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科学技術・学術政策の推進

文部科学省 科学技術・学術政策局/研究振興局/研究開発局

はじめに
現在、我が国は、急速に進む少子高齢化に伴う生産年齢人口の減少や、中国、韓国をはじめとした諸外国の台頭による国際競争力の相対的低下など、様々な課題に直面しています。科学技術イノベーションは、これらの課題を解決し、我が国が将来にわたって成長と繁栄を遂げるための「要」であり、政府一丸となって実現する「生産性革命」の中核となるものです。
こうした現状を踏まえ、平成28年度からスタートした「第5期科学技術基本計画」では、①世界に先駆けた「Society5.0」の実現に向けた一連の取組に代表される、未来の産業創造と社会変革に向けた新たな価値創出の取組、②経済・社会的課題への対応、③人材育成や学術研究・基礎研究など、科学技術イノベーションの基盤的な力の強化、④オープンイノベーションの推進等、イノベーション創出に向けた人材、知、資金の好循環システムの構築の四つを重要な柱と位置付けています。この計画に基づき、関係各府省庁が連携を図りつつ、成果の最大化に向けて科学技術政策を推進しているところです。
文部科学省では、「世界で最もイノベーションに適した国」を目指し、科学技術イノベーション創出のための様々な取組を実施しています。平成30年度第2次補正予算案、及び平成31年度政府予算案においては、特に、若手研究者支援を中心とした科研費の抜本的な拡充や、大胆な発想に基づく挑戦的な研究開発に取り組むための、ムーンショット型研究開発制度の創設、また世界最高水準の大型研究施設であるポスト「京」及び次世代放射光施設の推進や、国民の安全・安心の確保に向けた南海トラフ海底地震津波観測網の構築等のために必要な経費を確保しました。本章では、これらを始めとした科学技術イノベーションの創出や、幅広い分野の研究開発に向けた文部科学省における取組の全体像について紹介します。

未来社会の実現に向けた先端研究の抜本的強化
文部科学省では、「Society5.0」という未来社会実現の鍵となる人工知能、ビッグデータ等の情報科学技術、ナノテクノロジー・材料科学技術、光・量子技術等の先端的な研究開発や戦略的な融合研究において主に次のような取組を実施します。
1 情報科学技術分野における研究開発の推進
情報科学技術は、あらゆる分野の成果創出の鍵であり、近年、人工知能をはじめとして世界中で盛んに研究開発が進められています。そこで、文部科学省では、①理化学研究所「革新知能統合研究センター」において、革新的な人工知能の基盤技術等の研究開発を推進するとともに、②科学技術振興機構(JST)において、人工知能等の分野における若手研究者の独創的な発想や、挑戦的な研究課題への支援を行い、①②を「AIP:人工知能/ビッグデータ/IoT/サイバーセキュリティ統合プロジェクト」として一体的に推進しています。一方、政府全体としては、統合イノベーション戦略推進会議の下、関係府省が連携して我が国としての人工知能技術の研究開発と社会実装、人材育成等に関する戦略の策定に向けて議論を進めています。
また、平成30年度からは、「Society5.0実現化研究拠点支援事業」により、大学等において情報科学技術を核としたSociety5.0の実証・課題解決の先端中核拠点の形成を支援しています。
2 ナノテクノロジー・材料科学技術分野における研究開発の推進
ナノテクノロジー・材料科学技術は、未来社会における新たな価値創出の鍵となり、様々な分野を支える基礎基盤技術です。文部科学省では、平成31年度から新たに、材料やデバイスをつくりあげるプロセスに注目した「材料の社会実装に向けたプロセスサイエンス構築事業」を開始するなど、様々な取組を推進します。
また、ナノテク・材料分野の中核的役割を果たす国立研究開発法人物質・材料研究機構(NIMS)では、新物質・新材料の創製や、幅広い社会ニーズに応える材料の高度化に向けた研究開発を行うとともに、技術移転の促進、情報発信、研究者の養成、国際的ネットワークの構築等を推進します。
さらに同機構では「革新的材料開発力強化プログラム(M-cube)」として、産業界と大学等を結ぶオープンプラットフォームの形成、世界中の人・モノ・資金が集まる国際研究拠点の構築、世界最先端機器やデータプラットフォームなど世界最高水準の研究基盤の整備を、実験の高速化・効率化などのスマートラボラトリ化と併せて推進することにより、我が国全体の材料開発力の強化に取り組みます。
3 量子科学技術(光・量子技術)分野における研究開発の推進
「量子」のふるまいや影響に関する科学とそれを応用する技術である量子科学技術は、近年の技術進展により、Society5.0実現に向けた社会課題の解決と産業応用を視野に入れた新しい技術体系が発展する兆しがあります。文部科学省では、平成30年度から、経済・社会的な重要課題に対し、量子科学技術を駆使して、非連続的な解決を目指す研究開発プログラムである「光・量子飛躍フラッグシッププログラム(Q-LEAP)」を開始しました。本プログラムでは、①量子情報処理(主に量子シミュレータ・量子コンピュータ)、②量子計測・センシング、③次世代レーザーを対象とし、プログラムディレクターによるきめ細かな進捗管理によりプロトタイプによる実証を目指すFlagshipプロジェクトや、基礎基盤研究を推進します。
また、平成28年4月に発足した国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構(QST)において、量子科学技術を一体的、総合的に推進します。
4 先駆的・戦略的な融合研究の推進
未来社会を実現する新たなイノベーションの創出には、異なる研究分野や技術の融合が重要です。イノベーション創出をけん引する中核機関として「特定国立研究開発法人」に指定された理化学研究所では、各研究領域で最先端を行くセンター群の連携(エンジニアリング・ネットワーク)による未来志向の社会課題解決に向け、脳科学とAI研究の融合による次世代ロボティクス等の先駆的・戦略的な融合研究や、各研究領域に共通の数理科学的アプローチを通じた異分野融合・新領域創出を促進する数理科学研究(数理創造プログラム)を推進します。

