及啓発事業、公開活用のための整備に係る事業等に対し支援を行っています。

文化芸術によるイノベーションの創出、国家ブランドの構築
1 文化経済戦略の推進
国・地方公共団体・企業・個人が文化への戦略的投資を拡大し、文化を起点に産業等他分野と連携し、創出された新たな価値が文化に再投資され、持続的に発展する「文化と経済の好循環」を目指し、平成29年12月に「文化経済戦略」を策定しました。この戦略推進のための主要施策の内容や目標等を明らかにした「文化経済戦略アクションプラン」を平成30年8月に策定し、関係府省庁と緊密に連携しながら文化経済戦略を推進します。
また、近年、興行入場券の高額転売が社会問題となっていることを踏まえ、興行入場券の適正な流通を確保し、もって興行の振興を通じた文化及びスポーツの振興並びに国民の消費生活の安定等を目的とした「特定興行入場券の不正転売の禁止等による興行入場券の適正な流通の確保に関する法律」が平成30年12月に成立し、本年6月14日から施行されます。本法律の適切な運用を図るため、国民への周知等を行い、興行を通じた文化及びスポーツの振興を推進します。

2 企業等による芸術文化活動への支援
我が国における文化芸術活動を振興するために、日本作家及び現代日本アートの国際的な評価を高め、世界のアート市場規模に比して小規模にとどまっている我が国アート市場の活性化と我が国アートの持続的発展を可能とするシステムを形成します。
あわせて、公益社団法人企業メセナ協議会との連携の下、同協議会が主催する「メセナアワード」の一環として、「文化庁長官賞」を設け、企業や企業財団による優れたメセナ(芸術・文化振興による社会創造)活動の顕彰を行っています。

3 国際文化交流・協力の推進と日本文化の発信
国際文化交流・協力を推進するとともに、日本文化を戦略的に発信し、文化芸術を通じた諸外国との相互理解の促進及び国家ブランド構築への貢献を図ります。
具体的には、我が国の芸術団体と外国の芸術団体との国際共同制作公演、我が国で開催される国際発信力のあるフェスティバル、海外で開催されるフェスティバルへの参加公演や国際展への出展、映画、メディア芸術の海外展開などを支援します。また、「国際文化交流の祭典の実施の推進に関する法律」に基づき、平成31年3月に閣議決定された「国際文化交流の祭典の推進に関する基本計画」を踏まえ、日本で行われる世界の関心を集める国際文化交流の祭典の実施を推進します。
さらに、著名な文化人、芸術家等を「文化交流使」として派遣し、日本の優れた芸術文化を広く世界に発信します。
また、日中韓3か国から1都市ずつを選定し、様々な文化芸術イベントを通じて都市間で交流を行う「東アジア文化都市」事業等の実施を通じて、東アジア諸国との交流の拡大に努めます。その他、国内のアーティスト・イン・レジデンス実施団体が行う国内外芸術家の滞在型創作活動等を支援することにより、海外のアーティスト・イン・レジデンス実施団体との国際的な協力関係を活発にし、双方向の国際文化交流を促進します。
また、我が国の知見を生かした文化遺産国際協力を推進し、人類共通の財産である世界各地の文化遺産の保護に貢献します。

博物館・劇場等の振興
1 博物館の振興
博物館は、歴史・芸術・民俗・産業・自然科学等に関する資料の収集、保管、展示、調査研究、教育普及等の本来の役割や機能に加え、観光・まちづくり・教育等の関連分野との有機的な連携を図りつつ、地域の文化振興の拠点となることが期待されています。
こうした背景を踏まえ、「文部科学省設置法」を改正し、平成30年10月、博物館に関する事務を文部科学省から文化庁へ移管しました。文化庁は、博物館全体を所管する立場から、博物館のさらなる振興に取り組んでまいります。
なお、2019年9月にはICOM(国際博物館会議)京都大会2019が開催されます。この大会は、諸外国に対し我が国の文化を発信する絶好の機会であることから、開催に向け関係機関と連携し、博物館に対する支援をしっかりと推進します。

①博物館への支援
博物館職員の資質向上を図り、博物館活動を充実させるため、学芸員の資格認定試験や、博物館長及び学芸員等を対象とした専門的な研修等を実施しています。
また、博物館が地域住民の文化芸術活動・学習活動の場として積極的に活用され、国内外の文化芸術の発信拠点としての機能が充実するよう、「博物館ネットワークによる未来へのレガシー継承・発信事業」や「博物館を中核とした文化クラスター形成事業」等、様々な支援を行います。
②国立館における取組
国立美術館・博物館は、開館時間を延長して週2回の夜間開館(金・土曜日は20時まで)と、それに連動したコンサート・野外シネマなどの参加・体験型各種イベントを実施しています。
また、東京国立博物館では、我が国の文化資源の魅力を広く発信することを目的として、インバウンドを含む来館者の満足度を高めるためのプラン(トーハク新時代プラン)を公表し、さらなる充実に取り組みます。
③(独)国立美術館について
独立行政法人国立美術館は、6館(東京国立近代美術館、京都国立近代美術館、国立映画アーカイブ、国立西洋美術館、国立国際美術館、国立新美術館)が、それぞれの特色を生かしつつ、連携・協力し、国民のニーズや研究成果を踏まえ、魅力ある質の高い所蔵作品展、企画展及び企画上映を実施しています。
また、美術作品の収集・保管、教育普及活動やこれらに関する調査研究等を通じ、我が国の美術振興の拠点として、国内外の研究者との交流、学芸員等の資質向上のための研修、公私立美術館への助言、地方への巡回展などを行います。
④(独)国立文化財機構について
独立行政法人国立文化財機構は、国立博物館4館(東京・京都・奈良・九州)を設置し、貴重な国民的財産である文化財の保存と活用を図ることを目的とし、有形文化財を収集・保管して広く観覧に供するとともに、東京文化財研究所、奈良文化財研究所、アジア太平洋無形文化遺産研究センターを加えた7施設において調査・研究などを行っています。
同機構では、国宝・重要文化財を含めて約12万件の文化財を所蔵しています。これらの文化財を活用した平常展、企画展などとともに、平成30年7月に開設した文化財活用センターでの新たなコンテンツやプログラム開発等の取組を通じて日本の歴史・伝統文化や東洋文化の魅力を国内外に発信する拠点としての役割も担っています。
なお、同法人は平成26年7月に「文化財防災ネットワーク推進本部」を設置し、今後起こり得る大規模災害に対応した文化財等の救出・救援体勢を確保するため、文化財の防災・救援業務に係る調査・研究等を行っています。
⑤(独)国立科学博物館について
独立行政法人国立科学博物館は、科学系博物館のナショナルセンターとして、自然史・科学技術史に関する調査研究、ナショナルコレクションとしての標本資料の構築・継承を行うとともに、それらの成果を展示や学習支援活動に活用して、国民の自然科学や科学技術に関する理解の増進に努めています。
また、同法人は、平成30年10月に文部科学省から文化庁に所管が移ったことに伴い、社会教育施設としての役割に加え、同法人の有する人材やコレクション等の資源を有効活用し、観光や地域振興にも貢献するとともに、科学を「文化」として根付かせる機運の醸成を目指します。
⑥国立近現代建築資料館について
国立近現代建築資料館では、我が国の近現代建築資料における劣化、散逸、海外流出防止を目的として、情報収集、資料の収集・保管及び調査研究を行っています。
あわせて、展覧会の開催を通じて、我が国の建築文化に対する国民への理解増進を図っています。(詳細は、こちらを御覧ください。http://nama.bunka.go.jp/)

2 劇場・音楽堂等の振興
①劇場・音楽堂等の活性化
「劇場、音楽堂等の活性化に関する法律(平成24年6月公布・施行)」を踏まえ、我が国の文化拠点である劇場・音楽堂等が行う、音楽、舞踊、演劇等の実演芸術の創造発信や専門的人材の養成、普及啓発のための事業、劇場・音楽堂等間のネットワーク形成に資する事業を支援することで、劇場・音楽堂等が地域の核として文化の発信を牽引することを目指しています。
また、平成30年度から、バリアフリーや多言語対応の整備を行うことにより、全ての人が文化芸術に親しむことができる拠点づくりの支援をしています。
②国立の劇場における取組
国立劇場(国立劇場、国立演芸場、国立能楽堂、国立文楽劇場及び国立劇場おきなわ)は、伝統芸能の保存と振興を図るため、歌舞伎、文楽、能楽、大衆芸能、組踊などの伝統芸能を、各種の演出や技法を尊重しながら、できる限り古典伝承のままの姿で公開し、国民が伝統芸能を鑑賞する機会を提供しています。また、伝統芸能の伝承者養成や調査研究等の事業を実施しています。
新国立劇場は、現代舞台芸術の振興と普及を図るため、国際的に比肩しうる高い水準のオペラ、バレエ、現代舞踊、演劇などの自主制作の公演を行い、国民が現代舞台芸術を鑑賞する機会を提供しています。また、現代舞台芸術の実演家等の研修や調査研究等の事業を実施しています。
これらの劇場の運営は、独立行政法人日本芸術文化振興会が行っており、効率的かつ効果的に事業の充実に努めています。