科学技術イノベーション・システムの構築
文部科学省では、科学技術イノベーションの推進に向けたシステム改革や出口を明確に見据えた挑戦的な研究開発の推進に係る取組として、主に以下のような取組を実施します。
1 オープンイノベーション促進システムの整備
近年、産業構造は資本集約型から知識集約型に大きく変化しようとしており、産業界において、オープンイノベーションを本格化させようとしています。こうした中で、これまでの産学連携は大学と企業の研究開発部門との協力が主だったところ、産業界では、研究開発部門のみならず製造部門・事業部門も含めた各階層で大学との連携を行うニーズが高まってきています。一方、大学や国立研究開発法人は、そういった企業の事業戦略に深く関わる研究開発を組織的に実施できるような体制が、まだ十分に整っていない状況です。
したがって、文部科学省では、大学内において、競争領域に重点を置いた大型共同研究を集中管理する体制(オープンイノベーション機構)の構築を平成30年度から支援しています。
また、オープンイノベーション機構の整備が、大学の教育研究の高度化につながっていくことが必要です。このため、オープンイノベーション機構には非競争領域の研究コンソーシアムを併設する必要があります。このため、平成28年度より取り組んでいる「産学共創プラットフォーム共同研究推進プログラム(OPERA)」において、オープンイノベーション機構連携型を設けています。
2 地方創生に資するイノベーション・エコシステムの形成
地域の特性を生かした科学技術イノベーションの推進は、地域産業の高付加価値化や新産業・雇用創出につながることから、極めて重要です。
文部科学省では、地域の発展ビジョンと主体性を重視した施策を通じて、地域科学技術イノベーションの創出に取り組んでまいりました。
平成31年度においては、平成28年度から取り組んでいる「地域イノベーション・エコシステム形成プログラム」を拡大し、地域の成長に貢献しようとする地域大学等に、事業プロデュースチームを創設し、地域内外の人材や技術を取り込みながら、地域が持つ強みを生かした科学技術イノベーションを推進し、新産業・新事業の創出を図ることにより、グローバルな展開も視野に入れた日本型イノベーション・エコシステムの形成を目指します。
また、平成31年度より新たに、「科学技術イノベーションによる地域社会課題解決(INSPIRE)」を開始します。これにより、地方公共団体、大学、産業界などが連携し、地域が目指すべき将来像を描くとともに、それを実現するために必要な課題解決を、科学技術イノベーションを通じて実現していくことを目指します。
3 強い大学発ベンチャー創出の加速
大学発ベンチャーは、イノベーションの担い手として期待される一方、販路の開拓、知的財産の取扱い、資金調達等に関して潜在的な問題を抱えており、特に近年その設立数は低調です。
文部科学省では、強い大学発ベンチャーの創出を加速させるため、(1)創業前の段階から、大学の革新的技術の研究開発支援と、事業化ノウハウを持った人材による事業育成を一体的に実施する「大学発新産業創出プログラム(START)」、(2)これまで各大学で実施してきたアントレプレナー育成事業に係る取組の成果や知見を活用しつつ、人材育成プログラムへの受講生の拡大やロールモデル創出の加速に向けたプログラムの発展に取り組むことで、起業活動率の向上、アントレプレナーシップの醸成を目指す「次世代アントレプレナー育成事業(EDGE-NEXT)」、(3)特許群化やパッケージ化を進めることで国策上重要な特許等の活用促進を図る「知財活用支援事業」等の取組を一体的に推進しています。
4 ハイリスク・ハイインパクトな研究開発の推進
新しい知識やアイデアが、組織や国の競争力を大きく左右する現代においては、新しい試みに果敢に挑戦し、非連続なイノベーションを積極的に生み出すハイリスク・ハイインパクトな研究開発を推進していくことが重要です。そこで、平成29年度より取り組んでいる「未来社会創造事業」では、経済・社会的にインパクトのあるターゲットを明確に見据えた技術的にチャレンジングな目標を設定し、民間投資を誘発しつつ、多様な研究成果を活用し、実用化が可能かどうかを見極められる段階(概念実証:POC)を目指した研究開発を実施します。また、平成30年度より「共通基盤領域」を新たに設定し、多様な研究開発活動を支える計測分析技術・機器等の開発を進めています。
加えて、「革新的研究開発推進プログラム(ImPACT)」の取組が節目を迎えることを受け、総合科学技術・イノベーション会議が定める野心的目標(ムーンショット目標)の下、関係府省が一体となり、より大胆な発想に基づく挑戦的な研究開発を推進する「ムーンショット型研究開発制度」を創設します。文部科学省は、共通基盤的な研究開発や萌芽的・探索的な研究開発を実施します。

基礎研究力強化と世界最高水準の研究拠点の形成
学術研究・基礎研究は、イノベーションの源泉たる科学技術のシーズを生み出すとともに、新しい知的・文化的価値を創造し、社会の発展に寄与するものです。このため、研究者の独創的な発想に基づく多様で質の高い学術研究及び世界最先端の基礎研究の推進等を図るとともに、平成31年度からは「研究力向上加速プラン」として、若手研究者を中心に研究力強化の取組を進めてまいります。
1 科学研究費助成事業(科研費)
新しい知の創出と重厚な知的蓄積の形成を図るため、人文学・社会科学から自然科学まで全ての分野にわたり、あらゆる学術研究を支援します。
学術の現代的要請(挑戦性、総合性、融合性、国際性)やイノベーションをめぐる動向に対し、より的確に対応するため、平成29年1月に改定した「科研費改革の実施方針」に基づき、審査システムの見直しをはじめとする抜本的な改革を進めています。
平成31年度には、研究者のキャリア形成に応じた支援を図る「科研費若手支援プラン」の実行により、若手研究者への支援を重点的に強化するとともに、「国際共同研究加速基金」の拡充により、国際共同研究を加速し、科研費改革を着実に推進します。
2 戦略的創造研究推進事業(新技術シーズ創出)
トップダウンで定めた戦略目標・研究領域において、大学等の研究者から提案を募り、組織・分野の枠を越えた時限的な研究体制を構築して、イノベーション指向の戦略的な基礎研究を推進するとともに、若手研究者等の挑戦的な研究の機会の創出などを実施し、有望な成果について研究を加速・深化します。
3 研究大学強化促進事業
世界水準の優れた研究大学群を増強するため、研究マネジメント人材(リサーチ・アドミニストレーターを含む)群の確保・活用と大学改革・集中的な研究環境改革の一体的な推進を支援・促進し、我が国全体の研究力強化を図ります。
4 世界トップレベル研究拠点プログラム(WPI)
我が国の科学技術水準を向上させ、将来の発展の原動力であるイノベーションを連続的に起こしていくためには、その出発点である基礎研究機能を格段に高め、我が国の国際競争力を強化していく必要があります。このため、本プログラムでは、大学等への集中的な支援により、システム改革の導入等の自主的な取組を促し、優れた研究環境と高い研究水準を誇る世界から「目に見える国際頭脳循環拠点」の構築を推進しています。平成31年度には、世界トップレベル研究拠点の充実・強化に向けた取組と、WPI拠点としてこれまでに培ってきた強み・成果を最大限に活かしていくため、国際頭脳循環の深化や拠点間連携の強化など、WPIの価値の最大化に向けた取組を引き続き着実に推進します。
5 人文学・社会科学等の振興
人文学・社会科学は、人間・文化・社会を研究対象としており、人間の精神生活の基盤を築くとともに、社会的諸問題の解決に寄与するという重要な役割を担っています。このため、平成31年度には、「領域開拓」、「実社会対応」、「グローバル展開」の視点に基づく課題設定型の研究及びデータの共有、利活用を促進する基盤の構築を推進します。また、共同研究拠点の形成支援等を通じ、人文学・社会科学等の振興を図ります。
6 共同利用・共同研究体制の強化・充実
我が国では、大学の研究所や大学共同利用機関において、大型の研究設備や貴重な学術資料等を全国の研究者が共同で利用し、共同研究を行う共同利用・共同研究の体制が整備されています。こうした体制は我が国独自の仕組みであり、国際的な研究成果を生み出すなど、学術研究の発展に大きく貢献しています。文部科学省では、共同利用・共同研究体制を強化・充実させることで、我が国の強み・特色を活かした研究水準の向上を目指しています。
⑴共同利用・共同研究拠点
文部科学省では、国公私立大学に附置される研究施設のうち、研究実績、研究水準、研究環境等の面で各研究分野の中核的な施設と認められ、全国の研究者に利用させることを通じて、我が国の学術研究の発展に特に有益である研究施設を共同利用・共同研究拠点として認定しています。平成31年4月現在、全国で56大学の104拠点(国立大学73拠点、公立大学9拠点、私立大学22拠点)が認定を受けて活動しています。
さらに、平成30年度には、国際的に有用かつ質の高い研究資源等を生かして、国際的な共同利用・共同研究を実施する研究施設を、国際共同利用・共同研究拠点として認定する制度を創設しました。国立大学の6研究施設を認定し、国際的な研究環境を整備するための取組を支援しています。
⑵大学共同利用機関
大学共同利用機関は、個々の大学では実現困難な高度な研究を推進するとともに、その人的・物的資源を大学等の研究者の利用に供することで、我が国の学術研究の発展に貢献しています。文部科学省では、大学共同利用機関が、我が国の基礎科学力の復権をけん引するとともに、今日の社会的課題の解決に貢献できるよう、その機能強化のための取組を進めています。
⑶学術研究の大型プロジェクト
大学や大学共同利用機関が推進する我が国発の独創的なアイデアによる学術研究の大型プロジェクトについては、ロードマップに基づき「大規模学術フロンティア促進事業」により戦略的・計画的に推進しています。平成31年度には、「大型低温重力波望遠鏡(KAGRA)計画」や、「新しいステージに向けた学術情報ネットワーク(SINET)整備」などの12のプロジェクトのほか、新たに「高輝度大型ハドロン衝突型加速器(HL-LHC)による素粒子実験」を加え、全13プロジェクトを支援する予定です。
●大型低温重力波望遠鏡(KAGRA)計画
東京大学宇宙線研究所が推進するKAGRA計画は、一辺3㎞のL字型のレーザー干渉計を神岡鉱山(岐阜県飛騨市)地下に建設し、宇宙からの重力波を観測することで、ブラックホールや未知の天体等の解明を目指す大型プロジェクトです。平成31年度には、本格的に観測を開始するとともに、米欧との国際的観測ネットワークの構築を図ります。
●新しいステージに向けた学術情報ネットワーク(SINET)整備
国立情報学研究所が整備するSINETは、全国900以上の大学や研究機関、海外の研究ネットワークを相互接続する、学術研究・教育活動に不可欠な学術情報基盤です。
平成31年度には、特にデータ通信量が多い東京―大阪間に400ギガbps回線を導入し、大容量データを活用する共同研究等を実施しやすくする環境を実現する予定です。
●高輝度大型ハドロン衝突型加速器(HL-LHC)による素粒子実験
欧州合同原子核研究機関(CERN)の大型ハドロン衝突型加速器(LHC)は、世界最高のエネルギー領域における実験研究により、「ヒッグス粒子」を発見した国際共同プロジェクトです。我が国は、学術的な意義に加え、国内の先進技術分野の発展への期待から、これまでも加速器建設に資金を拠出するなどプロジェクトの推進に貢献してきました。平成31年度からはLHCの高輝度化(HL-LHC)及びATLAS(アトラス)検出器のアップグレードに参画し、実験の性能向上を主導的に推進します。

科学技術イノベーションを担う人材の育成
我が国が成長を続け、新たな価値を生み出していくためには、科学技術イノベーションを担う優れた人材を育成・確保していくことが重要です。文部科学省では、若手研究者や女性研究者、研究支援人材など多様な人材の育成・確保や活躍促進を図る方策を戦略的に展開します。
特に、新たな研究領域に挑戦するような若手研究者が安定かつ自立して研究を推進できる環境を実現する取組を実施するとともに、次代の科学技術イノベーションを担う人材を継続的・体系的に育成していくために、理数系分野において優れた素質を持つ児童生徒等を発掘し、その才能を伸ばすための一貫した取組を推進します。
1 若手研究者等の育成・活躍促進
優れた若手研究者が産学官の研究機関において安定かつ自立した研究環境を得て自主的・自立的な研究に専念できるよう、研究者及び研究機関を支援する「卓越研究員事業」を実施します。
また、各分野の博士人材等について、データサイエンス等を活用しアカデミア・産業界を問わず活躍できる棟梁レベル人材を育成する研修プログラムの開発を目指す「データ関連人材育成プログラム」を実施します。
このほか、「特別研究員事業」や「プログラム・マネージャーの育成・活躍促進プログラム」等を引き続き推進します。
2 女性研究者の活躍促進
女性研究者の活躍促進を図るため、「特別研究員(RPD)事業」や、研究と出産・育児等のライフイベントとの両立や女性研究者の研究力向上を通じたリーダーの育成を一体的に推進するダイバーシティ実現に向けた大学等の取組を支援する「ダイバーシティ研究環境実現イニシアティブ」を実施し、女性研究者の支援の強化に取り組みます。
3 次代を担う人材の育成
将来の国際的な科学技術関係人材の育成をするために、先進的な理数系教育を実施する高校を指定する「スーパーサイエンスハイスクール」や大学等を活用して次世代の傑出した人材を育成する「グローバルサイエンスキャンパス」(高校生向け)、「ジュニアドクター育成塾」(小中学生向け)を引き続き支援します。
加えて、女子中高生が理系分野への興味・関心を高め、適切に理系進路を選択することができるよう、地域で継続的な取組を推進する「女子中高生の理系進路選択支援プログラム」や、「サイエンス・インカレ」、「科学の甲子園」、「科学の甲子園ジュニア」の推進、国際科学オリンピックの支援等、理数系の意欲・能力が高い生徒や学生が、科学技術に係る能力を競い、互いに研鑽する場を構築していきます。
4 技術士制度の活用促進
技術士は、技術士法に基づく名称独占の国家資格であり、国によって認められた高い技術と倫理を兼ね備えた優れた技術者です。
技術士制度のより一層の活用促進・普及拡大を図るため、国際的通用性も視野に入れた制度の改正を行うとともに、関係省庁、企業等への働きかけも行っていきます。

研究施設・設備の整備・共用
我が国や世界が直面する様々な課題の達成に科学技術が貢献していくためには、研究開発の共通基盤の強化が重要です。このため、世界に誇る最先端研究施設の整備・共用、大学・独立行政法人等が保有する研究基盤の共用・プラットフォーム化を推進します。
1 大型放射光施設(SPring-8)
SPring-8は、世界最高性能の放射光により、微細な物質構造や状態の解析を行う研究施設です。安定した利用運転と産学官の幅広い利用者への共用を通じて、広範な分野で先端的・革新的な研究開発に貢献し、イノベーションの促進や国際競争力の強化等に貢献します。
2 X線自由電子レーザー施設(SACLA)
SACLAは、放射光とレーザーの特長を併せ持った高度な光を発振し、原子レベルの超微細構造や、化学反応の動態変化の計測・分析を可能とする世界最先端の研究施設です。幅広い利用者へ最大限の共用を図り、世界を先導する成果の創出等に貢献します。
3 大強度陽子加速器施設(J-PARC)
J-PARCは、世界最高レベルのビーム強度を有し、中性子、ミュオン、ニュートリノ等を用いて物質・生命科学や、原子核・素粒子物理学等の多様な研究を推進する研究施設です。ビーム増強のための調整を行いつつ、国際研究拠点の形成に向けた研究環境の強化を図ります。
4 革新的ハイパフォーマンス・コンピューティング・インフラ(HPCI)
スーパーコンピュータ「京」を中核とし、多様なユーザーニーズに応える計算環境を実現するHPCIを構築するとともに、この利用を推進します。
5 ポスト「京」の開発
我が国が直面する社会的・科学的課題の解決に貢献するため、2021年から2022年の運用開始を目標に、世界最高水準の汎用性のあるスーパーコンピュータの実現を目指します。ポスト「京」製造への円滑な移行に向け、「京」の計算資源の提供を8月に終了します。
6 官民地域パートナーシップによる次世代放射光施設の推進
最先端の科学技術は、物質の「構造解析」に加えて物質の「機能理解」へと向かっており、物質の電子状態やその変化を高精度で追える高輝度の軟X線利用環境の整備が重要となっています。このため、学術・産業ともに高い利用ニーズが見込まれる次世代放射光施設(軟X線向け高輝度3GeV級放射光源)について、2023年度の運転開始を目指して、施設整備を着実に進めます。
7 ナノテクノロジープラットフォーム
ナノテクノロジーに関する最先端の研究設備とその活用のノウハウを有する機関が協力して、技術領域に応じた全国的な設備の共用体制を構築するとともに、産学官連携や異分野融合を推進します。
8 先端研究基盤共用促進事業
研究設備・機器群を、組織の経営・研究戦略の下で管理・運営する新たな共用システムの導入を支援するとともに、産学官が共用可能な研究施設・設備等のネットワーク構築によるイノベーション創出のためのプラットフォームの形成及び大学、高専、企業、公設試等が連携した研究機器相互利用ネットワーク構築に取り組みます。