社会の変化に対応した国語・日本語教育に関する施策の推進
1 国語施策の推進
国語に関する問題は、文化審議会国語分科会(前身は国語審議会)が中心となって検討を行い、様々な改善を図っています。具体的には、国語の表記に関して、一般の社会生活における「目安」又は「よりどころ」として、「常用漢字表」「現代仮名遣い」「外来語の表記」などを制定してきました。最近では、平成26年2月に「「異字同訓」の漢字の使い分け例(報告)」、28年2月に「常用漢字表の字体・字形に関する指針(報告)」、30年3月に「分かり合うための言語コミュニケーション(報告)」をまとめています。また、30年11月には、「「障害」の表記に関するこれまでの考え方(国語分科会確認事項)」を確認しました。現在は、官公庁における文書作成について審議を進めています。
また、国民全体の国語に対する関心と理解を深めるため、「国語問題研究協議会」の開催(2019年8月7日・8日:石川県金沢市、8月22日・23日:徳島県徳島市)や「国語に関する世論調査」の実施、加えて、文化庁ウェブサイト上で「国語施策情報」、文化審議会答申「敬語の指針」に基づく動画「敬語おもしろ相談室」、「国語に関する世論調査」に基づく動画「ことば食堂へようこそ!」の公開など、必要な施策に取り組んでいます。
さらに、平成21年2月にユネスコが消滅の危機にあると発表した、国内のアイヌ語など八つの言語・方言及び東日本大震災の影響が懸念される被災地の方言の実態把握と保存・継承のための調査研究や、その支援を行っています。2019年度も引き続き、調査データが不十分な地域の方言調査をはじめ、危機言語・方言を抱える地域相互と研究者の連携を図るための協議会や危機言語・方言の状況とそれらの価値を認識する場としてのサミット(鹿児島県奄美市)等の開催、被災地方言の保存・継承のための取組支援、加えてアイヌ語のアナログ音声資料のデジタル化やアーカイブ作成支援、アーカイブ作成推進のための人材育成を予定しています。

2 外国人に対する日本語教育施策の推進
コミュニケーションの手段、文化発信の基盤としての日本語教育の推進を図るため様々な取組を行っています。
具体的には、文化審議会国語分科会に日本語教育小委員会を設置し、外国人が日本社会の一員として日本語を用いて円滑に生活を送ることができるよう、「生活者としての外国人」に対する日本語教育の内容及び方法について検討を行い、平成25年2月までに「日本語教育の標準的なカリキュラム案について」等五つの報告を取りまとめました。また、平成30年3月に、日本語教育人材に求められる資質・能力及び養成・研修における教育内容やモデルカリキュラムについて検討を行い、文化審議会国語分科会において「日本語教育人材の養成・研修の在り方について」(報告)を取りまとめました。平成31年3月には、日本語教師の活動分野として生活者、留学生、児童生徒等に、就労者、難民等、海外を加えた改定版を取りまとめるとともに、日本語教育の資格の在り方に関する基本的な考え方を整理しました。2019年度は、日本語教師の資格について引き続き検討を行うとともに、日本語教育の標準や日本語能力の判定基準についても審議を行う予定です。
また、「カリキュラム案」等を活用し、地域の実情に応じた日本語教育の実施等を支援する「生活者としての外国人」のための日本語教育事業を実施しています。日本語教室が設置されていない地方公共団体にアドバイザーを派遣し、日本語教室の開設を支援するほか、日本語教室の設置が難しい地域に住む外国人に対してインターネット等を活用した日本語学習教材の開発などを行う「「生活者としての外国人」のための日本語教室空白地域解消推進事業」を実施し地域の日本語教育を推進しています。
さらに、「日本語教育人材養成・研修カリキュラム等開発事業」を実施し、日本語教育に携わる人材の資質・能力の向上を図っています。
2019年度からは新たに、地域日本語教育の総合的な体制づくり推進事業を実施し、地方公共団体が関係機関等と有機的に連携し、日本語教育環境を強化するための総合的な体制を整備するための支援を行います。
あわせて、これら事業における取組の優れた実践事例等については、文化庁日本語教育大会などを通じ、周知・広報に努めることとしています。加えて、日本語教育関係機関が作成・開発し、公表している日本語教育に関する各種コンテンツ(教材、カリキュラム、報告書等)に関する情報を横断的に検索できるシステム「日本語教育コンテンツ共有システム(NEWS)」を運用しています。
このほか、難民に対する日本語教育、日本語教育に関する調査・調査研究等の取組を行います。