科学技術イノベーションの戦略的国際展開
世界の知を取り込み、我が国の国際競争力の維持・強化に資するため、また、世界の研究ネットワークの主要な一角に位置付けられるとともに、国際社会における存在感を発揮するためには、科学技術の戦略的な国際展開を図ることが重要です。このため、文部科学省では、国際頭脳循環・国際共同研究の推進、国際協力による持続可能な開発目標達成のための科学技術イノベーション(STI for SDGs)の推進、グローバルに活躍する若手研究者の育成等に取り組みます。
1 国際的な共同研究の推進
国際頭脳循環への参画・研究ネットワーク構築をけん引すべく、相手国との協働による国際共同研究の共同公募を強力に推進し、我が国の国際共同研究の強化を着実に図ってまいります。具体的には「戦略的国際共同研究プログラム(SICORP)」では、政府間合意に基づきイコールパートナーシップ(対等な協力関係)の下、欧米先進国との分野の擦り合わせを経た共同公募や新興国・中進国とのマルチな枠組み構築を通じた共同公募など、相手国のポテンシャル・分野と協力フェーズに応じた多様な国際共同研究を推進しています。
また、「地球規模課題対応国際科学技術協力プログラム(SATREPS)」では、我が国の優れた科学技術と政府開発援助(ODA)との連携により、開発途上国のニーズに基づき、環境・エネルギー分野、生物資源分野、防災分野、感染症分野における地球規模課題の解決と将来的な社会実装につながる国際共同研究を推進しています。加えてSDGs達成に向け研究成果の社会実装を加速させるべく、相手国政府の協力を得て出口ステークホルダーとの連携・協働につなげるなど新たに橋渡しスキームを構築します。
2 グローバルに活躍する若手研究者の育成等
国際的な頭脳循環の進展を踏まえ、我が国において優秀な人材を育成・確保するため、以下の取組を進めています。
優れた若手研究者に対し、海外の大学等研究機関において長期間(2年間) 研究に専念できるよう支援する「海外特別研究員事業」や、博士後期課程学生等の短期的な海外派遣を支援する「若手研究者海外挑戦プログラム」を実施しています。
また、若手を中心とした外国人研究者を我が国の大学・研究機関等に招へいし、研究者間での研究協力関係を構築することを通じて我が国の学術研究の推進を図る「外国人特別研究員事業」を実施しています。
さらに、海外からの優秀な科学技術イノベーション人材の獲得に資するため、アジア諸国の青少年との科学技術交流プログラムを行う「日本・アジア青少年サイエンス交流事業」を実施しています。

社会とともに創り進める科学技術イノベーション政策の展開
科学技術イノベーション政策を「社会及び公共のための政策」と位置付け、その実現に向け、科学技術コミュニケーション活動の更なる促進等、国民の理解と信頼と支持を得るための取組を展開します。また、研究開発システムの改革を強力に推進することで、科学技術イノベーション政策の実効性を大幅に高めます。
1強度陽子加速科学技術イノベーション政策における「政策のための科学」の推進
文部科学省は、経済・社会等の状況を多面的な視点から把握・分析した上で、課題対応等に向けた有効な政策を立案する「客観的根拠(エビデンス)に基づく政策形成」の実現を目指し、科学技術イノベーション政策における「政策のための科学」推進事業を実施しています。
⑴基盤的研究・人材育成拠点の形成
客観的根拠に基づく政策形成を行う高度専門人材等を大学において育成します。平成25年度より5拠点・6大学において、学生を受け入れ、人材育成に取り組んでいます。また、平成26年度から政策研究大学院大学(総合拠点)に設置した「科学技術イノベーション政策研究センター(ScireXセンター)」を中心として、東京大学、一橋大学、大阪大学、京都大学及び九州大学(領域開拓拠点)との連携協力・協働の下に中核的拠点機能を整備し、エビデンスに基づく政策形成の実践のための指標、手法等の開発を行っています。
⑵公募型研究開発プログラムの推進
科学技術振興機構社会技術研究開発センター(RISTEX)では、政策の形成に中長期的に寄与することを目的に、合理的なプロセスにより政策を形成するための手法や指標などの研究開発を支援しています。平成31年度は、公募型研究開発プログラムで採択した11プロジェクトを推進するとともに、新規プロジェクトを採択するための公募を行う予定です。
⑶データ・情報基盤の構築
科学技術・学術政策研究所(NISTEP)では、科学技術イノベーションに関するデータや情報を体系的かつ継続的に整備・蓄積していくためのデータ・情報基盤を構築しています。平成31年度は、引き続きデータ等の整備・高度化とデータの提供・活用を行います。
2 科学技術コミュニケーションと「共創」の推進
人工知能(AI)、再生医療など、科学技術が急速に進展する一方、人々の価値観が多様化している中、科学技術と社会のより良い在り方を、研究者、国民、メディア、産業界、政策決定者といった様々な関与者が共に対話・協働することが一層必要です。
最先端の科学技術及び科学技術コミュニケーション手法に関する情報の国内外への発信と交流のための総合的な拠点である日本科学未来館では、国民と研究者等の対話・協働を促す科学コミュニケーターの養成、展示やイベントを通して先端科学技術と社会の在り方を共に考える活動と、そのための新たな表現やコミュニケーション手法の開発、研究機関や学校・科学館等との連携活動等を行います。
科学技術振興機構「科学と社会」推進部では、多様なステークホルダーが対話・協働し、それらを政策形成や知識創造、社会実装等へとつなぐ共創を推進するため、本最大級のオープンフォーラム「サイエンスアゴラ」の開催や地方公共団体等が行う対話・協働活動へのファンディング、SDGs達成に向けた「科学技術を用いた地域課題の解決に資する取組」を募集・表彰する制度、最新の科学技術動向や共創活動等の情報発信等を行います。
3 科学技術イノベーション政策におけるPDCAサイクルの確立
科学技術イノベーション政策を効果的、効率的に推進するためには、PDCAサイクルを確立することが必要であり、研究開発評価は、その確立に重要な役割を担っています。
文部科学省では「国の研究開発評価に関する大綱的指針」(内閣総理大臣決定)及び平成29年4月に改定した「文部科学省における研究及び開発に関する評価指針」(文部科学大臣決定)に基づき、研究開発の特徴を踏まえ、その目的や政策上の位置付け、規模等に応じた評価を実施することで、科学技術イノベーション政策における研究開発活動の質を高めていきます。
4 公正な研究活動の推進
研究活動における不正行為は、科学への信頼を揺るがし、その発展を妨げる行為であり、絶対に許されるものではありません。
文部科学省では、「研究活動における不正行為への対応等に関するガイドライン」(平成26年8月26日大臣決定)を踏まえ、研究機関における不正防止等の取組の徹底を図るとともに、独立行政法人日本学術振興会、国立研究開発法人科学技術振興機構及び国立研究開発法人日本医療研究開発機構と連携し、研究機関による研究倫理教育の実施等を支援するなど、公正な研究活動を推進するための取組を引き続き行っていきます。

健康・医療分野の研究開発の推進
健康長寿社会の実現と医療関連分野における産業競争力の向上に貢献することを目指し、文部科学省では、iPS細胞研究等による世界最先端の医療の実現や、疾患の克服に向けた取組を強力に推進するとともに、臨床研究・治験や産業応用へとつなげる取組を実施しています。国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)における、基礎から実用化までの一貫した研究開発を、関係府省と連携して推進しています。
1 オールジャパンでの医薬品創出、医療機器開発
●先端的バイオ創薬等基盤技術開発事業
先端的医薬品等開発における我が国の国際競争力を確保するため、アカデミアの優れた技術シーズを用いてバイオ創薬や遺伝子治療に係る革新的な基盤技術を開発するとともに、要素技術の組合せ、最適化による技術パッケージを確立し、企業へ導出することを目指しています。
2 革新的医療技術創出拠点の整備
●橋渡し研究戦略的推進プログラム
橋渡し研究支援拠点を中心に、アカデミアにおける基礎研究の成果を臨床研究・実用化へ効率的に橋渡しし、革新的な医薬品・医療機器等をより多く持続的に創出する体制を構築することを目指しています。特に、産学連携・人材育成機能を充実するとともに、医工連携やICT活用等による異分野融合シーズの創出を推進しています。
3 世界最先端の医療の実現
〈再生医療〉
●再生医療実現拠点ネットワークプログラム
京都大学iPS細胞研究所を中核拠点として臨床応用を見据えた安全性・標準化に関する研究や再生医療用iPS細胞ストックの構築を行うとともに、疾患・組織別に再生医療の実現を目指す拠点を整備し、拠点間の連携体制を構築しながらiPS細胞等を用いた再生医療・創薬をいち早く実現するための研究開発を推進しています。
〈ゲノム医療〉
●東北メディカル・メガバンク計画
東日本大震災の被災地域の方々を対象とした健康調査を実施し、住民の健康向上に貢献するとともに、収集した健康情報や生体試料を蓄積したバイオバンクを構築し、個別化予防等の次世代医療の実現を目指しています。
4 がん、精神・神経疾患、感染症等の疾患の克服に向けた研究開発
〈がん〉
●次世代がん医療創生研究事業
がんの生物学的な本態解明に迫る研究、がんゲノム情報など患者の臨床データに基づいた研究及びこれらの融合研究を推進することにより、画期的な治療法や診断法の実用化に向けた研究を加速し、早期段階で製薬企業等へ導出することを目指しています。
〈精神・神経疾患〉
●脳科学研究戦略推進プログラム・革新的技術による脳機能ネットワークの全容解明プロジェクト
精神・神経疾患の克服等に向け、非ヒト霊長類研究等の我が国の強み・特色を活かしつつ、ヒトの脳の神経回路レベルでの動作原理等の解明を目指しています。脳画像等の大規模データベース構築のための技術基盤を整備し、ライフステージに応じた健常から疾患に至る脳画像等の総合的解析研究などを実施します。
〈感染症〉
●感染症研究革新イニシアティブ
感染症の革新的な医薬品の創出を図るため、BSL4施設を中核とした感染症研究拠点に対する研究支援、病原性の高い病原体等に関する創薬シーズの標的探索研究等を実施しています。
5 ライフサイエンス分野における生命倫理・安全対策
ライフサイエンス研究の推進に当たっては、生命倫理及び安全確保上の課題に配慮することが必要です。
クローン技術等を用いる研究については、「ヒトに関するクローン技術等の規制に関する法律」等に基づき、その適正な実施の確保を図っています。平成30年度には、「特定胚の取扱いに関する指針」を改正し、動物の体内でヒトの臓器を作る等の基礎的研究が実施可能となりました。また、近年、遺伝子を狙いどおりに容易に改変することを可能とするゲノム編集技術が世界的に急速に発展していることを受け、平成31年4月に「ヒト受精胚に遺伝情報改変技術等を用いる研究に関する倫理指針」を策定し、生殖補助医療に資する基礎的研究を実施するための枠組みを整備しました。ほかにも、ヒトES細胞を用いる研究については、「ヒトES細胞の樹立に関する指針」、「ヒトES細胞の使用に関する指針」及び「ヒトES細胞の分配機関に関する指針」を平成31年4月に整備し、ES細胞の海外機関への臨床目的での分配を可能とするとともに、細胞の取扱いに関する手続の合理化を図っています。
遺伝子組換え技術を用いる実験については、「遺伝子組換え生物等の使用等の規制による生物の多様性の確保に関する法律」に基づき、適切な実施を引き続き図ります。また、ゲノム編集技術の利用により得られた生物の同法における概念整理が環境省で行われたことを受けて、研究開発段階における当該生物の使用上の留意事項等を作成し、広く周知を図ります。

クリーンで経済的なエネルギーシステムの実現
昨年、2020年以降の新しい温室効果ガス排出削減等のための国際枠組みである「パリ協定」の実施指針が決定され、先進国と途上国が一体となって共通の目標達成に取り組むための議論が着実に進んでいます。その中で、温室効果ガスの削減と経済成長の両立や気候変動への適応等に貢献するための研究開発はますます重要になっています。
さらに、2015年に国連サミットで採択された持続可能な開発目標(SDGs)については、政府に設置されているSDGs推進本部の下、SDGsの強い担い手たる日本の姿を国際社会に対して示すため、具体的な取組を推進・強化しています。
また、我が国においては、昨年、「エネルギー基本計画」が閣議決定され、エネルギー転換と脱炭素化への挑戦が示されるとともに、「気候変動適応法」が施行され、適応に向けての取組が加速しています。
文部科学省では、これらの目標達成のため、クリーンで経済的なエネルギーシステムの実現に向けた研究開発を推進しています。
1 省エネルギー社会の実現に資する次世代半導体研究開発の推進
次世代半導体の研究開発は、我が国が強みを有する分野の一つであり、大きな省エネ効果が期待される次世代半導体を用いたパワーデバイス等の2030年の実用化に向け、理論・シミュレーションも活用した材料創製からデバイス・システム応用までの研究開発を一体的に推進しています。
2 環境エネルギー分野における革新的な技術の研究開発の推進
右記に加え、リチウムイオン電池に代わる革新的な次世代蓄電池の研究開発を加速するとともに、バイオマスから化成品を製造するホワイトバイオテクノロジーなど、温室効果ガス削減に大きな可能性を有し、従来の技術の延長線上にない革新的な技術の開発を省庁連携により推進しています。
また、理化学研究所において、個々の構成要素の単なる集合としては予測不可能な驚くべき新しい物性や機能を生み出す創発物性科学分野の研究や、環境負荷の少ないモノづくりを理念とし、植物科学やケミカルバイオロジー等の異分野融合研究に加えてAI等の最先端技術を取り入れた新機軸の研究を推進しています。
3 ITER(国際熱核融合実験炉)計画等の実施
エネルギー問題と環境問題を根本的に解決するものと期待される核融合エネルギーの実現に向け、国際約束に基づき、核融合実験炉の建設・運転を通じて科学的・技術的実現可能性を実証するITER計画及び発電実証に向けた先進的研究開発を国内で行う幅広いアプローチ(BA)活動を計画的かつ着実に実施するとともに、核融合科学研究所における大型ヘリカル装置(LHD)計画をはじめとする大学等における学術研究も進めています。
4 地球環境問題への対応に必要な基盤情報の創出
気候モデル等の開発を通じて気候変動の予測技術等を高度化し、気候変動によって生じる多様なリスクの管理に必要となる基盤的情報を創出するための研究開発を推進しています。
加えて、地球環境ビッグデータ(観測・予測情報等)を蓄積・統合解析し、気候変動等の地球規模課題の解決に資する情報システムとして、「データ統合・解析システム(DIAS)」を開発しています。また、DIASが産学官の多くのユーザーに長期的、安定的に利用されるための運用体制の構築や共通基盤技術の開発を推進しています。
さらに、地方公共団体が適応策立案・推進し、不確実性を伴う気候変動の影響に適切に対応するために必要な気候変動予測情報を創出するための研究開発を進めています。