新しい時代に対応した著作権施策の展開
今日、デジタル・ネットワークの発達に伴い、著作物等の創作、流通及び利用をめぐる状況は急速に変化しており、時代のニーズに対応した制度や環境整備が求められています。

1 海賊版対策を中心とした著作権分科会報告書
文化審議会著作権分科会においては、社会の要請を踏まえ、著作権制度の見直しなどについて検討を行っています。
第18期(平成30年度)においては、「リーチサイト等を通じた侵害コンテンツへの誘導行為への対応」や「ダウンロード違法化の対象範囲の見直し」をはじめとする著作権等の適切な保護を図るための措置のほか、「著作物等の利用許諾に係る権利の対抗制度の導入」をはじめとする著作物等の利用の円滑化を図るための措置等について検討を行い、平成31年2月には、「文化審議会著作権分科会報告書」を取りまとめました。
具体的には、リーチサイト・リーチアプリについては、利用者を侵害コンテンツにアクセスすることを容易にすることで、その拡散を助長する蓋然性の高い場・手段であると評価されることから、①リーチサイトを運営する行為やリーチアプリを提供する行為、②リーチサイト・リーチアプリにおいて侵害コンテンツに係るリンクを貼る行為等の双方を規制していくこととされています。
また、侵害コンテンツのダウンロード違法化については、現行法上既に違法となっている音楽・映像以外のコンテンツについても、幅広く違法ダウンロードによる被害が確認されていることから、諸外国の取扱い等も踏まえ、対象範囲拡大していくこととされました。その際、ユーザー保護の観点から、違法にアップロードされたものだと知らなかった場合には違法とならないように確実に担保するとともに、特に刑事罰については、悪質性の高い行為に限定して適用することとされています。
この他、著作権分科会においては、クリエイターへの適切な対価還元に関する課題や、インターネットによる国境を越えた著作権侵害行為に対する対応の在り方、著作権保護に向けた国際的な対応の在り方等について検討を行っています。
今後とも、著作物等の利用と権利の保護のバランスを図りながら、新たな時代の要請に応えることができるよう、著作権制度や流通の在り方を審議します。

2 平成30年改正の円滑な施行に向けた対応
平成31年1月1日、デジタル化・ネットワーク化の進展に対応した柔軟な権利制限規定の整備や教育の情報化に対応した権利制限規定等の整備を行う「著作権法の一部を改正する法律」が一部の規定を除いて、関連の政省令等とともに施行されました。
教育の情報化に対応した権利制限規定等の整備については、平成31年2月15日付で、教育機関の設置者が授業目的公衆送信補償金を支払う単一の団体として一般社団法人授業目的公衆送信補償金等管理協会(SARTRAS)を文化庁長官より指定しました。また今回の法整備を契機に、教育関係団体と権利者団体との間で継続的な議論を行うための場として「著作物の教育利用に関する関係者フォーラム」が平成30年11月27日付で設立され、①授業目的公衆送信補償金の徴収事務等を含む補償金の在り方、②教育現場における著作権に関する研修や普及啓発等、③著作権法の解釈に関するガイドライン、④補償金制度を補完するライセンス環境等について、学校現場の実態等を踏まえながら当事者間で検討が行われています。

3 著作権の円滑な流通の促進
インターネットの普及は、著作物のデジタル化とあいまって、著作物の流通形態を劇的に変化させています。このような状況の中で、著作物の流通促進の観点から、次の施策を行っています。
①「著作権等管理事業法」の的確な運用
著作権等の管理については、著作物等の利用者の便宜を図るとともに、権利の実効性を高めるため、著作物等を集中的に管理する方式が普及しています。これらの事業を行う「著作権等管理事業者」に対して、「著作権等管理事業法」に基づき、年度ごとの事業報告の徴収や定期的な立入検査などを行い、適切に事業が行われるよう指導監督を行います(登録事業者数:28事業者〈平成31年3月1日現在〉)。
②権利処理の円滑化に向けた取組
著作権者等の所在が不明の場合に著作物等を適法に利用するための「裁定制度」の運用を行います。平成30年度は書籍における著作物や放送番組における実演など35816件の著作物等の利用について裁定を行いました。なお、平成30年度には、裁定制度の利用円滑化の観点から、国及び地方公共団体等が裁定制度を利用する際、補償金の事前供託を不要とする法改正も行いました(平成31年1月1日施行)。(詳細はこちらを御覧ください。http://www.bunka.go.jp/seisaku/chosakuken/seidokaisetsu/chosakukensha_fumei/index.html)
また、コンテンツの権利処理の円滑化を目的として、平成29年度から、引き続き新規事業として「コンテンツの権利情報集約化等に向けた実証事業」に取り組んでいます。