自然災害に対する強靱な社会に向けた研究開発の推進
我が国の国土は、地震・津波・火山、台風等の自然災害が多く発生する自然条件下にあります。
自然災害にはいまだに解明されていない部分が多く、大きな被害をもたらします。自然災害を正確に把握し、予測するための調査研究を進めるとともに、被害軽減を図るための研究開発を進め、防災・減災対策に活かしていくことが重要です。
このため、文部科学省では、地震・津波・火山等の調査観測・研究や、耐震技術開発などの防災に関する取組を実施しています。
1 地震及び火山分野の調査研究の推進
⑴地震調査研究推進本部の取組
平成7年1月に発生した阪神・淡路大震災を契機に、地震調査研究を一元的に推進するため、地震調査研究推進本部(本部長:文部科学大臣(以下「地震本部」という。)が設置されました。
地震本部では、これまでに、関係行政機関、大学等の連携協力の下、陸の活断層及び海域の地震発生の可能性の長期評価や、「全国地震動予測地図」の作成、緊急地震速報の実用化等の成果を得てきたところです。
平成31年度も引き続き、活断層等の長期評価や強震動評価、津波評価等の検討を進めるとともに、地震防災対策等への貢献を目指し、一層の成果普及を図ります。
(参考)地震本部による地震に関する評価
https://www.jishin.go.jp/evaluation/
⑵海底地震・津波観測網の構築・運用
①南海トラフ海底地震津波観測網(N-net)の構築
南海トラフ地震の想定震源のうち、まだ観測網を設置していない高知県沖~日向灘の海域に、南海トラフ海底地震津波観測網(N-net)の構築を進めます。
②日本海溝海底地震津波観測網(S-net)及び地震・津波観測監視システム(DONET)の運用
地震・津波の発生メカニズムの解明や、地震・津波の早期検知による警報の高度化を目的として、防災科学技術研究所において、日本海溝沿いに整備した日本海溝海底地震津波観測網(S-net)と和歌山県沖から高知県沖に整備した地震・津波観測監視システム(DONET)を運用しています。これらは、防災科学技術研究所が運用する陸域の地震観測網と火山観測網を合わせて全国の陸域から海域までを網羅する、「陸海統合地震津波火山観測網(MOWLAS)」として統合運用を行っています。
⑶重点的な地震防災研究や防災力向上のための研究
①首都圏を中心としたレジリエンス総合力向上プロジェクト
首都直下地震等への防災力を向上するため、官民連携超高密度地震観測システムの構築、非構造部材を含む構造物の崩壊余裕度に関するセンサー情報等の収集をし、産学官で共有・解析することで、新たな価値の創出につながる取組を進めています。
②南海トラフ広域地震防災研究プロジェクト
南海トラフで発生する巨大地震・津波による被害軽減を図るため、巨大津波発生メカニズムの解明や、広域の被害予測シミュレーション等を行い、防災・減災対策や復旧復興計画の検討を行います。
③日本海地震・津波調査プロジェクト
調査未了域が多く存在する日本海側において、自治体の地震・津波被害の想定や防災対策の策定等に貢献するため、海底地殻構造の調査観測や地震・津波の発生シミュレーション等を実施します。
⑷火山観測研究の推進及び人材育成の確保(次世代火山研究・人材育成総合プロジェクト)
平成26年9月の御嶽山の噴火を踏まえて、我が国の火山研究を飛躍させるため、従前の観測研究に加え、他分野との連携・融合のもと、「観測・予測・対策」の一体的な火山研究の推進及び広範な知識と高度な技能を有する火山研究者の育成・確保を目指します。
2 防災科学技術の研究開発の推進
⑴災害をリアルタイムで観測・予測するための研究開発
地震・津波・火山災害を観測する技術や予測する手法の研究開発等を推進します。
特に、海と陸の地震・津波・火山の観測網を統合した陸海統合観測網(MOWLAS)により得られたデータを用いた地震動・津波の即時予測技術の開発や、リモートセンシング技術等による多項目の火山観測データを活用し、多様な火山現象のメカニズムの解明や火山災害を軽減するための研究開発を進めます。
⑵社会基盤の強靭性の向上を目指した研究開発
地震発生時の社会基盤の強靱性の向上と事業継続能力の強化を目指し、実大三次元震動破壊実験施設(E-ディフェンス)等を活用した耐震技術開発とシミュレーション技術の高度化を行います。
具体的には、将来起こりうる巨大地震に対し、構造物の耐震性能評価、応答制御、機能維持技術等の地震減災に資する耐震技術研究を実施します。さらに、E-ディフェンスで実施した実験を解析するシミュレーション技術の耐震性能評価への活用に向け、シミュレーション技術の高度化・効率化、利便性向上等に関する研究開発を行います。
⑶災害リスクの低減に向けた基盤的研究開発
自然災害の軽減のために、個人や自治体、国が、それぞれ自らの「防災」を計画・実行することができるよう、地震災害をはじめ各種災害に関する危険性の評価と、これらを含めた各種災害リスク情報の利活用に関する研究を行います。
特に、津波ハザードマップや、低頻度巨大地震を考慮した地震動ハザードマップの作成手法に関する研究、積乱雲の一生を観測し、ゲリラ豪雨を観測し予測する手法の開発等の防災に資する研究を行います。

人類のフロンティアの開拓及び国家安全保障・基幹技術の強化
〈宇宙・航空〉
宇宙・航空分野について、文部科学省では、次の施策を推進しています。
1 基幹ロケットの運用・開発
我が国の基幹ロケットであるH–ⅡA、H–ⅡB及びイプシロンロケットは、平成31年1月のイプシロンロケット4号機打ち上げ成功により、連続45機の打ち上げに成功しており、98%以上の打ち上げ成功率(51機中50機)を達成しています。これは、我が国の宇宙技術が世界最高水準の信頼性を確立している証しであり、今後も着実に打ち上げ実績を重ねていきます。
また、我が国が自立的に宇宙活動を行う能力を維持発展させるため、2020年度の初号機打ち上げに向け、平成26年度よりH3ロケット(新型基幹ロケット)の開発に着手し、現在、主エンジンであるLE-9の燃焼試験を行うなど、着実な開発を進めています。
2 人工衛星等による宇宙利用の推進
平成26年5月に打ち上げられた陸域観測技術衛星2号「だいち2号」(ALOS–2)は、地震や豪雨などの大規模自然災害の発生時に緊急観測を行い、災害状況の迅速な把握に役立てられています。現在、先進光学衛星(ALOS–3)(2020年度打ち上げ予定)及び先進レーダ衛星(ALOS–4)(2020年度打ち上げ予定)」等を開発しています。
このほかにも、平成24年5月に打ち上げられた水循環変動観測衛星「しずく」(GCOM–W)、平成26年2月に打ち上げられた米国航空宇宙局(NASA)との国際協力プロジェクトである全球降水観測計画(GPM)主衛星、平成29年12月に打ち上げられた気候変動観測衛星「しきさい」(GCOM–C)及び平成30年10月に打ち上げられた環境省との共同プロジェクトである温室効果ガス観測技術衛星2号「いぶき2号」(GOSAT–2)による地球観測を実施し、地球環境問題の解明等に貢献しており、今後は、平成31年度打ち上げ予定の光データ中継衛星、「しずく」に搭載されたマイクロ波放射計(AMSR2)の後継となるAMSR3(2022年度打ち上げ予定)等の開発を進めていきます。
また、将来の放送・通信衛星の大容量化や多チャンネル化等に対応する衛星技術を獲得するため、総務省と連携し、技術試験衛星9号機(2021年度打ち上げ予定)の開発に取り組んでいます。
さらに、平成31年1月のイプシロンロケット4号機で打ち上げられた革新的衛星技術実証1号機によって民間事業者や大学等が製作する超小型衛星等の宇宙空間における実証機会の提供をしています。また、我が国の衛星を安定的に運用するため、地上からスペースデブリ(宇宙ゴミ)等を把握する宇宙状況把握(SSA)システムの能力向上や、世界に先駆けたデブリ除去技術の獲得を目指して取組を進めています。
3 宇宙科学と天文学の研究の推進
宇宙科学については、ブラックホールや超新星爆発などの高エネルギー現象を観測するX線天文衛星等の人工衛星の開発・運用や、小惑星探査機「はやぶさ」による小惑星「イトカワ」からのサンプル採収、X線・赤外線天文観測や月・惑星探査等の分野で世界トップレベルの業績を挙げてきました。平成28年12月に打ち上げたジオスペース探査衛星「あらせ」は、地球周辺の宇宙空間ジオスペースにおいて電磁波観測を行い、オーロラの発生プロセスを同定するプラズマの波の変動をとらえることに成功しました。平成26年12月に打ち上げられた「はやぶさ2」は順調に航行を続け、平成30年6月に目的地の小惑星「リュウグウ」に到着し、平成30年9月には世界初となる探査ローバの小惑星探査活動に成功しました。また、平成31年2月22日には、小惑星のサンプルを採取するタッチダウン(着陸)に成功しました。今後、2019年11~12月頃に小惑星を出発し、2020年に地球への帰還を予定しています。また、平成30年10月には、欧州宇宙機関との国際協力による水星探査計画(BepiColombo)において我が国が開発を担当した水星磁気圏探査機「みお」が打ち上げられ、水星への航行を開始しました(2025年水星到着予定)。現在、我が国初となる月への無人着陸を目指す小型月着陸実証機(SLIM)(2021年度打ち上げ予定)ブラックホール等のX線で観測される高エネルギーの天体を観測するX線分光撮像衛星(XRISM)(2021年度打ち上げ予定)等の開発を進めており、国際的な地位の確立や、人類のフロンティア拡大に資する宇宙科学分野の研究開発を推進しています。
天文学については、南米チリのアタカマ高地にて、電波望遠鏡「アルマ」を日米欧の国際協力で運用しており、日本はACA(アタカマコンパクトアレイ)システムやサブミリ波帯を中心とした受信機システム等の製造を担当し、海王星サイズの惑星形成の証拠や、132億光年先に酸素を発見する等の成果を挙げています。また、米国ハワイ州のマウナケア山頂では、大型光学赤外線望遠鏡「すばる」を用いて中性子星合体による重力波発生現象を追跡観測し、金、白金などの重元素合成となる現場を初観測するなど、宇宙の起源と歴史の全体像の解明等を推進しているほか、日米等の5か国共同で口径30mの超大型光学赤外線望遠鏡(TMT:Thirty Meter Telescope)を建設し、太陽系外惑星の探査等の新たな宇宙像を開拓する計画に取り組んでおり、2027年度の完成を目指しています。
4 宇宙国際協力の推進
我が国は、米国、欧州、カナダ、ロシアとともに国際宇宙ステーション(ISS)計画に参加しています。平成29年12月から平成30年6月までは、金井宣茂宇宙飛行士は、ISSに長期滞在し、医師としてのバックグラウンドや、「きぼう」日本実験棟の「ユニークな環境や装置」を利用しながら、タンパク質結晶生成実験や小動物の長期飼育実験、船外活動等、様々な活動を行いました。
平成30年9月には、宇宙ステーション補給機「こうのとり」7号機を打ち上げ、ISSの運用に必要な物資を輸送するとともに、実証実験として、小型回収カプセルを搭載し、「きぼう」での実験サンプルを地上へ持ちかえることに成功しました。「こうのとり」の補給ミッションを通じて、日本の技術力は高く評価されています。
また、ISSへの輸送コストの大幅な削減や、将来の宇宙探査を含む様々なミッションに応用可能な基盤技術の獲得が期待される新たな宇宙機(HTV–X)について、2021年の打ち上げを目指して開発を進めています。
宇宙探査の分野では、様々な国で月や火星の探査ミッションが計画されるなど、関心が高まってきています。米国では、月近傍に有人拠点(Gateway)を構築する構想を発表し、各国に参画を呼びかけています。Gatewayは、通信やサンプル回収等の中継拠点として月面探査をより効率的に進めることが期待されることから、我が国もその参加に向けて、独自性を打ち出しつつ国際調整や具体的な技術検討を進めています。また、2021年度に打ち上げを予定している「SLIM」が月面へのピンポイント着陸を目指すほか、JAXAとインド宇宙機関との間で共同月着陸探査ミッションの実現性について検討を進めています。
アジア・太平洋地域においては、宇宙活動、利用に関する情報交換並びに多国間協力推進の場として、平成5年から毎年1回程度、同地域で最大規模の宇宙協力の枠組みであるアジア・太平洋地域宇宙機関会議(APRSAF)を主催しています。平成30年11月には、シンガポールで第25回会合を開催し、29か国・地域、9国際機関、民間企業より約400人が参加しました。今会合では、「進化するニーズに応える革新的な宇宙技術」というテーマの下、意見交換や宇宙政策に焦点を当てたセッションを実施しました。このほかにも、宇宙新興国を対象としたニーズの的確な把握と、それを踏まえた人材育成支援等による我が国の宇宙技術の海外展開を見据えた国際協力を推進しています。
5 航空科学技術に関する研究開発
平成26年8月に、文部科学省「次世代航空科学技術タスクフォース」において「戦略的次世代航空機開発ビジョン」を取りまとめました。
今後20年で世界市場が約2倍に成長すると見込まれる中、我が国の航空機産業の規模を自動車産業と比肩し得る成長産業(世界シェア約20%)とするため、積極的に取り組むべき研究開発プログラムと横断的施策を提言しており、特に、「民間航空機国産化研究開発プログラム」及びこれを支える「大型試験設備の整備」を優先的に着手することとしています。
これを踏まえ、燃費と環境負荷性能を大幅に改善するコアエンジン技術(燃焼器、タービン等)及び機体騒音の低減を目的とする「FQUROHプロジェクト」のほか、超音速機技術や電動化航空機技術についても研究開発を行います。また、次世代航空機用エンジン技術の実証のため、技術実証用国産エンジン(F7エンジン)の導入に向けた整備を着実に行います。
このように、文部科学省では航空機産業の発展のため、関係府省と一丸となって、航空科学技術の研究開発を進めていきます。
〈海洋・極域〉
四方を海に囲まれた我が国にとって、海洋に関する知見を得ることは、国家的重要課題です。そのため、文部科学省では、海洋の調査研究を進め、地球環境問題、鉱物・生物等の海洋資源の確保や、防災・減災等に資する技術開発を推進し、我が国の経済社会の発展及び国民生活の安全・安心の確保に貢献することを目指しています。また、Society5.0の実現や将来のイノベーションの創出に向けた、未来の新産業創造へ寄与する研究開発を推進しています。
1 極域及び海洋の総合的理解とガバナンスの強化
近年、北極域の海氷の減少、世界的な海水温の上昇や海洋酸性化の進行、プラスチックごみによる海洋の汚染等、海洋環境が急速に変化しています。自然起源と人為起源による海洋環境の変化を理解し、海洋や海洋資源の保全・持続可能な利用、地球環境変動の解明を実現するため、漂流フロート、係留ブイ、船舶による観測等により、統合的な海洋の観測網を構築するとともに、得られた海洋観測ビッグデータを基とした革新的な海洋・大気環境予報システムの構築を推進します。
南極地域に関しては、南極地域観測第Ⅸ期6か年計画に基づき、南極観測船「しらせ」による輸送支援の下、地球環境変動の解明に向け、地球の諸現象に関する多様な研究・観測を推進します。
地球温暖化の影響が最も顕著に出現している北極を巡る諸課題に対しては、我が国の強みである科学技術を活かして貢献するため、国際共同研究の推進等に取り組みます。さらに、北極海の海氷下観測に係る技術開発を推進するとともに、研究のプラットフォームとなる北極域研究船を推進します。
また、2018年(平成30年)10月には、北極における研究観測や主要な社会的課題への対応の推進等を目的として、ベルリンにおいて開催された第2回北極科学大臣会合に柴山昌彦文部科学大臣が出席し、「北極域研究推進プロジェクト(ArCS)」の成果等を紹介するとともに、第3回北極科学大臣会合をアイスランドと共催し、2020年にアジアで初となる我が国で開催することを提案し、了承されました。
引き続き、地球規模課題の解決に貢献するため、南極及び北極における研究観測を、世界各国と協働して着実に実施します。
2 海洋資源の開発・利用
四方を海に囲まれている我が国にとって、海洋状況把握(MDA)の基礎となる海洋情報の収集・取得に関する取組を強化することは重要です。そのため、大学等が有する高度な技術や知見を幅広く活用し、海洋生態系や海洋環境等の海洋情報をより効率的かつ高精度に把握する革新的な観測・計測技術の開発を推進します。
また、近年、気候変動や乱獲等による海洋生物資源の枯渇が懸念されるなど、我が国の海洋生物資源の確保に関する問題意識が高まっています。これら海洋生物資源の安定した供給を持続するため、海洋生物の生理機能を解明し革新的な生産につなげる研究開発や、海洋生物の正確な資源量予測を行うための生態系の総合的解明に向けた研究開発を実施しています。
3 海洋由来の自然災害への防災・減災
自然災害に対して強じんな社会の構築に向けて、地球深部探査船「ちきゅう」や海底広域研究船「かいめい」等を活用し、海底地殻変動を連続かつリアルタイムに観測するシステムを開発・整備するとともに、海底震源断層の広域かつ高精度な調査や、海底火山の観測・調査のための技術開発を実施します。また、調査・観測の結果を取り入れ、地殻変動・津波シミュレーションの高精度化に取り組みます。
さらに、東日本大震災の津波・地震により、多量のがれきの流出や藻場・干潟の喪失等が発生し、東北太平洋沿岸域の水産業は壊滅的な被害を受けました。被災地の水産業の復興のためには、長期にわたって変化する漁場・養殖場環境や海洋生態系の調査が課題となっています。このため、大学や研究機関等による復興支援のためのネットワークとして東北マリンサイエンス拠点を構築し、関係省庁や地元自治体、地元漁協等と連携しつつ、海洋生態系の調査研究を実施しています。
4 基盤的技術開発・基礎的研究の推進
我が国の経済・社会的な課題への対応や未来の産業創造に向け、海洋科学技術分野においても科学技術イノベーションの創出が強く求められており、産学官の英知を結集して戦略的に研究開発を実施し、得られた成果の社会還元をより一層推進することが必要とされています。このため、海洋に関する科学技術を支える基盤的技術などの開発・整備や、いまだ十分に解明されていない海洋の実態解明に向けた研究開発を推進しています。
また、我が国は、深海底の掘削により地球環境変動、地球内部構造、地殻内生命圏等を解明することを目的とした国際深海科学掘削計画(IODP)に参画しています。IODPは、日米欧主導の下で実施されている多国間国際協力プロジェクトです。引き続き、計画を推進していきます。
〈原子力〉
東京電力福島第一原子力発電所(以下、「東電福島第一原発」という。)事故等を踏まえ、政府は、エネルギー基本計画(平成30年7月3日閣議決定)を策定しました。
これを踏まえ、文部科学省としては、原子力災害からの復興に関する廃炉や除染等に向けた研究開発(※詳細は「東日本大震災からの早期の復興再生」を参照)等について、責任を持って対応していきます。以下、具体的な取組を示します。
1 原子力の安全性の向上に向けた研究
試験研究炉等を活用し、軽水炉を含めた原子力施設の安全性向上に必要となる、シビアアクシデントへの進展防止・影響緩和に係る知見の取得や、安全評価手法の整備等を実施します。
2 原子力の基礎基盤研究とそれを支える人材育成
原子力特有の科学技術基盤を維持・強化するための基礎的データの取得や、バックエンドの負担軽減等につながる革新的な技術創出を目指した基礎基盤研究を実施するとともに、大学や産業界との連携を通じた次代の原子力を担う人材の育成を着実に実施します。また、発電だけでなく、水素製造など多様な熱の産業利用が見込まれ、固有の安全性を有する高温ガス炉についての研究開発等を推進します。
3 高速増殖炉サイクル技術
高速増殖原型炉「もんじゅ」については、平成28年12月に開催された原子力関係閣僚会議において原子炉としての運転は再開せず、今後、廃止措置に移行することとされました。平成29年5月に「もんじゅ」の廃止措置を安全かつ着実に進めるため内閣官房副長官をチーム長、文部科学副大臣及び経済産業副大臣を副チーム長とする「『もんじゅ』廃止措置推進チーム」を立ち上げ、同年6月に開催された本チーム会合において、政府の「『もんじゅ』の廃止措置に関する基本方針」を決定するとともに、国立研究開発法人日本原子力研究開発機構(以下、「原子力機構」という。)が策定した「『もんじゅ』の廃止措置に関する基本的な計画」を了承しました。これらを踏まえ、原子力機構は、同年12月に原子力規制委員会に対して「高速増殖原型炉もんじゅの廃止措置計画認可申請書」を提出し、平成30年3月に認可され、同年8月からは燃料体取り出し作業を開始しました。今後とも「もんじゅ」の廃止措置を、地元の声にしっかりと向き合いながら、安全かつ着実に進めてまいります。
4 国際的な核不拡散体制強化に向けた取組
我が国は、原子力平和利用のための世界で最も優れた経験や技術等を有しています。引き続き、その経験や技術を活かして国際原子力機関(IAEA)等と協力し、国際的な核不拡散・核セキュリティ体制の強化に積極的に貢献していきます。
具体的には、原子力機構核不拡散・核セキュリティ総合支援センター(ISCN)を通じ、引き続きアジア諸国等に対し核不拡散・核セキュリティ強化のための人材育成を行うとともに、核物質の高度な測定・検知及び核鑑識の技術開発を行います。
5 放射性廃棄物の処理・処分に関する取組
研究施設や大学・医療機関等から発生する放射性廃棄物の処理・処分に関する取組等を着実に行います。また、高速炉や加速器を用いた放射性廃棄物の減容化・有害度低減技術に関する研究開発を実施します。
6 地域との共生・国民の理解のための取組
立地地域をはじめとする国民の理解と共生のための取組を実施します。地域の持続的発展に向けた取組に対し支援するとともに、原子力研究開発施設に関する知識の普及を図る取組等を行います。