4 著作権教育の充実
著作権に関する意識や知識を身に付けることはますます重要となっており、現行の中学校や高等学校の学習指導要領においても著作権について取り扱っています。
また、全国各地での講習会の開催や教材の作成・提供を行っています。講習会は、国民一般、都道府県等著作権事務担当者、図書館等職員及び教職員を対象として毎年10数箇所で開催しています。また、教材は、児童生徒を対象とした著作権学習ソフトウエア、教職員を対象とした指導事例集、大学生や企業を対象とした映像資料、初心者向けのテキスト、著作権Q&Aデータベース「著作権なるほど質問箱」などを文化庁ホームページ(http://www.bunka.go.jp/seisaku/chosakuken/seidokaisetsu/)を通して広く提供しています。

5 国際的課題への対応
デジタル化・ネットワーク化の進展に伴い、著作物の国境を越えた新たな流通形態が生まれ、我が国コンテンツの海外での侵害形態として、CD、DVD等いわゆる「パッケージ」の海賊版に加え、インターネット上の著作権侵害が深刻な問題となっています。
このような現状に対応した適切な海賊版(違法複製物)対策と国際ルールの構築を積極的に推進しています。
①海外における著作権侵害対策
アジア地域を中心に、我が国のゲームソフト、アニメ、音楽などに対する関心が高まる一方で、これらを違法に複製した海賊版の製造・流通及びインターネット上の著作権侵害が、放置することのできない深刻な問題となっています。そのため、権利者が海外において適切に権利執行するための環境整備を目的として、主に以下の取組を行っています。
(イ)政府間協議の場を通じた侵害発生国・地域への働きかけ
(ロ)アジア・太平洋諸国の政府職員を対象とした研修
(ハ)侵害発生国・地域における一般消費者を対象とした普及啓発活動
②国際的ルールづくりへの参画
国際的ルールづくりへの参画としては、現在WIPO(世界知的所有権機関)において放送機関に関する新条約の策定に向けた議論などが行われており、我が国は積極的に参画しています。また、平成30年4月に「盲人、視覚障害者その他の印刷物の判読に障害のある者が発行された著作物を利用する機会を促進するためのマラケシュ条約」の締結について国会承認されたことを踏まえ、同年10月に加入書を寄託し、平成31年1月1日から同条約が我が国において効力を生ずることとなりました。
さらに、平成30年12月30日に環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定(TPP11協定)が、平成31年2月1日に日EU経済連携協定(EPA)が発効するとともに、EPA交渉等においてアジア諸国を中心に著作権等関係条約の締結を働き掛けています。

宗教法人制度と宗務行政
我が国には、多種多様な宗教団体が存在しており、それらの多くは宗教法人法に基づく宗教法人です。文化庁では、宗教法人制度を円滑に進めるため、次のとおり様々な取組を行っています。

①宗教法人の管理運営の推進
文化庁は、都道府県の宗務行政に対する助言や、都道府県事務担当者研修会、宗教法人のための実務研修会の実施、手引書の作成などを行っています。また、我が国における宗教の動向を把握するため、毎年度、宗教界の協力を得て宗教法人に関する「宗教統計調査」を実施し、『宗教年鑑』として発行するほか、宗教に関する資料の収集を行っています。
②不活動宗教法人対策の推進
宗教法人の中には、設立後、何らかの事情によって活動を停止してしまった、いわゆる「不活動宗教法人」が存在します。不活動宗教法人は、その法人格が売買の対象となり、第三者が法人格を悪用して事業を行うなど社会的な問題を引き起こすおそれがあり、ひいては宗教法人制度全体に対する社会的信頼を損なうことにもなりかねません。
このため、文化庁と都道府県は、不活動状態に陥った法人について、活動再開ができない場合には、吸収合併や任意解散の認証によって、またこれらの方法で対応できない場合には、裁判所に解散命令の申立てを行うことによって、不活動宗教法人の整理を進めています。

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