東日本大震災からの早期の復興再生
東電福島第一原発の安全な廃止措置を推進し、原子力災害からの復興を加速させるため、文部科学省では、平成26年6月に公表した「東京電力(株)福島第一原子力発電所の廃止措置等研究開発の加速プラン」(以下「加速プラン」という。)に基づき、平成27年4月、原子力機構に「廃炉国際共同研究センター(CLADS:クラッズ)」を設置しました。同センターでは、国内外の大学、研究機関、産業界等の多様な人材がネットワークを形成しつつ、廃炉研究開発と人材育成とを一体的に推進することとしており、さらに、平成29年4月に、国内外の英知を結集する場として、福島県富岡町にCLADSの「国際共同研究棟」を開所しました。また、同研究棟は、「福島イノベーション・コースト構想」の拠点としても位置づけられており、福島県内の関連拠点と連携した研究活動等を通じて、福島の復旧・復興に貢献していきます。
あわせて、被災者の迅速な救済に向けた原子力損害賠償の円滑化等に関する取組を実施していきます。
1 廃止措置に向けた研究開発等
関係機関と連携しつつ、「加速プラン」に基づき、東電福島第一原発の廃止措置等を円滑に進めるための基礎的・基盤的研究開発等を着実に実施しています。
具体的には、遠隔で取得した原子炉建屋内の放射性物質の汚染分布を3次元的に可視化する技術の開発、分析したい対象物の化学的な組成をレーザー光を用いて遠隔で分析する技術の開発、事故が起きてから原子炉の炉心が実際にどのような経過をたどっていったのかを推測するための研究、プラント内の線量分布を評価する手法の開発等を実施しています。
2 原子力災害を踏まえた大学等における基礎的・基盤的研究及び人材育成
文部科学省では、東電福島第一原発事故により新たに顕在化した課題の解決に向け、大学等の研究機関における基礎基盤研究や人材育成の取組を推進しています。
具体的には、加速プランを踏まえ、中長期にわたる廃止措置等に係る新たな知見の創出、人材の育成・確保に向けた取組を推進するため、平成27年度から「英知を結集した原子力科学技術・人材育成推進事業」を実施しています。平成30年度からは本事業の運用体制を文部科学省からの委託事業から、原子力機構を対象とする補助金事業に移行し、CLADSを中核に大学等との連携を強化した体制を構築することにより、廃炉現場のニーズを一層踏まえた研究開発及び人材育成の取組を推進していきます。
3 環境回復に関する研究開発
東電福島第一原発事故により放射性物質で汚染された環境の回復に向けて、原子力機構が中心となって、福島県等の地方公共団体、国内外の大学・研究機関、民間企業等と連携・協力しながら、放射線測定に関する技術開発や、放射性物質の環境動態等に関する研究等を実施しています。
具体的には、無人ヘリなどを用いた精度の高い放射線測定に関する技術開発や、河川を含む環境中でのセシウムの移行予測モデルの開発等を実施しています。
4 放射線安全研究の強化
福島の住民の方々が安全・安心に生活できるよう、国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構において、福島の被災地における安全な水利用・処理環境の構築に関する研究を実施しています。
5 原子力損害賠償の円滑化
東京電力福島原子力発電所事故により被害を受けた方々が一日でも早く安心で安全な生活を取り戻せるよう、迅速・公平・適正な救済が必要です。
文部科学省では、原子力損害賠償紛争審査会において、賠償すべき損害として一定の類型化が可能な損害項目やその範囲等を示した指針を策定しております。また、「原子力損害賠償紛争解決センター」において東京電力と被害者との和解の仲介を実施しています。
また、今後の原子力損害賠償の在り方については、内閣府原子力委員会の原子力損害賠償制度専門部会(平成27年5月、設置)において検討が重ねられ、平成30年10月に「原子力損害賠償制度の見直しについて」が取りまとめられました。同専門部会における検討を踏まえ、①損害賠償実施方針の作成・公表の義務付け、②仮払資金の貸付制度の創設、③和解仲介手続の利用に係る時効中断の特例、④原子力損害賠償補償契約の新規締結等に係る適用期限の延長等の改正を行う「原子力損害の賠償に関する法律の一部を改正する法律」(平成30年12月12日法律第90号)が成立しました。文部科学省においては、平成32年1月1日の改正法の本格施行に向けて、必要な政省令の整備を着実に進めているところです。

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